【感想・ネタバレ】カフカ断片集―海辺の貝殻のようにうつろで、ひと足でふみつぶされそうだ―(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

カフカは完成した作品の他に、手記やノート等に多くの断片を残した。その短く、未完成な小説のかけらは人々を魅了し、断片こそがカフカだという評価もあるほど。そこに記されたなぜか笑える絶望的な感情、卓越した語彙力で発せられるネガティブな嘆き、不条理で不可解な物語、そして息をのむほど美しい言葉。誰よりも悲観的で人間らしく生きたカフカが贈る極上の言葉たち。完全新訳で登場。(解説・頭木弘樹)

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

絶望を表現するにしては淡々とした文体。でも読みやすくて良い。最初の3篇連続で末尾が「いや、〜〜さえ〜ない」で笑った。あまりに無力。

好きなのは〔道に迷う〕、〔夏だった〕。私は常に「ずっと倒れたままでいたい……」「このまま寝かせておいてほしい。ずっとこのまま……」と思っているので……

〔道に迷う〕は「うっそうとした暗い森だが、道の上にはわずかな空も見える。それでもわたしは、果てしなく、絶望的に、道に迷う」という言葉も突き刺さった。仕事に迷走し転職を繰り返していた時、どの職場でも全部自分のせいにしてなんとかしようとして空回って更に自己嫌悪して。その時は自覚もなかったけど今思うと〔なにが?〕のように気づかないまま自分で自分を苦しめてたんだなあ。

〔灌木〕にあるように、荒地に植えられても「わたしにその価値がない」のではなく「わたしほど豊かに茂る灌木は他にないのだから」と思えてたら良かったのにと、今更ながら思う。

他にも面白い篇がたくさんあるけどこれ以上感想書くと個人史というか黒歴史を開陳することになってしまうのでやめますが!でも誰が読んでも心に刺さる篇があるはず。面白い。さすがカフカ。

0
2025年08月31日

Posted by ブクログ

仕事で帰宅が遅くなり、疲れて何もできないような日に少しずつ読んでいた。
文章のローテンションさと疲労感、徒労、無力感を描いた内容が自分の疲労感に合っていた。
癒やしというのか共感というのか、よくわからない質の安らぎを得られて睡眠へと軟着陸できる。
短いので読書のやめどころが多いのも良い。

0
2025年06月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

『変身』を読んだときに感じた、カフカ作品独特の読み心地をたっぷり堪能できる本だった。

どうしようもない不安、自己肯定感の欠如、悪夢のような断片。
そういうものがカフカの文章には漂っている。
あまりにも自分を卑下しすぎていて、「そんなに言わなくても……!」と逆におかしさを感じてしまうことすらあった。
しかし、起きている出来事も人物も自分とは違うのに、「これは私のことだ」と思ってしまうことも多かった。
カフカのこういう部分に惹かれるのだと思う。

編訳者解説で、カフカの作品は大半が未完だということを知って驚いた。
しかしその未完の状態こそが、カフカ作品の特徴で魅力だという。
この断片集を読んで、もっとカフカの作品を読んでみたくなった。

.

いつもわたしをすりつぶしている石臼。その上下の石のあいだからわたしを引っぱり出してくれるものであれば、それがたとえ何であろうと、引っぱり出されるときの苦痛がひどすぎないかぎり、ありがたいことだ。
(P37)

.

以前のわたしは、自分の問いかけになぜ答えが返ってこないのか、不思議だった。
今のわたしは、なぜ問いかけることができると信じていたのか、不思議だ。
いや、信じてなんかいなかった。ただ、問いかけてみただけだ。
(P64)

.

もっと下まで行けとおまえは言うが、もうわたしはどん底にいる。
息が詰まりそうだし、すでに深すぎるが、それでも、ここにいなければならないのなら、そうしよう。
なんてところだ! たぶんこれより下はないだろう。
それでもわたしはここにとどまろう。
だから、もうこれ以上、下に行かせようとしないでくれ。
(P111)

0
2025年01月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

翻訳者解説がとても良かったです。
カフカの世界への間口を広げてくれているよう。

『わからなくても気にする必要はない』

実際、分かったような分からないようなが、グラグラと何度も繰り返すのが、カフカ作品です。

失敗することさえできない、隣人までの距離、法の前に、平穏を嘆く、虚栄心、使者、下へ、せめて、すべて無駄だった、心を剣で突き刺されたとき、志願囚人、海辺の貝殻のように
などが好きです。

