山田正紀のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本書のモチーフとなったのは『銀河鉄道の夜』のですが、もう一つ〈謎〉があります。
それは晩年、賢治は病気だったにもかかわらず、訪ねてきた人の相談にのったあと、体調が急変し亡くなった、というあの場面の〈謎〉です。
たずねたきたのは誰だったのか?なぜ賢治は病をおしてでも会おうとしたのか?そのあとなぜ、急に体調が悪くなったのか…?
もちろん単純に、賢治の優しさゆえ、無理して相談にのり、体調を崩したと考えるのが普通でしょう。
しかし、想像力を膨らませればミステリーにつながる場面といえなくもありません。
本書はSFや近未来のディストピアとからめて構成されており、そんな読み方もできるのかと発見も多い -
Posted by ブクログ
ネタバレ導入部分の三十数ページが一番ワクワクしたなというのが率直な感想。
「査察で訪れた北朝鮮の核施設で、使用済み核燃料プール内を謎の巨大生物が泳いでいるのを目撃する!」、ここまで読んで「この後はどうなるのだろう?」と気持ちも盛り上がったのだが、その後は史実も絡めたハードボイルドな内容ではあるのだが、設定が明らかになるほど話がこぢんまりとしていく感じでイマイチ盛り上がらない。
中盤までは異人とヒトの差異を(文中で彼らが感じているほどに)感じなかったが、それ以降は『ヒトではない』ことを実感する場面が増える。ただ、刺青獣の能力を除けば、怪物というよりは単純にサイコパス(= 他者への共感性が完全に欠如し -
購入済み
同じ作家の作品である「神狩り」を読み面白かったので、「弥勒戦争」と言う書名から購入。残念ながら「神狩り」にはほど遠い作品と言わざるえません。でも、☆一つや二つではありません。
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Posted by ブクログ
山田正紀『山田正紀・超絶ミステリコレクション#6 SAKURA 六方面喪失課』徳間文庫。
初文庫化の警察小説。プロローグに登場する得体の知れない『SAKURA』とは何者なのか。奇妙なプロットの小説は1話ずつで訳ありのダメ刑事1名を紹介する形式で進行する。刑事が事件を解決すると決まってポケベルが鳴る。
一体、何がどうなっていて、どんな結末を迎えるのか、全く先の読めない展開が続く。
が、しかし……
余りにも拍子抜けした結末に開いた口が塞がらなかった。途中までは面白いのに、失速どころか墜落。期待は大きく裏切られた。
警察各署のボンクラのダメ刑事7名が綾瀬署の窓際部署失踪課に集められる。陰で -
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ネタバレ「カムパネルラ、僕たち一緒に行かうねえ」。銀河鉄道にふたり一緒に乗ればいずれどちらかが降りなくてはならなくなるから、『銀河鉄道の夜』ではジョバンニが先に列車を降りたけれど、ふたりは一緒にどこまでも行けたのでは。そんなラストでした。
メディア管理庁の言論統制と物語を使った啓蒙、物語の世界を仮想現実で創り出して人をアクセスさせて矯正・洗脳という派手なのはまだ無いだけで、これに近い「テキストを望んだ通りに“しか”読ませない」は既にあると思います。必ずしも作者の望んだ通りではないところもよくある…。
ジョバンニの味方は校倉さんだけ…鳥採りの彼も、この世界で必要な概念なんだろな。カムパネルラが概念だった -
Posted by ブクログ
ネタバレ● 感想
なんとも山田正紀らしいミステリ。聖バード病院を舞台に、いくつもの謎が提示され、最後は、一応、それらについて合理的な説明がされる。バカミスっぽさ、エロチックさも含まれるのが、山田正紀らしい。
読者に提示される謎としては、金庫の中に閉じ込められた、記憶喪失の女が誰なのかという謎がある。この謎は、このミステリ全体を通じ、病院内での謎の焼死事件と死体の紛失と相まって、「新枝彌弥子」なのか、「藤井葉月」なのか。二人のいずれかだと絞られる。これが読者を引き付ける謎
この謎で読者を引っ張りつつ、メインの謎としては、「女は天使なのか悪魔なのか。」という命題を突き付ける。これは物語の中では、狭更