池井戸潤のレビュー一覧
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老舗業者が時代の流れで業績が落ち込み、新規事業に手を出して失敗するという話は巷に溢れている。
本作は老舗業者に足袋メーカー「こはぜ屋」を設定しているが、この足袋というのが絶妙な設定だと思う。自分自身が履いたこともないし周囲でも見ない足袋という履き物。年々市場が減少していることは想像に難くないが特定の需要はある。この状況下で苦戦している老舗がランニングシューズ業界に参入しようという話だ。
正直言って本作はおとぎ話に近いとは思う。作中では巨大シューズメーカーの「アトランティス」が利益重視でアスリートに寄り添わない姿勢が仇となって臍を嚙むことになるが、現実はナイキやアディダスといった世界的なシューズ -
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現実に箱根駅伝を今、観ているかのような臨場感が素晴らしかった。関東学生連合チームに所属する主役チームの出身大学は全て架空名だが、青山学院、駒澤、早稲田、筑波、国学院、法政、拓殖、神奈川、中央、順天堂、帝京など各大学が実名で出て、しかも走者の名前(実在かどうかは不明)が。10区の走る場面が詳細に語られる。一体、何年(いつ)のレースを舞台にして書いた物語なのだろうか?そして、その裏で奮闘するテレビ局のプロデューサーなどのスタッフの姿が生々しい。成程CMをこのように悩みながら挟み込むんだ!監督、コーチ、マネージャーの役割も良く分かり、これから「箱根」を見る時の視線が間違いなく変わりそうだ。感動的な結
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『俺たちの箱根駅伝 下』は、走ることの意味をもう一度問い直す物語だ。予選で敗れた大学の選手たちが、寄せ集めの“学生連合チーム”として箱根駅伝本戦に挑む。順位にも記録にも残らない。けれど、彼らは「もう一度走りたい」という想いだけを胸に、白い襷をつなぐ。その姿には、勝ち負けを超えた“挑戦の尊さ”があった。読み進めるうちに、結果よりも「走る理由」そのものが物語の中心になっていくのがわかる。
監督の甲斐真人は、かつてのビジネスマン。スポーツの指導者としては素人同然だった。最初こそ選手たちから不信の目を向けられていたが、彼は“数字”ではなく“人”を見る。経験や理論ではなく、選手一人ひとりの心に寄り添い -
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足袋製造からスポーツシューズ陸王の新規事業への投資、競合からのノウハウと人材、新たなソール開発の新素材と開発人材の参入出来たが、自転車操業での行き詰まり、銀行から見放され、その担当者から紹介されたアパレルブランドからの買収に100年の実績を残す為の期間限定の投資で合意した、現事業残す為のシューズ事業挑戦物語。
埼玉県行田市にある老舗足袋業者「こはぜ屋」。日々、資金操りに頭を抱える四代目社長の宮沢紘一は、会社存続のためにある新規事業を思い立つ。これまで培った足袋製造の技術を生かして、「裸足感覚」を追求したランニングシューズの開発はできないだろうか? 世界的スポーツブランドとの熾烈な競争、資金難、