あらすじ
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人気シリーズ「乙女の本棚」第19弾は横光利一×イラストレーター・いとうあつきのコラボレーション!
小説としても画集としても楽しめる、魅惑の1冊。全イラスト描き下ろし。
もうあたし、これでいつ死んだっていいわ。
海のそばにある家。そこで彼は、日に日に弱っていく妻を一人看病し続けていた。
横光利一の『春は馬車に乗って』が、『26文字のラブレター』などで知られる人気イラストレーター・いとうあつきによって描かれる。
名作文学と現代の美麗なイラストが融合した、珠玉のコラボレーション・シリーズ。
自分の本棚に飾っておきたい。大切なあの人にプレゼントしたい。そんな気持ちになる「乙女の本棚」シリーズの1冊。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
2025/11/02
妻は檻のような寝台の格子の中から、微笑しながら絶えず湧き立つ鍋の中を眺めていた。
「お前をここから見ていると、実に不思議な獣だね。」と彼はいった。
「まア、獣だって、あたし、これでも奥さんよ。」
「うむ、臓物を食べたがっている檻の中の奥さんだ。お前は、いつの場合においても、どこか、ほのかに惨忍性を湛えている。」
「それはあなたよ。あなたは理智的で、惨忍性をもっていて、いつでも私の傍から離れたがろうとばかり考えていらしって。」
「それは、檻の中の理論である。」
Posted by ブクログ
床に伏せてしまい死が迫る奥さんと、仕事やお金を言い訳に直視したくない旦那さんの話。イラストが綺麗なのが余計に死を感じた。相手に優しく、言いたいことはちゃんと言おうと思った。
Posted by ブクログ
横光利一さん、縁がないけど気になってたので手に取った乙女の本棚シリーズ。
死の淵にある妻とそれを看病する夫を描写した物語。
美しく柔らかなイラストのおかげで、文章だけだとどんどん暗く重たくなるストーリーが、一定の愛情と美しさを保って捉えられます。
本人ではどうしようもなく、病による不安や理不尽さからくる妻のワガママとそれに振り回されつつも見捨てられない夫の姿、を現代なら上っ面の愛と本音みたいなイヤミス的なものになりそうなのだが、この作品は上っ面は醜いけど底に愛情が横たわっている、と読める。そう読めるのもイラストの影響大きい。
2024.1.28
15
Posted by ブクログ
難しい表現があって、少し分からないところも。
2人の男女の内側のやり取りを垣間見れるような作品だなあと思う。ラノベとかにはない世界観。何だかんだ2人は好き合ってるのかな。
Posted by ブクログ
タイトルが綺麗だなと思ったのと、著者の本は読んだことなかったので手に取った。
ラスト、ふたりのやりとりが好き。春が来たんだな。というのがかなしいしさみしいし、でも救われるような思いでもある。
Posted by ブクログ
肺病でどんどん弱っていく妻。
妻の家族と4、5年も闘争して、やっと娶ることができて、母と妻との間で苦痛な時間を過ごしたあと、やっと夫婦二人きりになれたのに、妻は病気になってしまった。
もう良くならないと、心の片隅にでも思っているのなら、彼は、毎日もっと優しくしてあげればいいのに。妻が言うように、隣で仕事をして、片時も離れない位に甘えさせてあげればいいのに。
妻が始終不満を伝えていたが、彼はちょっと冷たいと私も思った。
彼女のわがままを檻の中の理論と呼んで、もう死ぬかもしれない妻から逃げるように仕事とお金を言い訳にするのは、本当は鬱陶しいと思っているだけで、余り大切に思っていないんじゃないかと思ってしまう。
この妻は、言いたいことをちゃんと言えたのかな?
我慢し過ぎないで死ねたのかな?
それが気がかり。
もう死ぬんだから、照れ隠しとかしないで、彼はもっと優しくしてあげなよと思ってしまった。
私だったら、仕事なんかしないでずっとそばにいてってもっと主張しそうな気がする。
色とりどりの花々を乗せた舟の表紙の絵がとても魅力的。温かで柔らかな絵が、夫婦の想い合う少しぎこちない心を映し出しているようで、心に染みた。
乙女の本棚シリーズは、文学作品をより印象深く味わえる。今も毎月のように新刊が出ているようなので、未読のものを早く全部読みたい。
Posted by ブクログ
本が読めなくなって冬から数ヶ月かけて読んだら、
春になってた。
花束を渡す最後がとても良い。
その一方で、現実の話ではないのだと感じた。
なんでかなぁ。
でも本当なら良いなぁ。
Posted by ブクログ
1898/3/17〜1947/12/30 利一忌
1926年作
病気で自由にならないその身の悔しさと最期が近づく苦悩。その病気が言わせるワガママを夫に放つ事ができる素敵なカップルだなあと思うのです。
それでも 看病と経済に疲れを感じつつある夫。
医者から、いよいよ現実的な最期を知らされた夫は死について考える。
この作品のいとうあつきさんの夫婦の絵が、美しいなあ、と思う。春がやってくるようなコラボ。
スイトピーが馬車に乗って春をまきながらやってくる。春はやってきて、苦しみは消えて、妻の鎮魂歌。
横光さんの体験から。駆け落ちのように暮らし始め、同居後間も無く結核となり、亡くなった後入籍としたようです。
Posted by ブクログ
病の苦しみ、やがて訪れる死を前に揺れ動き、苦悩し、そして鎮まっていく二人。
2人のやり取りが、のたうちまわり、苦しみながらも、澄みきっていく過程が丁寧。
イラストも、秋から、苦悩に満ちた冬、春への移り変わりが描かれていてどこを開いても美しい。
文字色も工夫してあるのかな?
