【感想・ネタバレ】カムパネルラのレビュー

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Posted by ブクログ

レビューを拝見して、知った本です。ありがとうございます。
こういう小説を、ディストピア小説と呼ぶのは、他の方のレビューで初めて知りました。

SF世界になんとか入りこむことはできたのですが、正直、意味がよくわからなかったです。面白くなかったわけではありません。

16歳の主人公のぼくの母親は、宮澤賢治の研究者で、メディ研に、追われています。
「死んだら遺骨を花巻の豊沢川に撒いてほしい」と言い残して亡くなります。
ぼくは、花巻へと向かいますが、途中でタイムスリップして銀河鉄道に乗っていて、髪の毛が黄色いことから「ジョバンニ」と呼ばれます。
ぼくはその日が昭和8年9月19日火曜日で、9月21日の賢治の命日の2日前であることに気が付き、賢治が死ななくてすむように歴史を変えようと思い、宮澤賢治邸へ向かいますが、賢治はすでに亡くなっていて、「賢治の6回忌をやるところだ」と聞き驚きます。
そして、賢治より先に亡くなったはずの妹のトシが生きていて、さらに驚きます。
そして、そこでトシの娘の宮澤さそりに出会います。

また、ぼくの最初にいた世界はおそらく近未来で、メディア管理庁が、少年少女に10歳で『ピノキオの冒険』を16歳で『銀河鉄道の夜』をシステム体験するのを義務付けている世界です。
そして『銀河鉄道の夜』を何度も彼らの都合のよいように改稿させています。
そのための駒として、ぼくはジョバンニと呼ばれ、事件の渦中に巻き込まれていきます。

宮澤賢治は、私も好きな作家であり、好きな詩人だと思っていたのですが、私の家の本棚で積読率が高く、今さらながら『銀河鉄道の夜』さえもちゃんと読んでいないので、積読中の新版と旧版の(2冊もあるんです)新潮文庫の80ページの作品。これをまず読んで賢治が本当に書いた、真の『銀河鉄道の夜』を知りたいと思っています。

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2020年04月10日

Posted by ブクログ

タイムリープ物?パラレルワールド?
昭和の空気感の表現が凄かった。ラストシーンは好き。閉鎖したデジタル社会に挑むアナログ。

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2019年11月20日

Posted by ブクログ

⭐︎4.7
「カンパネルラとは何か」作者の山田氏から作中繰り返し、出される命題に、私は一番心打たれた。なぜかはわからないが、そうなのだ。だから、カンパネルラについて少し考えてみようと思う。
カンパネルラとは、賢治が修羅の道を歩まねばならなかった、思慕の相手の具現。あるいは、彼の一番の理解者である妹とし。
そんな人物などではない、観念としての「カンパネルラ」
未完成のものかたり故に、賢治の思索の轍を私たちは、今手にとって読むことができる。彼にとって臨終の間際まで手を入れたいものだったこのものかたりは、今の世の中にも響く何かを持っている。
宮澤賢治という作家は生涯をかけて読み続けていきたいと思える唯一無二の作家である。
嗚呼絵空事は、楽しい。

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2024年03月20日

Posted by ブクログ

初山田。途中まで実在した人物"宮沢賢治"とその著作『銀河鉄道の夜』がベースの歴史改変ものかとワクワクで読んでいたんだけど…なんて恐ろしい作品だったんだ、と仰天!?これは予想出来なかった…。

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2023年02月05日

Posted by ブクログ

「何度も改稿される『銀河鉄道の夜』の世界に僕は迷い込んだ」という文庫本の帯の文句が私の眼に飛び込んで来た。それだけで、私は購入を決めた。

山田正紀のSFによる宮沢賢治論のようなので、かなり難解になることは目に見えているのだけど、それもまた良し、48年に渡る賢治ファンとしては、山田正紀の「神狩り」を読んで44年、そんな簡単には負けないぞ!という気分だった。

賢治ファンならば知っていると思うが、『銀河鉄道の夜』は未完の作品である。しかも、第4次改稿まであり、3次から4次にかけて何故か大きな改稿がされている。謎はいくつもある。

