西川美和のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
終戦の日(になった日)、東京駅から故郷の広島へと帰る少年兵のロードムービー。
「あの戦争」を語るには穏やかすぎるくらいの文章で、そこには怒号も慟哭もない。
主人公は「終戦」という未来を知るには早すぎて、すでに焦土と化した故郷に辿り着くには遅すぎた。あるのは、そうした宙ぶらりんの虚無感と喪失感。「中空」と言い換えれば、何とも現代的ではないか。
故郷を目指す主人公の旅は、彼の過去の回想をさしはさんで進んでいく。過去と今、絡み合う二つの時間軸の先に浮かび上がるのは、もう一つの「その日」である。
過去を見つめなければ現在は見えない。
現在を見つめなければ過去は見えない。 -
Posted by ブクログ
妻を失ってから始まる
あまりに不器用な「愛」の学び_
読み終わった後…
深く長い溜息をつかずにはいられない…
そんな心の奥底を揺さぶられる物語でした
長年連れ添った妻を
突然の事故で亡くした人気作家の幸夫
けれど、彼がその時いたのは不倫相手の部屋…
涙を流せないまま、世間に対して「夫」を
演じ続けなければならない
幸夫の滑稽さと空虚さが
あまりにもリアルで
読み進めるのが苦しいほどでした…
物語が動き出すのは、同じ事故で母親を亡くした
遺族のトラック運転手・陽一とその子供たちに出会ってから…
幸夫が「妻を亡くした他人」の家庭に深く関わり
慣れない育児や家事に奮闘する姿は
皮肉にも彼が -
Posted by ブクログ
誰かの死は、基本的に何も生み出さないものだと思っていた。
けれど、この作品では、主人公が成長していく姿がとても新鮮で印象的だった。
私はこれまで、「子どもがほしい」と強く思ったことはあまりない。
もちろん、子どもを可愛いと感じる気持ちはあるけれど、子育てをするよりも、自分の経験にお金や時間を使いたいという考えに近かった。
そんな中で、思いがけず子どもと関わることになり、本当の愛を知っていく主人公の姿に、どこか羨ましさを感じた。
子どもは大人にとって、新たな価値観や成長をもたらしてくれる、かけがえのない存在なのだと気づかされた。
文体が今まで触れてきたものと少し違って読むのにすご