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平凡なサラリーマンがある朝、巨大な虫けらに変身した状態で目覚める──。不条理文学の旗手か、不器用なサラリーマン作家か。新たなカフカ像にもとづく新訳と訳者解説によって、不朽の名作がよみがえる。
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Posted by ブクログ
有名な出だしの意味不明さと、海外古典の敷居の高さ、さらに『海辺のカフカ』の影響でなんとなく敬遠していたのだけれど、思い切って開いてみたら意外にも軽やかな世界。虫は何の象徴か、と考えると底なし沼なのだろうけれど、素直に物語が面白い。 「虫けら」がどんな姿なのか、あえて詳しく描かれていないところがいい。...続きを読む 家族が虫を嫌悪しながらも同居を続けてしまうあたり、現代の引きこもりや介護の問題と重なる。でも、書かれた時代にはそんな社会的背景はなかったはずで、では一体何の象徴か。考えたらハマる深くて奇妙な読書体験。おすすめ。
グレゴールの立場、ザムザ一家(グレゴール以外)の立場、どちらの気持ちも分かる。…お互い、思う通りの結末を運ぶのは難しすぎるこの世の中。昔も今も、変わらずどうしようもないことってありますね。
論理的な理由づけを放棄して読める本は貴重で好きだ。作中に散りばめられている全ての要素に想像の余地があり読んでいて楽しかった。
文庫本の3分の1が解説を占めてたから意外と短い物語で驚いた。 カフカ的なんて言葉が出るくらいには人々に衝撃を与えた作品、なるほど確かに他にないキレと視点がある。 家族とは?自分とは? 「起きたら虫になってた」という究極の不条理が、誰でも抱えうる不安や恐怖を紐解いて行く。 走ってたら虎になった訳でもな...続きを読むく、悪い魔法使いにカエルにされた訳でもなく、なんの理由もなく虫に。 振り切れた不条理が面白い。 個人的にはカフカの陰鬱な自己嫌悪が如実に出た作品に見える。 かなり好き。 訳した川島隆さんの解説がかなり読み応えがあった。 「ああ神様」の翻訳者により異なる訳が面白かった。 表紙絵の変遷も面白かった。 角川文庫の表紙も良い表紙だなと思う。 ザムザが変身した虫はゴキブリってのが日本でのイメージらしいけど、なんとなく甲虫をイメージして読んでたからフンコロガシって解釈には納得。 個人的にはコガネムシ的なのだと思ってる。 色んな映画、アニメ、ゲームに与えている影響が多い。 個人的には「東京喰種」で見たのが1番最初かも。 「ゴジラ シンギュラポイント」でも言及があるけど、その時例としてペロ2というキャラが虫に変身するんだけどそのときは芋虫なんだよな。 あと自分が1番好きな映画、「佐々木、イン、マイマイン」にて、主人公悠二が佐々木から受け取る文庫本が「変身」らしい。 佐々木の家庭を考えると彼がこの本を好んで読んでたのもなんか分かるし、悠二に託したのもまた新しい意味が見えてくる。
ずっと読みたいと思っていたのと、某ゲームのキャラクターの元ネタということで購入。 主人公に降かかる何もかもが不条理で、家族に尽くしてたのになんで……っていたたまれない気持ちになりました。
100ページほどしかない短い話だったが、とても面白く救いのない話だった。 この本の素晴らしいところは訳者解説がついているところだろう。70ページ近い訳者解説により「変身」だけでなく、フランツ・カフカについても学ぶことができる。
『100分de名著』で取り上げられた川島隆氏の新訳。 ある朝目覚めたら、巨大な虫に変身していたグレゴール。虫になった理由も、回復の方法もわからない。無論仕事にも行けない。一体彼はどうするのか…? ものすごく大変な出来事に遭遇しているのに、グレゴールが淡々と落ち着いているのがシャープで怖い。彼が気...続きを読むにするのは、もっぱら遅刻した出張や、実家の借金や、妹の進路であって、自分の変身の回復法ではないのだ。まずそこで、私たちは驚き、この作品に釘付けになる。 まるで身体障害のある人を急に抱えた家族のような様相を呈する家族たち。困惑するなという方が無理な、想像し難い現実に、一家はかつての和やかな家庭から、貧しい家庭に変貌し始める。 嫌々世話をしながら、だんだんグレゴールは疎外される。ついに彼は、父親が反射的に投げたりんごで大怪我をし、誰にも見捨てられて衰弱死する。 りんごが、グレゴールに対する社会的追放の鉄槌であり、家具の剥奪が、彼が『人間であった』ところから、ものの役に立たない生き物へ、その立場が転落させられるのが、無情であり、無常でもある。まだ彼には、美しい絵に心惹かれ、妹のヴァイオリンに思いを寄せる知性があるというのに、それは誰にも気づかれず、顧みられることがない。淡々と滑稽味さえにじませて描かれているが、なんと絶望的な悲劇だろうか。もっと怖いのは、読んでいるこちらまで、淡々と事態を観察していることだ。ふと気づいた自分の眼差しが恐ろしいのだ。だが、衝撃はそこで終わらない。 虫に変わってしまった家族の一員を持て余すのは想像できるとしても、後半に妹がグレゴールを放逐することを提案するところ、鈍器で殴られたような驚きが走る。 グレゴールが家族を『いじめて』いるというのだ。虫に変身した責任は、グレゴールにはない。