武田綾乃のレビュー一覧
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青春の切実な痛さとその先にあるきらめきを感じた短編集です。描かれる人物はみんな女子高生なのだけど、彼女たちの抱える悩みや葛藤というものはどこか身に覚えのあるもので、性別の違う自分も学生時代を思い出し、少し胸が痛くなるような気持ちになりました。
収録作品は短編5編と掌編2編。描かれるテーマは部活での友人関係や後輩との関係性、受験をめぐるもやもやとした感情、あるいは姉妹関係であったりクラスや社会に対する違和感であったりします。
テーマ自体はそこまで目新しいという感じでもないけれど、語り口や登場人物たちの心理描写がみずみずしくとにかく共感しました。
失敗に対する恐怖。自分だけを頼ってほしいという感情。なんでも器用にこなしてしまうがゆえの不満。部活できらめいている友人に対する負い目。クラスメートに対する違和。自分に対する嫌悪。
彼女たちの痛さは自分の中のイタさを思い起こさせる。学生時代はもちろんたぶん今でもそのイタさというのは心に残っている。だから共感してしまう。
ただこの作品は痛さを描くだけではありません。各短編の彼女たちの痛さはきちんと昇華され、次の一歩へきっとつながるのだろうと感じさせてくれます。痛さとイタさの先にある成長を描いているからこそ、自分はこの短編集が好きだと思いました。
学生時代の日常の切り取り方と心理描写の鋭さが本当に素晴らしい作品でした。 -
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武田綾乃さんの本は『青い春を数えて』に次いで2作目として読みました。中盤からストーリーが展開していき、終盤は怒涛の伏線回収で面白かったです。
やはり武田綾乃さんの本なので、一番最後の文章に小説で表現したいことのすべてが注ぎ込まれていて、物語の展開が最後の文章に繋がっていることを理解できると鳥肌が立ってくる。
最後が気持ちよく終わるので、この本に出会えて良かった、という気になる。
ただ、本当に申し訳ないが、中盤のストーリーで現実離れしたような展開が許容しがたい。むしろこの本の解説にあった「LINEグループからハブられていたエピソード」の方が面白くてリアリティを感じてしまった。 -
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苦しくて、でもそれが現実で大人になればいい思いでにだって言う人は多いだろうけど、今日明日を生きることは私や彼女達にとってはとても大変な事で。こなければいいと思った。連絡も知らせもないなら時間ごと止まればいいと思った。だから、彼女が「死ぬ?」と言った姿が凄く綺麗に脳内に描かれて、凄く儚いんだけど、そこには彼女が生きていて、高校生のヒリヒリした感じが凄く伝わってきた。
誰かにとっては「たったそれだけ」の事だったかもしれないけど、その人にとっては「たった」とは思えない事だったんだと思う。
心中を考える姿も、綺麗な描写も、全てが青春で、綺麗で素敵で、キラキラしてて、とてつもなく痛いものだった。受け止めれる内容じゃなかった。それでも彼女達は生きていて行くんだろうなぁ。大人になりたいと思いながら。 -
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コンクールに向けての猛練習。
そこへ早朝から誰よりも一番に練習にやってきている2年のみぞれと、突如部活動に戻りたいと申し出た希美、それを許さない3年のあすか。
1年の久美子には事情が掴めないけれど、吹部で何かが起こっている。
シリーズ2冊目の見どころは、それぞれが抱える思いの違いだと思います。
みぞれの思い、希美の思い、優子の思い、夏紀の思い。
それぞれが絶妙にすれ違っていて、この年頃の女子の関係性がもどかしく感じました。
相手に執着したり、実はお互いにお互いを本当に理解はしようとしてなかったり、表面的な仲の良さと、客観的に見たときの関係性のギャップがうまく描かれていたと思います。
関西大会にかける各校の思いも感じ取れて、コンクールって見た目ほど華やかじゃなくて、みんな必死の思いで、たくさんの時間と労力をかけて、勝負をかけているのがよく伝わってきた。
勝ち負けのある世界だから、誰かが涙を飲まなきゃならない、すごく残酷な世界でもある。
負けたとき、勝ったとき、どちらも、かけた思いの分だけ大きい。
一巻の最初の久美子の反応と、二巻後半の久美子の心の動きを比べると成長を感じた。 -
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自殺した女の子を取り巻く世界の話。
短編というか、その自殺周辺の色んな人の話の話が刻まれて書かれていて、面白い構成。
最初遠い人間からどんどん近付いていくのが面白くてススム。
最後自殺の理由?書かれてるのが意外、色んな要因があって明確なネタ明かしって無いと思ってた。
思春期って何でこういう感情何だろう?って思う。
今歳取って振り返ると、思春期独特の感性とか未熟さって本当不思議。
そういう多感な時期の、色んな感情が読めて面白かった。
ヒエラルキーとか、人間関係の複雑さとか、社会人になるとなあなあになるのか慣れるのか…。
あの時の妙に敏感な感じとか、常に周りが気になるのとか、自分が思いもせずに誰かを突き動かししてたり。。。
本当危うい時期…凄く表現上手くて一気読みできた。 -
購入済み
カヌーか!
