フランツ・カフカのレビュー一覧
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少しわかる。残りはわからない。
そういう感覚が連続する、ごく短い文章を詰め込んだ巾着袋のような一冊。
わからない、ということについて、編訳者解説のなかで全面的に肯定されます。そして、作者も友人に出した手紙の中で以下のように残しているそうです。
“自分の城の中にある、自分でもまだ知らない広間。それを開く鍵のような働きが、多くの本にはある。”
“ぼくらはそもそも、自分を咬んだり刺したりする本だけを読むべきではないだろうか。
ぼくらが読んでいる本が、頭をガツンと一撃して、ぼくらを目覚めさせてくれないなら、いったい何のために、ぼくらは本を読むのか?
本とは、ぼくらの内の氷結した海を砕く斧でなければならない。”
心の中の不安定な部分をくっきりとさせておいて、そのあとまたそれを、後ろ足で砂をかけて隠してしまうような、詩なのか随想なのかわからない小作品の数々でした。 -
Posted by ブクログ
この作品には、なんとか社会に適応しようとして、無理をすればぎりぎりそれができてしまう人間の苦しみが書かれていると思った。
無理をしての成功と平和だから、それを続けるも地獄、ドロップアウトするも地獄。ドロップアウトした自分には価値がないと恐れていた。
本人からすると綱渡りだが、傍から見ると、大丈夫な人にしか見られない。無理して得ている成果も当たり前のこととされ軽くなっていく。
絶望名人のカフカは、出世に興味がなかったけど、勤めに出ればわりと仕事はできて、出世コースだったと知って、やっぱりという気がした。
未来へ向かう家族に焦点が当たる終わり方が残酷ですごくいい。
小間使いのお婆さんは理解者だったのかな。変わり者のお婆さんも、社会とズレてあり続ける人だから、グレゴールと同調するものがあったのかも。 -
Posted by ブクログ
カフカ…
超人的な絶望家。
超絶ネガティヴ。
あまりのネガティヴ過ぎにかえって笑えてくる。
著者の言う通りだ。
読むと不思議と元気にさせられる。
これは、なかなかの名著だぞ。
超訳「ニーチェの言葉」のカフカ版と言ったところか。
カフカの言葉と解説がワンセットになった86作品。
目次を記す
1.将来に、絶望した!
2.世の中に、絶望した!
3.自分の身体に、絶望した!
4.自分の心の弱さに、絶望した!
5.親に、絶望した!
6.学校に、絶望した!
7.仕事に、絶望した!
8.夢に、絶望した!
9.結婚に、絶望した絶望した!
10.子供を作ることに、絶望した!
11.人づきあいに、絶望した!
12.真実に、絶望した!
13.食べることに、絶望した!
14不眠に、絶望した!
15.病気に
絶望‥‥‥していない!
絶望しまくってます
若い頃に、
「絶望的な状況なんてない。
絶望だと思う心があるだけだ。」
って言う言葉を聞き知った時、「確かに」と心のあり様で、いかようにでも考えられることを学んだことを思い出した。
それにしても、カフカ…
この絶望っぷりは、もはやユーモアだよ。
絶望してるのに、なんて、魅力的なんだろ…
絶望してるのに、なんで、魅力的なんだろ…
読んでいて、
カフカがチャーミングに思えて仕方がなかった。
飛び越えずして、飛び越えた稀有な人。カフカ。
超絶神経質。神経質の神。カフカ。
こんなに勇気を与えてくれるとは…
訳者の解説も、すさまじくわかりやすく良い。
自分に自信、確信が持てない人に、
ぜひ手に取ってもらいたい作品だ。
「絶望」がこんなにも人間性を浮き彫りにするものか…
絶望を知ることが、「生きる糧」になるのかもしれない。
今で言うところの、夢想家。ニート。宇宙人。
のような人。
カフカのXがあれば、フォロワーめちゃくちゃ多いと思う。
作品をフォローしようと思うのでした。 -
Posted by ブクログ
絶望を表現するにしては淡々とした文体。でも読みやすくて良い。最初の3篇連続で末尾が「いや、〜〜さえ〜ない」で笑った。あまりに無力。
好きなのは〔道に迷う〕、〔夏だった〕。私は常に「ずっと倒れたままでいたい……」「このまま寝かせておいてほしい。ずっとこのまま……」と思っているので……
〔道に迷う〕は「うっそうとした暗い森だが、道の上にはわずかな空も見える。それでもわたしは、果てしなく、絶望的に、道に迷う」という言葉も突き刺さった。仕事に迷走し転職を繰り返していた時、どの職場でも全部自分のせいにしてなんとかしようとして空回って更に自己嫌悪して。その時は自覚もなかったけど今思うと〔なにが?〕のように気づかないまま自分で自分を苦しめてたんだなあ。
〔灌木〕にあるように、荒地に植えられても「わたしにその価値がない」のではなく「わたしほど豊かに茂る灌木は他にないのだから」と思えてたら良かったのにと、今更ながら思う。
他にも面白い篇がたくさんあるけどこれ以上感想書くと個人史というか黒歴史を開陳することになってしまうのでやめますが!でも誰が読んでも心に刺さる篇があるはず。面白い。さすがカフカ。 -
Posted by ブクログ
1958年初版なのでフォントの読みにくさはあるものの、訳の言葉に古さを全く感じませんでした。
1編目は中編の『変身』。
結末を知らなかったので、この本をどう読んだらいいのか手探りで読んでいきました。朝、いきなり毒虫になった体を苦労しながら動かす姿に、マンガ化するなら笑えるかも、などと想像しながら読んでいきました。しかし結末は…
まず、毒虫としての表現が凄すぎる。足は勝手に動くし、ねばねばが出るし、虫嫌いのひとは絶対に受け付けないと思います。
主人公・グレゴールの行動が徐々に虫らしくなっていくところに少し笑ってしまう部分があるけれど、とても哀しい。それに正比例して家族からの扱いがぞんざいになっていくのが更に哀しい。
結末に向かっていくにしたがってグレゴールだけでなく、家族が疲弊していく姿は読んでいて辛く、読んでいる私自身も疲弊していきました。
2編目は短編の『断食芸人』。
断食をして自分自身を見世物にしている男の話。ひたすら虚しい。
どちらのお話もアイデアも表現も想像を超えています。確実に名作だと思います。