武田綾乃のレビュー一覧

  • ここはこどものいない国

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    200年後の未来。労働力としての人間は国が生産、管理して人口を保っている。出産をする人間はほとんどおらず、三大欲求すら人工的に満たされる社会。人間を育てたいという欲求も、PBという人工の赤ちゃんペットで満たされる。
    今私たちにとって当たり前とされる価値観は、そんな社会では全く「普通」ではない。
    SF世界の中で、普遍的な愛憎と人間らしさとは何なのかを考えさせられる物語。
    思っていたより面白かったです。

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    2026年08月18日
  • 愛されなくても別に

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    主人公の陽彩(ひいろ)が置かれた状況は、あまりにも過酷だ。
    学費と家のためバイトに明け暮れる日々。
    勉強して自立されるのを恐れ、学業を妨害する母親。「母に捨てられたら生きていけない」という恐怖から、必死に気に入られようと「私は母を愛している」と自分に言い聞かせる陽彩の姿は痛々しく、父親から送られていた養育費の存在すら隠されていたと知ったときの絶望は言葉にならない。
    子どもにとって親は命綱だからこそ、すがるしかない。世間が押し付ける「家族愛」という言葉がいかに残酷な幻想であるかを突きつけられる。
    そんな息苦しい世界に現れたのが、同級生の江永雅だ。
    「愛されなくても別に」を体現し、世間の価値観をアッサリと薙ぎ払う彼女自身も、実は壮絶な過去を生き抜いてきたサバイバーだ。
    だからこそ、陽彩の痛みがわかり、妥協なく「このままだと自分から不幸を求めちゃうよ(不幸中毒)」とズバッと指摘してくれる。その圧倒的な頼もしさが、物語の大きな救いになっていく。

    また、裕福なお嬢様でありながら「コスモ様」という怪しい宗教にハマり、バイトを始めた木村を陽彩たちがすんでのところで救い出すエピソードも鮮烈だ。
    救われたはずの木村から感謝ではなく「恨み」を向けられる後味の悪さは、人の心の弱みにつけ込む宗教の危険さと、「他人の救済」の難しさを生々しく物語っている。

    バイト仲間の理屈っぽい堀口に「小さく呪いをかける」陽彩のコミカルな抵抗や、葛藤の末に心の中で辿り着いた「世界の正しさは常にアップデートされている」という独白が、より愛おしく深く胸に刺さる。
    親の狭い価値観を抜け出し、自らの力で呪縛を解いた瞬間だ。

    作中に漂うオリンピック延期やマスクの気配など、パンデミック直前の社会の閉塞感も物語の緊張感を高めている。

    「やまない雨はない」といった善意100%の言葉なんて何の救いにもならない。他人の生き方に興味はないし、勝手に生きて勝手に死んでほしい。私もそうするから。

    世間が決めた「正しさ」や「家族の幻想」を捨て、お互いの領域を侵さずに自分の足で立っていく。このドライで切実な割り切りこそが、過剰な道徳に溢れた現代を生き抜くための最高のプロテクターだと教えてくれる傑作だ。

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    2026年08月17日
  • 響け! ユーフォニアム 北宇治高校の吹奏楽部日誌

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    ネタバレ

    本編では描かれなかった久美子たちの日常を、もう少しだけ覗き見ることができるのが嬉しい一冊。特に、みぞれと久美子の組み合わせが新鮮で、二人の距離感や会話から、それぞれのキャラクターの魅力が改めて伝わってきた。

    立華高校との合同演奏会も楽しく、北宇治とはまた違った立華の空気に触れられるのも魅力的。なかでも、立華で成長していく梓の姿を目にした久美子が、嬉しさと同時に焦りを感じるところが印象に残った。仲間でありながらライバルでもある、そんな青春の複雑な感情が『ユーフォ』らしくて好き。

    さらに、武田綾乃さんのロングインタビューも読み応え十分。作品やキャラクターに込められた思いを知ることで、これまで読んできた本編まで少し違って見えてくる。小説としてだけでなく、『ユーフォ』という作品そのものをもっと好きにさせてくれる一冊だった。

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    2026年08月16日
  • 響け! ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそ 後編

