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近所で目撃した光景をツイートしたのをきっかけに絡んできた、粘着質なアカウント。芽衣子は、彼をスマホの中で「飼う」ことに決めるが――。SNSで、会社で、家の中で。どこからか湧いてくる、哀れな人たち。蓋をしてしまいたい感情。日常の裏で誰もが「見て見ぬふり」をしているものを突き付ける、ブラックな短篇集。
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Posted by ブクログ
人の人生より、自分の心配をすれば??と問いかけられているような本。「可哀想な蠅」は、不特定多数のアカウントから責められ、擁護され、実態のないものに怯える芽衣子。友人が殺されてしまう展開は驚いたけれど、結局、同情も共感も罵声も流行であり、時がすぎれば記憶の彼方に行ってしまうもの。人間も動物も流動的だな...続きを読むなんて。「まりこさん」は、猫を去勢することを嫌い、自宅で多頭飼育している。子どもと大人では、人との関わりが違い、由美が大人になってまりこさんに会いに行った時、お母さんの「あの人とは関わらない方が良い」という言葉の意味が分かってしまうところが残酷でもあり、社会を知ったというところで、大人になるということを突きつけられた。可哀想、助けてあげたいという感情が相手にとって鬱陶しいものになることもあるということ。「人に優しく、助け合いましょう」なんていうのは理想で現実は無理なのかもしれない。「重ね着」は、結婚と子どもについて姉と妹がぶつかり合う。歳を重ねれば自然と大人になるものだと思っていたとあるが、それは本当。22歳の私も、大人になれたという感覚は全くなく、友達でも結婚や、妊娠したという子がもういる事実に心がきゅぅとなることが多い。「いつまでも子どものままではいられない」現状維持なんて無理だ。だからこそ苦しく、自分が変わろうとする前に変わることを要求されることが負担になる。不安は重荷となって常にあり、高校時代に制服を着崩すことを頑なに嫌っていた私も、不安を和らげるためにブレザーのボタンを閉め、長いスカートを履いていたのだと今になって思った。「呪縛」は、詩乃が見ているだけで痛い。自分が女ということを上手にとって、とにかく尽くす。尽くして尽くして、相手の下僕のような存在になることで自分の存在価値を見出していた。そして、暴力を振るわれてら他の男のところに逃げる。若いからチヤホヤされているということに気づいてないから、このまま歳を重ねることは難しいのではないだろうか。本物のDV男に出会い、殺されてしまいそう。麻希の自分の欲求の出し方が分からないところが私と似ている。私も、後悔しないようにしないように、と生きてきたため、もう、やりたいことがほとんど無くなってしまった。惰性で生きているところはあるかもしれない。麻希が支配欲を持ち始め、変貌していくところに恐怖を感じた。DVをする男の心そのもののようであり、依存していくところが怖い。でも、自分の思い通りになる存在、自分のことをはいはい、と受け入れてくれる存在。そんな子がいたら、依存するに決まっている。私たちはただ受け入れてくれる、嫌われない存在が欲しいだけなのかもしれない。木下に勘違いで殴られ、詩乃のカモにされた岡井が一番かわいそう。可哀想って言っていいのか分からないけれど。
タイトルといい色鮮やかな装丁といい、なんとも火力の強そうな本…と思って手に取った 「可哀想」という言葉が人を見下す言葉になり得ること、主観的に相手を判断する傲慢なものであること、そしてその意味を自覚するしないに関わらず発した相手には深い打撃を与えること 福祉の分野では「可哀想」は禁句だと勝手に思っ...続きを読むていたけど、なるほどこういう理由かと腑に落ちた DV構造を加害者目線の語りから見られたことも収穫だった
あまり知らない作家さんだったけど名前は何となく見たことあった。そして可哀想な蠅?とタイトルが気になった。装丁の綺麗な色と花も。綿矢りささん的なのかな?とか想像した。こちら短編集。まず最初の表題作でがっちり心の臓を掴まれた。めちゃめちゃ面白い!一気にハードルが上がった。その状態で次の「まりこさん」。こ...続きを読むちらも絶妙なブラックさが最高。「重ね着」はまぁまぁサクッと良いお話。最後の「呪縛」も面白かった。作者紹介なんかを見ると「響け!ユーフォニアム」の作者だと。他はこんな感じではないのか?このブラックな感じを求む!
