真山仁のレビュー一覧
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アルツハイマー病の治療薬フェニックス7を開発した医者を主人公に、日本における再生医療の最先端を紹介している小説。アルツハイマー病を治すための治験は倫理的に許されるのか、治験はアルツハイマー病根絶のために必要なプロセスとして割り切るかというジレンマで主人公は悩み続ける。
この話はフィクションだが、医療を巡る倫理観を考えるきっかけになる。例えば、治療薬の治験段階で重大な欠陥が見つかった場合、患者に治験して仮設検証を繰り返すことは人体実験と言えるだろうか。コロナウイルスの治療薬が薬事承認され、近日中に市場に流通する今だからこそ、医療と倫理観の関係を考え直す機会かもしれない。 -
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ネタバレ本の趣味が合う知人に紹介してもらった、私にとっては新領域の世界。
お仕事小説の中でも堅い方だし、公私の公の描写が9割。
最初は、三葉のバルクセール・ミカドホテルそれぞれの描写がダラダラ続いていて、そのうちココが繋がってくるだろうなという予感はあってもペースが上がらなかった。けれど、終盤に芝野が三葉を辞めてから物語が一気に動くのと同時に私自身も引き込まれた。
年代の設定が20世紀なのもあって、倒産法周りの整備が甘く、自分の知っている世界とはまた違うM&Aや企業再生の世界を見られた。ただ、法が整備されようとも、日本の多くの会社の体質は旧態依然でさして変化がなく、もはや経済大国ではないし、先進国とも言えないような経済・政治レベルを露呈しつつある昨今の日本は、この物語の時代に相変わらず取り残されてるなと改めて感じた。
M&Aについては、私も思うところが多くて、社会人時代の自分だったら他人事ではないシーンが少なくなかった。社長室や経営企画室のメンバーは元気にしてるなぁ…。 -
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久しぶりの真山さんの本。
近年、政治関係にも手を出し始めていることは何となく認識していたのですが、
初めて真山さんの政治モノを読む機会に恵まれました。
やはり安定感があるだけに、その先の展開がどんどん気になります。
途中作品の中で出てくる作家が真山さんを憑依しているのでは?と(勝手に)妄想してしまったり、
色々と楽しめること間違いなしの政治小説。
テーマは日本のデフォルト(倒産)。
我々日本人としては、臭いものに蓋をしてしまっているテーマでもあります。
未来に(そして、未来の若者たちに)負債を残さないためにも、
日本人としてちゃんと認識しておかなくてはいけないテーマを
小説とという取っつきやすい手段からまずは始めてみる、
それだけで意義のあることかと思います。
最後の終わり方があまり個人的には好みではなかったのが残念ですが、
別に自分の好み通りに終わる必要もないといえば、ないので。。 -
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ネタバレ冒頭から、通産省の青年、宇宙センの研究者、法務省の検事と、互いに無関係な人物の会話から始まり、数十ページ読み進めると、そのどれでもない特捜部の検事と若い宇宙研究を進める大学生がダブル主人公であることが分かり、中盤になっても話の展開が読めない、、そんな展開にワクワクさせられる。
キープレーヤーである橘洋平が悪党なのかヒーローなのかが最後の最後まで分からない部分が本作のミソだと思う。冒頭のシーンをみると、完全な悪党ではないことが何となく分かるが果たしてどんな仕掛けがあるのかが見えない。早く知りたいという好奇心を掻き立てられ、あっという間に読んでしまった。
結末はあっさり淡々と終わっていった感じがする。橘は今後冨永に危害が加わらないよう万全を尽くしたと言うが、その仕掛けが分かっても本当に安全な仕掛けなのかはイマイチ釈然としない。ただ、個人的には官房長官の逮捕など今後の巨悪の掃討を描かずボカしたのは非常に評価が高い。この一件を通した富永の決心だけを示して終わる形が本作のベストな締め方だと思う。(p387 物証があれば、いつか必ず告発できる。検察官としての冨永の矜持だった)
また、真山仁の作品は「黙示」「マグマ」以来三作目だったが、本作はポップでリズムがある感じがして、これまでとは違う印象(良い印象)を受けた。基本は固い感じだが、遥や藤山のような若い女性の会話が自然で、ある種「華」のようなものを与えているような気がする。 -
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女性初の総理大臣を目指す越村みやび厚労相。
超高齢化社会に突入した日本の切実な問題、高齢者のための施設=サ高住の法制化を巡り、彼女に贈収賄の疑いがあると情報提供者が現れる。
その真偽を確かめんと、特捜検事富永が動く。
富永検事、越村みやび、酒蔵を経営する彼女の夫、新聞記者の神林、それぞれの視点で状況が目まぐるしく変わる。
果たして、越村みやびは逮捕されるのか。
彼女を後援する姿勢をみせる現総理の本当の狙いは。
そして、女性初の総理大臣が誕生するのか。
追う者と追われる者、それぞれの思惑が絡む虚々実々の駆け引きに、読む手が最後まで止まらない。 -
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ネタバレ政府与党の中での権力闘争を描いた作品。政治の表舞台からはみることの出来ないフラ側での暗闘とも言える凄まじい権力への執着、そのためには手段を選ばない金の絡んだ闘争が生々しく描かれているのがとても興味深い。
とはいえ、若干淡白な表現が多く、もしかしたらもっともっと深くしつこくねちっこくせめぎ合っているところがあるのではないかと思わずにはおられませんでした。
星1つ減じたのは、物語の週末の終わり方があっさりとしすぎていたからなのかな?と思ったりもします。僕が長編・シリーズ物を期待するせいか、このあと続編が期待できるような余韻のある終わり方だったらもう一つの星も付けられたかな、と勝手な理由で星4つですみません。 -
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古いデータだが、今でも生きている.