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    ネタバレ

    梓の「人に頼られることが好き」という性格が、後編ではさらに深く掘り下げられていて面白かった。面倒見がよく、周囲から頼られる存在である一方で、そこに自分自身の居場所を求めてしまう危うさもあり、梓というキャラクターが一気に立体的になったように感じる。

    特にあみかとの関係は、単純な先輩後輩や友情では片付けられない生々しさがあって印象的。お互いを必要としているようでいて、その距離感が少しずつ変化していくところに、高校生ならではの不器用さや繊細さがよく表れている。

    そして、梓を取り巻く先輩たちがとにかく格好いい。厳しさの中にも後輩をきちんと見ている優しさがあり、こういう先輩がいるからこそ部活の物語は面白いのだと思う。

    もちろんマーチングの描写も熱い。音楽だけでなく、動きや隊列まで含めて一つの演奏を作り上げていく迫力が伝わってきて、演奏シーンはまさに青春そのもの。人間関係のリアルさとマーチングの熱さが見事に両立した、立華編らしい魅力の詰まった一冊だった。

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    2026年08月14日
  • ここはこどものいない国

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    2226年。人類は 性欲、食欲、睡眠欲。の
    三大欲求を克服していた。

    出生率の低下が国力の低下に直結すると
    痛感した人々は 2119年に科学技術による出産の工場生産化。つまり人間の工場出産に踏み切った。
    日本の工場出産児たちは自然出産児たちと同様に基本的人権を保障され、政府管轄下の施設で0歳から18歳になるまで育てられやがて労働力として全国の職場へ派遣された。
    “子どもを産まなくても社会が持続できるのであれば、その苦労をどうして自分が負わねばならない?”
    工場出産児が増加するとともに自然出産児の数は劇的に減少していった。

    工場出産児は全てが平等だ。受ける教育も食べるものも。親から受け継がれる資産はなく、スタートラインは皆が完璧に同じ。だが、自然出産児はそうではない。集落には間違いなく経済格差が存在したし、親がどのように子どもに接するかで人格形成に
    も差が出来る。
    自然出産で産まれ 28歳になる美奈子は昔から工場出産児が羨ましかった。一方、
    同じ会社の幹部候補社員である伊藤は工場出産児だが 彼女は昔から親や家族という言葉に憧れていた。そんな二人が伊藤の妊娠を機に心を通わせていく──。


    本書を読んでいると、所々 不快な感じがする。とくに人間に都合よく出来ている愛玩動物のペットベイビーのくだりとか...
    でも正直、全く理解できないわけでもない。結局 今現在のマジョリティの思考に乗っかっているから不快に思うだけなのかもしれないし。
    今の “普通” が200年後の “普通” であるとは限らない。
    200年後 人々は なにを手に入れ、なにを手放しているのだろう…。
    そんなふうに考えさせられた本でした。









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    2026年08月13日
  • 響け! ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそ 前編

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    ネタバレ

    立華高校の物語ということで、今回は特に楽しみにしていた一冊。

    以前から京都橘高校の実際のマーチング映像を見ていたので、立華の演奏やパフォーマンスの場面が頭の中で具体的にイメージでき、物語への入り込み方がいつも以上に深かった。

    本編の北宇治とはまた違う、マーチングの強豪校ならではの厳しさや熱気が新鮮で面白い。

    華やかな演奏の裏側にある努力や、部員同士の葛藤、人間関係もしっかり描かれていて、単なるスピンオフではなく、独立した青春物語として十分に楽しめる。

    主人公・梓の真っ直ぐさや不器用さも魅力的。実力があるからこその悩みや、周囲との微妙な距離感など、武田綾乃らしい「青春の苦さ」が随所に感じられる。

    実際の京都橘のマーチングを知っているからこそ、「この場面はきっとこんなふうに動くんだろうな」と想像しながら読めたのが何より楽しかった。

    立華高校というもう一つの吹奏楽部の世界に、すっかり引き込まれてしまった。

    後編も楽しみ。

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    2026年08月11日
  • ここはこどものいない国

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    200年後、こどもを育てることはペットと暮らすこととほぼ同義になった世界。品種改良された、誰にも迷惑をかけない、都合のいいところだけを凝縮した赤ちゃんを愛でる世界。

