吉川英治のレビュー一覧
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多少の停滞はあれ、とんとん拍子で蜀を制覇していく劉備である。文武ともに優れた部下も揃ってきた。
以下に興味深かった点を引用したい。
・「帰らなければ、彼が信義を失うので、予の仁愛の主義に傷はつかない」
→劉備の益州攻めの際、生け捕った敵方の冷苞を解放した際に、魏延から「あいつ、きっと帰ってきませんぞ」と危ぶまれた時に返した言葉である。なるほど、これは現代にも通用しそうだ。尽くした相手に裏切られた際に、このような考え方が出来れば恩知らずを感じることもない。今まで曹操の言葉を幾つか引用してきたが、劉備の言葉は珍しい。あまり格好の良い言葉を吐くキャラには設定されていないためであろう。それだ -
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本巻では赤壁の戦いを描く。孔明と周瑜との絶妙な駆け引きは読んでいて実に楽しませてくれる。まぁ、常に孔明の方が一枚上手で、周瑜は毎回孔明に一杯食わされるのだが。
以下に、印象的だったシーンを引用したい。不思議にも、敗北側の魏軍の言葉ばかりである。
・「兵糧武具を満載した船ならば、必ず船足が深く沈んでいなければならないのに、いま目の前に来る船は全て水深軽く、さして重量を積んでいるとは見えません。これは偽りの証拠ではありませんか。」
→赤壁の戦いにおいて、曹操の参謀:程昱が呉軍:黄蓋の船団の偽装を真っ先に見破ったシーンである。程昱のような状況を冷静に判断出来る能力は貴重である。が、時既に遅 -
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私の嫌いな袁紹がようやく滅んだ。本作品スタートからヒールは黄巾賊、宦官、董卓、呂布、袁術と移り変わってきたが、袁紹は前半最後のヒールといっていい。これ以後、天の時を得た曹操、地の利を得た孫権、人の和を得た劉備の三すくみの戦いへと移っていく。
以下に興味深かったエピソードを紹介したい。
・「幸いに、勝つことを得、身も無事に還ってきたが、これはまったく奇蹟か天祐というほかはない。獲るところは少なく、危険は実に甚だしかった。この後、予に短所があれば舌に衣を着せず、よろず諫めてもらいたい」
→曹操が、袁紹の子である袁キ&袁尚との戦い後、部下に対して発した言葉。権力を持つようになると自身に耳触 -
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曹操の魅力が増してきた。私は、劉備、孫権と比べて曹操が好きである。彼こそまさに英雄であり、義を重んじ過ぎて優柔不断な劉備などとは魅力が違う(劉備ファンの人、ごめんなさい)。単なる潔癖な英雄ではなく、清濁併せ呑む合理主義的リーダーである点は正に痛快、それでいて視野が広く民衆思いである。本巻の、特に前半では曹操の魅力が余すところなく描かれていた。
以下に興味深かったエピソードを紹介したい。
・「わたくし如き者から、何を借りたいと仰せられますか」
「王垢、お前の首だ。すまないが貸してくれい。もし汝が死なぬとせば、三十万の兵が動乱を起こす。三十万の兵と一つの首だ。その代わりそちの妻子は心にかけ -
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兄と弟、叔父と甥、父と子。
朝廷、平氏、源氏それぞれの血縁が袂を分かち都を焼いた保元の乱の勃発。
当事者の余りに稚拙な計画の破綻により、現政権側が勝利した後に急速に頭角を表した信西入道による論功行賞と苛烈極まる敗者への断罪。
その歪みはさらなる乱を呼び起こす。
保元の乱から平治の乱前夜までを描く第三巻です。(ちなみにこれは電子版の第三巻までの話)
電子版第四巻は、
公卿の権力闘争に担ぎだされた源氏の棟梁義朝の敗北。
平氏による敗者への追討の手は緩まず。
しかし、後に平氏自らを死地に追い込む若雛は伊豆の地へと解き放たれる。
清盛の慈悲とも、高慢とも言われる頼朝、牛若の救済。
清盛の真意はど -
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ネタバレ関羽・・・・・・遂に死せり。
弔い合戦が始まる。
7巻は、とにかくみんなが死んでしまう。
ひとつの時代が終わりを告げる。
(そして私の集中力も・・・)
ただひとり残された孔明の孤独はいかほどか。
まるでそれを紛らわすかのように、南蛮へと侵攻し、矢継ぎ早に北へと向かい、留まることを知らない。
*印象に残ったこと*
・張飛のむごい死に様は、仏教の因果応報を彷彿とさせた。
・関羽は、確かに思慮深く、人望も厚い。が、神とまで崇められるようになった所以が、一読しただけではわからなかった。
(本の感想ではないけれど、それを考えていて改めて実感したのは、自分の中で”神”像があまりにも清廉潔白だったこ