夢枕獏のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
シリーズ第六作目にもなると、
初めの方に出た作品達を読んだ時に感じたワクワク感や
感動を同じように得る事はなかなか難しく、
ファン達には、長年愛読し続けたからこそ感じてしまう
「物足りなさ」、なんてとんでもなく
贅沢な悩みがおまけについてくる事となる。
しかし、この「陰陽師」シリーズには、
息の長いシリーズだけに与えられる深み、
円熟味が増してきたように思うのは私だけだろうか。
著者夢枕氏の筆は益々月の光の如く冴え渡り、
自宅の庭で、安倍晴明と
その友人源博雅の交わす会話は、
巻を重ねる毎に益々味わい深く、
面白みのあるものになってきたと思うし、
登場当時、かなり不気味なキャラで
敵役要素 -
Posted by ブクログ
「それで、どうなんだあんたは。何故山に登る?」
「正直・・よくわからないな。あのマロリーは、そこに山があるからだとそう言ったらしいけどね。」
「少なくとも、俺は違うね。そこに山があったからじゃない。ここにおれがいるからだ。おれにはこれしかなかった・・これしかないから山をやっているんだ。」(p.83)
ここでテントを張ることができるのは唯一この岩の下だけだ。しかもここの狭いこの場所だけなんだ。他の場所にテントを張れば、ひと晩に何度か必ず落石が襲う。それが頭部にあたれば死ぬ。眠る時もその姿勢でいることだ。もしザックの上に上体を被せて寝込んでしまったら落石が直撃する。おれが山だったら、そういうミス -
Posted by ブクログ
山を登るクライマーの物語で、このドラマ性の完成度の高さにはひたすら圧倒された。
常に生きるか死ぬかの境で山に挑むこの緊迫感は、たとえ映画でも簡単には表現出来るものではないだろう。
「岳」を読んだ時も山のコワさを実感したけれど、この「神々の山嶺」は国内の山だけでなく、ワールドワイドなので「岳」よりもさらに数段コワい。
とにかく驚くのが、山の絵がものすごく上手いことだ。写真かと思うぐらいの質感を持って、山の美しさと険しさが迫ってくる。この質感があるからこそ、リアルに山の存在を感じながらクライマーの視点で世界に入ってゆくことが出来る。この作品を描けるのは、間違いなくただ一人、この谷口ジロー氏だけだ