山田正紀のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
銀河鉄道の夜をこじらせた小説、とでも言えばいいのかな。ともかく、どこに連れて行かれるか分からない展開にアップアップしながらも、何とか読み終えることができました。
この「どこに連れて行かれるか分からない」というのは、単に先の読めない展開、というわけではありません。自分の場合は中盤まで、物語の目的も、そもそもジャンルや世界観も曖昧なまま、読み進めていました。
まず出だしで管理社会を思わせる思想統制の組織が登場し、ディストピア系の作品かと思ったら、場面が変わり、昭和8年宮沢賢治が亡くなる2日前の岩手県花巻へ主人公が移動します。
じゃあ、時間改編のSFか、と思ったら、史実と違い賢治はすでに死亡し、逆に早世した賢治の妹が主人公を迎える。さらに主人公は「ジョバンニ」と呼ばれ、この世界にはカムパネムラや風の又三郎といった賢治作品の登場人物が実際に存在していることも示唆されます。
ということは、パラレルワールドや時空間が分岐した世界観か、と思いきや物語はさらに奇怪な方向へ舵を切り……、というふうに、展開が読めない以前に、そもそも物語の向かうべき方向すらも分からない展開が続きます。
それが明らかになってからの中盤以降の展開もまあスゴい……。SFというジャンルだからこそギリギリ通用する世界観。ここまで想像力(妄想力?)を働かせる著者にはある意味脱帽です。
とまあ、こう書くとふざけた小説なのか、と思われるかもしれませんが、話のテーマ自体はなかなかにシリアス。銀河鉄道の夜をめぐっての物語は、小説をどう読み解釈するかの問題を突きつけ、またその解釈が時によって、権力の都合のいいように操られることも示唆します。
銀河鉄道の夜は宮沢賢治が亡くなる直前まで改稿され、そして最終的には未定稿のまま世に発表されました。この小説の中でも触れられていますが、特に第三次改稿と第四次改稿とでは、内容に大きな修正が加えられています。その理由を推理する文学ミステリとでもいうべき側面もこの作品はあるのですが、著者の山田正紀さんはそれをさらに発展させ、SF的モチーフを加えることで、物語と思想が単純に結びつけられることの危険性までも、描いたように思います。
本や物語は著者から読者へ向けた一方的なテキストではない、という考え方があります。本や物語は読者がいて、その読者が何らかの解釈をすることで、意味を持つという考え方です。
銀河鉄道の夜は改稿の謎、そして未定稿のため説明されない様々な謎が物語の中に残っています。そしてそれは、今なお様々な感想や解釈を研究者はもちろん、一般の読者にも迫ります。銀河鉄道の夜の物語が人々を引きつけるのは、描写や文章の美しさのみならず、そうした謎を抱え、様々な読み方を無意識的に読者に提供しているからかもしれません。
そんな銀河鉄道の夜をモチーフに書かれたこの小説は、本や物語を好きなように解釈し、そして楽しむための自由をめぐる戦いの話でもあり、その自由を守るための話だったのかなと思います。
かなりクセのある作品だったとは思うのですが、本や物語愛に溢れた小説だったように自分は解釈しました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレメデイア管理庁による思想統制が行われる日本。現代らしい。近いうちに現実になっても驚かないような…
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」第3次稿を利用して、「みんなの幸いのため」なら自己犠牲を厭わない人間を育成しようとする。
「銀河鉄道の夜」が好きすぎるので、解釈違いだったらどうしよう…と思ってたけど、大丈夫だった。第4次稿、ひいては賢治自身も、自己犠牲を良しとしていたわけではないのだ。
天気輪の柱や「45分」の使い方が上手くてなるほど〜と思った。