読み終わってから気付いたけど、この作者さん「響け!ユーフォニアム」の人なのね!!部活ものっていうか、高校生ものが得意なのかな~
それぞれの人物の描き分けも良いし、気持ちの微妙な動きが現れている言動の描写も上手いです。
利根選手とは、あれしか絡みが無かったけど終わりなのか?…続きがあるのか? -
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ネタバレいよいよ完結! なかなかに感慨深い。最後までとっても面白かったんだけど、話の焦点が自分のパートに転入してきた優れた奏者の真由と主人公久美子の葛藤と、それをめぐる周囲の反応ということに集中しすぎていて、物語が個人的に見えてしまうきらいを感じた。
今までは、主人公が持ち前の共感力で部内のいろいろな人間関係の問題に首をつっこんでいって、部内の人間関係の全体的なあり方を私たちに見せてくれる一歩引いた語り手という位置にあったので、それが物語に重層的な厚みをあたえてくれていたんだけれど、本作は主人公自身の問題を中心に話が回っていくので、そういうつきはなした感が薄く、せっかく主人公が部長という立場をになってリーダーシップを発揮していく立場へと成長しているはずなのに、あまりそれがよくわからずじまいだった。
部長にソリを担当させたいという部内の雰囲気と、物語をハッピーエンドに向かわせたい読者からの期待の圧力とは、おそらく作者にとってパラレルだったはずだったけれど、物語の展開がハッピーエンド路線に進んでいく中で、困難に面した時の主人公の成長が置き去りにされたように感じられてしまった。
最後まで真由にソリを担当させることで、主人公にはその葛藤に自ら決着をつけさせるべきだったのではないかと感じた。 -
Posted by ブクログ
キャラクターそれぞれが求めるものに葛藤を設定することで、ぶつかりあう人間関係をどう解消させていくか
というドラマづくりはこれまでの作品同様。
ここでは主人公が中間の二年生になるので、これまでにはなかった真ん中の視点から
同じユーフォパートの「実力はまだそれほど高くないけれど、人間的にはよくできた先輩」夏紀と
「優秀で、実力があるのにこれまではそれで人間関係で割りを食ってきた後輩」奏の間の葛藤が
描かれている。こういう対立軸が作品の中にいくつかあって、それらが同時並行的に進むという作品。
もう一つは、前作から引き続いての「友達に依存する性格だけど、努力と才能を兼ね備えた」みぞれと、「より自立的な性格で、相手を今まではひっぱってあげている立ち位置ではあったけれど、みぞれほどの才能はなかった」希美の葛藤。
それぞれにとてもリアルに心情が描かれながら、その葛藤をとても良い所に落とし込んでいくので読んでいて熱い気持ちになれる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ☆「その爪先を彩る赤」(武田綾乃)
生徒会でこき使われてるボクっ娘が、多重人格と言い張る理事長の娘とともに、演劇部の小道具(赤い靴)盗難事件の謎を追う。
☆「東雲高校文芸部の崩壊と殺人」(斜線堂有紀)
文芸部の部室で部員が殺された謎を、奇人の部長が解く。ほのぼの系が多い中で、オチの付け方など、かなり異質。
☆「黒塗り楽譜と転校生」(辻堂ゆめ)
合唱コンクール用の楽譜が黒塗りにされた理由を、語り手の少女の、幼馴染である変わり者の男子が解く。リア充滅せよ。
☆「願わくば海の底で」(額賀澪)
これもトーンが重い。3.11で消息を断った祖父の足跡を追う青年を、手伝うことになった語り手。彼の美術部での先輩もまた、震災で行方不明となっていた……。これミステリになるのかな、と思ってると。
☆「あるいは紙の」(青崎有吾)
裏染天馬シリーズのスピンオフ。本来ブレーキ役の新聞部副部長が、彼なりに探偵役を務める。このシリーズ食わず嫌いで読んでなかったけど、読んでみようかな。
以上5作。学園モノだからか、探偵役のキャラが濃い話が多い。そのせいでシリーズ物の第一話みたいだな、と感じた。実際にシリーズ物なのは、「あるいは紙の」だけのようだが、案外このキャラで別の話が書かれるかも知れない。 -
Posted by ブクログ
五人の作家達が、高校生の青春をテーマにしたミステリーです。
初めてアンソロジーという作品を読みましたが、それぞれの作家さんの色が出ていて、面白かったです。今までの作品から出てくる雰囲気や構成が滲みながらも短編に仕上がっていて、1つで5つの味を味わえました。
「その爪先を彩る赤」 武田綾乃
演劇部で使われていた赤い靴が行方不明。果たして何処へいたか?
主に女子高生を中心に描いていて、生き生きとした表現にアニメを見ているような雰囲気や元気さが伝わってきました。
「東雲高校文芸部の崩壊と殺人」 斜線堂有紀
軽度な犯罪かと思いきや、殺人事件が発生。果たして犯人は?
サスペンスを得意としている斜線堂さん。ガッツリと本格的で、短編集ながらもドンデン返しや高校生たちの繊細な心理描写が描かれていて、満腹感がありました。
「黒塗り楽譜と高校生」辻堂ゆめ
合唱の練習中、途中の譜面から黒塗りになっているのを発見。果たして誰がやったのか?
伏線の回収が絶妙な辻堂さん。今回も何気ない行動が、後に大きな意味を持っていることに実力発揮されている印象でした。「負」の状況になりながらも、前に明るく踏み出そうとしている表現や雰囲気が良かったです。
「願わくば海の底で」 額賀澪
東日本大震災から5年後。あの日の祖父の足取りが知りたいという三浦。色んな所で証言を聞いていると、ある隠された事実が見えてきます。
この作品の中では印象深くて、心に刺さり、さらに重い気持ちながらも良かった作品でした。登場人物の心理描写が丁寧で、思いの丈をぶちまけるシーンが読者の心を揺さぶりました。
「あるいは紙の」 青崎有吾
最近何度か見かける高校内での吸殻。誰が吸っているのか、あの探偵が登場します。
「〜の殺人」シリーズの裏染天馬の推理が華麗で、披露する人は異なっていますが、着々と犯人に追い詰めていく過程が面白く、短編では短すぎる。もう少し読みたいと感じてしまいました。
一人一人の作者さんの特色が詰まった作品で、軽いものから重めな話まで面白かったです。