表題を含む四話収録。女性二人が登場したら事件発生の前触れである。人物造形や台詞のリアルさ、駆引きに唸る。行間からいい塩梅で嫌味や烏滸がましさが立ち上る。読み応えあり。
私は猫おばさんの話が1番好き! 気味悪さがあるけど、どんどん読み進めちゃう 響けユーフォニアムの作者と知って、びっくり
中編が4本の構成でさらりと読めるのだが、女性の視点からの考察にややついて行けない点もあった.化け猫屋敷の「まりこさん」も楽しめたが、最後に読んだからか「呪縛」が考えさせられた.大学を休学して父の介護を担った井之頭麻希とマッチングアプリで男を漁る茅野詩乃.ひょんなことから始まった所謂「いい子」の麻希と...続きを読む詩乃の共同生活.彼らのやり取りに現実味が感じられないのは、団塊世代のおっさんの目の付け所が拙いからなのか.もやもやが残った感じだ.姉妹で伏見稲荷に登る「重ね着」も、結婚を遠くの目標にしてその前で蠢く二人を、うまく描写していると感じた.
読んでいて不快に似た感情が湧いてくるような、何ともダークな作品でした。(不快と表現するのは本作に対して最高の褒め言葉) 不穏な空気が漂いつつも続きが気になり、読む手が止められないのが魅力の一つです。本作はもちろんフィクションですが、案外近くに存在していそうなリアルな人間像が不気味さを強めていました。
4篇を収録した短篇集。連作ではないが、どの作品も日常に潜む何気ない怖さを描いている(「重ね着」は除く)。 冒頭に置かれた表題作は、SNSに動画と共に上げたつぶやきがバズったことから、正体不明のアカウントにつきまとわれる女性が主人公。さっさとブロックすればいいのにと思うが、特殊な思考回路の持ち主のよう...続きを読むでそのアカウントの書き込みを読み続ける。世相を反映した作品ではあるが、読んでいてげんなりしてくる。 続く「まりこさん」は、住宅街に必ず1人はいる(?)猫おばさんの話だ。怖すぎる。 「重ね着」は、結婚を控えた妹が突然帰省し、姉を伏見稲荷登山に誘う。収録作品の中では、唯一まともな話だった。 書き下ろしの「呪縛」は本書中最長の作品だ。天使のような悪魔のような女性がもたらす不幸が描かれる。
可哀想、という言葉はなんか嫌だ。結婚できなくて可哀想、ヤングケアラーで可哀想、DVに遭ってて可哀想、猫屋敷で可哀想、蠅で可哀想...本書には可哀想が溢れている。人が「可哀想」と言う時、自分は安全圏にいるというマウントと、そこはかとない見下し感を感じるのが嫌~な気分にさせられるのだろう。そんなブラッキ...続きを読むィな4短編集。『可哀想な蠅』→蠅が可哀想ってなんぞや?読めばなるほど。『まりこさん』→ひぇーん。良かれと思ったのに。『重ね着』→この中では異彩のほのぼの系。好かん。『呪縛』→キョーレツ。エグいぜ。一番の出来。
後味の悪さが残る短編集。 どれも自分の境遇と違うのに、身近にありそうなリアルさを感じる。 「マリコさん」「呪縛」が印象的だった。 詩乃って魔性の女? 弱い存在を守るヒーローでいたつもりが、気付かぬうちに病的なほどの執着心を抱くようになるとは‥。 あぁ怖っ。
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可哀想な蠅
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武田綾乃
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