西川美和のレビュー一覧

  • その日東京駅五時二十五分発

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    1974年広島県生まれの著者の伯父の体験記を基にした小説~昭和二十年春に召集され東京清瀬の陸軍特種情報部の通信兵として過ごし,アメリカの短波放送でポツダム宣言の内容を聞き,上官の命令で資料を焼き,階級章を剥がして焼き,軍人手帳も燃やして,故郷に帰るために,東海道線始発列車を東京駅で待ち,切符無しで大阪から広島まで帰ってきたが,焦土となった故郷でも,生活に必要なものを集めて回る女性の逞しさに触れる~上手に書きました。「そうするしかなかったから,そうした」そういう人が多かったのだろう。他に選択肢はなかった

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    2016年09月01日
  • ゆれる

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    自身が脚本・監督をした映画のノベライズ作品。
    語り手を替え、時系列も多少前後する八つの章でできています。映画は見ていないのですが、この構成では映像化は難しいと思うので、おそらく描き方が違うのでしょうね。
    読み始めてすぐに「うまいな」と思わせます。語り尽くすことなく、虚ろな部分を残し、それがかえって読むという行為に集中させてくれます。
    田舎に残った誠実な兄と都会で華やかに働く弟の心の裏での確執。映画では香川照之とオダギリジョーですか。非常に良い配役でしょうね。

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    2016年07月16日
  • 映画にまつわるXについて

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    産業としての映画、芸術としての映画、その間で揺れ動きながら制作に臨む監督の生き様がすごくかっこいい。普段から、ノイズ(いい意味で)をたくさん吸収して、咀嚼して、映画に詰め込んでいる人なんだなあと思った。
    いろいろなノイズが溢れてて、そこから人間の深い深いところを読み取れるのが映画の面白いとこだし、そういう映画をいまの日本で産み落とせるって、ほんとすごい。

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    2016年07月06日
  • ゆれる

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    一人称が変わりながら時系列が進んでいく作品なので、それぞれの場面について語る時の距離感が皆違うのが面白かった。
    お互いや自分自身についての認識にも、微妙に差があるのが絶妙だった。
    外から見た人の印象と内実がまるで違ったり、実は正反対だったりする、という事が、違う視点からのアプローチで判明するという作品は小説に限らず世の中にたくさんあるけれど、これはそういうものともまた違う気がした。
    事実も内実もほぼ間違いなく、誰からの視点でも一致しているのに、それぞれの認識が少しずつずれている。これが本当に絶妙!
    すごく丁寧に作られている作品だと感じた。

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    2016年04月27日
  • その日東京駅五時二十五分発

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    悲壮感のない戦争小説。とてもよかったです。
    青年の無垢な視点から語られる様子は、阿川弘之の「雲の墓標」を彷彿とさせました。
    淡々としているがゆえにリアリティを感じさせられます。

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    2016年02月27日
  • 映画にまつわるXについて

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    たった数秒のワンシーンのために注ぐ膨大な時間と努力をこの人は「自分には才能がない、天才でないから」と言う。それこそが才能なのに。ゆれる、も夢売るふたり、も。観返したくなった。この人のこだわりの詰まった苦しみの時間を想いながら。

    『一度、何らかの深いところに潜ったのだな、』なんていう、人の胸の奥底にひっそりと横たわる感情を掘り起こすのが上手すぎる。才能だ。だからこそ彼女の作る映画も小説も、ぐっときてしまうのだ。

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    2016年01月26日
  • 映画にまつわるXについて

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    「夢売るふたり」を撮り終えた後に纏められたエッセイ集。
    ゆれるは小説を読んで、まだ映画は観れてないけど、香川照之、オダギリジョーに真木よう子の3人の役者について、この本で描かれていて、より一層観たくなった。
    夢売るふたりのオーディション、免許取得の裏話は面白かった。
    映画はスクリーンに映し出された向こう側の世界だったけど、この本を読んで少し身近にも思えたし、奥深さも感じられた。

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    2015年11月30日
  • その日東京駅五時二十五分発

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    終戦の日(になった日)、東京駅から故郷の広島へと帰る少年兵のロードムービー。

    「あの戦争」を語るには穏やかすぎるくらいの文章で、そこには怒号も慟哭もない。
    主人公は「終戦」という未来を知るには早すぎて、すでに焦土と化した故郷に辿り着くには遅すぎた。あるのは、そうした宙ぶらりんの虚無感と喪失感。「中空」と言い換えれば、何とも現代的ではないか。

    故郷を目指す主人公の旅は、彼の過去の回想をさしはさんで進んでいく。過去と今、絡み合う二つの時間軸の先に浮かび上がるのは、もう一つの「その日」である。

    過去を見つめなければ現在は見えない。
    現在を見つめなければ過去は見えない。

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    2015年01月17日
  • ゆれる

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    二日に分けて読んだ。どうなるかは大体わかっているのだけれど、兄の動向がまったく読めず、不気味で早く読みたいと手が進んだ。人間の誰しもがもっているような汚い部分、生身の部分がむき出しになっていく恐怖を感じる。ふたつの兄弟が出てくるが、血の繋がりって逃げられないし見て見ぬふりもできないし、肯定的に受け取れるものばかりではないな、と感じた。

