潮谷験のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「新しい法律ができた。」という一文から始まる短編小説が25編載っています。
25人の書き手が、もしこんな新しい法律ができたら、という視点でお話を綴ります。
「新しい法律」ができた理由がそれぞれ興味深いです。
例えば、
・金子玲介さん「ルパちゃん」では、「少子化対策」のために「子どもがわりに人口知能を搭載したぬいぐるみを所持することを禁止する法律」ができます。
・日野瑛太郎さん「推し活制限法」では、「推し活にハマり過ぎて身を持ち崩す人が出た」ために「推し活への課金上限を制定する法律」ができます。
(わたしが、ぜひ読んでみたいと思っていた、くどうれいんさんの場合は、)
・くどうれいんさん「ショートケーキの夜」では、「フードロスと人口減少を同時に解決する」ために「ショートケーキはふたりで食べなければならない法律」ができました。
それぞれ興味深いです。
では、「新しい法律ができた。」から「どうなのか」というと、
・「だから、もう〇〇ができない。」というもの、
・「そのせいで、社会が〇〇になった。」というもの、
・「新しく〇〇をしなくちゃいけない。」というものに、分かれているような気がします。
そして、登場人物たちは、「新しい法律」がどこかで、知らないうちに「できて」、しぶしぶそれに従わざるを得ないという感覚で生活が変えられていっている作品が多いように見えます。表現の効果上、まあそうなりますよね。
(さてここからは私見です。)
世の中にはいろいろと従わなくてはいけないルールが存在しますが、「法律」とは国会で制定されるルールです。おおまかに言うと、国会は国会議員が審議する場です。国会議員は公職選挙によって選ばれます。選挙で投票できるのは18歳以上の国民です。
つまり、我々が選んだ国会議員が「法律」を国会で作るのだから、本来「新しい法律ができた」といった時事的、他人事的な表現ではなく、(意識としては)「新しい法律を(我々が国会議員をして)作らせた。」「新しい法律を作った。」と当事者意識で言うのが理想と言えるのかもしれません。
小説集の話に政治の話を持ち込むのは文字通りご法度なのかもしれませんが、「できた」という表現に自分の生活とは縁が薄いという意識が隠れていないか気になるところです。面倒くさいヤツですみません。
この小説集に書かれているような理不尽な「新しい法律」が制定されて社会がディストピアと化さないように、しっかり政治を監視しなくちゃな、と思ったしだいです。放言をお許しください。
それはさておき、いろいろな視点で語られるお話はそれぞれ読み物として面白いですので、オススメいたします♡
著者一覧(掲載順)
金子玲介
日野瑛太郎
朱野帰子
阿部智里
真下みこと
須藤古都離
嶋戸悠祐
多崎 礼
風森章羽
名倉編
真梨幸子
東川篤哉
霜月流
矢樹純
高田崇史
潮谷 験
献鹿狸太朗
高田大介
大沼紀子
矢部嵩
柾木政宗
くどうれいん
白井智之
赤川次郎
五十嵐律人 -
Posted by ブクログ
突如として世界各地に突然あらわれたミノタウロス。人類存亡の危機か?!と思われたが野生動物くらいの脅威でしかなかったので普通に駆除できてしまう。しかしそれでもそこそこ危険な野生動物程度には危機ではあるので各自治体はそれぞれ対処に追われる中でのとある市長のお話。
なんだろうな。バカバカしさとSFとかミステリとかのシリアスさが混然一体となった・・・面白かったですけどね。いろんな方面に手を伸ばしすぎというかその割にどれも半端は器用貧乏感というか。でも根底はコメディなんじゃないかと。起きている事件はどれもそれなりに深刻で人死にも出てるのに台詞回しが概ねコメディな感じ。そのあたりで好みが分かれそうな作品ではあるかな。ボリューム的にも中編くらいのものでサクッと読み終わりました。このノリでガチ長編だったらちょいきつかったかも? -
Posted by ブクログ
オーストラリアの牧場に突然現れた半人半獣、牛頭の怪物。その後、日本を含め世界各地で目撃されるようになった。そんな怪物が京都府眉原市議会の会場に出現した。史上最年少の女性市長・利根川翼は逃げ遅れた子供を探しに戻り、2匹目の怪物に遭遇した。怪物は倒されたものの、2匹目は着ぐるみで中からは行方不明だった市議会議員の姿が。市議会議員を殺したのは誰なのか…。