    人間の仕組み上、出産も生理も女性にだけ課されている役割で、私はどちらかというとそれについて憤りを感じることがある側の人間だと思う。でも、じゃあどんな社会を望むのか、についてはよく考えていなかったなと思い知らされた。
    子供を産み育てていくことを社会が担った先にある世界がこれ、というのは、2026年を生きる私からするとまあ合理的だけど冷酷なものに見える。特に、帰る場所がない、家族や親という概念がない、という部分については。


    産んだ人間が、産むことを最上の幸せとし、周りに押し付けてくることが本当に嫌で、私自身の母との関係がその一点においてのみ上手くいっていないことが何度も頭をよぎった。
    産んでいない人間と産んだ人間が本当の意味で分かり合えることなんてない。それくらい出産というものが人生と人体に与える影響は多大なものだと思う。でも、私は私の責任で選択をしたい。


    200年先のAIはもうちょっと柔軟な対応をするだろうに、とか、最初のうちこそ細かいところが気になっていたけど、だんだん引き込まれていって気にならなくなった。

    美奈子が度々なんだか間に合っていなくて悲しい。どれだけ合理的な世界になっても気づいた時にはもう遅い、みたいな現象はやっぱりある。最後は読者に委ねる形で終わったので、私は希望のある方を選んで自分の中では咀嚼しておこうと思う。


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    2026年08月08日
  • 響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のヒミツの話

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    ネタバレ

    本編では描かれなかったキャラクターたちの一面を知ることができて、とても楽しめた。

    何気ない会話や過去のエピソードを通して、それぞれがどんなことを考えていたのかが見えてくると、これまで読んできた本編の場面まで違って見えてくるのが面白い。

    中でも、あすか先輩の魅力がさらに増した一冊。

    飄々としていて何を考えているのか分からないように見えるのに、その内側には彼女なりの繊細さや複雑な感情がある。

    普段のあすか先輩とは少し違った表情を覗けたことで、ますます好きなキャラクターになった。

    大きな大会や劇的な事件がなくても、北宇治のメンバーたちにはそれぞれの青春がある。

    そんな「本編の隙間」にある物語を楽しめる、ファンには嬉しい一冊だった。

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    2026年08月08日
  • 可哀想な蠅(新潮文庫)

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    詩乃、私多分出会ったことある。
    幸い深く関わることはなかったけど、当時の私はなんとか助けたい、力になりたいって思ってたし、彼女が頼る先が自分じゃなかったことにも苛立ちを覚えていた。

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    2026年08月07日
  • ここはこどものいない国

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    ネタバレ

    2026年日本。99%の人間が工場で生まれていた。
    その後,寮生活し、学習舎で学び,優秀な個体は大学へ。そのほかは高校のあと、就職する。
    親はいない。
    人間の庇護欲は、PBといわれる人形ペットで満たされる。PBの寿命は10年。見た目も知能も人間の赤ちゃんの7ヶ月で止まる。泣かない、おむつも1日2回ほど。ミルクも自分で飲む。手間のかからないペットだ。
    美奈子はそのPBを作る会社の廃棄部門で働いている。
    実は,美奈子は自然出産で生まれた。ある集落出身だった。学校に行く年齢になると工場生まれと同じく学習舎に入った。だが、工場生まれ子達は優秀遺伝子の組み合わせで作られているのでいくら勉強しても美奈子は劣等生だったし、話が合わなかった。
    自分もみんなと同じように工場で生まれたかった。
    いろんな複雑な想いで、集落を飛び出して、母を残し東京に出てきたのだった。

    そんな時、廃棄部門に正社員として伊藤類と言う女性が配属された。彼女は初日に手作りクッキーを配り、みんなを困惑させた。
    この時代、手作りのものなんて誰も食べない。栄養バランスのとれたスティックバーを食べる。
    ちなみ、睡眠も薬で3時間程度で大丈夫だし、
    性欲もホルモン剤を投与してない。生理もない。
    美奈子は1人で食堂でスティックバーを食べていると伊藤がやってきて,クッキー食べてねと言われた。本当に食べた。
    それで、伊藤は美奈子を認めた。

    伊藤は妊娠していた。
    彼女自身は工場生まれ。妊娠出産のことを何も知らない。美奈子は5つ離れた弟がいて、その妊娠出産を見ていたので何となく知っていた。
    集落では、みんなが力を合わせて子育てもしていた。
    伊藤は酷い悪阻だったが、悪阻というものさえ知らなかった。一流企業の幹部候補なので住まいは立派だが、家は汚れていたので、美奈子が片付け、悪阻の伊藤のサポートをしていた。

