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山田正紀の本格ミステリ・デビュー作なのだそうですが、めちゃめちゃ面白いです!
意図的に古臭い探偵小説の体裁で始まる連作短編集。事件の解決は法によって裁かれることはなく、何故そうしたのか人間心理に興味があるだけ、という魅力的な設定。短編では描ききれないのでは?是非長編も読んでみたい。
女囮捜査官のときも凄いと思いましたが、メタフィクションなど、仕掛け満載。
山田作品は、後々まで印象に残るシーンだったり、イメージが多いような気がします。それが崑崙遊撃隊とか宝石泥棒や最後の敵、女囮捜査官だったりするのですが、なぜなのでしょう。不思議な作家。
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内容や文体から、相当昔の作品のような雰囲気があるけれど、それほど古い作品ではない。旧作ではあるけれど。
「連作の最後の章に待つ大仕掛けにあなたは必ず驚愕する」というコピーに期待したけれど、驚愕とまではいかなかった。もしかすると、仕掛けをきちんと理解できていないのかもしれない。本格好きの方にはお勧めだと思う。
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小樽好きにはたまらないミステリーだ。小樽は古い建物や歴史的建造物が数多くの残る街。北海道の中でも人気の観光地だ。この本はその小樽を舞台にした6つの短編からなる小説。時代は鬱屈とした昭和初期、軍国化への道を進む暗い時代だ。山田正紀は『神狩り』でデビューしたSF作家。若かりし頃は良く読んだが、内容はほとんど覚えていない。著者のミステリーは初めての体験。
『人喰いー』というタイトルが暗示するように、何が人には言えない秘密を共有するようなストーリー。主人公は20代なかばの若者2人。樺太行きの客船に乗り合わせ妙な親しみを覚え行動を共にする。船の中で、降り立った小樽の街で、2人は殺人事件に出くわす。6つの章は独立した内容かと思いきや最後の章でひとつひとつ繋がっていたことが明らかになり思いもよらぬ展開をもたらす。昭和初期の出来事が若者2人の人生を変え、現代に繋がる。過去の秘密と現代が交差した時、老いた2人に由来したものはなにか?
終始、暗い雰囲気が覆う小説だが、この時代設定は嫌いではない。
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この時代の日本って好きだなあ。外見は決してクリーンじゃないんだけど、内面がクリーンって感じがして。もちろん時代が時代だけに腹黒い人はたくさんいるから『正直』って意味のクリーンではなくて、何と言うか『病んでない』感じのクリーン。
そんな時代が舞台だから、こんな小説が成り立つんだろうな。
現代社会だと彼方此方に予想外の穴ができすぎて話が立ち行かなくなりそうだ。
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〇 概要
東京からカラフトへ向かう「紅緑丸」の船上で発見された死体の謎,山中を走るバスから消えた5人の乗客の謎…など,昭和初期を舞台に放浪する若者二人―呪師霊太郎と椹秀助が遭遇した殺人事件が描かれる短編ミステリ。そして,それらの謎が,最後の中編「人喰い博覧会」で新たな側面を見せる…。短編集に全体を通じた趣向を凝らした作品
〇 総合評価
椹秀助が話したO市(小樽市)での体験談をもとにした話(おおむねフィクション)を,Y(山田正紀)が小説にしたという設定は面白い。人喰い船から人喰い雪まつりまでの短編のデキは,傑作とまではいえないが,小説巧者の山田正紀らしく,それなりのデキ
