北村薫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
自分の中では、このシリーズは「鉄板」である。
今月はとにかく忙しいので、新しい知り合いを作るというより、知り合いに会いに行くような気持ちで本書を手にする。
文芸編集者の美希とそのお父さんはもちろん、先輩の百合原さん、書籍編集部の筏、後輩で文庫部の大村亜由美などの文宝出版の面々も健在。
百合原はとうとう編集長に出世する。
筏と美希は、もしかするとその後つきあっちゃったりするのかな、という雰囲気を感じなくもない。
この巻では、時代小説家、村山先生の存在感が大きい。
余計なことだが、今時各社の編集者が集まってソフトボール(や野球)をするようなことってあるんだろうか?
作品の中にもコロナ禍はやってき -
「リセット」について
この「リセット」は、北村薫さんの「時と人の三部作」の第3弾で、これで完結ですね。
「スキップ」では未来へのタイムスリップ、「ターン」では同じ時の繰り返しが描かれたのですが、この「リセット」はどうなるのだろうと、とても楽しみにしていた作品です。
しかし、開いてみると、戦前のお嬢様の生活描写がつらつらと続き、さらに時代は戦争に突入。
北村薫さんの文章なので読みづらいということはなかったのですが、正直この手の話は苦手なので、最初はどうなることかと思いました。
ごく普通の淡々とした日常が描かれ、恋の予感などはあるものの、特に何も起こりません。
さらに第2部に入ってみると、私だけかもしれないのです -
Posted by ブクログ
今回もお父さんはすごい。
雑誌編集者の田川美希にとって、実家の父はめっちゃ頼りになるドラえもんみたい。
作家の先生とソフトボールで接待したり、古い本の話をしたり、日常の中からポロっと出てくる謎をそのままにしないで探っていく。
古今亭志ん朝の話や、菊池寛の将棋の話、小津安二郎の映画の話は、名前だけしか知らない人たちですけど、知りたくなっちゃうんです。
小津安二郎映画はあの時代、映画館で観た人にしかわからない感情があるんだ、と。
古今亭志ん朝のあの時、あの場所の口演の拍手にしかない盛り上がりを、詳しく調べたお父さんは解き明かしてくれる。
今作は途中からコロナ禍でのミートや、イベントが無くなった様 -
Posted by ブクログ
ネタバレシリーズ4作目。今のところ最新作。実にシンプルなタイトルだよなぁ。多分続くんだと思うけど。珍しく5編しか入ってなかった。その分、一つ一つは長めなのかな。前作で美希の恋愛が始まるのかと思ったけど、今作は全然出てこなかった。コロナ禍のせいか?もう美希もベテランの域なんだなぁ。今回は割と続けて集中して読めたせいか、一つ一つも繋がりが見えて面白かった。落語の話が多かったな。まぁそれはいつもか。松本清張の『点と線』の話も面白かった。トリック云々の話ではない、というのも、なるほどなぁと思う。確かに、ミステリとか推理小説と言われるものが私は好きだけど、大事なのはトリックではないからなぁ。いわゆる本格物は苦手
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Posted by ブクログ
又吉直樹さんのお勧めの本だったので興味を持って読み進めました。9歳のさきちゃんと作家のお母さんの、ほのぼのとしたハートフルな短編が12篇。おーなり由子さんのメルヘンティックな挿絵が心を癒します。
読書心を刺激したのは、母と子の二人の会話や、さきちゃんの想像力が、なぜかサン=テグジュペリの星の王子さまを想起したからです。内容は全然違いますが、星屑のように言葉にきらめきやウィットがあるところです。
二人の日常はありふれた何気ない日常であるにもかかわらず、お母さんや さきちゃんの想像力によって、まるで魔法をかけたように新鮮で好奇心に溢れた楽しい世界へと誘う。それは時に怖かったり、哀しかったりするこ -
Posted by ブクログ
うーん、高校生の女の子が気づいたら25年後の自分になっていて娘も夫も職業もあった、って展開はめちゃくちゃ面白いんだけどな。内容はなんというか中身だけ新米教師の奮闘記、という感じ。タイムスリップ的な進歩した文明に驚く描写などは面白い。テーマとしては人生讃歌なのだろうけど、不条理な上に答え合わせもはっきりした救いもないまま終わるのは残念。それに時間を吹き飛ばされてしまい忘れられてしまった周囲の人間の困惑や苦悩の描写が欠けてると思う。いなくなってしまった25年分の人格についても消えてしまったなら救いがなさすぎる。それにどうしてもケン・グリムウッドのリプレイを思い出して読んでしまったな。長編なのに中盤