しかし、読み返すたび変わるような気もするし、他の人は全く違ったりするでしょう。
誰かに刺さらなくても、また他の誰かにはきっと刺さる文節があるはず。

0
2024年11月24日

Posted by ブクログ

 カフカが手記やノートに書き遺したものを収録。大半が未完成あるいは断片的なものであるが、編者の解説によると、生前の発表された作品がごくわずかで、カフカ作品のほとんどが意向だったという。しかしだからといって、作品の魅力が損なわれるのではない。むしろ、未完だからこそ、カフカ独自の魅力を醸し出しているという。

0
2024年12月01日

Posted by ブクログ

カフカ.名前は知っていたが生前の作品は少なく、親友のブロートが残された短編や断片、日記や手紙などを出版して世の中に知られるようになった由.本書の編訳者の頭木弘樹さんが「波」に‘’「わからない」がわからせてくれること‘’ で素晴らしい解説を披露してくれて、それを読んで捲ってみることにした.読んでいて何か不思議な感覚に陥ることが度々で、何度も読み返しては納得する文が数多くあった.例えば「家庭生活、友人関係、結婚、仕事、文学など、あらゆることに、わたしは失敗する。 いや、失敗することさえできない。」 「正しい道筋を永遠に失ってしまった。そのことを、人々はなんとも深く確信している。そして、なんとも無関心でいる。」

0
2024年10月16日

Posted by ブクログ

カフカは変身しか読んでない
城は部屋のどっかにあるけど
最初のほうしか読んでない
その程度のカフカ好きだが
変身は大好き
カフカって名前も空気抜けてて好き
だからこれが出たときは
絶対読まなきゃ!!!
って買ったんだが
ちょっと忘れてた

読みだしたら
まぁ断片集なので
あっと言う間だったけど
たまらなく染み入る時間だった 

独房というわけではなかったが
最高にカフカじゃない?!
って一瞬吹き出した
大好きすぎるな

結構昔の人だけど
いや最近、誰かが書いたっしょ?
って思っちゃうほど
若さというかこじらせてる中年っぷりが
今も昔もこじらせてるやつって
こうなんだな!って
愛おしくも嬉しくもある

とにかく
たまらん
好き

星は4つ

0
2024年09月02日

Posted by ブクログ

モヤつき、理解しきれず、かと言って不快では無く。ずっと頭の中に澱のように残りそうな言葉が並んでいて、ただそれでも良いと感じられるのが不思議。それで良しとしておきたい。解説が素晴らしく、分からないままにしておいて、また読み返せばよいと思える。

0
2024年07月14日

Posted by ブクログ

#カフカ断片集
#カフカ
#フランツカフカ

初めてのカフカなのに断片から
スタートするっていう謎ムーブ。
(初めてだから断片にしたけど)

物語の種、絶望の種、言葉の種、
って感じで割と好きだったな〜

種と聞くと、これから花が咲くってイメージが来ると思うんだけど、カフカは別に花を咲かせることを目的としてない感じ。

なんだか始まっていないから
終われないような胸のざわつきを
感じる言葉の端きれって感じで、
だからこそ想像が膨らむものが多い。

どこから来てどこに行くかも分からない
所在のない物語のカケラって感じが強くて、
夢見てるみたいだった…ドリームコアすぎる笑

夢ってあっちこっち行って結局よく分からなかったり、部分が抜け落ちていたりするじゃん、なのに何となく心にざらつきが残ってる感じ。あの感じが断片にあった

その中にもストレートに伝わってくる断片も沢山あったのが面白くて、未完だからこその無限の可能性ってのも分かる気がする。

カフカという人間自身に興味が湧いてくる。

解説もなかなか面白くてそういう見方をすると確かにそうだな〜って素直に思った。

0
2024年07月11日

Posted by ブクログ

カフカオタクの著者によるカフカ断片セレクションという感じ。
読んでる感覚はちょっと詩に近いかも。その名のとおり断片なので読みやすかった。

0
2024年06月29日

Posted by ブクログ

装丁や中身はとても好きだと思ったが、帯の文言が個人的には好きではなかった。
短くもじんわりと残るフレーズが多く、素敵な作品群だった。

0
2024年06月28日

Posted by ブクログ

カフカの『変身』を読んだだけでは、全てを理解することは出来なかったけど、解説に[この断片を読んでおくことによって、自分がそのような状態に立たされた時にカフカが道を教えてくれる]といった文章があって納得できた。