人喰い船から人喰い雪まつりまでの短編の位置付けが,最後の人喰い博覧会で変わる。人喰い船から人喰い雪まつりまでの話は,人喰い倉以外はフィクションで,登場人物に,実際に椹秀助と呪師霊太郎が関わった人物への椹の思いを表していたというのは,上手いと感じた。しかし,驚愕かと言われるとそこまでの驚きはない。最後の遠藤美子の事件の真相=単純な自殺だったというものも,意外性はあるが,驚愕とまでは言えなかった。全体を通じ,山田正紀の小説らしい,「よくできた作品」という印象が高い作品。各短編の持つ雰囲気の良さ、全体の完成度の高さから、トータルの評価としては★4としたい。
〇 各作品のメモ及び評価
〇 人喰い船 ★★★☆☆
● 被害者:藤子義介
● 犯人:池田昇三と藤子安芸子の共犯
● ポイント
藤子義介を殺して木箱に入れて船に乗せていた。
カラフトに遺棄するつもりだったが,O市に止まることになったので,船上で死体を出した。
● 感想
名探偵呪師霊太郎と,ワトソン役の椹秀介のデビュー作。トリックは平凡だが,「わしの仕立てた洋服よりも,あんな女のほうを選んだことが,断じて許せなかったのだ」という仕立て職人である犯人池田昇三の殺人の動機がインパクト抜群の作品。作品全体の雰囲気と,インパクト抜群の動機がウリ。
〇 人喰いバス ★★★☆☆
● 被害者:霜田(特高の刑事)
● 犯人:バスの運転手とバスに乗っていた女
● ポイント
バスの運転手とバスに乗っていた女は心中をしようとしていたが,霜田が二人の食事を食べて死んでしまう。その事実を隠蔽しようとして,霜田が生きてバスにのったように偽装した。
● 感想
呪師霊太郎が,自分のふけを入れた食べ物を食べた霜田が腹を壊していないことから,バスに乗った段階で死んでいたことに気付いた点がユニーク。昭和の奇妙な未解決事件,人喰いバス事件の真相を描いているという設定も面白い。
〇 人喰い谷 ★★★☆☆
● 被害者:浅葱宗一郎,蓬矢周平
● 犯人:浅葱弥生
● ポイント
浅葱宗一郎と蓬矢周平が恋仲になったことが我慢ならなかった弥生が,二人を遭難させる形で殺害した。死体は,二人がホモセクシュアルであることが分かる証拠が残っていることを恐れ,弥生が処分させた。
● 感想
シンプルな作品。ラストの「夫を失うのには耐えることができますわ。でも,夫を男に奪われたのだということを世間の人に知られるのには,とても耐えられそうにありませんもの」という告白が秀逸。シンプルでもインパクトがある短編が描けるという好例
〇 人喰い倉 ★★★★☆
● 被害者:篠田勝
● 犯人:なし。篠田勝は自殺
● ポイント
篠田勝は,遊郭の雪(幸)という女と結婚の約束をしていたが,社長の娘との縁談の話があって,雪を捨てようとした。しかし,社長の娘は探偵を使って調査をし,その事実を知って,縁談を辞めた。そのことを恨んだ篠田は,いやがらせで自殺。呪師霊太郎はその事実を隠し,雪には,偽の密室の話をして,篠田が殺されたと伝えたという話
● 感想
面白い。こういう読後感が悪い作品は好き。遊郭の雪の気持ちを察して嘘の真相を告げる呪師の人物もよいが,真相は,篠田が嫌がらせで自殺をしたというのがなんともいえない「いやー」な読後感を残している。★4。
〇 人喰い雪まつり ★★★☆☆
● 被害者:前田
● 犯人:なし。前田は自殺
● ポイント
運動員の前田を逮捕するが,あらかじめスパイだという噂を流し,拷問をせずに釈放してスパイであると仲間に疑わせようとした。前田は,そのために自殺した。自殺した際の凶器を,娘の紀子が処分してしまったために,他殺に見えた。
● 感想
これもかなりのイヤミス。紀子の視点で描かれているのがなんとも言えない。
〇 人喰い博覧会
● 被害者 宮口(元特高の刑事)
被害者 霜田通夫
被害者 遠藤美子
● 犯人 なし
宮口は心臓マヒ。霜田は自殺。遠藤も自殺
● ポイント
