山田正紀のレビュー一覧
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インドと中国の国境に作られた原子力発電所「アグニ」において、日本から出向した亜紀商事の社員を含む、技術者のほとんどが落盤事故に見せかけた爆発によって殺された。生き残った工藤は、原子力発電所内に、CIAが仕掛けた爆弾が存在していることを知る…。
山田正紀の作品の中でも、冒険小説風の風合いが強くて読みやすい、スパイvsスパイもの。CIAと中国、ソ連のKGBが序盤では複雑に絡み合い、大丈夫か?と思ったところで、工藤たちの行動がスタートする。
工藤たち5人については、あれ?それでいいの?という程度の訓練ぶりに、ほとんど活躍すること無くという感じで、むしろその前のサラリーマン時代に焦点が当てられている。同様の作だと半村良のような、ハードボイルドやSFにおける生活感といったものが、サラリーマンの悲哀とともに描かれている。
終盤の1/4くらいで、ようやくメインの活躍が始まるわけで、ハードボイルドアクションを期待した人たちにとっては、少々消化不良になるかもしれない。しかし、個人的にはこれくらいでいいんじゃないのかという気はする。戦車などの記述が少しだけでてくるが、このあたりは作者の趣味なのであろう。
後半になればなるほど、コメディーや悲喜劇の様相を呈してくる。タイトルからめんどくさそうな話だなあと感じている人は、それほど構えなくていい作品だ。
最後に「ストーリーの都合上、実際の原発の構造とは異なっております」というところもクスっとくる。逆にいうと、機械など色々、よく調べてあるんだよね。最近の作家に足りていないのはそういうところ。
(余談)
落語家の息子で苗字「桂」はないやろ。
文庫書籍版が見つからないbooklog。どうにかならんのかな。 -
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山田正紀さんの作品は『カムパネルラ』に続き読むのが2作目でしたが、この作品も、私には難解で、意味がわかりませんでした。
最後まで読めばわかるんじゃないかと思って読んでいましたが、なんとなくしかわかりませんでした。
読み慣れないSF作品であるせいかもしれません。
10歳くらいの白いつなぎを着て白いキャップをかぶった少女が「おまえの大切な人(ラヴ)が死ぬ」という手紙を、第一話から最終話までの各登場人物に持っていき、その人たちをインタビューする死神の話です。
第一話の鈴木良二と君島涼子の高校生カップルの「難病ラヴストーリー」はコミカルで、あの映画のことかなと思い、ちょっと笑えました。
第二話の「天使が肩に舞い下りて」は純文学に近い話ではないかと思いました。
各話とも「大切な人(ラヴ)」が誰(何)かという話なのですが、人でなく、何か別のものの場合もありました。すでに愛する者を失っていた人もいました。
各々の話としては楽しめました。
第五話の刑事の話はまたコメディ調になったりしました。
最終話では『不思議の国のアリス』のお話が登場し、話のまとめに確かに入るのですが、これがまた意味がわからず…。
これは、作者の高尚な遊び心から発したちょっとしたいたずらのお話ではないかと思いました。 -
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銀河鉄道の夜をこじらせた小説、とでも言えばいいのかな。ともかく、どこに連れて行かれるか分からない展開にアップアップしながらも、何とか読み終えることができました。
この「どこに連れて行かれるか分からない」というのは、単に先の読めない展開、というわけではありません。自分の場合は中盤まで、物語の目的も、そもそもジャンルや世界観も曖昧なまま、読み進めていました。
まず出だしで管理社会を思わせる思想統制の組織が登場し、ディストピア系の作品かと思ったら、場面が変わり、昭和8年宮沢賢治が亡くなる2日前の岩手県花巻へ主人公が移動します。
じゃあ、時間改編のSFか、と思ったら、史実と違い賢治はすでに死亡し、逆に早世した賢治の妹が主人公を迎える。さらに主人公は「ジョバンニ」と呼ばれ、この世界にはカムパネムラや風の又三郎といった賢治作品の登場人物が実際に存在していることも示唆されます。