(1)最も大切な場面のひとつ、ジョバンニが銀河鉄道に乗る場面の原稿が5枚も抜けている。
(2)物語の鍵を握ると思われる「天気輪の柱」の具体的な姿は、遂に明らかにされていない。
(3)3次稿において登場したブルカニロ博士も「黒い大きな帽子をかぶった青白い顔の痩せた大人」も、4次稿では何故かばっさりと削られた。
(4)4次稿において、カムパネルラのお父さんは「もう駄目です。落ちてから45分たちましたから」と言ったが、45分の根拠は何なのか?それと関連して、ジョバンニは何故かお母さんに「1時間半で帰ってくるよ」と告げている。それは何故か?
(5)物語とは関係ないが、賢治の亡くなる前日に見知らぬ人が来て肥料の相談を長々とした。これが病状が急変した原因と言われているが、何故賢治はその人に応対したのか?

今や決して決定説は出てこない、これらの謎に対して、山田正紀は、メディア庁に支配されているパラレルワールド軍国未来社会から賢治を考える、という「補助線」を引いて取り組んだ。のだと思う。それは成功したか?私はしていないと思う。補助線が一本だったならば、お見事!となるのだが、もう時空が行ったり来たりで、全然スッキリしなかった。明かさないけれども、瑕疵が幾つもある。でも、山田正紀がそのように「推理をする根拠」には共感する。面白かった。

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2019年03月31日

Posted by ブクログ

『銀河鉄道の夜』を読むより先に、999のアニメを楽しんじゃったり、詰め込み教育で「雨にも負けず」を無理くり暗唱させられたりしたので宮沢賢治の文学って素直に読んだことなかったなぁ

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2019年03月27日

Posted by ブクログ

「銀河鉄道の夜」をモチーフにしているが、ファンタジーとはちょっと違う。これ以上何か書くと、全てネタバレになりそうなので控える。
読み始め混乱すると思うが、読み終わったら、混乱した方が良かったと思った。
「どういうこと?!」と、混乱しながら読み進めることをお薦めします。

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2023年04月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「カムパネルラ、僕たち一緒に行かうねえ」。銀河鉄道にふたり一緒に乗ればいずれどちらかが降りなくてはならなくなるから、『銀河鉄道の夜』ではジョバンニが先に列車を降りたけれど、ふたりは一緒にどこまでも行けたのでは。そんなラストでした。
メディア管理庁の言論統制と物語を使った啓蒙、物語の世界を仮想現実で創り出して人をアクセスさせて矯正・洗脳という派手なのはまだ無いだけで、これに近い「テキストを望んだ通りに“しか”読ませない」は既にあると思います。必ずしも作者の望んだ通りではないところもよくある…。
ジョバンニの味方は校倉さんだけ…鳥採りの彼も、この世界で必要な概念なんだろな。カムパネルラが概念だったように。
「銀河鉄道の夜」は既読ですが「風の又三郎」は未読なので、又三郎がどんなキャラなのかがわからずこの作品の又三郎の好戦的さがいまいちピンときませんでした。宮沢賢治作品には「毒もみの好きな署長さん」とかあるので、美しさか弱さ儚さだけではないのもわかります。
永久物語運動体。物語が永遠に未完成ならばどんな読み方も出来るし、何度でも楽しめる。それで良いんじゃないかという狭い感想に辿り着きました。

偶然にも仮想現実ものがちょっと続きました。それもまた良き。

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2022年12月23日

Posted by ブクログ

銀河鉄道の夜をこじらせた小説、とでも言えばいいのかな。ともかく、どこに連れて行かれるか分からない展開にアップアップしながらも、何とか読み終えることができました。

この「どこに連れて行かれるか分からない」というのは、単に先の読めない展開、というわけではありません。自分の場合は中盤まで、物語の目的も、そもそもジャンルや世界観も曖昧なまま、読み進めていました。

まず出だしで管理社会を思わせる思想統制の組織が登場し、ディストピア系の作品かと思ったら、場面が変わり、昭和8年宮沢賢治が亡くなる2日前の岩手県花巻へ主人公が移動します。

じゃあ、時間改編のSFか、と思ったら、史実と違い賢治はすでに死亡し、逆に早世した賢治の妹が主人公を迎える。さらに主人公は「ジョバンニ」と呼ばれ、この世界にはカムパネムラや風の又三郎といった賢治作品の登場人物が実際に存在していることも示唆されます。

ということは、パラレルワールドや時空間が分岐した世界観か、と思いきや物語はさらに奇怪な方向へ舵を切り……、というふうに、展開が読めない以前に、そもそも物語の向かうべき方向すらも分からない展開が続きます。