昭和12年の事件と現代の事件が描かれる。昭和12年の事件は,心臓マヒで死んだ宮口を放送塔から落としたのはなぜかという謎が描かれる。
真相は,椹秀助が,宮口が放送塔から落下したと嘘を言い,放送塔に,宮口の荷物を持ち込んで,実際に落下したと思わせたというもの。動機は,転向座談会に参加し,心にもない転向をさせられた友人,浅葱宗一郎の気持ちを知らせるため。嘘をついた理由は,別の場所に監禁されていた宮口が,本当に放送塔に監禁されていたと,霜田に誤解させるため。霜田は誤解して自殺した。
人喰い博覧会以外の短編は,椹秀介の話をYという小説家が小説にしたという設定。「人喰い倉」以外は,作中でも完全なフィクションという設定である。椹は,人喰い博覧会の事件で現実に関わった人物を使ってフィクションの小説を作っていた。
現代に戻って,遠藤美子の自殺について椹と呪師霊太郎の孫が捜査をする。現実世界の藤子義三は,自分の商売のために,娘婿の浅葱宋一郎を利用していた。椹は,藤子義三を銃で撃とうとしたが,椹には殺人はできなかった。椹は小説の中で,藤子を殺す者がいれば手を貸すという意思を示し,宮口と霜田を殺し,浅葱宋一郎の死を悼み,弥生を悪女にしたてあげていた。椹は,遠藤美子が自殺ではなく婚約者に自殺に見せかけて殺されたと考えていたが,実際は単なる自殺だったというオチ
● 感想
これまでの短編が椹の話をYという小説家が小説にしていたという設定とし,椹が実際にした人喰い博覧会の事件(宮口の死体遺棄など)で心に残っている思いを小説の中で描いていたという設定。短編集を通じた仕掛けを描いた小説のはしりのような存在である。
プロットは面白いが,真相にはそれほどサプライズはない。よくできた小説であると思うが,驚愕の真相とは思えなかった。★3で。
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著者の名前だけ見てあらすじ読まずに買ったけど、私のなじみ深い町小樽、しかもばあちゃんがよく話していたころの時代のミステリ。実際見たわけじゃないのにああそうだよなーと納得できるような描写ばかり。
まさか終章があんなふうになってるなんて思わなかった。第一章の「人喰い船」で引っかかっていた部分がああいう形で消化されるなんて。
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2次大戦前の北海道。放浪中の主人公と探偵役の青年(探偵ではない)が船で出会う→成り行きでご一緒中、次々殺人事件に遭遇。6編収録されたうち、最後の1編で前提がひっくり返る中程の名作。
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個人的には好きな部類。作中作に込めた思いとか言われてもわからんし、時代設定すれば多少の事は書いても問題ないでしょ的な発想も好きではないけど、書きたかったストーリーはわかる。
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6つの短編が収録された連作短編集。
どれも悪くはないミステリではあるが、やはり総じて見ると良いところは多数あるものの、少し物足りないと思わざるを得ない。
だが、この昭和の雰囲気であったり、最後に老境の椹や呪師の姿を描き、二人の人生も描いている点はとても良い。
短編(中編?)の中で面白かったのをいくつか。
『人喰い船』
事件自体は単純ではあるが、「なぜ死体が服を着脱したのか」という謎に対する答えが見事。
『人喰い博覧会』
連作としての仕掛けはあまり驚きには値しないが、「実は宮口は落ちていない」というのは驚いた。
心臓マヒで死んだ宮口を放送塔から落とさなければならなかった理由も納得。
まだ自分に合うかどうかがイマイチ分からんな...