    だが、自分が自然出産で生まれ、学習舎で劣等感のなか育ち、結果、高卒で登録社員でしかなれなかったことをかんがえると、
    伊藤が同じように,自然出産を望むのか理解できない。悪阻がひどく、体もつらく、自分の命さえ危ぶまれる出産をなぜ希望する?
    一方、PBも気持ち悪いと思っていた。
    職場の先輩の榊がPBを3体職場に連れてきても、
    可愛いとは思えなかった。赤ちゃんのまま育たない、手のかからない、不思議なペット。

    そして、伊藤のお腹は大きくなり臨月まで後少しとなるとき、喧嘩してしまった。
    同時に、故郷から電話。母が亡くなったらしい。
    郷里に帰りつつ、思い出す,大きくはなれなかった弟のこと。

    って話。
    すごいねー考えることがあったよ。
    200年後,日本がこうなってるかもしれない。

    いまも女性が自分のキャリアを考えると、出産しない選択をすることが増えている。
    病気のリスクもある。
    そして子育てはお金がかかる。
    それて、人口はどんどん減っている。
    社会を保つにはある程度の人間が必要。だから工場生産する。優秀な遺伝の精子と卵子の組み合わせで、優秀な人間が増える。なんて合理的。
    社会が育てるから、女性のキャリアがーとかない。

    倫理的なことを目を瞑ったらこんな社会があるかもしれない。お父さんもお母さんも,おじいちゃんもおばあちゃんも、全員最初からいなければ羨ましくもない。

    でも、そしたら,人生何が楽しいんだろう?

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    2026年08月07日
  • 響け! ユーフォニアム 3 北宇治高校吹奏楽部、最大の危機

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    ネタバレ

    三巻は間違いなく田中あすかという人物のための一冊だった。これまで飄々として何を考えているのか掴めない先輩という印象だったが、その笑顔の裏に抱えていた葛藤や弱さを知り、一気に好きなキャラクターになった。誰よりも音楽を愛しながら、自分の気持ちを押し殺して部を支え続けてきた姿には胸を締めつけられる。

    そんなあすかに真正面から向き合う久美子の成長も見どころで、二人のやり取りはシリーズ屈指の名場面だと感じた。ただの青春部活小説ではなく、それぞれが抱える事情や本音を丁寧に描くからこそ、登場人物一人ひとりが鮮やかに心へ残る。

    読み終えた今では、田中あすかという存在そのものが『響け!ユーフォニアム』という物語の大きな魅力なのだと実感した。笑顔の裏にある想いを知ったからこそ、これから先の彼女の演奏がより特別なものに感じられる一冊だった。

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    2026年08月06日
  • 響け! ユーフォニアム 2 北宇治高校吹奏楽部のいちばん熱い夏

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    ネタバレ

    『響け!ユーフォニアム2』は、コンクールを目指す熱い青春だけでなく、希美とみぞれを中心とした過去の因縁が丁寧に描かれていて、とても心を揺さぶられた。

    一年前の退部騒動をめぐる二人のすれ違いは、誰か一人が悪いわけではなく、それぞれが相手を思っていたからこそ生まれた悲しい誤解だったことが伝わってくる。

    だからこそ、二人が少しずつ本音をぶつけ合い、前へ進もうとする姿には胸が熱くなった。

    この2人の物語は「リズと青い鳥」というアニメで見られる様ですね。

    部活という閉ざされた世界だからこそ生まれる人間関係の繊細さや、言葉にできない感情の機微がリアルで、青春小説としての完成度の高さを改めて実感した一冊。

    演奏シーンの熱量はもちろん素晴らしいが、それ以上に人と人との絆や葛藤をここまで丁寧に描ける武田綾乃さんの筆力に引き込まれた。

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    2026年08月04日
  • 響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ

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    ネタバレ

    青春は、いつだって眩しいだけのものではない。本作を読んで改めてそう感じた。吹奏楽部というひとつの世界には、実力主義だからこその嫉妬や焦り、先輩後輩の埋めきれない距離、口にはできない本音が静かに渦巻いている。「みんな仲良し」という理想では片づけられない感情が丁寧に描かれているからこそ、登場人物たちの一歩一歩が胸に響く。青春物語でありながら、その陰に潜む苦さや痛みを隠さず描いているのが印象的だった。

