あらすじ
希望を探せ――
神戸と東北 二つの被災地をつなぐ震災三部作・第1弾
2011年5月、東日本大震災の爪痕が残る小学校に、神戸から赴任した応援教師、小野寺徹平。
彼は子どもたちと触れ合うなかで、被災地が抱える問題と向かい合ってゆく。
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Posted by ブクログ
【一万円選書】
すごく丁寧に書かれた本、という印象。
東日本大震災のとき、ちょうど一番上の子を出産してすぐで、抱っこしてあやしていた時間だったことを覚えている。
めまいのようなゆらゆらがし、それでも天井のペンダントライトが揺れているのをみて、あ、これめまいじゃないんだ、と思い直し、テレビをつけたら津波の映像で・・そこから先はもうテレビが全部津波映像の繰り返しとあのACのCMでさ。
自分の周りでもボランティアに行く人がいたっけな。でも、私は子どもがまだ小さかったから、とても預けてまでいけないなと諦めた。あのとき、もっと身軽な身だったら、現場を見ることができたのだろうか。
行った人の話も聞いたし、現地の人の話も読んだ。この本の参考文献にもなっている「つなみ 被災地の子どもの作文集」も読んだ。(ちなみに、この作文集は学級の子どもにも人気だ。自分と同じくらいの子が被災して、そして作文を書くことに興味があるらしい。)
逃げ遅れ、亡くなった子を悔やむ教師。津波被害にあった船を震災遺構として残そうとする老女。子どもたちが作った壁新聞、卒業制作。ボランティアとの衝突。
どれも聞いた話のような、この中の話だけのような、現実ではないように上手にぼかされていて、話に集中しながら読んだ。この話はまとめるのに非常に気を使ったんだと思う。
自分だったらどうしただろう。それにしてもいい校長だなあ。上司ってこんな風でありたい(難しいが)と思った本だった。こんな風であるには、つまり、優しさの中に強さがあるような、そんな人であるためには、これからどんな修業をしていけばいいんだろうか。
Posted by ブクログ
被災地の小学校へ、支援の一貫としてやってきた小野寺先生。
彼もまた、阪神淡路大震災で妻と娘を喪った経験を持つのだった。
まもなく大震災から12年。
もう12年なのか、まだ12年なのか。
フィクションだけど被災地での問題や課題がリアルで、読み進めるのが辛い人もいると思う。
あの日東京にいたに過ぎない私ですら胸にくる描写がいくつもあり、割りきってページを捲らないと頭の中が津波や火災や瓦礫、何もなくなった海外の映像でいっぱいになってしまった。
小野寺先生は学校の子供たちを励まし励まされ、自分の傷も癒えてないのに生きていこうとしている。
小野寺先生にとっての子供たちのような心の拠り所がないと、足を一歩前に出すことすらできないかもしれない。
誰かのために生きようとすることは、例えそれが自己満足や偽善のように感じて自分が嫌になることがあったとしても、生きるための立派な理由だと思う。