潮谷験のレビュー一覧
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ネタバレ書き出しが『だから捨ててと言ったのに』から始まる短編集。様々な作家さんがこの一言からそれぞれの物語を紡ぐので、本当にいろんなジャンルの話が読めるのが面白い。
個人的に印象に残っているのは多崎礼さんの『海に還る』、摩耶雄嵩さんの『探偵ですから』かな。短いからこそ、その世界にスッと入り込めてわかりやすい話が好み。『海に還る』は人魚の話で多崎さんの作品らしいファンタジーな世界観が8ページにまとまっていて良かった。『探偵ですから』はとにかくわかりやすい作品で読みやすかった。短い話なのに、物語の登場人物の心情もわかりやすかったし、飼ってる犬がしゃべりだすとか少し怖い感じもするけど、主人公が助かって良かった。 -
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突如として世界各地に突然あらわれたミノタウロス。人類存亡の危機か?!と思われたが野生動物くらいの脅威でしかなかったので普通に駆除できてしまう。しかしそれでもそこそこ危険な野生動物程度には危機ではあるので各自治体はそれぞれ対処に追われる中でのとある市長のお話。
なんだろうな。バカバカしさとSFとかミステリとかのシリアスさが混然一体となった・・・面白かったですけどね。いろんな方面に手を伸ばしすぎというかその割にどれも半端は器用貧乏感というか。でも根底はコメディなんじゃないかと。起きている事件はどれもそれなりに深刻で人死にも出てるのに台詞回しが概ねコメディな感じ。そのあたりで好みが分かれそうな作品ではあるかな。ボリューム的にも中編くらいのものでサクッと読み終わりました。このノリでガチ長編だったらちょいきつかったかも? -
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オーストラリアの牧場に突然現れた半人半獣、牛頭の怪物。その後、日本を含め世界各地で目撃されるようになった。そんな怪物が京都府眉原市議会の会場に出現した。史上最年少の女性市長・利根川翼は逃げ遅れた子供を探しに戻り、2匹目の怪物に遭遇した。怪物は倒されたものの、2匹目は着ぐるみで中からは行方不明だった市議会議員の姿が。市議会議員を殺したのは誰なのか…。
現代社会に怪物が現れるという斬新な設定。怪物はどこから現れるのか、法則性があるのか、怪物の秘密が明かされていく。けれど、この話のメインは誰が市議会議員を殺したのか。政治ものっぽい雰囲気もあって、結構色んな要素が詰まっている感じ。 -
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難病、「オスロ昏睡病」が快復した患者の身体には、後遺症として薔薇の形の腫瘍ができる。
治療方法を確立した医師の殺害を皮切りに、元患者、通称「薔薇持ち」たちが次々と殺害めぐるされる事件が発生。自身も「薔薇持ち」である京都府警の八嶋は、病とその治療方法の闇に切り込んでゆく。
メフィスト賞作家塩谷験さんによる、架空の病気をめぐる特殊設定ミステリです。
どちらかと言えば主題は犯人やその動機よりも、病気やその治療法の真実、そして自己とは、意識とは何なのかという哲学的な問いに感じます。
白昼夢や身体に薔薇の浮かぶ病など、小説ながら視覚的な美しさに幻惑されるような描写が多く、夢見るような気分になりました。
ミステリというよりはファンタジーやSFに近い気がしますが、壮大かつロマンチックで面白かったです。
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これが刺さった人はきっとこの本も好きじゃないかな。
『失われた過去と未来の犯罪 』小林泰三(角川文庫) -
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ネタバレ世界各国で牛頭人身の怪物が出現。牛頭人身、つまり、いわゆるミノタウロスだ。