不慮の事態だし、基本彼は身を隠している。それでも、ヴァイオリン、いや、愛妹に心惹かれて、団らんの場に思わず出てきてしまっただけなのに。『いじめるばかり』と非難されるとは。たった数行の妹のセリフの、破壊力といったら。解釈や鑑賞を、一瞬吹き飛ばす衝撃がある。 グレゴールの死後の家族の外出が、輝かしく楽しげでヨーロッパ的近代市民層の典型的憩いの姿で描かれているのも、冒頭からずっとモノクロームの世界だったところに、急に色がついて彩りが差したようなのが、また変に美しくて、なんとも言えない気持ちになる。美しいと感じる私が、やはり怖い。 ラスト、絶筆のように幕切れとなる。妹のぐっと伸ばした背。その靴の下で、今しもグレゴールと私が、一緒に踏まれて消えた。彼女の靴底には、もちろん汚れなどついていない。かがやくような豊かな若さがあるだけだ。 実存主義って諸刃の剣。なんて怖いんだろう。この小説に対して『答え』なんて出るのか?あの、読書から来ると思えない殴打感のある衝撃。それが答えではないだろうか。次は『城』読んでみようかな。ヤバい。中毒になりそう。 巻末に川島氏による、懇切な作品解説とカフカについての評伝が付されていて、非常に充実した内容だった。これを読むと、カフカの書簡集も読みたくなるだろう。非常に読みやすく、明晰な訳で、強くお勧めしたい。
朝起きたら、虫に変わっていたグレゴール。そのぶっとび変身ほどではないけど、望まず変身してしまうことは、人にはあるのでは?と思いました。 そのとき、どうすればいい??最後に救いやヒントはある??と読み進めましたが…。自分なりの解釈がうまくできないままです。 なので、ほかの方の感想を読みまくりました...続きを読む!笑 じっくり消化していきたいです。
虫の描写が鮮明ですげー気持ち悪い ただインパクトに残る内容ではあった 表紙見ただけで思い出せる 感想でなくても心に残れば名作
ダウンタウンの"トカゲのおっさん"の源流ってコレ? 私はこの作品が世界的に有名になって以後に生まれました。いくら読んだことがなくても、それなりの年数を送ってきた人生の中で『変身』がどんな物語なのか1ミリも知らない、という方が難しいでしょうから、どこまで新鮮に楽しめるかが気になりましたが、結果的には...続きを読むとても楽しく読めました。ちなみに私は「主人公がある日、虫になった」としか知りませんでした(「しか」と書きましたけど、それがほぼ全てだった、というのが読後の印象)。 『変身』の新訳版が出たと聞き、海外の純文学に不慣れな自分でも読みやすいかなと手に取ったのがキッカケでしたが、その予想はドンピシャ当たりました。とても読みやすい!と言っても他の訳を読んでいないので比較はできませんが。 物語の舞台はずっと主人公の実家、9割以上が主人公の部屋の中です。しかし閉塞感や停滞は感じませんし、ストーリーの割に文体そのものには重さがなく、文章のテンポも一定で、まったく絵変わりしないのに不思議と飽きずにサクサク読めます。 ネタバレになりますが、印象的だったのは最後の場面です。訳者解説でも触れられていますが、それまでは地の文で「父親」「母親」「妹」と書かれていたのが、主人公が死んだ瞬間から先は「ザムザ氏」「ザムザ夫人」「グレーテ」に置き換わっていて、主人公と家族の関係性が完全に断ち切られたことが文体そのものから明確に伝わり、残酷さが際立っています。生前の主人公に対する疎みや憎しみを隠さなくなっていった家族の描写も怖いですが、まるで最初から主人公なんて存在していなかったかのような白々しい晴れやかさに溢れているラストの方が圧倒的に恐ろしいです。まるでマネキンが演技しているような絵が浮かんでゾッとします。 読後ネット検索して、『変身』には古今さまざまな解釈があることがわかりました。私には実存主義やシオニズムなど難しいことは分かりませんが、様々な解釈が可能なくらい、メッセージがない空っぽなもの(ディスじゃないつもりです!)なのでは?と思いました。カフカが読者の解釈をリードするような意図もまるで感じません。シュールなコントを見てるような気分で、『ダウンタウンのごっつええ感じ』の後期の名作コントとされている『トカゲのおっさん』にも似た不条理性を感じました。 私もあえて何か見立てのようなことをするとしたら、ストレスによる心身の不調から、主人公が自分が虫になったと思いこんだ物話ではないのかと想像しました。朝、目を覚ますと出発時間をとうに過ぎており、体を起こそうにも虫の体躯に慣れていなくて起き上がることも困難な様子は、抑鬱状態で朝がつらい人の典型に見えます。虫の脚からでる毒液が、部屋をはいずりまわったせいで部屋の床や壁にこびりついた描写がありますが、それはトイレで排泄をすることが叶わなくなった主人公の便だったりするのかなーとか。 なぜ虫になったのかの理由は明かされず、遠因を匂わせるようなことも一切なく、気持ちいい不条理さでした。出だしの一行目からもう虫になっているのもとても気持ちがよくて思わず吹いてしまいました。唐突すぎる!っていう(笑) 巻末(と言うにはページ量が多すぎる!"併載"と言うべきか)の訳者解説も本編と同じくらい読み応えがあり、はじめてカフカに触れるカフカ入門者にもうってつけです。
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