バス事故で妻が亡くなった際に不倫していた男が、同じ事故で妻であり母を失った家族と関わる話
津村啓(本名 衣笠幸夫)はテレビにも出演する作家
ヒット作には恵まれたものの、売れない頃から支えてくれた妻との関係はもう冷えている
そんな夫婦関係の中、妻が親友とバス旅行に行った先で事故に遭いなくなってしまう
...続きを読む
そのとき、彼は不倫相手との情事に浸っていた彼は妻の死で泣くこともなく感情を持て余していた
バス会社による事故の説明会で、激しく怒りを現す大宮陽一と出会う
亡くなった大宮ゆきと衣笠夏子は学生時代からの親友で、夏子だけ大宮家と親しい交流をしていた
大宮家には中学受験を控えた真平と5歳の灯がいて、トラクドライバーの陽一が不在の際の子どもたちの面倒をみる事を提案する
大宮家と関わることで夏子の知らなかった側面や子供の良さを知る幸夫
妻が亡くなった悲しみを感じることのできなかった幸夫は妻の死を悼むことができるのか?大宮家との関係はどうなるのか?
かなり歪んだ形のグリーフケアの物語かな
同じ事故で家族を亡くした者同士が交流することで、家族の欠けた部分を補うというところが
それにしても、幸夫は本当にクズだな
不倫そのものもそうだし、事故後の不倫相手への接し方とか
自己満の子供のお世話とか
インタビューでの妻への暴言とか
鏑木さんへの嫉妬とか
その後の暴発とか
そして、幸夫だけでなく実は陽一も……という展開は意外だったかな
様々な人の視点で描かれているので、同じ出来事でもそんな捉え方があるのかと思える
解説でも書かれてあるとおり、幸夫が子供との関係を楽しむ姿と、それに対して浅瀬だけで海を知った気になっているというのが両立している
どの人の視点でも納得できる描写がされているので、物語にリアリティがあると思う