終わりと春にむかううつろいが、読んでいる側にもじんわり染みてくる。
Posted by ブクログ
乙女の本棚シリーズから、横光利一さんといとうあつきさんのコラボ作品「春は馬車に乗って」です。なんともきれいな色使いのいとうあつきさんのイラストは、とってもステキです!
内容は、肺の病に侵され余命わずかな妻を看取る夫のお話です。病に苦しみ、夫にあたるしかない妻…夫も妻に振り回されながらも妻に寄り添い続けた結果、妻も自身の病を受け入れられるようになっていく…。最期は、妻に春いっぱい感じられるスイトピーを抱かせ、「この花は馬車に乗って、海の岸を真っ先きに春を撒き撒きやって来たのさ。」と…。
「キューブラー・ロスの死の受容」というものがあります。「否認 怒り 取引き、抑うつ、受容」…この5段階の通りかなって感じました。様々な葛藤もあったけれど、妻は夫に看取ってもらえて、本当によかったんじゃないかと感じました。
Posted by ブクログ
横光利一、初めて読む作家。病気治療中の妻と、それを支える夫の、静かな日々の話。
締め切りのある仕事を抱えながら、もっと構って欲しがる妻の看病との両立でいっぱいいっぱいになり、時おり衝突しながらも支え合う姿は、第三者である読み手の私たちの目にはそれでも仲睦まじく映る。
部屋から見える庭の松の葉、鈍い亀、ダリヤの球根、野の猫、水平線、遠くの光る岬。それらすべての情景描写が美しかった。
春がくるということが、これほどよろこばしいことのように思えたのはずいぶん久しぶりな気がする。
「まア、じっとしてるんだ。それから、一生の仕事に、松の葉がどんなに美しく光るかっていう形容詞を、たった一つ考え出すのだね。」
「どこから来たの。」
「この花は馬車に乗って、海の岸を真っ先きに春を撒き撒きやって来たのさ。」
Posted by ブクログ
乙女の本棚シリーズ。
タイトルやピンクの背表紙から、明るいお話を想像していましたが全く逆。結核を患い死期が近づきつつある妻と、それを支える夫の、閉塞感の漂う暮らしを描いた作品でした。
病で気が滅入り、夫に当たってしまう妻。それを受け止めるしかない夫。そんな事、言わなくていいのに⋯と思ってしまいますが、体が辛く更に治る見込みも無ければ、お互い心が荒むもの仕方ない事です。最後の明るさは、妻の体が楽になったという事なのでしょうか。
初めて読む作家さん、初めて見るイラストレーターさんの作品でした。苦しい内容ですが、表情のない男女のイラストがよく合っていました。
Posted by ブクログ
乙女の本棚シリーズの一冊。
横光利一の代表作。このシリーズの中では、絵がおとなしめ。本文にかなり寄り添った感じ。これくらいなら乙女でなくても大丈夫。ということは乙女の本棚としてはどうなのか、ということになるのだろうか。乙女はもちろん乙女でなくても楽しめる、と考えれば、成功しているのかな。
Posted by ブクログ
はい、20オネエです
『乙女の本棚シリーズ』も、もはやベテランの域です
乙女の本棚プロと言ってもどこからも異論は出ないと思われます
そんなプロからこれから『乙女の本棚シリーズ』を読もうとしている皆さんに貴重なアドバイスをしましょう
先に解説みたいなん読んじゃダメです絶対
そっちに引っ張られちゃいますからね
自分が感じたことを堂々と誇りましょう
偉い学者先生の解釈とぜんぜん違ったっていいじゃない
そんなん蹴飛ばしちゃえばいいじゃない
笑われたって馬鹿にされたって自分が感じたことを自分が信じてあげなきゃ
で、今回わいが感じたのは「馬鹿馬鹿しさ」でした
死に向かう妻と看病に疲れる夫の言葉の応酬がなんか馬鹿馬鹿しかったんよな
なんか「死」ってものがどんどん軽くなってく気がしたんよね
なんとなくそれが日常になっていく
そしてあくまで日常の先に「死」があるんだって
それって妻の優しい愛情だった気もしてきたんよなー
Posted by ブクログ
病の妻をもつ彼は妻に縛られていた。
彼には仕事があったが妻には彼しかなかった。
妻の病が進行するにつれ家庭は暗くなっていった。
冬の終わりに知人からスウィートピーの花束が馬車で届けられた。
夫婦は春の訪れを喜ぶ。
陰鬱な展開が続いたが最後に一条の温かな光が差したような物語だった。