その登場の謎と、殺人事件、SF X ミステリーとでも言おうか。その怪現象と現代社会と地方政治の現場を絡めた、ちょっと面白い建付けで始まるストーリー。
対峙するのが、日本の京都府、その南方にあるという眉原市の若き女性市長の利根川翼。こうした、怪物の登場に、行政がいかに対応するかを描くのは、『シン・ゴジラ』でもお馴染みだが、怪物が身の丈3メートルと、ちょっとお手軽なところが、逆に現実味ある(のか?)。
これを、謎の怪物と捉えてもよし、自然災害のひとつと考えるもよし。山の食料不足と暖冬傾向で、昨冬は全国でクマ出没の被害が相次いだことも思い出される。
神話や伝説において「牛」の存在は、洋の東西を問わず描かれてきた。
「日本では牛頭天王がスサノオノミコトと同一視され、祇園信仰の祭神として畏怖されている。ギリシャ神話には、牡牛に姿を変えたゼウスにさらわれた美女エウロパが、広大な大地に流れ着き、その地、ヨーロッパの祖になったという神話が残されている。」
牛を神聖な存在として崇め奉る宗教もある。そして、本作では、あの有名なクノッソス宮殿のミノタウロスを、現世に登場させ、この脅威に現代人が、いかに対応するかを描く。
元バンドマン、ベースをかき鳴らしていたロックな利根川翼は、まだ20代。就任2年目の若さだ。議会でベテラン議員が怪しげな提案、市政を操ろうと跋扈する。その翼を支えるのは、元有力議員の秘書だったが、翼に希望を見出し、市政に打って出るところからサポートする切れ者の私設秘書の羊川葉月。
世界中でミノタウロスが発生しているのに、なぜ京都が舞台か? 怪しげな郷土歴史家の永倉秀華博士が絡み、ギリシャの宮殿に潜む「迷宮」の謎から、ミノタウロス存在の理由を解き明かしていく。
怪物と現代地方都市の行政対応を絡めた設定や、ギリシャ神話をベースにした奇想天外さ、登場人物のキャラ立ちなど、そこそこ飽きのこない設えで、楽しく読めたが、ちょっと、途中から物語の勢いが落ちてくる。
それは、このミノタウロスが、そんなに強くないことが分かってくるから。いや、もとより、アメリカの警官が拳銃で退治できたりと、それほど強くはないのだが、永倉博士によって種明かしされる、とある条件を備えた人間の言うことを聞いてしまうという、なんとも締まりのないオチ。うーん・・・。
何故そんな謎の生物が、この地球に存在するのか。宇宙人説など、遠い銀河から、我らがホモ・サピエンスの進化と成長を見守る存在がいるのかもしれないという可能性は示唆されるが、そこは明らかにされない。う~ん、それも、ちょっと尻切れトンボ・・・。
でも、若き市長のキャラと、「シン・ゴジラ」的な味付けで、最後までサクサクと読めました。
これは、誰かが映像化の権利を買い取って、さらに構想を膨らませて、まったく別のオチのお話にしても面白そう。市議会での殺人事件の顛末で終わらせてしまうには、もったいない、ミノタウロス登場の謎だった。 -
Posted by ブクログ
結果から言えば、詰まんなかった。
多分、若い人たちが読めば面白いんだと思うんだけど、このところのこういう小説にイマイチ入り込めない。
SF ではない。ファンタジーでもない。
なんだろうな、SF考証なんてもうないというか、なんだろう、進化し尽くした科学は魔法と見分けがつかないと言ったし、プロセッサだって何も意識せずもはや家電以下の世代では、ルールの理解とか、世界観とかそれを成り立たせるための努力とか、全く意味がないのかもしれない。
ラノベとかRPGとか漫画とかアニメとかで、それっぽくあればあっという間に共通ルールが共有されるようになったのかと思う。
ま、それはそれとして。
そう言うのを抜きにすれば推理物に近いと思うのだけど、根底にワタシルールと後出し開示がある少年ジャンプ的なところがあって、なんじゃあそりゃと。
そう言う筋すら、政治とか、浅い人間関係を描写するための道具でしかない。
人が死ぬのに、極めて軽い本。
一番根本のアリバイを仮定のまま置いて、話が進む。
星二つにならなかったのは、それでも、文章が上手くて、構成自体は悪くないよね、と思ったから。