とりあえず今の自分に響いた断片メモを。
【自分のなかの部屋】【道は無限】【死後の評価】

自分の城の中にある、自分でもまだ知らない広間。それを開く鍵のような働きが、多くの本にはある。

0
2024年06月23日

Posted by ブクログ

わからない。彼は何を伝えたいのだろう。
そんな思いもありつつ、気づいたらどんどんと断片たちに吸い込まれていった。
たまに、わたしもわかる、と思う瞬間がやってきて、カフカと同じ気持ちになったようで、私の気持ちを文章にしてくれたようで、嬉しくなる。
実は今回初めてカフカに触れた。
正直にいうと今も難しい。わからない。
でもなぜか、彼をもっと知りたいと思ったし、
彼の言葉にもっと共感できる瞬間が来るのが待ち遠しいとも思った。

0
2024年06月13日

Posted by ブクログ

「骨の痛み」・・・
痛みを感じるのは全て自分に原因があるから。何も変えようとしないのは、結局すべての元凶が自分だから。生きている限り、この痛みから逃れることはできない。

「人生を呪い」・・・
この世に生まれてこないことこそが最大の幸福である。世の中は絶望ばかりだ。幸福に生きれる人などほんのひと握り。残すは泥水すすり地べたを這いつくばる亡者のみ。この世に生まれないことこそがいちばんの幸せなのだ。

「せめて」・・・
どんなに願っても幸せになれない、穏やかに暮らせない。それならばいっそのこと静かに眠らせてほしい。
諦観の情。あきらめ。

「告白と嘘」・・・
人の本質は言葉では捉えられない。だから身の丈を言い表そうとするときには必ず嘘が混じる。つまり真実ではないということだ。そしてそれは告白でもある。合唱の中に何らかの真実が見いだせるのは、嘘が寄り集まりそれが真実へと近づいていくからだ。

「別のことばかりが頭に浮かぶ」
ときどき反省をしなければ本来の自分を見失ってしまう。同じ道を歩いていたと思っていてもぼんやり歩いていれば曲がるところを直進してしまいかねない。そして自分を見失ったが最期、2度と戻ってくることはない。


「コメント」・・・
社会から外れた人間が社会に追いつこうと懸命に生きようとする。でも独力ではどうにもいかず助けを求めるが、周りは無駄だと言わんばかりに彼を拒絶する。

「すべて無駄だった」・・・
頑張ってみたものの、結局なにもかも上手くいくことはなかった。全てやり切ったという清々しさと新たなスタートの決意をする。あるいは、全てが嫌になって…。

「うまくいかないこと」・・・
放置することも大事。

「教育とは」・・・
教育というよりマインドコントロール。
骨抜きにされた子どもとは?
まっさらな画用紙には何色で絵を描こうか。青でも赤でもいいな。そうだ、黒で塗りつぶすのはどうだろう。

「心を剣で突き刺されたとき」・・・
慣れてしまったか、感情を失ったか。

「善の星空」・・・
夜空があるから星は輝く。悪があるから善は光る。

「天の沈黙」・・・
天に願っても何もしてくれない無情さ。憐れみさえ与えてくれない木石のような天。何をしても無駄だという絶望感。

「自殺者」・・・
自殺者は自死を望む囚人。自殺者に自由はない。希望もない。せめて自死の自由を…。

「釘の先端を壁が感じるように」・・・
彼はこめかみに銃口を感じる。自分で突きつけているのか誰かに突きつけられているのか。誰かに突きつけられているなら、それを感じるはず。だが彼はそれを感じなかった。つまり銃を向けられて当然だと思っている。すなわち自分で自分に銃を向けている。

「秋の道」・・・
何が秋の道なのだろうか。人生?心?

「準備不足」・・・
曖昧な時代の中で何を準備すべきなのか。

「志願囚人」・・・
囚人でい続けたかったのか。自分は囚人ではないと気づくことができなかったのか。どっちだろう。

「死後の評価」・・・
人の評価は死んだ後に決まる。
【人は、死んだあとにはじめて、ひとりきりになったときにはじめて、その人らしく開花する】
【死とは、死者にとって、煙突掃除人の土曜の夜のようなもので、身体から煤を洗い落とすのだ】

*あとがき
【そんなふうに、意味のわからない言葉でも、読んでおくと、あとで何かあったときに思い出せる。そして、思い出せる言葉があると、自分に何が起きたのか、より理解できるし、こういう現実にぶつかったのは自分だけではないと、孤独にならずにすむ。そして、言葉にできないもやもやした思いを、言葉にしてもらえるのは、とても救われる場合がある】
言葉を持っていると、生きていく中で、パズルのピースとピースがカチッとハマったように、その言葉が現実に落とし込まれるときがある。そういう瞬間を大事にするために、ひとつひとつの言葉を大切に仕舞っておきたい。いつでも取り出せるように。


