山田正紀のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ格好いい文章を書く人だな。50年前の作品とは到底思えないし、24歳でデビュー作というのが怖い。SFを全然読んでいないためか、まったく新しいジャンルと出会えたなという感動がある。強いていうなら『虐殺器官』がギリギリかすってるかな、全く違うかなという感じ。
我々の使用している論理記号が5つ「そして」「ならば」「あるいは」「でない」「必然である」ってのは腑に落ちませんが定説なんですかね?今作で登場する「古代文字」の論理記号は2つのみ。2つで言語を成立させるのは人間ではありえないと。ここの説明がいちいち格好いいんですよ。ワクワクします。
神との対決はここからだ!ってところで終わるので暫定評価です -
Posted by ブクログ
[人喰い船]★★☆
下着姿の死体が発見されたが、その後のある瞬間背広を着ていたという目撃者がいるのはなぜか?というのが最大の謎なんだろうけど…。
被害者を箱詰めにして船に乗せ、犯人は被害者になりすまして乗船し、殺害後は3等船室の乗客に紛れ込んでいた。死体が背広を着ていたのは、犯人が仕立屋であったために、死体が着ていたはずの衣服が体にあっていなかったと言われるのが許せなかったため、寸法を合わそうとしていたから。論理的には一応無理なく説明がつくけど、それほど驚きはない。見せ方の問題だけかもしれないけど。
一方で、呪師霊太郎にトリックよりは人間の心理に興味があると言わせているわりには、安芸子は「わたくしはべつにどなたでもかまいませんの。その時点でわたくしをもっとも欲しがっている殿方でしたらどなたでも…」と言うだけで、犯人も「わしが許せなかったのは、藤子があの女を手に入れたあと、わしを出入り差し止めにしたことだ。わしの仕立てた洋服よりも、あんな女のほうを選んだことが、断じて許せなかったのだ」と言うだけだから、それほど驚くこともなかった。とか言いながらこの話読んでいて一駅乗り過ごしたわけだから、あんまりえらそうなこと言えないけど。
[人喰いバス]★★☆
バスの中から酔っぱらい以外の人が全て消えたっていうから、どんな凄いことが起こったんだろうって期待したのに…。しかも計画的な殺人ですらないっていうのがなあ。警察に犯人を捕まえさせない探偵ってことで、わざとねらってハズしてるのかもしれないけど、真相が判ってビックリしないミステリーはやっぱりダメでしょう。2つ続けて変装というか偽装ネタだったのもマイナス。
[人喰い谷]★★☆
-ひとりの女に、ふたりの男だ。なにをどうあがいても無理というものだ!
-なによりも弥生さんの気持ちを大切にするべきじゃないのか。弥生さんには何の罪もないのだから。
うーん、また途中でネタがわかってしまった。この会話をホモと見るのはそれほど難しいことじゃない。ランプがなくなった理由が<邪恋谷>に二人を誘い込む罠のためだったというのは気がつかなかったけど、それはどちらかというと小さい問題だよなー。
[人喰い倉]★★☆
殺人を自殺に見せるために密室が作られるのではなくて、ただの自殺を密室だと思わせるための論理を構築するという話の流れには、作者のひねくれ方が伺えるけど、まさしく他愛もない密室なのがね。人間って、手首を切ったあとに何かを飲み込むことができるのか?っていうのも疑問。
本格推理としての完成度を高めるというよりは、人情話になってきたな。
[人喰い雪まつり]★★★
もうトリックと呼べるものはないから、推理小説とは言えないと思うけど、雪女が死んだ夫を氷の橇に乗せて生き返らせるという昔話(ホントにこういうバリエーションがあるのかどうかはわからん)に絡めた悲しい結末はなかなかいい。
[人喰い博覧会]★★★
出たメタ。そうきたかー。「宝石泥棒Ⅱ」と同じですね。なんちゃって作戦。こうなってくると、ここまではわざしょぼい話を書いてたんじゃないかとさえ思うよな。犯人がことごとく警察に捕まってない理由もこれでわかった。
これまでの事件の登場人物が次々と登場してくるに従って、最後の大オチに対する期待が高まっていったけど…。なんだよ、メタなだけじゃないかよ。霊太郎が、実際に起こった事件と雑誌に連載されていた話との間の違和感から、現在の秀助の心境を推理するところとか、もっと突っ込んで欲しかった。 -
Posted by ブクログ
本書のモチーフとなったのは『銀河鉄道の夜』のですが、もう一つ〈謎〉があります。
それは晩年、賢治は病気だったにもかかわらず、訪ねてきた人の相談にのったあと、体調が急変し亡くなった、というあの場面の〈謎〉です。
たずねたきたのは誰だったのか?なぜ賢治は病をおしてでも会おうとしたのか?そのあとなぜ、急に体調が悪くなったのか…?