半分くらいまでは頭の中が?だらけで、これは一体どこに着地するの?と思っていたけど、タイムスリップではなく仮想現実だということが分かってからはするすると読めた。
あらすじがどう、というよりも、あの世界に行けるとかすごい!行きたい!という感想…
シミュレーションに多くの少年少女が参加することで物語が変容していく可能性。だから、もしかしたらカムパネルラが死なない未来があるのかも、とわくわくしたり。
カムパネルラと会話することがなくて残念。
「風野又三郎」と、鉄道の位置関係なんかが分かったらもっと楽しめるかも。
最後はちょっともの哀しい…。「ぼく」が母にしたことはそんなにも重い罪だろうか。 -
Posted by ブクログ
綺麗な本だなぁと手に取ってみました。
まるっと宮沢賢治オマージュというかリスペクトというかそんな感じの本だった。
教育って洗脳だなぁとは思いますがそもそも国というのはその地域に暮らす人の総意、という事なのである意味自分たちの属する地域に暮らす人間の存続維持のための民意、という事でもあるんですよね、多分。
わかりやすい悪者にはなるんだけれども悪が悪として設立するための説得力がないと又悪い国家組織の話かぁとなってしまう感じが。
とは言え組織に都合よく文学作品を使われるのはちょっと抵抗はあるかも。でも情操教育だったらよだかの星が最適なんじゃないかななんて思いました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ〇 総合評価
密室状態の山道から13人のマラソンランナーが消失するというのがメイントリックだが,スタッフが参加していて,スタッフに戻る形でマラソンの参加者からはいなくなるというトリック。トリックそのものはしょぼいのだが,山菜中毒で1人が死んだという事実を,13人が消失したという事実で隠そうという「木の葉を森に隠す」理論はなかなか面白い。
とはいえ,「田舎の村おこし」という設定で,田舎の人が窮地で考えた苦肉の策という設定だが,やはり無理がある。
その後,とにかく(町で買ってきた)山菜を食べて,食中毒になったという事実を隠すために,栗谷一揆騒動諸控という古文書の記載に見立てて木に死体を突き刺すという「岡村」という村役場の人間の行動はバカミスっぽくすら思える。
真相は入り組んでいる。結局,戸塚という人物は,山菜を食べて食中毒になったのではなく,日向淑子という人物の頼みで医者の木島に毒殺されたっぽい終わり方をする。そうすると,岡村の行動はバカミスを通り越して哀れとまで思えてしまう。
栗谷一揆騒動諸控が30年前に作成された偽物であるという真相や,リゾート開発に絡めた展開,栗谷村をリゾートに組み込んだ理由が環境汚染だというものまで含む,詰め込み過ぎの内容。
トリックやプロットは,使い古されたものではあるものの,それなりに面白いものだが,見せ方がいまいち。さすが山田正紀というか,それなりに読ませるデキではあるが,もっと面白く仕上げられたと思える。★3程度のデキか。
〇 サプライズ
13人のランナーが消失したトリックはしょぼい。岡村の告白,日向淑子が光井の愛人だったという展開,栗谷一揆騒動諸控が偽物だったというオチなど,驚かそうという要素は多いが,だらだらと真相が描かれるので,そこまで驚けない。★3
〇 熱中度
やや冗長に感じる。そこまで熱中できない。★2
〇 インパクト ★★★★☆
13人が消失する謎,栗谷一揆騒動諸控に見立てて木に死体を刺したり,トラクターが飛んでくるというトンデモ推理があったり,栗谷一揆騒動諸控が偽物だったりと,大まかな流れだけ見るとインパクトはある。真相はショボいんだけど…。★4
〇 キャラクター ★★★☆☆
久保寺健一と貢新造親子,日向淑子,風水林太郎など,それなりにキャラクターの魅力はある。新造当たりに真相を語らせても面白かったと思うのだが…。★3
〇 読後感 ★★☆☆☆