    それでも彼女たちは楽器を手に取り、誰かと音を重ねることをやめない。不協和音のようだった心が少しずつ重なり合い、一つの音楽へと変わっていく過程は、まるで人が成長していく姿そのものだった。綺麗事だけではないからこそ、この物語は美しい。読み終えたあとも、コンクールを目指して響き続ける彼女たちの音色が、しばらく心の中で鳴り止まなかった。

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    2026年07月30日
  • ここはこどものいない国

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    ネタバレ

    タイトルの通り、こどものいない国。
    親から産まれるのではなく、より良い遺伝子で産まれてくる子供達。PBと呼ばれる歳を取らないペットの赤ちゃんを飼う人々…

    かなり壮絶な世界観でした。
    美奈子は自然に親から産まれた子故の、故郷の集落の価値観が外の世界では通用しない事を子供心に知る事となり、かなり達観した感じがしてました。

    そして、同じ会社で出会った幹部候補生の伊藤。彼女は自分で子供を産む事を望んでいた。相反する2人が次第に近づいていたけれど、母が以前弟を出産する時に子供を取るか母体を取るかで父と揉めていた経験を持つ過去があり、伊藤がそれを美奈子に強要しようとしていたのが痛かったです。

    美奈子は結局伊藤の子供を育てたのか?
    気になる所で終了がまた想像を掻き立てました。

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    2026年07月29日
  • 愛されなくても別に

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    感情と行動の表現がリアルで良かった。同じような境遇にいる人の間に生まれる小さな優しさも感じた。また、色んな形をしたその人の苦しさが表現されてるのも面白かった。

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    2026年07月27日
  • ここはこどものいない国

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    なんて味気ない、気持ち悪いんだろう、子どものいない国とは。そう思ってしまうけど、生まれたときからそれが当たり前の世の中だったら、別に何とも思わないのかもしれない。
    何なら、子どもなんていらないと思っていた以前の私は、子どもが自然に産まれないPB(ペットベイビー)が流行っている世の中に納得してしまっていたかもしれない。だって、出生率がどんどん下がっているこの国に未来はないし、だったら機械的に人間が生産されて経済も回る国になった方が合理的だから。

    出産した今は、見方が変わった。子どもは思ったとおりにいかないし育てるのも大変だけど、だからこそ楽しみがある。手もかからないし、大人たちに迷惑もかけない、ただ可愛いだけのPBは確かに世の中に受け入れられやすいが、楽しさはない。PBがどう生きて、どう生を終えるか分かりきっているから。

    この世界、誰も自ら望んで産まれてきた命はないという事実は当たり前だが忘れがち。でも、皆それが当たり前のように生きている。それも、産まれちゃったんだからしょうがないとかではなく、皆希望を持って生きている(一部そうじゃない人もいるが)。それってすごいことなんじゃないかと密かに思っている。

    美奈子が最後、どういう気持ちで赤子と生きていこうと思ったかは分からないが、赤子が生きていけるよう世話するのが当たり前だと思ったから...であってほしい。

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    2026年07月24日
  • ここはこどものいない国

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    くぅぅぅ、こうなってしまうのか2226年の日本よ。でも、間違いではない。だってタイパとコスパと物価上昇、子育てがバツゲームようなこんな社会で、誰が子どもを育てたいのよ。わたしは2026年でも子供を持つ意味を理解できないけど、子供を持つ意味が「世話をする対象が欲しい」「国力を維持するため」なら、この世界で成り立った、優生遺伝子同士を掛け合わせた素晴らしい子供を工場で量産する形とペットの赤ちゃん(決して泣かない、世話の必要も最低限で可愛い)でいいんだもんね。

    同性婚もOKになり、学習舎とよばれる養育施設で子供はまとめて育つことで「子どものいない国」になった日本。三代欲求も克服した社会。何を楽しみに生きていくんだろうか。問われている気がする。

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    2026年07月16日
  • ここはこどものいない国

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    3大欲求を克服した、今から200 年後の2226年。
    人は工場生産されるのが当たり前で、自然出産を選択する地方の一部の集落の人々は「自然派」として遠巻きにされている。
    主人公の美奈子は自然出産で生まれたが、母との確執から東京へ上京。むしゃくしゃする度に、契約社員として働く会社で、作り損ねた廃棄PB(ペットベイビー)を密かに盗んでしまう。
    そんな日々を送る中で、正社員としてやってきた新人から、「私、妊娠してるんです」と打ち明けられ…。



