西川美和のレビュー一覧
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現代日本社会はコンプライアンス遵守へ向かうべく様々な試行、改善が課題となって動き出している。バックラッシュが少なからずありながらも、弱者やマイノリティへの救済は人道的に優先される時勢にある。"昔は…" と自身の愚行を肯定しがちなのは、戸惑いや理解不足からくるもので、そこを謙虚に受け止めて自省し変えていく勇気こそ、社会を変えていく源流になる。筆者・西川美和もまた旧態依然から進まない日本映画界に嘆き、自らを変えていくことの大切さを語っていく朴訥さに感嘆する。劇的な変革を望まなくてもいい、その方向性の持続こそ次世代に受け継ぐべき務めなのだ、そしてその姿勢は映画界に限らず社会に生きる私たちの責務である。
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Posted by ブクログ
生まれ故郷を飛び出し写真家として成功をおさめる弟。実家のガソリンスタンドを父親に望まれるまま引き継いだ兄。自分の感情を表現する弟。鈍いふりを続けた兄。
二人に関わる幼馴染の女性は、若い頃、弟と関係を持ち、現在は、兄に望まれている。二人の関係は、その女性の死の真相をめぐり逆転していく。家族の支配者が変わった時、そして不在となった時、ギリギリの家庭は、崩壊を迎えてしまう。
兄弟の支配と嫉妬は、終わりを迎えても、次の関係を築く事ができなかった。
ご自身の映画のノベライズとのことで、田舎を行く道、法事の親戚の集まり、ひなびた渓谷と、読み始めから、知っているような情景のイメージに入り込めました。兄弟の隠していた感情の描写が印象的で、苦しさが伝わってきました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこの本も、前作に続いて映画作りにまつわる色々なことと、プラスアルファ短編小説と全く別な形のエッセイ。時期的には「永い言い訳」を着想し、制作している時期が多いようだ。「永い言い訳」は本木雅弘さんが主演で、モッくんはNHKの「坂の上の雲」で秋山真之を演じてめちゃくちゃ好きになったのだけど、意外にめんどくさい性格で、この映画の主人公幸夫と本当に同じみたい。でも、このエッセイを読んで、西川監督のこだわりも思った以上に凄くて、なかなかご一緒するのは難しそうな感じがしました。それは仕事の面でも、仮にプライベートな知り合いであっても・・・そういうこだわりがあるから、着想が生まれて、こだわりのある作品が作れるのだろうけど、身近にいたら一言で言うとめんどくさいかな。
一番の違いは、我々は効率を優先しがちで、100点を取ることではなく、どうやって効率的に合格点の60点を取るかという思考をしがちで、かつ行動は真にそのもの。でも、一本の作品に何年もかけて、手作りで作品を作る人たちはやっぱり妥協を許さない。何が違うのか説明できなくても、違うものは違う。「こんなもんでいいか」がない。そして、その分私生活は意外にルーズそう。なかなかこういう人達とは生きている世界が違うなと、何かそんなことばかりを感じてしまいました。
・ものを作るのに、必要なものは何か。アイデア、情熱、才能、自信、金、愛情、怒り、希望、欲望、羨望、人望、その他各種色々だろうけれど、〈孤独は、人のふるさとだ〉と言った 坂口安吾 のことばの通り、さびしさに身を沈め、じっと孤独と詰める瞬間がなければ、作り手の中の鬼は物語で踊らない。
・映画は俳優本人の根っこにあるものを映し出してしまう。嫌な人間を演じる俳優は、根っこのところではやっぱり『良い人』でないと、観客には愛されない。
・心に誰かを宿すことで、人は心強さを得ると同時に守りの姿勢が芽生え、迷い、心に波風が立ち、そして何より孤独でいることに耐えられなくなる。 -
Posted by ブクログ
西川美和は、公開されたならば無条件に万難を排して観に行く監督の1人です。「ゆれる」を観た時のショックはちょっと言葉では言い表せられない。その西川美和が冒頭、朝青龍というヒールならぬヒーローの話を書いた後に、するすると30年ほど昔の『恐怖の24時間』というテレビドラマの話を書いています。
連続殺人犯が弁護士になりすまして教誨師の家を隠れ家とする話で、その逮捕劇の顛末です。西川美和解説に耳を傾けると、その殺人犯は、若い頃の役所広司が演じていて、グレて親不孝を働いていた長男を捕まえて説教をしたり、布団を羽交い締めにして咽び泣いたり、逮捕された後も家族に屈託なく笑って去ってゆくそうです。西川美和は、役所広司に朝青龍と同じヒーローを感じて、風呂の中で泣けたそうです。映画ファン的な興味としては、この2010年の文章が、やがて監督の師匠・是枝和弘監督の『三度目の殺人』に関係している気がするし、今年の最新作『すばらしき世界』に直結している予感がする。西川美和は書く。
「凡そ人の風上にも置けない主人公にばかり惹きつけられてきたような気がする。みんな人格も行動も間違いだらけで、賢人の忠告をはねのけ、自分の失態で人生が台無しになっている。けれど、まだ諦めきれない、もう一度闘うんだ、やりなおすんだ、と歯を食いしばっているような人物たち。そういう悔恨だらけの、黄昏の中に佇むヒーローを、心の糧にしてきた」(16p)思えば確かに、西川美和作品の主人公はみんなそうだ。美人で世界的名声をモノにしている監督は、人一倍コンプレックスの塊だった。
読めば読むほどファンになってゆく。外見とは裏腹に、西川監督はかなり男前な性格だということもよくわかった。そう言えば、西川美和は過去直木賞にもノミネートされています。その文章力は折り紙付きです。松たか子と一緒にお忍びフォークリフト講習に行き免許を獲った顛末記などは、一篇の短編コメディのようでした。
倉敷蟲文庫という美人の店主がいる古本屋でゲットした本でした。