久保寺一家が栗谷村を去り,栗谷村は一丸となってリゾート計画に反対するという終わり方。その後を想像すると,久保寺一家もバブル崩壊に伴って悲惨なことになりそうだし,リゾート計画への反対も栗谷一揆騒動諸控が偽物と暴かれて崩れそう。そう見ると読後感はあまりよくない。★2
〇 希少価値 ★★☆☆☆
新刊はなさそうだが古本は多い。人気作家だし,手に入らなくはなさそう。★2
〇 メモ
〇 久保寺又三郎
鋭い感性を持つ少年
〇 風水林太郎
風景心理学を提唱している。
〇 久保寺健一
東京から栗谷村に移住してきた家族の父
〇 久保寺恭子
東京から栗谷村に移住してきた家族の母
〇 貢新造
久保寺恭子の父。久保寺夫妻と一緒に栗谷村に移住してきた。もと警察官
〇 岡村良雄
村役場の若者。久保寺健一の相談を受けていた。
〇 日向淑子
鷹巣寺の元住職の娘
〇 小野田
小学校の教師
〇 佐木
広告代理店勤務。村おこしの企画をする。
〇 木島
医者
〇 松永
助役
〇 光井陽二郎
ゼッケン13→18に書き換えられた名簿の人物の名前
〇 山崎
警察官
〇 岸辺
木に刺さった死体の事件を担当した刑事
〇 戸塚道夫
木に刺さった形で見つかった死体の身元
〇 オープニング
又三郎と風水林太郎の出会い。轍の後がないトラクターの存在
〇 プロローグ
新造が,日向淑子に,あなたの父親が犯人ではないかと聞くシーン
〇 栗谷村に,久保寺一家がやってくる。岡村から,村おこしマラソン大会のことを聞く。久保寺健一は,マラソン大会に参加する。
〇 久保寺健一は,ゼッケン13番の男が嘔吐しているのを見る。健一は医者の木島を連れてくるが,嘔吐していた男はいなくなる。
〇 ゼッケン13番の男はマラソンに参加していなかったと言われ,久保寺健一は調査を始める。警察官の山崎の訪問を受け,マラソン大会では13人もの人物がいなくなったとの話を聞く。マラソン大会の山道は,いわば密室状態だったという。
〇 久保寺健一は,調査の中で,鷹巣寺の日向淑子から,「栗谷一揆騒動諸控」という古文書の話を聞く。また,消えた13人の人物が鷹巣寺にいないことを確認する。
〇 木に刺さった形で死体が発見される。これは,栗谷一揆騒動諸控の内容と一致していた。
〇 久保寺健一は,小野田の持っている同人誌で,戸塚道夫の名前を発見する。
〇 久保寺健一は,小野田が日向淑子に文句を言っている場面を見る。また,久保寺健一は,戸塚から小野田が30万円を受領したという内容の領収書を発見する。
〇 久保寺健一は,山崎にこれまでのことを伝えに行くが,山崎は殴られていた。その場で小野田を発見する。戸塚の死体は消えていた。小野田は逃走する。
〇 又三郎は,偶然,山崎に出会う。公民館の水車小屋で待つと久保寺健一に告げるように言う。
〇 戸塚道夫は,土地ブローカーのチンピラだった。そのバックには三井陽二郎という名前があり,こちらは大物だった。
〇 小野寺を探すための山狩りを行う。久保寺健一も参加する。
〇 新造は,光井陽二郎と佐木が話しているシーンを見る。
〇 水車小屋で火事が起こる。岡村と小野田の死体が発見される。
〇 岸辺は,光井陽二郎と面会する。リゾート計画に栗谷村も取り込まれていることになっていることを確認する。戸塚は,切り崩しのために送り込まれた尖兵だった。
〇 栗谷村で収集があり,リゾート計画について告げられる。村長と助役は,村人を奮い立たせ,佐木が光井陽二郎のスパイであることを伝える。
〇 久保寺健一は,マラソン大会に参加したとき,眼鏡を取っていたことを思い出す。そして,そのことから,消えた12人がマラソン大会のスタッフ=村人だったことに気付く。
〇 栗谷村は,山菜も取れなくなっており,町から山菜を買ってきて山菜ソバを作っていた。そして,佐木は賞味期限が切れた山菜を買ってきていた。戸塚は賞味期限が切れた山菜を食べ,食中毒になって死ぬ。岡村はその死体を隠そうとした。
〇 栗谷村で,30年前にダム建設に反対する運動があった。そのときに光井陽二郎が反対運動に参加していた。