    単純に、世界中の人がそれを常識とすれば、まかり通るのが世界なのか。
    ならば200 年も経てば、ぞっとするようなこの物語の世界も、現実になるかもしれないな。



    「恨みも憎しみも知らない。ただ親の愛だけを一身に受けた、老いを知らない愛玩動物。
    ーーーおかあさん。
    ーーーわたしいがいをあいさないで。
    歯の生えることのないその口内には、無邪気な闇が広がっていた。」

    母の葬儀の為に帰郷した夜、ふとした事でPB北斗と2人きりになった時の衝動が強く印象に残る。


    「大人しくて騒がない、自分達に都合のいい生き物に対しては、社会はきっと親切だ。だがそれ以外の存在は、罰して良い存在として片付けられる。だって、存在が迷惑だから。」

    混み合う地下鉄内で泣き叫ぶ赤ん坊に対して怒鳴りつける男性。
    そして、庇いはしてくれるが、他人に迷惑はかけるなと釘を刺す女性。
    200年経とうと、こどもが工場で生まれるようになろうと、PBという奇妙な愛玩動物がスタンダードになろうと、根本的な人の心は変わらないのだなぁ。

    でも最後の最後で、電子端末からの連絡は、良い知らせの方だったと信じたい。
    愛って、温度ですよ!と教えてくれた彼女に、我が子のあったかさを感じる未来をあげたいって思うラストでした。

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    2026年07月11日
  • 彼女。

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    FPSで知り合ってタッグを組んだママユとノエの話(『百合である価値もない』)が1番好みだった。
    百合って、何故か「美女×美女 が当たり前」みたいな風潮があると思う。それでも一般人だったら、別に美女×ブサイクやブサイク×ブサイクでも全く問題ない。ところが有名になってしまうと、叩かれることになる。美しいものを見たいという人の気持ちって、他人の悪口を言ってまでの強いものなのだろうか。
    「私の整形についてどう思う?」とママユから聞かれたノエの返答が最高過ぎる。人の恋愛に顔面偏差値まで持ち出してとやかく言ってくる世間を本当はぶっ潰したいが、結局は世間に迎合してしまっているわけでしょ?でも、そこまでして一緒にいたいって相手が思っててくれるんなら、感謝しかないよね。

    幼なじみからの愛にずっと応えずにいたら、転校生にかっ攫われる話(『馬鹿者の恋』)は苦かったな。これは悔しいとしか言えない。相手からの愛情に甘えているばかりじゃ駄目なんだね。
    恋愛って格好悪くてもいいもので、むしろかっこ悪いところも見せないといけないんじゃないかと思った。しかし、転校生はすごい。幼なじみの気持ち、グイグイ掴みに来てた。あれだけ強い精神力、私も欲しい。

    購入して長らく積んでいた本作、好きな話もあればあまり好きではない話もあった。百合小説アンソロジー第2弾も既刊で気になる。きっと買う気がする。なぜなら私はやっぱり百合が好きだから(笑)

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    2026年06月23日
  • 嘘つきなふたり

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    偶然再会した光と琴葉。小学校の修学旅行前に転校してしまった琴葉の提案で、二人で修学旅行をやり直すことになる。母親の言いなりに東大法学部から弁護士を目指す光と、男好きなシングルマザーの母親に振り回されながらも母親が大好きだった琴葉。互いに嘘を抱える二人の京都旅行は、小学校の担任教師の死も影を落とし、苦い部分もあるが、互いを理解し合い、忘れられない旅になる。女の子の友情物語好き。京都で会う、二人の大人の女性が深いこと言う。いい男をつかまえて専業主婦になるのが夢の女子大生と推してたアイドルが引退して傷心旅行に出るOL。どちらも他人から見ればくだらない生き方してると言われるだろうけど、人はそれだけじゃないということを感じさせる。
    京都旅行終わりの時点で終わりにしても良かったかもしれない。その後、二人はずっと友達、という描写も心地よかったが、そんなこと、旅行終わりの時点でわかってるじゃん、という気もする。

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    2026年06月22日