真山仁のレビュー一覧
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最近読んだ福田和代著『バベル』がコロナウイルスによる緊急事態宣言下の現代日本と相似形をなすなら、本書は明日の日本を示しているのだろうか。
国の借金が1千兆円を超え、財政危機の日本。
迫りくる財政破綻を打破しようと、時の総理がオペレーションZと名付けられた一般会計歳出半減断行を宣言する。
「Zには、後がないという意味がある。私たちの国は絶体絶命で、後がないという作戦を遂行せよという意味だ」
その内訳は、社会保障関連費と地方交付税交付金をゼロにすること。
その実現のためのチームOZが結成されるが、野党ばかりか与党や閣僚からも反対の声が沸き上がる。
果たして、この作戦は成功するのか、スリリングな展開 -
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ネタバレ4
三葉銀行専務飯島に迫る鷲津。戦前から連綿と続いていた政府や軍閥などの私腹を肥やすための貯金箱となりマネーロンダリングの温床となった匿名口座を担当していた飯島。それを告発しようとして自殺に追い込まれた鷲津の父花井淳平。お前は正義のために死ねるか。今の時代に大切なのは正義や。因縁が明らかに。えびす屋芝野の話やミカドホテル松平貴子の話、太陽製菓の話も含め、要素が混ざり合いなかなか面白い。ニューヨークに帰るリンと別れた鷲津。続きも読みたい。
80年代に米国で一世を風靡したLBO敵対的買収は、遺恨を遺す、同業者も入り買収価格が上がる、従業員の士気の低下、ブランドイメージの低下などのデメリットが多く -
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ネタバレハゲタカ上
3.5
ハゲタカビジネス、企業再生ビジネスを描いた企業小説。経済の知識がつくのもあるが、小説としても面白い。ニューヨークの投資ファンドで名を上げ日本に戻った鷲津政彦、リン、芝野、飯島、貴子などのキャラや因縁など。実際の企業名が少し変えて書いてあり、事実になぞっている部分もあるよう。三葉銀行退職しえびす屋役員になった芝野、自分達大人は若い世代に胸を張って己の生き様を誇れるだろうか。闘うことも挑戦することもせずにただ自分達の都合の良い結果だけに満足して先に進むのを避けている。
スーバーえびす屋社長瀬戸山、自分の能力を過信し、部下の言葉を信じすぎ、社会の流れを見誤った。これは全て経営者 -
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認知症と肝細胞による治療。
今の最先端の問題に挑む。
確かに、選ぶ細胞によって、リスクの広がる可能性もある。
脳という領域は、人間のものでありながら、神の領域でもある。
つまり、脳は、まだ解明されていないことが多いのだ。
人間が、長生きすることで、今までになかったような病気
認知症という自分で自分をコントロールできなくなる。
最初の認知症の母親が糞を食べるシーンから始まるという
衝撃的な出だし。そこから、なんとか認知症の治療方法が見つかれば
という期待が高まる。
ベンチャー企業と投資家のやりとり
そして、旧態然たるお役所の対応。リスクを負わない。
副作用が起こるのは、わかる。
高血圧が、問題と -
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アルツハイマー病の治療薬フェニックス7を開発した医者を主人公に、日本における再生医療の最先端を紹介している小説。アルツハイマー病を治すための治験は倫理的に許されるのか、治験はアルツハイマー病根絶のために必要なプロセスとして割り切るかというジレンマで主人公は悩み続ける。
この話はフィクションだが、医療を巡る倫理観を考えるきっかけになる。例えば、治療薬の治験段階で重大な欠陥が見つかった場合、患者に治験して仮設検証を繰り返すことは人体実験と言えるだろうか。コロナウイルスの治療薬が薬事承認され、近日中に市場に流通する今だからこそ、医療と倫理観の関係を考え直す機会かもしれない。 -
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ネタバレ本の趣味が合う知人に紹介してもらった、私にとっては新領域の世界。
お仕事小説の中でも堅い方だし、公私の公の描写が9割。
最初は、三葉のバルクセール・ミカドホテルそれぞれの描写がダラダラ続いていて、そのうちココが繋がってくるだろうなという予感はあってもペースが上がらなかった。けれど、終盤に芝野が三葉を辞めてから物語が一気に動くのと同時に私自身も引き込まれた。
年代の設定が20世紀なのもあって、倒産法周りの整備が甘く、自分の知っている世界とはまた違うM&Aや企業再生の世界を見られた。ただ、法が整備されようとも、日本の多くの会社の体質は旧態依然でさして変化がなく、もはや経済大国ではないし、先