山田正紀のレビュー一覧
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ネタバレ〇 総合評価
密室状態の山道から13人のマラソンランナーが消失するというのがメイントリックだが,スタッフが参加していて,スタッフに戻る形でマラソンの参加者からはいなくなるというトリック。トリックそのものはしょぼいのだが,山菜中毒で1人が死んだという事実を,13人が消失したという事実で隠そうという「木の葉を森に隠す」理論はなかなか面白い。
とはいえ,「田舎の村おこし」という設定で,田舎の人が窮地で考えた苦肉の策という設定だが,やはり無理がある。
その後,とにかく(町で買ってきた)山菜を食べて,食中毒になったという事実を隠すために,栗谷一揆騒動諸控という古文書の記載に見立てて木に死体を突き刺すという「岡村」という村役場の人間の行動はバカミスっぽくすら思える。
真相は入り組んでいる。結局,戸塚という人物は,山菜を食べて食中毒になったのではなく,日向淑子という人物の頼みで医者の木島に毒殺されたっぽい終わり方をする。そうすると,岡村の行動はバカミスを通り越して哀れとまで思えてしまう。
栗谷一揆騒動諸控が30年前に作成された偽物であるという真相や,リゾート開発に絡めた展開,栗谷村をリゾートに組み込んだ理由が環境汚染だというものまで含む,詰め込み過ぎの内容。
トリックやプロットは,使い古されたものではあるものの,それなりに面白いものだが,見せ方がいまいち。さすが山田正紀というか,それなりに読ませるデキではあるが,もっと面白く仕上げられたと思える。★3程度のデキか。
〇 サプライズ
13人のランナーが消失したトリックはしょぼい。岡村の告白,日向淑子が光井の愛人だったという展開,栗谷一揆騒動諸控が偽物だったというオチなど,驚かそうという要素は多いが,だらだらと真相が描かれるので,そこまで驚けない。★3
〇 熱中度
やや冗長に感じる。そこまで熱中できない。★2
〇 インパクト ★★★★☆
13人が消失する謎,栗谷一揆騒動諸控に見立てて木に死体を刺したり,トラクターが飛んでくるというトンデモ推理があったり,栗谷一揆騒動諸控が偽物だったりと,大まかな流れだけ見るとインパクトはある。真相はショボいんだけど…。★4
〇 キャラクター ★★★☆☆
久保寺健一と貢新造親子,日向淑子,風水林太郎など,それなりにキャラクターの魅力はある。新造当たりに真相を語らせても面白かったと思うのだが…。★3
〇 読後感 ★★☆☆☆
久保寺一家が栗谷村を去り,栗谷村は一丸となってリゾート計画に反対するという終わり方。その後を想像すると,久保寺一家もバブル崩壊に伴って悲惨なことになりそうだし,リゾート計画への反対も栗谷一揆騒動諸控が偽物と暴かれて崩れそう。そう見ると読後感はあまりよくない。★2
〇 希少価値 ★★☆☆☆
新刊はなさそうだが古本は多い。人気作家だし,手に入らなくはなさそう。★2
〇 メモ
〇 久保寺又三郎
鋭い感性を持つ少年
〇 風水林太郎
風景心理学を提唱している。
〇 久保寺健一
東京から栗谷村に移住してきた家族の父
〇 久保寺恭子
東京から栗谷村に移住してきた家族の母
〇 貢新造
久保寺恭子の父。久保寺夫妻と一緒に栗谷村に移住してきた。もと警察官
〇 岡村良雄
村役場の若者。久保寺健一の相談を受けていた。
〇 日向淑子
鷹巣寺の元住職の娘
〇 小野田
小学校の教師
〇 佐木
広告代理店勤務。村おこしの企画をする。
〇 木島
医者
〇 松永
助役
〇 光井陽二郎
ゼッケン13→18に書き換えられた名簿の人物の名前
〇 山崎
警察官
〇 岸辺
木に刺さった死体の事件を担当した刑事
〇 戸塚道夫
木に刺さった形で見つかった死体の身元
〇 オープニング
又三郎と風水林太郎の出会い。轍の後がないトラクターの存在
〇 プロローグ
新造が,日向淑子に,あなたの父親が犯人ではないかと聞くシーン
〇 栗谷村に,久保寺一家がやってくる。岡村から,村おこしマラソン大会のことを聞く。久保寺健一は,マラソン大会に参加する。
〇 久保寺健一は,ゼッケン13番の男が嘔吐しているのを見る。健一は医者の木島を連れてくるが,嘔吐していた男はいなくなる。
〇 ゼッケン13番の男はマラソンに参加していなかったと言われ,久保寺健一は調査を始める。警察官の山崎の訪問を受け,マラソン大会では13人もの人物がいなくなったとの話を聞く。マラソン大会の山道は,いわば密室状態だったという。
〇 久保寺健一は,調査の中で,鷹巣寺の日向淑子から,「栗谷一揆騒動諸控」という古文書の話を聞く。また,消えた13人の人物が鷹巣寺にいないことを確認する。
〇 木に刺さった形で死体が発見される。これは,栗谷一揆騒動諸控の内容と一致していた。
〇 久保寺健一は,小野田の持っている同人誌で,戸塚道夫の名前を発見する。