現代社会に怪物が現れるという斬新な設定。怪物はどこから現れるのか、法則性があるのか、怪物の秘密が明かされていく。けれど、この話のメインは誰が市議会議員を殺したのか。政治ものっぽい雰囲気もあって、結構色んな要素が詰まっている感じ。 -
Posted by ブクログ
難病、「オスロ昏睡病」が快復した患者の身体には、後遺症として薔薇の形の腫瘍ができる。
治療方法を確立した医師の殺害を皮切りに、元患者、通称「薔薇持ち」たちが次々と殺害めぐるされる事件が発生。自身も「薔薇持ち」である京都府警の八嶋は、病とその治療方法の闇に切り込んでゆく。
メフィスト賞作家塩谷験さんによる、架空の病気をめぐる特殊設定ミステリです。
どちらかと言えば主題は犯人やその動機よりも、病気やその治療法の真実、そして自己とは、意識とは何なのかという哲学的な問いに感じます。
白昼夢や身体に薔薇の浮かぶ病など、小説ながら視覚的な美しさに幻惑されるような描写が多く、夢見るような気分になりました。
ミステリというよりはファンタジーやSFに近い気がしますが、壮大かつロマンチックで面白かったです。
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これが刺さった人はきっとこの本も好きじゃないかな。
『失われた過去と未来の犯罪 』小林泰三(角川文庫) -
Posted by ブクログ
ネタバレ世界各国で牛頭人身の怪物が出現。牛頭人身、つまり、いわゆるミノタウロスだ。
その登場の謎と、殺人事件、SF X ミステリーとでも言おうか。その怪現象と現代社会と地方政治の現場を絡めた、ちょっと面白い建付けで始まるストーリー。
対峙するのが、日本の京都府、その南方にあるという眉原市の若き女性市長の利根川翼。こうした、怪物の登場に、行政がいかに対応するかを描くのは、『シン・ゴジラ』でもお馴染みだが、怪物が身の丈3メートルと、ちょっとお手軽なところが、逆に現実味ある(のか?)。
これを、謎の怪物と捉えてもよし、自然災害のひとつと考えるもよし。山の食料不足と暖冬傾向で、昨冬は全国でクマ出没の被害が相次いだことも思い出される。
神話や伝説において「牛」の存在は、洋の東西を問わず描かれてきた。
「日本では牛頭天王がスサノオノミコトと同一視され、祇園信仰の祭神として畏怖されている。ギリシャ神話には、牡牛に姿を変えたゼウスにさらわれた美女エウロパが、広大な大地に流れ着き、その地、ヨーロッパの祖になったという神話が残されている。」
牛を神聖な存在として崇め奉る宗教もある。そして、本作では、あの有名なクノッソス宮殿のミノタウロスを、現世に登場させ、この脅威に現代人が、いかに対応するかを描く。
元バンドマン、ベースをかき鳴らしていたロックな利根川翼は、まだ20代。就任2年目の若さだ。議会でベテラン議員が怪しげな提案、市政を操ろうと跋扈する。その翼を支えるのは、元有力議員の秘書だったが、翼に希望を見出し、市政に打って出るところからサポートする切れ者の私設秘書の羊川葉月。
世界中でミノタウロスが発生しているのに、なぜ京都が舞台か? 怪しげな郷土歴史家の永倉秀華博士が絡み、ギリシャの宮殿に潜む「迷宮」の謎から、ミノタウロス存在の理由を解き明かしていく。
怪物と現代地方都市の行政対応を絡めた設定や、ギリシャ神話をベースにした奇想天外さ、登場人物のキャラ立ちなど、そこそこ飽きのこない設えで、楽しく読めたが、ちょっと、途中から物語の勢いが落ちてくる。
それは、このミノタウロスが、そんなに強くないことが分かってくるから。いや、もとより、アメリカの警官が拳銃で退治できたりと、それほど強くはないのだが、永倉博士によって種明かしされる、とある条件を備えた人間の言うことを聞いてしまうという、なんとも締まりのないオチ。うーん・・・。
何故そんな謎の生物が、この地球に存在するのか。宇宙人説など、遠い銀河から、我らがホモ・サピエンスの進化と成長を見守る存在がいるのかもしれないという可能性は示唆されるが、そこは明らかにされない。う~ん、それも、ちょっと尻切れトンボ・・・。
でも、若き市長のキャラと、「シン・ゴジラ」的な味付けで、最後までサクサクと読めました。
これは、誰かが映像化の権利を買い取って、さらに構想を膨らませて、まったく別のオチのお話にしても面白そう。市議会での殺人事件の顛末で終わらせてしまうには、もったいない、ミノタウロス登場の謎だった。