北村薫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
北村氏の、文学へのありとあらゆる思いが、広く深くおさめられている、集大成のようなエッセイ。
氏の作品は小説しか読んだことが無く、エッセイは初めてだ。
ものすごい情報量、読書量、教養にたじたじ、何とかページをめくり終えた時にはホッとした。
「読み終えた」などとはおこがましくてとても口にできません。
1/懐かしい人 忘れられぬ場所
テレビの無かった時代の、想像の広がり。
日本ミステリ界の歩みを語る。
2/言葉と謎と日常
忘れられていく言葉たちを惜しむ。
共通の常識が無いので、落語のオチが理解されないこと。
伝統芸能を受け継ぐ形の違い、今昔。「そっくり」か「個性を出す」か。
文楽や寄席の“空気 -
Posted by ブクログ
結末がハッピーエンドならそれでよい…などと
もう軽々しく口にできなくなりました。
他の記憶を失くし 生まれ変わっても
胸に残り続ける想いのことを
何と呼ぶのでしょう。
執着ですか?
でも…2人の想いのどこからも
そのような暗い引力は感じませんでした。
第三者の予断を許さない厳しさが
この物語にはあるような気がします。
2人の想いは、理不尽に引き裂かれたからこそ
生まれ 継がれたものだからでしょうか。
この物語からは 軽々しく口にできない
さまざまな時代と文明と人間社会への
猛烈な憤激を感じてしまいます。
終わりがよければそれでよいと
いうものではない。
哀しみや罪悪 -
Posted by ブクログ
「時と人」三部作の第3作。
太平洋戦争末期。
お嬢様学校に通う女学生の水原真澄は
結城修一という少年にほのかな恋心を抱いていたが
その想いは、あっさりと引き裂かれる。
そして時は昭和30年代前半に飛ぶ。
小学5年生の村上和彦は、ある女性と知り合うのだが
覚えのないことを記憶している自分に違和感を持つ。
そして、和彦も女性も気付いてしまった。
奇跡が起こっていたことを・・・
けれど、奇跡の全てが幸せをもたらすものではなかった。
やがて悲劇が訪れ・・・そして・・・
都合がいいと言われれば、それまでかもしれないが
二人の想いが起こした奇跡を信じたくなります。
それほど優しさに満ちている。
いやぁ~ -
Posted by ブクログ
ネタバレ登場人物表に「有栖川有栖」の名前があるのに、執筆者の中に有栖川先生の名前だけが無い…だと…(ざわ…)。
いやいや、各先生方が一章ずつ手がけてらっしゃるのに、何故か法月先生が二章手がけてるじゃないか!この辺にトリックの肝があったりするんでしょーよー!(興奮)と思ってたら。
中盤で「案の定ルイス・キャロルきたこれ!見立てや!有栖川先生がキーなんやー!」と鼻息荒くしてたら。
全 然 見 当 違 い だ っ た←本当に悲しかった…
後書きを読むと、有栖川先生、リレー連載途中で執筆を断られたとのことΣ('_')がーん
そりゃ途中まで登場するよね…執筆者として名前載らないよね…涙。 -
Posted by ブクログ
エッセイにはだいぶ以前のものも含まれているので「今とは状況が違う」と時折驚かされた。
北村さんの小説「スキップ」でも幾つかエピソードになっていたが、我々の生活の色々なことが変わっていくものである。
北村さんの書評関連の文章はどの本も魅力的に感じられる。
自分が読んだ本があれば頷き、読んだことのない本には、どんなに面白い本なんだろうか?とおいしそうな料理の写真を見せられた気分だ。
お子様とのエピソードも飼い猫についての文章も、お父様の学生時代への想いも、優しく温かい。
また、151ページからの「楽しみの年輪」は、読書の楽しみ、人の想像力と解釈、意味のある学び、年を重ねるごとの楽しみと、若い人 -
- カート
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試し読み
Posted by ブクログ
面白かった~! 読書量が足りないのは百も承知だけど、自分でもアンソロジーや全集を考えてみたくなる。アンソロジーを編むのって楽しそう、と思う。
北村薫さんの講義は大好きだ。むしろ、作家としてよりエッセイストやアンソロジストとしての北村さんが好きなくらい。
「読む」ということの楽しみと奥行き、そして可能性を感じる。まるで、一枚の折り紙から無限の物が形作られていくように。「読む」という行為は立体的になり、ぬくもりが生まれ、美しく形作られる。柔らかな手触りの中に、確かな折り目正しさを感じる。
「アンソロジーを編むこともひとつの作品」「アンソロジーはほかの作品への呼び水」など、うんうんと頷くこと多数 -
- カート
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試し読み
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Posted by ブクログ
北村さんの「時と人の三部作」連続・再読破です。
どうも「何時か”リセット現象”が起こるはずだ」と待ち構えて読んでしまいます。しかしそれがなかなか出て来ない。そのため為、何か間延びした印象を受けてしまいました。しかし考えてみれば、SFでは無いのだから、別にその現象を描きたい訳では無く。
そういう目で見直せば二人の主人公の生い立ち話は、時代の雰囲気も含め、じっくり丁寧に(とはいえ丁寧過ぎるかも知れないが)見事に描かれています。
全てを通して、心地よい読後感のあるシリーズです。
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03-051 2003/07/10 ☆☆☆
「スキップ」「ターン」に -
- カート
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試し読み
Posted by ブクログ
いよいよ、小説アンソロジーもハンドメイドの時代か?!
「選ぶ、というのは、どういう自分であるかーという表現」、そりゃそうだよなあ、とは思うものの、「20年、30年経った時に、そのページをめくると、《時》が蘇ってくるのではないでしょうか」とするならば、それって「日記」とどう違うのでしょうか?
個人的レベルから普遍的レベルになるには、何が必要なのか?を考えてしまうので。
ところで。
「綾辻行人と有栖川有栖のミステリ・ジョッキー」と重複する作品を「ベストの選択という気持ちが揺るがなかった」「読者が重なるとはいえず」取り上げた、ということですが、
フフフ、重なってますのよ、少なくとも1人は。…と -
- カート
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試し読み
Posted by ブクログ
副題に「北村薫のアンソロジー教室」とある。その名のとおり、2009年初めに新宿のカルチャーセンターで3回にわたって行われた、北村さんによる講義録だ。何せ、北村さんの持論は、「アンソロジーを編むということ=(イコール)『今』の『自分』を語ること」らしいので、興味津々。 読書家としても、アンソロジストとしても著名な北村さんが、どんな風にアンソロジーを組み立てていくのか、その真髄とも言うべき発想の仕方と、実作業の片鱗を語ってくれている。 読んでみて、何よりも驚くのは北村さんの早熟ぶりだ。何と、小学生の時には、すでに手書きのアンソロジーを手書きでノートに書いていたというのだ!「スペイン民話集」という絵
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Posted by ブクログ
「時と人」3部作、第3作目。
獅子座流星群、石川啄木の詩などを軸に太平洋戦争を挟んで時を越えていく想いの物語。
実は読後一番に思ったのは「恩田陸の『ライオンハート』にそっくり…」だった。
もちろん発行はこちらが先ですが。
それでも「スキップ」「ターン」「リセット」の中で私が一番好きなのはこの「リセット」。
淡々と描かれた(だからこそ読んでる方は切ない)戦時中の少女の生活の様子とか、当初は一体どこで時が関係してくるの?とも思ったけれど、第1部の終わり、工場が狙撃される辺りから手が止まらなくなった。
残酷な別れ。そして2度目の邂逅。
第3作にしてようやく"時&q