0
2024年06月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

カフカの手記やノートに残された断片。短く、未完成のまま残された小説のかけらたち。 「小説のかけら」やネガティブな嘆き、読んでいると悩んでいるカフカの姿が感じられる。 断片も面白いし解説、紹介も良かった。

0
2025年11月24日

Posted by ブクログ

同作者著『変身』と一緒に読んでみました。

名言集みたいな詩集みたいな、、謎本。

カフカが好きならバイブルになりうるし、一方全く響かない人も居るような、、。

読み手の姿勢や状態によって一文一文の重みが変化しそう。(変身に対して変化。自ら重ねた韻を紹介する丁寧スタイル)

0
2025年11月03日

Posted by ブクログ

カフカの断片。
短編ではない。
ネタ帳から引っ張り出してきたような、とりあえず思いついたのを書き留めたようなものがいっぱい。
しかし中はほぼネガティブ満載のフレーズ。
なんというか、できるのにやろうとしない感の言葉が多いなあ。
と言いつつも何言ってるかよくわからんものがほとんどです。
彼自身が描いた落書きも載ってます。

0
2025年06月09日

Posted by ブクログ

小説だとどうしても必要な状況説明や起承転結なんかが断片にはないため、作者の文章のサビだけを味わえる。贅沢。
暗いんだけどどこか突き放すようなクールさもあって、よかった。

0
2025年02月19日

Posted by ブクログ

「変身」以来。「審判」は積読中。
『法の前に』は、カフカが感じた実際の法への失望なのかな?
絶望、混乱、孤独、喪失、迷い、息苦しさ、生き苦しさの中、訳者がつけてくれたタイトルのおかげでちょっとファニーな雰囲気もある。おかしな本でした。

〔失敗することさえできない〕 〔井戸〕
〔隣人までの距離〕 〔道に迷う〕
〔助けて!〕 〔何もわたしをとどめない〕
〔灌木かんぼく〕 〔問いかけ〕
〔道は無限〕 〔あいだの魚〕
『コメント』 〔すべて無駄だった〕
〔志願囚人〕 〔自分が生きていること〕
〔自由とは〕 「プロメテウス」 〔沈黙〕
ユーモア大賞は〔自分を建て直す〕かな。コサックダンスを踊るカフカを想像したらクスリとした。本人にとっては笑い事では無いだろうけど。

訳者によるフランツ・カフカ紹介を先に読むことによって、カフカの背景を前提に断片を読み進めることで、断片=カフカの当時の心情と考えながら読むことができる。
一方、カフカの背景を知らずに読むことで、断片と自分の内面が向き合って、断片が読者の心のひび割れに少し水を差してくれるような、そんな気分にもなる。
私は背景を知らずに読みました。
これから読む人は、どんな読み方が自分に合うか、楽しみながら読めるといいなと思います。

0
2024年12月15日

Posted by ブクログ

うっかり思わせぶりなことを書いてしまったら、僕のような者は、底が知れてしまうどころか、すっかり底が割れてしまうことにもなりかねない。
なりかねない、どころか既にやらかしてしまっている?
ああ恥ずかしい。

たとえばカフカ、生前から多大な評価を受け、百歳まで書き続けていたとしたら、その“断片”いかなるものを残しただろうか。
 
一片一片がゲームみたいで、たのしかった。

0
2024年08月14日

Posted by ブクログ

詩が苦手なのもあって「??」と思うことばかりだったけど、後書きの「ピンボケの写真が鮮明な写真になると味がなくなる」にはなるほどなぁと。

0
2024年07月20日

Posted by ブクログ

短編ではなく断片。
数行のものから数ページのものまである。
だいたい不条理でシニカルだ。
そして、断片なので、そこから物語が展開していく訳でもオチがある訳でもない。
しかし、未完成の作品が多いカフカの作品としては、これが正しいカフカなのかもしれない。
断片がもやっと心に突き刺さるのだ。

0
2024年07月17日

Posted by ブクログ

初めてカフカの文章に触れた。
どこまでも後ろ向きで、絶望や停滞、諦め、挫折などが散りばめられていた。
だからこそ、救いがあるのかも。

0
2024年06月24日

Posted by ブクログ

中に入りたい男に向かって門番が言う「俺は一番下っ端の門番で、これより門番はどんどん強くなる」という漫画でよくある台詞がカフカで読めるとは思わなかった。
あぁそういうことかと思わせる落ちと共に「法の前に」というこの作品が好きで印象に残った。

0
2024年06月09日

「小説」ランキング