〇 佐木がトラクターの下敷きになって死亡する(オープニングのシーン)。水車小屋で死んでいた死体は,戸塚と小野田の死体だった。
〇 30年前,光井陽二郎と一緒に活動していた人間の名に,日向淑子の父の名があった。もう一人は医者の木島。
〇 風水林太郎が登場。栗谷一揆騒動諸控という古文書はなかったということが分かったとつぶやく。
〇 岡村と久保寺健一が会い,岡村が犯行の告白。佐木は岡村ば撲殺し,村長達が,トラクターを木馬という巨大なそりで運んだ。岡村は光井陽二郎を殺害しようとして捕まる。
〇 エピローグ
栗谷一揆騒動諸控を作ったのは日向淑子の父だった。小野田は栗谷一揆騒動諸控が偽物だったと岡村に告げたために殺害された。
新造の推理。日向淑子は戸塚に脅されていた。淑子は木島に依頼し,戸塚を毒殺する。しかし,岡村が食中毒だと勘違いし,この騒動が起こった。
〇 隣り村のゴルフ場造成のために,多量の除草剤が撒かれ,川に流れ込み,森を病ませていた。そのため,栗谷村をリゾート計画に組み込んでいた。
〇 久保寺一家は,栗谷村を去る。 -
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ネタバレ善の象徴であるはずの神を「悪」と見なして、主人公たちが神と戦う姿を描くという発想の斬新さには感心するが、主人公たちは本当に神と戦っているのだろうか、いったい何と戦っているのだろうという疑問を強く持った。真偽不明の事柄を狂信している、ちょっと頭のいかれた人たちではないだろうか。
曰く、「古代文字を解読できた者は、世界を手中に収めることができる」「古代文字は神の世界のものである」「神はわれわれに悪意を持っている」「神の干渉があるかぎり、われわれが自由になれることもないし、真の意味での愛を手に入れることもない」「神さえ、その上にいなければ、人間はもっと善良にももっと幸福にもなれるんだ」等々。
主人公の島津は情報工学の専門家で言語学のエキスパートであることから、花崗岩石室に描かれた古代文字らしきものの調査に立ち会い、連鎖的に事件に巻き込まれ、「神狩り」に参加するようになる。諜報関係の人間、霊感能者といった非日常的な人物ばかりが登場し、怒涛の展開をみせる。
「神狩り」とはいうものの、神は登場しないし、神と戦う場面もない(芳村老人が霊能者ジャクスンの立会いのもとに面会したことになっているが)。
「神狩り」とは、「神の存在を証明して、その正体を人類の前に暴き立てること」らしい。神の実在を証明するために、古代文字の解読が続けられる。実際に「神狩り」と称してやっているのは、古代文字の解読だけであり、それを手に入れようとする諜報関係者や解読を阻止しようとする霊感能者との間のいざこざが物語の中心を占めている。
ラストでも古代文字の解読は終わっておらず、古代文字の解読を阻止しようとするジャクスンとの対決で終わっている。物語にはまだ続きがあることを予感させる終わり方である。 -
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SF界隈での著名人・新人引っくるめてのアンソロジー集です。SFにはあまり馴染みがなく、フィリップ・K・ディックは好きですがそれもアニメ『PSYCHO-PASS』の影響で最初からというわけではなかったので、慣れる、と言うか、映画は好きなんですが小説はなかなか食指が伸びず、アンソロジーならまだ読めるかな?と言う気持ちで購入しました。
冲方丁さんは、『マルドゥック・スクランブル』を読んでいましたし、新井素子さんは名前くらいは聞いたことがあるなあ、『グリーン・レクイエム』は読んだっけな、夢枕獏さんは『陰陽師』だなあ、とか。
個人的に好きなのは宮部みゆきさんの作品。ロボットとの哀愁漂う感じが好き。最後ちょっと泣きそうになってしまった。
これはあの映画みたいな感じだなあ、とか、さらさら読めたので、入門編には良いかな、と言う感じ。