いとうあつきのレビュー一覧
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桜子と、義母と、夫の前妻の娘。三世代の血のつながらない3人で暮らす花守家。
血縁という確かな繋がりがないが故に遠慮したり気負ったり、最初はぎくしゃくしながら始まる生活だけれども、徐々に家族という輪郭が作られていく。
家族は心休まる温かな居場所。
「おかえり」「ただいま」
毎日帰る場所があり、毎日迎えてくれる人がいる。そんな場所が家族というものなのだ。
季節めぐり様相を変えていく花守家のハナミズキと共に、穏やかな生活が営まれていくのだろうと感じられた。
「自分の中にほんの少しでも好きって思える部分があるだけで、ちゃんと背筋を伸ばせるようなきがするから」
このお守りのような素敵な言葉が心に残 -
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「翔の四季」シリーズ 春
翔の耳に遅れて届くようになった音によって、同級生の会話を詳細に聞き取れてしまう。
知里が「トイレの花子さん」のふりをして同級生をおどかしたということから、自分のかわった「力」を言い、杏も怒りを感じた相手に危害を加えてしまう特殊な能力を気にしている。
涼も霊が視えることから近隣でも噂のある首なし女とみんなといっしょに立ち向かう。
「見えるもの」「見えないもの」について考えていた翔も見えたものだけで判断するのではなく、見えないもののなかにも大切なものがあり、いつでも見れる思い出もあることことがわかったのではと思う。
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「翔の四季」シリーズ 秋
もの思う少年・翔をとりまく1年間〜夏を読んでから少し間が空いてしまったが、読みだしてから翔の家族や涼のことを思いだした。
今回は、翔がスポーツカーを見たあとで、その音が何十秒かずれて聞こえることに気がつく。
近所で起きた不審火は、カラスが線香を咥えて飛んでいたことに関係するのか…
学校内での同級生が持ってきたレアカードの盗難事件は、友だちの涼が犯人を見つけるが…
前作は、「見えていないこと」にきづいた翔だったが、今回は「きこえていないこと」に思いがむく。
小学生にしては、涼の考え方が大人で盗難犯を公にすることもなくおさめたことは、正しいこととは何かを考えさせ -
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中学2年の野々歩は、学校でボッチになる怖さからストレスを溜めていた。
祖母の葬式のあと、実家に残ったまま帰らぬ母のことを思い、学校へ登校せずに祖母の家のある田舎に向かった。
田舎の家は誰も居ず、町で見かけた「森のようちえん コロボックル」のポスターと同じ文字が書いてあるクリーム色のバンが目の前を横切り、思わず走り出した野々歩。
広場に着いたバンから次々と幼稚園児が飛び出してきて…
最後に降りてきたのは、なんと母である。
ボランティアをしているという母といっしょに翌日から森のようちえんに行く野々歩。
滞在している1週間で野々歩が体験したことは、自然に囲まれて自由に自分たちだけで楽しむ子どもたち -
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中学受験を控えた翔が、ふとしたことから高宮さんと飼い犬トラウムと出会い、夏休みの塾に行く前に週に二回の散歩を頼まれる。
同じマンションに住む芸能人と知り合ったり、人には見えないものが見えると言う同級生との会話など日常の何気ないやりとりのなかで、それぞれのおもいを感じている。
見えると言う同級生のことも嘘や誤魔化しだと非難することもなく、困っている芸能人のことも何とかしようと頑張る翔。
この夏は、高宮さんとトラウムとの出会いと別れを一度に経験したけれど、後悔よりも良い思い出になったのではないだろうか。
哀しい夏というよりも一生忘れられない夏になったことだろう。