〇 久保寺健一は,小野田が日向淑子に文句を言っている場面を見る。また,久保寺健一は,戸塚から小野田が30万円を受領したという内容の領収書を発見する。
〇 久保寺健一は,山崎にこれまでのことを伝えに行くが,山崎は殴られていた。その場で小野田を発見する。戸塚の死体は消えていた。小野田は逃走する。
〇 又三郎は,偶然,山崎に出会う。公民館の水車小屋で待つと久保寺健一に告げるように言う。
〇 戸塚道夫は,土地ブローカーのチンピラだった。そのバックには三井陽二郎という名前があり,こちらは大物だった。
〇 小野寺を探すための山狩りを行う。久保寺健一も参加する。
〇 新造は,光井陽二郎と佐木が話しているシーンを見る。
〇 水車小屋で火事が起こる。岡村と小野田の死体が発見される。
〇 岸辺は,光井陽二郎と面会する。リゾート計画に栗谷村も取り込まれていることになっていることを確認する。戸塚は,切り崩しのために送り込まれた尖兵だった。
〇 栗谷村で収集があり,リゾート計画について告げられる。村長と助役は,村人を奮い立たせ,佐木が光井陽二郎のスパイであることを伝える。
〇 久保寺健一は,マラソン大会に参加したとき,眼鏡を取っていたことを思い出す。そして,そのことから,消えた12人がマラソン大会のスタッフ=村人だったことに気付く。
〇 栗谷村は,山菜も取れなくなっており,町から山菜を買ってきて山菜ソバを作っていた。そして,佐木は賞味期限が切れた山菜を買ってきていた。戸塚は賞味期限が切れた山菜を食べ,食中毒になって死ぬ。岡村はその死体を隠そうとした。
〇 栗谷村で,30年前にダム建設に反対する運動があった。そのときに光井陽二郎が反対運動に参加していた。
〇 佐木がトラクターの下敷きになって死亡する(オープニングのシーン)。水車小屋で死んでいた死体は,戸塚と小野田の死体だった。
〇 30年前,光井陽二郎と一緒に活動していた人間の名に,日向淑子の父の名があった。もう一人は医者の木島。
〇 風水林太郎が登場。栗谷一揆騒動諸控という古文書はなかったということが分かったとつぶやく。
〇 岡村と久保寺健一が会い,岡村が犯行の告白。佐木は岡村ば撲殺し,村長達が,トラクターを木馬という巨大なそりで運んだ。岡村は光井陽二郎を殺害しようとして捕まる。
〇 エピローグ
栗谷一揆騒動諸控を作ったのは日向淑子の父だった。小野田は栗谷一揆騒動諸控が偽物だったと岡村に告げたために殺害された。
新造の推理。日向淑子は戸塚に脅されていた。淑子は木島に依頼し,戸塚を毒殺する。しかし,岡村が食中毒だと勘違いし,この騒動が起こった。
〇 隣り村のゴルフ場造成のために,多量の除草剤が撒かれ,川に流れ込み,森を病ませていた。そのため,栗谷村をリゾート計画に組み込んでいた。
〇 久保寺一家は,栗谷村を去る。 -
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ネタバレ善の象徴であるはずの神を「悪」と見なして、主人公たちが神と戦う姿を描くという発想の斬新さには感心するが、主人公たちは本当に神と戦っているのだろうか、いったい何と戦っているのだろうという疑問を強く持った。真偽不明の事柄を狂信している、ちょっと頭のいかれた人たちではないだろうか。
曰く、「古代文字を解読できた者は、世界を手中に収めることができる」「古代文字は神の世界のものである」「神はわれわれに悪意を持っている」「神の干渉があるかぎり、われわれが自由になれることもないし、真の意味での愛を手に入れることもない」「神さえ、その上にいなければ、人間はもっと善良にももっと幸福にもなれるんだ」等々。
主人公の島津は情報工学の専門家で言語学のエキスパートであることから、花崗岩石室に描かれた古代文字らしきものの調査に立ち会い、連鎖的に事件に巻き込まれ、「神狩り」に参加するようになる。諜報関係の人間、霊感能者といった非日常的な人物ばかりが登場し、怒涛の展開をみせる。
「神狩り」とはいうものの、神は登場しないし、神と戦う場面もない(芳村老人が霊能者ジャクスンの立会いのもとに面会したことになっているが)。
「神狩り」とは、「神の存在を証明して、その正体を人類の前に暴き立てること」らしい。神の実在を証明するために、古代文字の解読が続けられる。実際に「神狩り」と称してやっているのは、古代文字の解読だけであり、それを手に入れようとする諜報関係者や解読を阻止しようとする霊感能者との間のいざこざが物語の中心を占めている。
ラストでも古代文字の解読は終わっておらず、古代文字の解読を阻止しようとするジャクスンとの対決で終わっている。物語にはまだ続きがあることを予感させる終わり方である。 -
