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Posted by ブクログ
「姉みたいに、困ったときに助けてと言える人間になりたかった。努力していると思われたら恥ずかしいから、何でもできるような顔をして。自尊心の鎧で自分を覆っているうちに、気付けば頑張っている状態が当たり前だと思われるようになっていた。背伸びした分の私の努力は、私だけしか見ていない。幼い頃の側転と同じだ。成功することが当たり前だと思われているから、誰の記憶にも残っていない。」 ー側転と三夏ー
何でも要領よくこなせてしまうというのは羨ましい。いいなあって思う。...でも、本当にそうだろうか?人は誰しも無意識のうちに人に期待する。その期待に答え続けていくうちに、やがて当たり前のことになる。もしかしたら、努力して努力してやっと出来上がった作品かもしれないものを、「あなたのことだもん、できて当たり前よね」という態度を出されたら息が詰まる。このことから、「人に期待する」ということは残酷だなと。誰しもが「こうあるべき」と自分の中にある狭い価値観で相手を固定して、そこから道が逸れた途端に「裏切られた」と声を上げる。相手の見えない部分が見えただけなのに、それの何がいけないんだろう。勝手に期待して、勝手に失望したのはそちらじゃないか。「期待する」という言葉は呪いのようだと多々感じる。
そもそも、面接に向いた眼鏡とは何なのか。面接に向いた服装、面接に向いた髪型、面接に向いた言動。そんなものを求めた先に、一体何があるのだろう。生地からクッキーを作るみたいに人間を型で抜いて、はみ出た部分を切り捨てる。余った端切れをまとめて作り直すこともせず、商品にならない個性はごみ箱へと消えていく。 ー作戦と四角ー
自身の個性が矯正されてゆくような感覚を持ったことがある。少しでも道を踏み外すと、「変わっている人だ」「ちょっとおかしいよね」ってそんな言葉を投げかけられる。段々それが重荷になって、積もりに積もって背負いきれなくて「当たり前」に個性が潰されてゆくのだと思う。「漠然と五体」の主人公のように、世間一般の当たり前と調和できるのであれば、そのような生き方で全く問題は無いのだろうと思う。調和できても出来なくても、合わないなと感じるものからはそっと距離をとって、自分らしくいれる心地よい生き方が出来ればいいなぁとのんびり考える。
今回の作品は全体的に自身が感じたり考えたりしたことのある内容で共感できる部分が多かったなと感じた。「赤点と二万」の大学受験で使わない教科を一生懸命勉強して学校内テストで良い点をとる必要性はあるのかという疑問。「作戦と四角」の生き方について模索中の人間に対して悪気なく吐かれた「可哀想」という言葉。それをどういう意味で使ったのかと、言うタイミングによってはうんざりさせられることもある。同情というものに対して嫌悪を覚えることがある。恐ろしい武器だと感じる。
Posted by ブクログ
いい本だ。
一瞬安っぽそうな表現が多いと思ったが、感情を正確に捉えられているし、その感情に至るまでの出来事も自然に進められている。とてもしっかりした小説だった。
様々な感情が湧き上がってくる青春というジャンルを扱っていながら、物語ごとに1つのテーマが明確に定められているので読みやすかった。
大人の視点から冷静に読むとしょうもないただの高校生活の出来事が描かれているのに、感情移入が出来てしまった。
例えば、
「ブルーライトはもはや我々の親友であり、戦友だ。」
みたいな表現は、大人の視点ではしょうもないけれど、これに納得できるように描かれている。
作者の年齢は若いけれど、物語づくりの基礎は出来上がっているので、若者言葉の安直な表現でも感情移入できて、心を動かされた。
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