本書の結び近くの頁でライムが
『報道と扇動の境界線はどこにあるのか』
と思考する描写があるのだが、ライムの考察は全くその通りだと思う。
日本でも最近、回転寿司などを狙った事件が多発しているが、率直に騒ぎ過ぎだ。
報道が加熱すればするほど、幼稚で歪んだ自己顕示欲と承認欲求を持った者たちが後追いす
...続きを読むる。
二番煎じがダサいとも分からない、そもそも客観視など言葉すら知らず、当然持ち合わせもしない未成熟で低能な者どもからすれば、恰好のステージにしか見えないのだ。
マスコミが騒げば騒ぐほど、それらは奴らに認知されてしまう。
更に、
今、各地起こっている組織化された強盗事件を
報道機関は『闇バイト』という至って軽い言葉で扱っている。
果たして、
そんな日本語は存在するのか?
『できちゃった結婚』、『授かり婚』といった人の誕生に関わる事柄が軽視とも取れる言葉で世間に流布されると共に、親の自覚の無い一部のバ○どもが世に解き放たれ、虐待は飛躍的に増加した。
プーチンという○チガイのせいで、今も今後もこの国の経済は間違いなく困窮する。
そんな混沌の中で『バイト』と銘打って重犯罪を軽いコトバでてらいなく垂れ流す報道機関はもはや犯罪者たちの片棒を担いでいるとしか思えない。
『そういうやり方があるのか…』と。
作中でも、狡猾な犯人の手によってSNSを利用してのプロパガンダが功を奏し、ライム達の権威を貶め、遂には市警から更迭されてしまう。
プロパガンダの効果はそれに留まらず、やがては民衆を扇動し暴動を巻き起こす。
冒頭のライムの台詞は暴動の様子をニュースで知った彼が独りごちた言葉だ。
ライムの言う『境界線』を見誤れば、報道はいとも容易く煽動にすり替わってしまう。
はたして、発信者にその自覚はあるのだろうか?
長々と蛇足が過ぎた…。
本編の感想。
なるほど、シリーズの愛読者なら作中の次の展開は推して知るべしなのだが、勿論ディーヴァー氏自身はそれすら織り込み済みで、更にそれの裏、加えて新たなシチュエーションを仕掛けてこられる…あたかも彼自身がウォッチメイカーの如く。
その文脈で考えると、ライムチームの新しい仲間、
彼は逞しくも利他的で非常にナイスガイなのだが…『おまえ、もしかして?』と思えなくもないのだ。
読者をこれ程、疑心暗鬼にかける本シリーズ、益々、今後が楽しみなのだが、次作はどうもまた別シリーズのようだ(彼のシリーズも好きだけど!)
最後に蛇足の続きを少々。
朝の情報番組で前々から違和感があったのは、
ホワイトボードにずらり並んだ各朝刊。
アナウンサー達がそれを読み上げる…
えっ?
新聞をただ読むって…それじゃ各テレビ局独自のニュースソースって?
マスコミ各自が独自ニュースを持ち寄ってこそ、
それが真実足るかの角度が高まるんじゃないの?
予算が無いんか知らんが、そこを怠るなら最早ニュース番組なんて無意味でしょ?
精度40%の報道、内閣支持率かよ。
それなら芸能人の尻でも追ってるしかないか…
いや、それも文春さんの二番煎じか(笑)。
もしかするとディーヴァー氏は
日本に限らず、矜持を失った報道機関の在り方を
作品を通じて、訴えたかったのかも知れない。
彼ら名手達は本当に伝えたい事を作中巧みに忍ばせるのだ。