青崎有吾のレビュー一覧
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一冊の本をめぐる様々な思惑と導かれる殺意と動機とは
シリーズ四作目、ライトノベルのようなキャラクター設定に対して内容はゴリゴリの古典ミステリというギャップが読み手のわたしの心を毎回惹きつけています。
今回初めてシリーズでダイイングメッセージというものが出てくるが、早々に探偵役の裏染君がダイイングメッセージは意味がないと一刀両断し、あくまでも事件の現場の「事実」から推理を展開し、ダイイングメッセージや動機といった「解釈」の生じるものはそれを裏付けるものとしているところは推理小説として分かりやすさと面白さを両立しているところがあると思う。
だからこその犯人である条件の導き、それに容疑者が適合するかしないかといったロジカルを展開するのが心地よく、そこに一冊の本を巡って様々な思惑が錯綜していつつも、最終的にその本に帰結していく流れはとてもよかった。
キャラクターはワトソン役の柚乃ちゃんが裏染君を段々と意識している中で幼馴染枠や事件を通して親密になっていく今作のヒロイン枠、裏染君をどこか彷彿とさせる妹枠、あまり語れないがさらにもう一人、とここはとてもライトノベルらしさてんこ盛り。
なんやかんやで裏染君には魅力があって、それに惹きつけられる柚乃ちゃん、嫉妬する柚乃ちゃん、振り回される柚乃ちゃん、ラブコメのヒロイン枠にありがちなハプニングなどなど、、ここを語ると長くなってしまいそうだが多分柚乃ちゃんは読み手にとってのヒロイン枠なのであろう。
動機など犯人決定後に明らかになる真相を目にすると今までの重層なロジカルに加え人間らしさのドラマ要素がページ的には少ないものの読み手の中には多く広がる。そのような余白を読み手が感じやすいような展開や掛け合い、登場人物の描写の積み重ねが見事だなと思い、続編を期待しています。 -
Posted by ブクログ
短編で語られるべき「深掘り」と「余白」がそこに
裏染シリーズ3作品目は短編集。普段の殺人事件とは打って変わって身の回りの不思議な出来事に対する謎解きが展開されていた。そういった意味でもキャラクターの深掘りや事件と事件の余白、あの後どうなったという語りが見られる。
個人的に今回の作品で魅力度をぐんと上げたのは裏染妹、彼女も兄のような推理力はあるものの兄のような緻密なロジカルには一歩及ばないところを、彼女の信念や周りを思う気持ちなどといったものでカバーしているところが魅力的にうつり、兄とは違った探偵像がそこにあると思う。
柚乃ちゃんの可愛らしさもまた一段と上がり、祭りでのドタバタ劇や教室での友達との親密さ溢れるシーンには思わず「萌え」といった感情を抱くこともあり、前作品のレビューで伝えた、「裏染探偵→2次元作品への愛」といったものと同様に「我々読み手→作品内のキャラクターへの愛」といった二層構造がまた良くなったと思う。
この作品を読まないと長編が成立しないというものではないが、この作品を読むと長編をより楽しむことができる、そういった「適温」の短編集。一つ一つが短いながらもしっかりとした展開、推理、結末があり読み応えがある。 -
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ネタバレ「踊る人形」の暗号を操る連続殺人鬼アジット・スレイニーが、ついに姿を現す第9巻。彼は自らを、かつてインドで英国と最後まで戦ったマイソール王ティプー・スルタンの転生者だと信じている。「王は強くならねばならぬ」という信念のもと、身体を鍛え、暗号を操り、転生した戦士たちがロンドンに潜んでいると妄想する。
だがその妄想は、数学徒(マスマティシャン)によって巧みに利用されていく。信仰は組織の道具となり、「王の復活」という幻想は別の意図へとねじ曲げられる。クリーピーダンスとイレギュラーズの同盟は彼らと正面衝突へ突き進み、物語は武闘マンガ的熱量を帯びて加速する。
さらに明かされるクリーピーダンス結成の過去、そして「モラン」という姓が示す因縁。個人の狂気、組織の思惑、そのさらに奥で歴史に操られる人間たちの姿が浮かび上がる。これはもはや名探偵の物語ではなく、帝都ロンドンという都市が自らの過去と向き合わされる物語なのかもしれない。今後の展開から目が離せない一冊。 -
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ネタバレシャーロック・ホームズが名声を得る。だがそれは事件を解決した結果ではなく、ワトソンが書いた実録小説がストランド・マガジンで大ヒットしたからだった。有名になるにつれ、ホームズは「我々の知っている名探偵像」へと歪められていく。この巻の面白さは、その過程自体を物語として描いている点にある。ひょっとするとこの作品の世界が真のホームズの世界観なのかも、とワクワクさせてくれる。
ケンジントンで起きる連続惨殺事件は、殺意というよりロンドン全体に向けた歪んだメッセージのように映る。一方、ブロンプトン墓地では孤児集団クリーピーダンスが、死体と同じ記号を刻んだクリスマスカードを発見する。生者の街と死者の領域がつながり、物語は群像劇として加速していく。
さらにマイクロフト・ホームズの名がもたらす不穏な回想、そして原作では技として語られる「バリツ」が「人物」として立ち上がる予感。推理力だけでは生き残れない時代が訪れ、名探偵さえ誰かに守られねばならなくなる。静かに、しかし確実に、このロンドンは世紀末へと近づいている。 -
Posted by ブクログ
第三巻も絶好調。
展開は最初少しモタモタしている感じもするが、人狼の村に役者が揃ってからは息もつかせぬ展開。
どうなるの?、どうなるの?どう落とし前つけるの?の連続で楽しめました。
それぞれのキャラが立っているのでそれだけでも楽しめます。
ミステリーとしても、フーダニットとして優れているし、パラレルワールド物としても読めて秀逸だと思う。
次作に向けて気になる所がてんこ盛りだが、本巻でも作者がサービス精神が旺盛なのでチラ見せしてくれている。ノラの先行きも、津軽の過去も、失われたアヤの下半身の結末も気になって仕方ない。
第4巻も一気に読もうかな。