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SF界隈での著名人・新人引っくるめてのアンソロジー集です。SFにはあまり馴染みがなく、フィリップ・K・ディックは好きですがそれもアニメ『PSYCHO-PASS』の影響で最初からというわけではなかったので、慣れる、と言うか、映画は好きなんですが小説はなかなか食指が伸びず、アンソロジーならまだ読めるかな?と言う気持ちで購入しました。
冲方丁さんは、『マルドゥック・スクランブル』を読んでいましたし、新井素子さんは名前くらいは聞いたことがあるなあ、『グリーン・レクイエム』は読んだっけな、夢枕獏さんは『陰陽師』だなあ、とか。
個人的に好きなのは宮部みゆきさんの作品。ロボットとの哀愁漂う感じが好き。最後ちょっと泣きそうになってしまった。
これはあの映画みたいな感じだなあ、とか、さらさら読めたので、入門編には良いかな、と言う感じ。 -
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ネタバレこの現実を不動のものと考えるのは、個人的な幻想、あるいは共同幻想によって構築された、巨大な錯覚にすぎない(P304参照)進化を敵と見なす人類はそれぞれのレベルに応じた無数の現実を知らない、しかし進化した生物(あえて人類とは呼ばない)は他現実へと移動が可能になる。その超絶な能力者の出現がなぜ人類を滅亡に追いやるのか・・・ちょっと難解かも再読必須(笑
『最後の敵』山田正紀著は第3回日本SF大賞受賞、同賞受賞作品以下完読済み
第2回(1981年) - 井上ひさし 『吉里吉里人』
第18回(1997年) - 宮部みゆき 『蒲生邸事件』
第19回(1998年) - 瀬名秀明 『BRAIN VALLEY(上・下)』
第23回(2002年) - 古川日出男『アラビアの夜の種族』
第29回(2008年) - 貴志祐介 『新世界より』 -
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かなり期待して読んだのだが。
・語り手の人物設定。
・語り手の大真面目な語り方。
・登場人物たちのぺらぺらした行動。
・≪古代文字≫の扱いの中途半端さ。
・そもそも≪神≫の上滑り感。
・≪神≫の実体に迫るのではなく、ただその「作用」しか見えない。
作用をあれこれ勝手に解釈しているようにも。
・つまりは、みんなのシリアスな顔が滑稽に見える。
・結局は≪霊≫という概念に頼ってしまう。
・時代の変遷を差し引いて考えても、古い。
・学生運動世代にはぴんとくるのか? 押井守絶賛というし。
ああ。合わなかったということか。
一番苦手に感じたのは稚拙な文体。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ面白かった、面白くなかったで言えばべらぼうに面白かった。しかし、期待させていた路線が(ミスリード意図かもしれないけど)雲散霧消したり、ロジックが逆転したりする所があったりとで兎に角混乱した。ラスト付近の壮大すぎるオチには少々理解がおっつかない所があったものの、まぁなんとか飲み込めた。
しかし本作があえて山田風太郎忍法帖、あるいはそれを原作とする漫画作品を下敷きとしたことについては少々疑問。まぁ、死んだ20忍のことをものすごく湿っぽく扱ってる部分については『バジリスク』の系譜ともいえるかもしれませんが…
面白かった部分については、恐らく主軸であろう「忍法合戦」のくだりで、忍法帖シリーズを愛読している私でも「忍法」と呼ぶことが憚られるような荒唐無稽な忍法(他のはともかく、「魔獣召喚」が本当に魔獣召喚なのには噴いた)が相手なものの、最終章で数でも数えるかのようにバタバタ畳みかけるように死んでいく様はまさしく"忍法帖"的な展開であったかと。忍法や忍者のネーミング(「魔獣召喚」以外)、キャラ付けもそれっぽくて良いですね。
あのラストは、上巻から筆を尽くして語られていたように「強大なエネルギーのぶつかりあい」からの「その時不思議なことが起こった」的な現象で、ある意味ベタともいえるものですが、「瞳術同士の対決」「神との闘い(神をも倒す手段)」、あとついでに「徳川家へのカウンター」といったあたりにも決着をつけるもんだったのでしょうなぁ。 -
Posted by ブクログ
いかにも山風忍法帖的な開幕から、何故かニンジャスレイヤーめいたコトダマ空間が展開され、果ては石川賢めいたメカ要素まで出てくるのだからもう。
山風忍法帖でもSF、ファンタジーじみた忍法は出てたけど基本スルーして、医学知識で語れそうなやつだけ解説してますが、本作山田正紀忍法帖では全く逆にSF的解説やってるせいで作品の印象、ジャンルすら全く変ってしまいそうな勢いになってるには面白いなぁ。
しかし、この上巻で描かれるストーリーとしても充分面白かっただけに、次巻への引きとして、唐突気味にそれらが打ち切られてしまったのが残念。敵の目的が、それまで目指していたものより優先順位の高いものに推移した、という所ではあるのでしょうが…