もちろん単純に、賢治の優しさゆえ、無理して相談にのり、体調を崩したと考えるのが普通でしょう。
しかし、想像力を膨らませればミステリーにつながる場面といえなくもありません。
本書はSFや近未来のディストピアとからめて構成されており、そんな読み方もできるのかと発見も多いです。
もう一度『銀河鉄道の夜』をよんでみたいと思いました。
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Posted by ブクログ
ネタバレ導入部分の三十数ページが一番ワクワクしたなというのが率直な感想。
「査察で訪れた北朝鮮の核施設で、使用済み核燃料プール内を謎の巨大生物が泳いでいるのを目撃する!」、ここまで読んで「この後はどうなるのだろう?」と気持ちも盛り上がったのだが、その後は史実も絡めたハードボイルドな内容ではあるのだが、設定が明らかになるほど話がこぢんまりとしていく感じでイマイチ盛り上がらない。
中盤までは異人とヒトの差異を(文中で彼らが感じているほどに)感じなかったが、それ以降は『ヒトではない』ことを実感する場面が増える。ただ、刺青獣の能力を除けば、怪物というよりは単純にサイコパス(= 他者への共感性が完全に欠如しているだけ)のような感じもした。
物語が進むごとに異人の神秘性のようなものが失われていく。台湾の奥地で殺し合っているだけの部族から出たナニかだと分かったときには存在している規模があまりに小さく、ガッカリにも近い感情になった。
『死命』も『死態系』も明らかになっていくに従って陳腐な感じになる。生命や生態系の対になるという壮大な感じがしない。多様で豊かな生に対して貧しく寂しい死という対比を意識しているなら良いのだが、下巻でどうなることか。
物語の中盤までは「どんな場所だろうか」と思っていた結晶林も神秘性も大した広さもないただの森。なんだか少し拍子抜けしてしまう。「そんな大層な名前をつけなきゃいいのに」とまで思ってしまった。
戦争獣『蚩尤』が誕生した際の描写は画面の裏側が見えてしまったように感じて落ち着かない思いをした。この場面は戦争獣の様子や生態を描いているのだが、「現代SFの巨大生物の動きをガワだけ変えたもの(モーションやモデルは同じでテクスチャを変えただけの感じ)」に見えて仕方がなかった。
本来は、それまで全く不明だった戦争獣の姿が垣間見える心踊る場面のはずなのだが、悪い意味で既視感のある記述に楽しむことができなかった。また、生物の描写に既視感を感じるのはこれまで読んだSF作品、ファンタジー作品を通して初めての経験ということもあって、「つまらないな」と感じるだけでなく、盗作部分を見つけてしまったような非常に居心地の悪い気持ちにもなった。
良かったなと印象に残っているのは、175ページのジェン・ドゥーが歌い始める場面で、夢の中にいるような艶かしさがよく表現されている。それまでの異人は特別惹かれる印象は受けなかったが、この場面は周囲の客と同じように夢心地で目を奪われていく過程がよくわかった。
この場面前後から異人の非人間性が前面に表れ始めるのだが、その特徴の一つである「異常に目を引く」様子が良く現れている。
余談だが、華麗島には著者の注か、「今は台湾と呼ばれているが・・」のような劇中の人物に注を付けさせるようにした方が良かったのではないかと思った。