北村薫のレビュー一覧
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題材としてはよくあるループものなのだけど、人物の描写や心情がとても丁寧に描かれている作品だなと思った。
二人称の書き振りも私としては珍しく新鮮だったし、主人公の語り口も丁寧で人の良さが出ていて、とても私好みだった
前半は主人公の人柄を自然に伝えつつ、このループの絶望感の演出がとてもうまい。
実際、読んでいて私もこの話このままずっとこのループの話なのかなと若干絶望していたところだったので、そこも計算してるのだとしたら凄い。術中にはまってる。
1997年発行の作品なので2025年の今から28年も前の作品だけど、今読んでも全く新鮮さがあせず、面白かった -
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『スキップ』に続いて、時と人シリーズの第二弾。
29歳の版画家の真希はある夏の午後、
運転中に事故に遭いダンプと衝突してしまう。
気がつくと、自宅の座椅子で微睡から目覚める自分がいた。
15時15分。いつも通りの家、いつも通りの外。
だが、この世界には真希以外誰もいなかった。
そしてどんな一日を過ごしても、定刻が来ると一日前の座椅子に戻ってしまう。
いつかは帰れるのか?それともこのまま?
だが150日を過ぎた午後、突然電話が鳴り……
スキップ同様、秀逸な設定である。
前半は謎の二人称で進み困惑するが、
この二人称にもちゃんと意味があり、これには驚かされた。
そう、電話が鳴ってからの展開はか -
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物語は昭和40年代の初め、1960年代後半から始まる。
一ノ瀬真理子、17歳。千葉の九十九里方面の高校二年生。
それは9月、大雨で運動会の後半が中止になった夕方、
真理子は家の八畳間で一人、レコードをかけ目を閉じた。
次に目を覚ました時、見知らぬ場所にいる。
そして自分が桜木真理子、42歳。夫と17歳の娘がいる高校教師だと知る。
25年の時を超え、42歳の自分になってしまった真理子。
果たして、彼女はどうなってしまうのか。
まず設定が秀逸。いわゆるタイムトラベルものと言えば
過去へ戻るのが多々あるのだが、これはその逆。
自分が未来へ行ってしまうのだ。
冷静に考えれば、何も嬉しくない。地獄でし -
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自分の中では、このシリーズは「鉄板」である。
今月はとにかく忙しいので、新しい知り合いを作るというより、知り合いに会いに行くような気持ちで本書を手にする。
文芸編集者の美希とそのお父さんはもちろん、先輩の百合原さん、書籍編集部の筏、後輩で文庫部の大村亜由美などの文宝出版の面々も健在。
百合原はとうとう編集長に出世する。
筏と美希は、もしかするとその後つきあっちゃったりするのかな、という雰囲気を感じなくもない。
この巻では、時代小説家、村山先生の存在感が大きい。
余計なことだが、今時各社の編集者が集まってソフトボール(や野球)をするようなことってあるんだろうか?
作品の中にもコロナ禍はやってき -
「リセット」について
この「リセット」は、北村薫さんの「時と人の三部作」の第3弾で、これで完結ですね。
「スキップ」では未来へのタイムスリップ、「ターン」では同じ時の繰り返しが描かれたのですが、この「リセット」はどうなるのだろうと、とても楽しみにしていた作品です。
しかし、開いてみると、戦前のお嬢様の生活描写がつらつらと続き、さらに時代は戦争に突入。
北村薫さんの文章なので読みづらいということはなかったのですが、正直この手の話は苦手なので、最初はどうなることかと思いました。
ごく普通の淡々とした日常が描かれ、恋の予感などはあるものの、特に何も起こりません。
さらに第2部に入ってみると、私だけかもしれないのです -
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今回もお父さんはすごい。
雑誌編集者の田川美希にとって、実家の父はめっちゃ頼りになるドラえもんみたい。
作家の先生とソフトボールで接待したり、古い本の話をしたり、日常の中からポロっと出てくる謎をそのままにしないで探っていく。
古今亭志ん朝の話や、菊池寛の将棋の話、小津安二郎の映画の話は、名前だけしか知らない人たちですけど、知りたくなっちゃうんです。
小津安二郎映画はあの時代、映画館で観た人にしかわからない感情があるんだ、と。
古今亭志ん朝のあの時、あの場所の口演の拍手にしかない盛り上がりを、詳しく調べたお父さんは解き明かしてくれる。
今作は途中からコロナ禍でのミートや、イベントが無くなった様 -
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ネタバレシリーズ4作目。今のところ最新作。実にシンプルなタイトルだよなぁ。多分続くんだと思うけど。珍しく5編しか入ってなかった。その分、一つ一つは長めなのかな。前作で美希の恋愛が始まるのかと思ったけど、今作は全然出てこなかった。コロナ禍のせいか?もう美希もベテランの域なんだなぁ。今回は割と続けて集中して読めたせいか、一つ一つも繋がりが見えて面白かった。落語の話が多かったな。まぁそれはいつもか。松本清張の『点と線』の話も面白かった。トリック云々の話ではない、というのも、なるほどなぁと思う。確かに、ミステリとか推理小説と言われるものが私は好きだけど、大事なのはトリックではないからなぁ。いわゆる本格物は苦手
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又吉直樹さんのお勧めの本だったので興味を持って読み進めました。9歳のさきちゃんと作家のお母さんの、ほのぼのとしたハートフルな短編が12篇。おーなり由子さんのメルヘンティックな挿絵が心を癒します。
読書心を刺激したのは、母と子の二人の会話や、さきちゃんの想像力が、なぜかサン=テグジュペリの星の王子さまを想起したからです。内容は全然違いますが、星屑のように言葉にきらめきやウィットがあるところです。
二人の日常はありふれた何気ない日常であるにもかかわらず、お母さんや さきちゃんの想像力によって、まるで魔法をかけたように新鮮で好奇心に溢れた楽しい世界へと誘う。それは時に怖かったり、哀しかったりするこ