2008年初出。フィクションだが日本の現実を踏まえた貴重な取材がデータになっている。だが現状は殆どが変化がなく続いていることに考えさせられた。
「プライド」は人を高めもするが崩壊もさせる。7編の主人公たちの前向きの矜持に励まされる部分が大いにあった。
自分は余り関わりのないと思っているところが、知らない、気づかないだけで大きな影響を受けていることを知る。
真山さんの本を読むのは、こういったまっすぐな、直球ど真ん中という作品に触れることが出来るから。長く読んでなかったその後の作品を辿ってみたい。
一俵の重み
現在の農政について。食料自給率、農産物輸出支援基金、農業者個別所得保障制度などの言葉が飛び交う。
冒頭は当時拍手喝采で迎えられた”必殺仕分け人”が農水省の出した三件の基金を切り捨てるかどうかの場面から始まる。「却下!!」と叫ぶ美人議員を、純正ジュースで篭絡しようとすることから始まる、あの手この手。
米博士の米野が日本の米を巡って開陳する理論は、米を主食にし、米好きの私には胸に応えた。
「食料自給率が40%を割り込みそうな今、輸出と言う発想が理解できませんか」
「食料自給率はカロリーベースなんです」
「輸入をやめると、食料自給率は100%になるわけです。にもかかわらず多くの国民は飢えるでしょうね」
「小麦の世界標準の価格は、トン当たり約200ドルです。それが、日本は1200ドル以上します。名物の讃岐うどんの原料の大半は輸入品です。地元産の小麦より上質だからです」
「なぜ米を輸出するための基金が必要かと言うことです」
「本当の意味で、この国の食料がなくなるかも知れないという時に備えるためですよ」
「輸出できるほどの良質な米を大量生産すれば、不測の事態にも備えることが出来ます。つまり、食料安全保障問題も解決するわけです。たとえ輸入がとまったとしても、輸出用の米を国内に回せばいいわけですから。しかも供給過剰問題も一挙解決することになる」
「日本の農業とは何を指すのです」
「日本の農業就業人口は260万人です。しかも、実質農業だけで生計を立てている主業農家は諸説ありますがそのうちせいぜい2割、58万人農家です」
「戸別保障は、買い取り価格の下落で赤字に悩む農家を救う制度なんですよ」
「大臣、なぜ兼業農家にまで赤字分を支払うのです。しかも、現状では減反している農家にも支給を予定されているとか。これはコメを作らない連中を奨励する。こんなことをしていたら、真面目にコメを作る者なんてあっという間にいなくなってしまいます」
農水省は、年間予算三兆円を守り続けている。省内には予算死守こそ農水官僚の使命だというものまでいる。
「大臣は、米一俵の重さがいくらかご存知ですか」
「60キロです。その値段がどんどん安くなっている。何故なら供給過剰だからです。だから減反しろという。それは間違っている。片手間で米を作っている農家への保護をやめるべきなんです」
そういう意気で米村は処世術などどこ吹く風、怖いものなしの意見をぶつけ、研究中に生み出した最高級の米をのびのびと育てることを楽しみにしている。
医は……
脳外科を学んだかつての同僚は順調に昇進し、脳外科センター長に就任した。教授が買って出た派手な手術パフォーマンスが失敗した、助手だった私は左遷され退職してアメリカに留学した。そこで先進手術を学びトップクラスに数えられるようになった。センター入所を条件に呼び戻され、教授の椅子も約束された、しかしそれは裏があるのではないか、徐々に現れる医学者の真実。
絹の道(ドウ)
絶滅の危機に瀕した養蚕業を政府が保護する動きがある。養蚕・絹産業連携の事業には補助金が出るという。
そこに養蚕研究者の女性が現れる。放置されている桑畑の葉に惹かれたのだという。地主の青年は役所で、地元産業の発展を担当していた。彼は一途な女性や、昔を懐かしんで手伝おうという人たちとともに、養蚕業に手を貸し、美しい日本の絹を作り出そうとする。
原種に近い蚕をふやして、深い美しい絹を作ろうという道(どう)と呼ぶにふさわしい工程が描かれている。