とりあえずもう少し山田正紀の作品を読んでみよう。
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うちの祖父母が生まれた昭和のはじめの北海道が舞台。
じいちゃんが生まれた頃の日本ってこんな感じなのかぁと思いながら読んでました。
…北海道しか出てこんけど
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小説の題名が衝撃的なので読んでみた。「人喰い・・・」ってなんだ、時代背景が昭和初期であること、そして事件の現場が北海道小樽という現在においては過疎の町であること、なんだか横溝正史っぽい匂いがする。どれだけ人が喰われるのか熊に食われるのかと期待したが、そんな話ではない、人喰いってこの時代の比喩で使われてるだけらしい。多少がっかりしたがそれなりに面白い、最後には現在に話を戻し当時の謎を・・・星3つ半
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戦前の北海道を舞台にした連作ミステリー…と思いきや最後の短編ですべてがひっくり返され青春ミステリーへと変貌する。しかし、青春ミステリーとするにはいささか老成すぎて、にんともかんとも。ぼくの感覚が青臭いだけなのか。
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日本に帰ったとき本屋さんを覗いて、ついつい帯の言葉につられて買っちゃったけど、なーーーんだかなぁ拍子抜けした。
何が驚愕の真実なんだか。。。。
昭和初期の設定は横溝っぽくて好きだし、赤の活動家ってのも昭和っぽくって面白いと思ったけど、なーんか中途半端な感じって、最後はすってんころり転んだよ。
悪い意味ハメられたーー!
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第二次世界大戦直前のO市(小樽市)を舞台にした、共産主義者の主人公と探偵役によるミステリ短編集。
と思わせておいて、前半の話は主人公の状況を基にした。作中作だった話。
ちょっと思ってた結末とは違うところに連れて行かれた感じが良い。
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ホラーとかサスペンス的なものを期待していたけれど、その意味で期待外れだった。
帯にも全てを覆す驚愕の真実とあるけれど、驚愕するほどのものではなかったし、覆すと言えるのか分からないし、と、読む前の想定からかけ離れ過ぎてて残念。
お話としてみても、ミステリの読み方が違うのかもしれたいけれど、あくまで普通という印象しか受けなかった。
150921
Posted by ブクログ
昭和初期を舞台にした不可能犯罪連作短編集。
横溝正史的匂いがしますわな。
連作短篇を読むときのコツとして、できるだけ一気読みした方が印象深くなるのは、本作でも成り立ちますね。
山田の推理小説に特徴的な部分がこの作品にも出ていますので、作品的に合うかどうかは他の作品から判断できるんじゃないかな。
メフィスト賞の作品が好きな人は、この作品も好きになる確率は高そうですが。
Posted by ブクログ
どこかの書評かPOPかでやけに煽っていたので(驚愕の最終章とか)読んでみました。ちょっと変な感じの連作短篇集。それなりに楽しめましたが、どうなのだろう?戦前の良い雰囲気を漂わせつつ、もっと最終章は色々とやりようがあったのでは。ちょっと物足りない一冊。その雰囲気が逆に良いと言われれば、それはそれで合意してしまう。
Posted by ブクログ
日中戦争の引き金となる盧溝橋事件の起きた頃を時代背景としているので現代とはかけ離れた時間の流れの中での人と事件を感じる。
思想犯と特高が軸に展開するあたりも現代からのワープ感覚たっぷり。
Posted by ブクログ
短編5編とそれを束ねる最終章であり、
短編自体登場人物も限られ、謎解きもあっさり気味で
最終章まで含め全体を推理小説として読んでしまうと
う~ん・・・という見方もできるかもしれないけど。
あえて言えば、これは全体を通して物語の姿を借りた
ある一人の人間が抱え続けた
消えきらない恨みからの解放と、
秘密に対する贖罪を描いた青春小説だ!
Posted by ブクログ
ミステリー小説で読みたい本としてリストアップしていた作品。1ヶ月ほど前に購入。
帯には「最後の一章で明かされる前5編全てを覆す驚愕の真実」「連作の最後の章に待つ大仕掛けにあなたは必ず驚愕する」とあおる文句が書いてある。
期待して読んだのだが他の小説と同時並行して読んでいたので断片的になってしまって最後の章のどんでん返し?がちょっとわかりにくくなってしまった。この手の小説は一気に読むに限る。
1988年の作品で、実際の舞台も昭和初期、題名が「人喰いの」というのもちょっと古さを感じる。