それが明らかになってからの中盤以降の展開もまあスゴい……。SFというジャンルだからこそギリギリ通用する世界観。ここまで想像力(妄想力?)を働かせる著者にはある意味脱帽です。

とまあ、こう書くとふざけた小説なのか、と思われるかもしれませんが、話のテーマ自体はなかなかにシリアス。銀河鉄道の夜をめぐっての物語は、小説をどう読み解釈するかの問題を突きつけ、またその解釈が時によって、権力の都合のいいように操られることも示唆します。

銀河鉄道の夜は宮沢賢治が亡くなる直前まで改稿され、そして最終的には未定稿のまま世に発表されました。この小説の中でも触れられていますが、特に第三次改稿と第四次改稿とでは、内容に大きな修正が加えられています。その理由を推理する文学ミステリとでもいうべき側面もこの作品はあるのですが、著者の山田正紀さんはそれをさらに発展させ、SF的モチーフを加えることで、物語と思想が単純に結びつけられることの危険性までも、描いたように思います。

本や物語は著者から読者へ向けた一方的なテキストではない、という考え方があります。本や物語は読者がいて、その読者が何らかの解釈をすることで、意味を持つという考え方です。

銀河鉄道の夜は改稿の謎、そして未定稿のため説明されない様々な謎が物語の中に残っています。そしてそれは、今なお様々な感想や解釈を研究者はもちろん、一般の読者にも迫ります。銀河鉄道の夜の物語が人々を引きつけるのは、描写や文章の美しさのみならず、そうした謎を抱え、様々な読み方を無意識的に読者に提供しているからかもしれません。

そんな銀河鉄道の夜をモチーフに書かれたこの小説は、本や物語を好きなように解釈し、そして楽しむための自由をめぐる戦いの話でもあり、その自由を守るための話だったのかなと思います。

かなりクセのある作品だったとは思うのですが、本や物語愛に溢れた小説だったように自分は解釈しました。

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2020年01月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

メデイア管理庁による思想統制が行われる日本。現代らしい。近いうちに現実になっても驚かないような…
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」第3次稿を利用して、「みんなの幸いのため」なら自己犠牲を厭わない人間を育成しようとする。

「銀河鉄道の夜」が好きすぎるので、解釈違いだったらどうしよう…と思ってたけど、大丈夫だった。第4次稿、ひいては賢治自身も、自己犠牲を良しとしていたわけではないのだ。
天気輪の柱や「45分」の使い方が上手くてなるほど〜と思った。

半分くらいまでは頭の中が?だらけで、これは一体どこに着地するの?と思っていたけど、タイムスリップではなく仮想現実だということが分かってからはするすると読めた。
あらすじがどう、というよりも、あの世界に行けるとかすごい!行きたい!という感想…
シミュレーションに多くの少年少女が参加することで物語が変容していく可能性。だから、もしかしたらカムパネルラが死なない未来があるのかも、とわくわくしたり。
カムパネルラと会話することがなくて残念。

「風野又三郎」と、鉄道の位置関係なんかが分かったらもっと楽しめるかも。

最後はちょっともの哀しい…。「ぼく」が母にしたことはそんなにも重い罪だろうか。

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2019年10月17日

Posted by ブクログ

なるほど。友人が言っていた「曲がり角をしっかり曲がる」という言葉、しっくりくる。

宮沢賢治と銀河鉄道の夜を話の軸に置いたSFなわけだが、話の構成と世界観はとても好きだし、銀河鉄道の夜の使い方がすごい。

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2019年06月01日

Posted by ブクログ

綺麗な本だなぁと手に取ってみました。
まるっと宮沢賢治オマージュというかリスペクトというかそんな感じの本だった。

教育って洗脳だなぁとは思いますがそもそも国というのはその地域に暮らす人の総意、という事なのである意味自分たちの属する地域に暮らす人間の存続維持のための民意、という事でもあるんですよね、多分。
わかりやすい悪者にはなるんだけれども悪が悪として設立するための説得力がないと又悪い国家組織の話かぁとなってしまう感じが。

とは言え組織に都合よく文学作品を使われるのはちょっと抵抗はあるかも。でも情操教育だったらよだかの星が最適なんじゃないかななんて思いました。

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2019年03月18日

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