あらすじ
シナンは饒舌になった。
これまで、ずっと、心の裡で考えてきたことなのであろう。
「神を描くなら、それはまず、まったき球をもってせねばなりません。そして、その球には、常に、どの方向からも光が溢れていなければなりません。その球は、垂直の柱によって、天に持ちあげられ、壁の装飾は、光によって育つ、植物の幾何学模様こそがふさわしいものとなるでしょう」
百年の生涯で四七七もの建造物を手がけ、かたちなきイスラムの神を空間に描こうとした男の物語――。悠久の都イスタンブールに刻まれたその軌跡を辿り、薫り高きイスラム文化に迫る渾身の歴史長篇。〈解説〉角野史比古
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Posted by ブクログ
下巻は政治的に事が大きく動き全体を通して非常に面白かった。
首席建築家になったシナンが建てていくジャーミーを画像検索しながら過去に思いを馳せる馳せて読むのも一興かと思います。
個人的には終わり方がとても好みでした。
大当たり本。
Posted by ブクログ
アヤソフィアを超えるモスクの建造に挑む、建築家シナンの話。
目に見えない神を、「数学」「空間」など、様々な考えを繋ぎ合わせながら1つの建築として表現するのが私にとっては新鮮な感覚で面白かった。
シナンの言葉1つひとつが素敵で、物語に引き込まれる。
好きな場面はシナンとミケランジェロの会話。
トルコに行きたくなった。
Posted by ブクログ
聖ソフィアを凌ぐジャーミーを築くまでのシナンの旅。
当時のオスマントルコを取り巻く世界の状況も垣間見れてよい。
特に、ヴェネツィアとの関わりが興味深かった。
塩野七生氏の「緋色のヴェネツィア」と被る部分が好き。
Posted by ブクログ
16世紀、その百年の生涯で、477もの建造物を手がけた石の巨人・シナンの軌跡を辿る。
再読だったのだが、とても面白く読めた。
神が降りてくる場所。そこにたどり着くまでのシナンの軌跡が、とても丁寧に、それでいて違和感なく描かれている力作であると思う。
特にシナンがミケランジェロと会うシーンがいい。この二人は確かに同世代の人物で、地理的・歴史的にも会っていた可能性はあるそうだが、実際にはわからないと作中でも言われている。しかし、この二人が出会って話をしていたと考えるだけで、物語の声が聞こえてきそうではないか! そこを書いてくれるのが夢枕氏(サービス満点!)で、この二人の会話はとても面白い。
とくに「仕事をしなさい」のくだりは、とても印象に残る名シーンである。
イスラム建築という、日本ではあまり知られていない文化を、このような雄大な素晴らしい物語に仕上げてくれた夢枕氏に拍手。
この本を読むと、トルコに行きたくなりますよ!
Posted by ブクログ
イスタンブールに行った後に読んだ。
アヤソフィアを超越するジャーミーを作ったオスマン主席建築士シナン、の話。実際はこんなおとこが建てたのかもしれないと思わせてくれる。
アヤソフィアだけは行けなかったから次にいく口実に。
Posted by ブクログ
イスラム建築がメインというよりは、シナンが生きたスレイマン大帝統治下のオスマンの黄金期を描く。
珍しくも天寿を全うしたシナンが主人公なのは、シナンの生涯を通して治世の栄枯盛衰が見られるという理由もあると思う。
どの歴史小説もそうだろうけど、諸行無常の感がハンパない。あと政治上の駆け引きが怖すぎる。
ずっとトルコに行ってみたいと思っているが、アヤ・ソフィアとセリミエ・ジャーミーは絶対見てみたい!
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セリミエ・ジャーミーやスレイマニエ・ジャーミーを見に行きたくなる。
あとコーヒーが飲みたくなる。
チューリップを植えたくなる。
章の間に入る詩が良い感じ。
読後感も良い感じ。
塩野七生の『小説 イタリア・ルネッサンス』と合わせて読むと面白い。
Posted by ブクログ
ベネチアへ渡ったシナンは、なんとミケランジェロと出会う。史実ではないそうだが、なんともロマン漂う出逢いである。
ベネチアとイスタンブール(スレイマニエ・ジャーミー、リュステム・パシャ・ジャーミー、ミフリマフ・ジャーミー、ソコルル・メフメット・パシャ・ジャーミーを訪ねて)、さらにはエディルネのセリミエ・ジャーミーを巡る旅に思いは募るのであった。
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観光地としてトルコは最高の所だが、モスクもその重要な要素。シナンはその建築家。
幾何学模様(多分フラクタル構造)に神を見出す部分に共感。宇宙の始まりに想いを馳せた。
Posted by ブクログ
トルコにもう一度いきたくなりました!
シナンという人物像に人間臭さをあまり感じなかったです。ちょっとパーフェクトすぎないかな?
でも歴史読み物としてはbreath taking 約一日で読めきってしまう面白さです。
Posted by ブクログ
スレイマン1世を称えるスレイマニエ・ジャーミーをやっとのこと建設することになったシナンだが、そのモスクのドームの高さは結局のところ、アヤ・ソフィアを超えることはなかった。シナンのもつ知識ではまだ造れなかったのだ。 後年、建設したセミリエ・ジャーミーでは遂に超えることができたが、この物語では描かれていない。
建築のことがほんとに少なくて、下巻はスレイマン1世の側近イブラヒムと正妻ロクセラーヌの権力争いがメインで、シナンは蚊帳の外のように感じなくもない。でも、そのままシナンは蚊帳の外に置いといて、権力争いに意識を集中して読んでいれば、それはそれでイスラム文化の意外な面が知れて面白い。
シナンの伝記として読むには脚色が多そうだし難がある。モスクの建設って大事業だと思うんだけど、どのように建築資材を集めて、どのような人々が、どのような動いて、どのような危険のもとに、どのような信念で建てたのか、とか、そういうことが書いてないから、受ける印象は、一夜にしてポンッ!っと造ったみたいだ。著者がそういったことに興味がなかったのかもしれないけど、もうちょっと上手くストーリーに織り込めなかったのかなとは思う。
上巻でも書いたが、そういうことを期待せずに読めば、まあまあ面白かった。