ということは、パラレルワールドや時空間が分岐した世界観か、と思いきや物語はさらに奇怪な方向へ舵を切り……、というふうに、展開が読めない以前に、そもそも物語の向かうべき方向すらも分からない展開が続きます。
それが明らかになってからの中盤以降の展開もまあスゴい……。SFというジャンルだからこそギリギリ通用する世界観。ここまで想像力(妄想力?)を働かせる著者にはある意味脱帽です。
とまあ、こう書くとふざけた小説なのか、と思われるかもしれませんが、話のテーマ自体はなかなかにシリアス。銀河鉄道の夜をめぐっての物語は、小説をどう読み解釈するかの問題を突きつけ、またその解釈が時によって、権力の都合のいいように操られることも示唆します。
銀河鉄道の夜は宮沢賢治が亡くなる直前まで改稿され、そして最終的には未定稿のまま世に発表されました。この小説の中でも触れられていますが、特に第三次改稿と第四次改稿とでは、内容に大きな修正が加えられています。その理由を推理する文学ミステリとでもいうべき側面もこの作品はあるのですが、著者の山田正紀さんはそれをさらに発展させ、SF的モチーフを加えることで、物語と思想が単純に結びつけられることの危険性までも、描いたように思います。
本や物語は著者から読者へ向けた一方的なテキストではない、という考え方があります。本や物語は読者がいて、その読者が何らかの解釈をすることで、意味を持つという考え方です。
銀河鉄道の夜は改稿の謎、そして未定稿のため説明されない様々な謎が物語の中に残っています。そしてそれは、今なお様々な感想や解釈を研究者はもちろん、一般の読者にも迫ります。銀河鉄道の夜の物語が人々を引きつけるのは、描写や文章の美しさのみならず、そうした謎を抱え、様々な読み方を無意識的に読者に提供しているからかもしれません。
そんな銀河鉄道の夜をモチーフに書かれたこの小説は、本や物語を好きなように解釈し、そして楽しむための自由をめぐる戦いの話でもあり、その自由を守るための話だったのかなと思います。
かなりクセのある作品だったとは思うのですが、本や物語愛に溢れた小説だったように自分は解釈しました。 -
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ネタバレメデイア管理庁による思想統制が行われる日本。現代らしい。近いうちに現実になっても驚かないような…
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」第3次稿を利用して、「みんなの幸いのため」なら自己犠牲を厭わない人間を育成しようとする。
「銀河鉄道の夜」が好きすぎるので、解釈違いだったらどうしよう…と思ってたけど、大丈夫だった。第4次稿、ひいては賢治自身も、自己犠牲を良しとしていたわけではないのだ。
天気輪の柱や「45分」の使い方が上手くてなるほど〜と思った。
半分くらいまでは頭の中が?だらけで、これは一体どこに着地するの?と思っていたけど、タイムスリップではなく仮想現実だということが分かってからはするすると読めた。
あらすじがどう、というよりも、あの世界に行けるとかすごい!行きたい!という感想…
シミュレーションに多くの少年少女が参加することで物語が変容していく可能性。だから、もしかしたらカムパネルラが死なない未来があるのかも、とわくわくしたり。
カムパネルラと会話することがなくて残念。
「風野又三郎」と、鉄道の位置関係なんかが分かったらもっと楽しめるかも。
最後はちょっともの哀しい…。「ぼく」が母にしたことはそんなにも重い罪だろうか。 -
Posted by ブクログ
綺麗な本だなぁと手に取ってみました。
まるっと宮沢賢治オマージュというかリスペクトというかそんな感じの本だった。
教育って洗脳だなぁとは思いますがそもそも国というのはその地域に暮らす人の総意、という事なのである意味自分たちの属する地域に暮らす人間の存続維持のための民意、という事でもあるんですよね、多分。
わかりやすい悪者にはなるんだけれども悪が悪として設立するための説得力がないと又悪い国家組織の話かぁとなってしまう感じが。
とは言え組織に都合よく文学作品を使われるのはちょっと抵抗はあるかも。でも情操教育だったらよだかの星が最適なんじゃないかななんて思いました。