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    2015年01月16日
  • ゆれる

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    映画を見たくて、読みました。
    映画を見る前に読んでよかった。
    今の自分の環境によって感じる事は変わるような気がしました。

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    2014年01月11日
  • ゆれる

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    先に小説を読んで、映画を観た。どちらもすごく面白いけれど、どう面白いか説明できない。女性の辛らつな書き方は、同姓ならでは。

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    2013年02月07日
  • ゆれる

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    ネタバレ

    以前から気になってた映画の小説版。聞けばこれが原作ではなく、映画後のノベライズだとか。

    ノベライズということで期待はしていなかったのだけど、これは衝撃だった。それぞれ登場人物による語り、少しずつ明らかになる真実、兄弟関係。ぞくぞくした。
    映画を見てみたくなりました。

    西川美和は監督も脚本も自身で行い、しかも小説まで書けるとは何て多才な人なんだと思ったら、解説を読むと努力の人と言うのが分かる。すごいなあ。

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    2013年01月17日
  • ゆれる

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    人間の情けなさや憎悪など、暗い感情の動きがシンプルな言葉のなかで上手く読者に想像させる。登場人物一人一人が語る描写の仕方により、ひとつの事実がどんどん浮かび上がり、そこにあった人間模様も同時にわかっていく。その様が面白く、ちょっぴり切ない。

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    2013年01月08日
  • ゆれる

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    思わず唸ってしまった本。面白い。映画はまだみたことないんだけど、これは見ずに読んでしまって正解だと思った。
    小説が面白いので、ついYoutubeで映画の予告編を途中で覗いたのだけど、映画と役者の印象が強過ぎて、そのあとに小説に戻る時にイメージを払拭するのに苦労した。

    こんな話だったんだなぁ。

    人類最初の殺人事件がアインとカベルのように、兄弟ってやつはどうにも近過ぎて厄介な関係になるのかもしれない。

    この小説を読むと、作者の西川さんの映画作品にもすごく興味をもってしまう。
    こんな人の描く映画に出てみたいなぁ。

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    2013年01月04日
  • ゆれる

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    ネタバレ

    つり橋から落ちて一人の女が死んだ。事故か殺人か。
    人物の語りで物語が進み、お互いの「妬み」「愛情」が引き出される。
    「どうしてお前と俺はこんなに違うの?」どこの家にもありそうで胸が痛い。

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    2012年11月26日
  • ゆれる

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    数年前に映画を観て、衝撃的で印象的な、心に深く残る作品だった。
    読んでいる間、ずっと眉間を寄せていた。
    切なくて、痛くて、悲しくて悔しくて、ゆれて。
    家族という、何よりも誰よりも、
    身近でありながら、遠い、
    唯一無二の存在。
    どうか、お兄ちゃんも弟も、幸せになって。

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    2012年11月16日
  • ゆれる

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    映画とは異なる味わい。これはこれで成立するが、細かすぎる描写が、文章としては、ややくどいかも…とは言え、脚本、ノベライス、映画化をすべてこなせるのは凄い!恐るべし才能、西川監督。個人的には映像作品の方が好き。

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    2012年10月25日
  • ゆれる

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    これどうやって映画にしたんだろ?あ、映画が先?
    死んじゃった女性、気の毒だけど、ちょっとそりゃないよなぁ。

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    2025年11月22日
  • 永い言い訳

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    ネタバレ

    映画で気になっていた作品だったが,なんとなく本木さんが嫌いになりそうな役柄だったので,見るのに躊躇していた。(好きなので嫌いになりたくなかったから)なので小説で読んでみようと思ったのだけれど,配役を知っていたので脳内で役者さんに当てはめて読んでしまった結果,最初,失敗したと思った。本当にこんなに好きになれない主人公はなかなかいないくらい性格の悪い主人公。
    ただ子どもたちの交流を通して,愛を少しづつ知っていくところに救われた。

    ー愛するべき日々に愛することを怠ったことの,代償は小さくはない。

    この一文は,自分も心に留めておきたい。

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    2025年11月05日
  • 永い言い訳

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    四十代、人気作家の妻が、高校からの友人とスキー旅行へ行った際、バスが崖から落ちて、友人ともども帰らぬ人となる。友人の夫と初めて会ったのは、被害者の会。八歳ほど若く、まだ三十代のその夫は、まっすぐな激情型で、妻の死を大いに悲しみ、憤っているが、作家のほうは、もうずいぶん前から妻との仲がうまくいっていなかったこともあり、また、元来のひねくれた性格ゆえ、悲しめない。事故の時、若い編集者を家に連れ込んで性交していた負い目もある。作家のほうに子供はなかったが、友人夫婦のほうには小6と4歳の子供があり、作家は、母親を失い、生活の立ち行かなくなった家族を見て、トラック運転手という不規則な仕事をしている父親に

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    2025年10月18日