「500頭よ。蚕は家畜だから、匹じゃなくて頭で数えるの」
養蚕の歴史、蚕の成長、野球少年だった主人公が次第に養蚕にめざめ村おこしにも役立てる仕事に生きがいを見出す、二人の再生物語にもなっている。
プライド
プディングで起業し今では食品企業の第一線を走る工場で、問題が起きた。
材料の牛乳に問題があるという内部告発があった。
柳沢は以前コスト削減のために、賞味期限ぎりぎりの牛乳を安い値で仕入れている事実の改善を求めたことがある、お前ではないのか
「潔白を証明する根拠を出せ」
「告発文には誤った表現があります。
そこには、”消費期限切れの牛乳”とあります。消費期限とは生物や劣化の早い食品にだけ定められて期限であり、わが社の超高温殺菌牛乳は、その対象外です」
本来は”賞味期限切れ”と書かなくてはならないのだ。
この告発文の一語から、会社の起源当時から創業者が伝えてきた理念、精神など、利益の前で忘れそうになるアメリカ式受益産業経営の実態にまで話は及び、個人のプライド、魂が輝く感動的な話になっている。
暴言大臣
言いたい放題の質疑応答で、顰蹙を買った大臣には、それを言い放つ根拠があった。結婚五十年、できる妻を持った大臣のいまだに甘甘な夫婦生活が微笑ましい。病身を帰り見ずに、夫を助けるために中国外交に出かける妻の覚悟。それは……。
ミツバチが消えた日
報道写真家は養蜂家になった。戦場を写すことに無力感を覚えたからだった。
ある日近隣の養蜂仲間から緊急連絡が来た。「ミツバチが疾走してもどらない」
セイヨウミツバチが主流なのだが、ニホンミツバチを育てているうちのは大丈夫だろうか。
欧米でも同じ例が出ているという。
原因は何か。
すに近くまで戻って見た。死んでいくミツバチに悲しみが増幅される。
働き蜂のミッションは卵を産み続ける女王蜂を、命をなげうって守ることだ。その女王蜂を見捨てて、ほぼすべての働き蜂が消えるなどと言うのはどう考えても異常だ。
いないいない病と名づけたこの現象は農薬の「バツグン」のせいではないのか。
豪農の力の前でことなかれで済ますのか。
結論が出ないまま話は終わるが、言えない現状が良くわかる、危機感が募る。
なおこの話は長編「黙示」でも取り上げているそうで、読みたいと思う。
歴史的瞬間
だれでも、一度は閣僚に名を連ね出来ればトップになって名を残したい。彼はついに総理大臣になった、北から絶え間なく飛んでくるミサイル、「迎撃せよ」と叫ぼうとして死んだ。
在職中に脳卒中でなくなった総理は。
300ページちょっとの短編集はすぐに読めるが、内容は豊かで鋭い、勉強になった。
お気に入り度:本の評価ポイント -
Posted by ブクログ
【きっかけ・目的】
平成30年秋にハゲタカがテレビ朝日で制作放映された。NHK版とは違う演出だったがこれはこれで面白いと思った。
その影響で久しぶりに真山仁の著作をしかもハゲタカシリーズを読みたくなった。
平成最後の夏から始まる物語は失われた30年という日本経済の闇にフォーカスをあてて始まる。
長過ぎず短すぎず。そんな感じで手に取った。
【感想】
面白かった。東大阪を舞台に中小零細企業の様を生生しく描いている。日本の中小企業の技術力について描写しているが経営と運転資金の問題が浮き彫りにもなって勉強にもなる。知財等と軽く言うがそんな軽々しいものではないと「なにわのエジソン」をおって行くうちによくわかった。まさに日本経済の原動力だったのね。
会社は誰のものか。あるいは、「もの」なのか。今回のファンドに狙われ生き物のように逃げまくる泥臭さがたまらなく良かった。
また、村野が在籍していた信金組合の演出もピカイチ。不正の実態を押さえつつ中小企業の運転資金を支えている仕組みも理解できる。
エピローグでの村野が、逃亡しハワイに潜伏していたくだりはたぶん本当にあったであろうなと思わせる納得の描写であった。
【終わりに】
最後の最後に鷲津氏が出てきて浪花節です。これはたまらん展開でした。