山田正紀のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ー はっ、連中が物語なんか必要としているものか。そんなものは読み捨てのカストリ雑誌で十分さ。連中は"現実"に酔っぱらってるんだ。飽食して、垂れながしているんだよ。
おい、夏樹さんよ、本当のことを教えてやろうか。ぼくがどうして豚の王を自称しているかを。連中は豚なんだ。いや、人間ってやつが地べたを這いずりまわる豚なのさ。
だから、ぼくは豚の王なんだ。輝やかしき、栄光に満ちた豚の王なんだよ。豚に星の物語なんか必要であるものか。笑っちゃうぜ。おい、精神の王国なんてないんだぜ ー
物語(神話)と虚無との永遠の闘い。
繰り返されるハルとナツとフユとの闘い。
哲学的で面白い。
山 -
Posted by ブクログ
長いミステリが読みたい!!!と思い立ってしまった時にたまたま目についたこの上下巻
ながーいと言えば、読むのに時間がかかってしまった『薔薇の名前』
いつまでも事件が起こらなかった『暗黒館』
何故読んだ御大
ぱっと浮かぶ超大作はこんな感じなのですが、たまに読みたくなるのですよね。このながーいミステリ。
ぱらぱらと捲ってみると、旧仮名遣い。
えええ?そんな古いの?と思ってあらすじを読んでみたらどうやら平成。
しかも作中作。しかもパラレルワールド??
<第2回本格ミステリ大賞受賞/第55回日本推理作家協会賞受賞>
の行を見てこれに決めたのでした。
パラレルワールドとか言い出すと、SFな -
Posted by ブクログ
ネタバレ〇 概要
東京からカラフトへ向かう「紅緑丸」の船上で発見された死体の謎,山中を走るバスから消えた5人の乗客の謎…など,昭和初期を舞台に放浪する若者二人―呪師霊太郎と椹秀助が遭遇した殺人事件が描かれる短編ミステリ。そして,それらの謎が,最後の中編「人喰い博覧会」で新たな側面を見せる…。短編集に全体を通じた趣向を凝らした作品
〇 総合評価
椹秀助が話したO市(小樽市)での体験談をもとにした話(おおむねフィクション)を,Y(山田正紀)が小説にしたという設定は面白い。人喰い船から人喰い雪まつりまでの短編のデキは,傑作とまではいえないが,小説巧者の山田正紀らしく,それなりのデキ
人喰い船から人喰 -
-
Posted by ブクログ
出会ったこともない物理学者・牧村孝二と心理検査士・関口真理はすでにお互いが恋人だと知っているという上巻の大部分を占める物語は、旧シリーズの短編群の世界とはチェルノブイリ原発事故の時点で分岐した別の世界らしい。そこで牧村が持っている「妄想」を記したものが、下巻に収められた既出の短編群なのである。「妄想」の世界では牧村孝二は庭師であり、関口真理はただ彼の恋人である。
思わせぶりな用語を作り、華麗なイメージをまき散らしてその中にいくつもの物語を作り出してくという方法はなかなかに成功しているように思われる。これはいかにもコードウェイナー・スミスっぽいのだが、最初のほうで「ネコと蜘蛛とゲーム」とい -
Posted by ブクログ
『最後の敵』で日本SF大賞をとった山田正紀が受賞後第1作として発表したのが『神獣聖戦』を構成する最初の短編であった。3冊の短編集と2冊の長編で構成される連作は2つめの長編が未完(未執筆?)のまま1980年代から放置されていたが、このPerfect Editionにおいて再構成された。
超光速達成のため、非対称航行が開発された。これは背面世界を跳躍し彼方の星域に赴く航法であるが、背面世界に入るためには人類は自身を改造し、狂人=鏡人(M・M)にならなければならなかった。背面世界では時間と空間が逆転し、内と外が反転し、ホルモンが外部へと放出され世界に影響を与える。非対称航行では航宙刺激ホルモン -
Posted by ブクログ
山田正紀には入れ込んでいた時期があった。『神狩り』『弥勒戦争』『チョウたちの時間』『崑崙遊撃隊』『風の七人』……。難解なテーマを扱ったSFから、秘境冒険小説、時代劇、ミステリまで、あまりに多作でそのうちついて行けなくなって、しばらくぶりに読んだ『神狩り2』と『ミステリ・オペラ』は、面白くなかったわけではないが、山田正紀ってこんなB級だっけという感想。
饒舌な文章は強引なプロットをうまく説明するでもなく、しかし作者は強引とは思っていなさそうなあたりが気恥ずかしい。壮大なアイディアに驚くまもなく、それが怪しげな論理で展開されて興をそぐ。
『最後の敵』は上記の一群の初期作品のひとつで、次第に -
Posted by ブクログ
「甲賀忍法帖」の壮絶な戦いののち、新たな強敵である成尋衆に伊賀と甲賀の忍者たちが命を懸けて最後の戦いに挑む。
上巻で成尋衆のあまりにも強すぎる様子が展開したので、この強敵にあの伊賀と甲賀の個性的な忍者たちがどのように立ち向かっていくのかが楽しみで読み進めていきました。
立ち向かう伊賀と甲賀の忍者たちは、特殊な忍術を使えるだけでなく、性格もそれぞれが個性的に描かれ、読み進めていくうちに一人一人に愛着がわき、どうしても結末が気になってしまいました。
「甲賀忍法帖」の山田風太郎は、医学的な観点からの忍術でしたが、今作の山田正紀はSF作家だけに科学的な観点の忍術が多かったです。
物語 -
Posted by ブクログ
山田風太郎の名作「甲賀忍法帖」の後日譚を山田正紀が描き出す。伊賀、甲賀を巻き込み、正体不明の集団「成尋衆」との戦いが幕を開く。
あの名作の続編とも呼ぶべき作品をあの山田正紀が描くとあって、期待と不安を織り交ぜながら読み進めましたが、不安は杞憂に終わり、「甲賀忍法帖」の世界を引き継ぎながら新しい物語を作り出したといっていいと思います。
数々の摩訶不思議な忍者や忍法が次々と登場し、若き伊賀と甲賀の忍者たちが戦いに巻き込まれていく展開にページをめくる手が止まりませんでした。
血生臭い戦いと純愛が絶妙に描き出され、次巻を読むのが待ち遠しく感じました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ昭和史をテーマにした骨太なミステリーです。この作品では二・二六事件がテーマとなっていて、史実と虚実が入り混じり、「虚」が「実」だったのではないかと錯覚するような作品になっています。現実を舞台にノンフィクションを創造するタイプの小説としては、非常に出来が好いと思います。
何も前情報なしに読んだのですが、どうやらこの作品は著者の「オペラ三部作」と呼ばれるもののうち、二作目にあたるようです。とは言っても、恐らく三部作に共通するのは主人公格で登場する「黙忌一郎」という人物のみで、それ以外は別個の作品になっているかと思われます。
置屋で殺された芸者の死の真相を巡る中で、徐々に明らかになっていく新たな -