北村薫のレビュー一覧
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中野のお父さんシリーズの第3巻。
「六の宮の姫君」を彷彿とさせる文芸評論風ミステリ。振り返ってみると北村薫さん、この手の作品がずいぶん増えてきました。読みやすさと言うか、話の運びの巧さに関しては本作が頭一つ抜けているかと思います。
日常の微笑ましいエピソード、改元や鬼滅の刃といった時事ネタの折り込みで読者を引きつけながら、気がつくと謎が提示され、お父さんが膨大な資料を引っ張り出して鮮やかに謎を解いていく。謎の対象となる作家や文芸家に縁が無いと取っ付きにくいはずなのに、語り口調の面白さでぐいぐい引き込まれてしまう。国語の教科書がこんな感じだったら、本好きももう少し増えたかのかも知れません。
そんなのほほんとした世界にもコロナがやってきて、当たり前の日常が当たり前でなくなっていく。どれだけ書庫に本が並ぼうとも、博識であろうとも、他人との接点がなくなればそれだけでもう生気は失われていく。息苦しさの中でそれでもしたたかに生きていく登場人物達の姿。少し先の時代を生きている私達は、今この日々のありがたさを改めて噛み締める他ありません。
それにしてもお父さん、もとい北村先生のお宅にはどれだけの蔵書があるのでしょうか。作家って凄いや。 -
Posted by ブクログ
北村薫の話は難しいというよりも、ここまで言ったらわかるだろ的なほっぽり出し感が不親切な気がする。テンポはいいのだけど、放り出されたような気がどうしてもしてしまう。
第1話 旦那さんの車が当て逃げされた。犯人は誰か。
第2話 松本清張vs荒正人
第3話 太宰治の「やってきたのは、ガスコン兵」の謎を解く。
第4話 実家に帰る。父と炬燵を出す。原島先生が中古で買った特典DVDがみられない相談をする。
第5話 星野さんが病気の夫に「君はきゅうり」と言われてその意味を考えている。
第6話 お父さんが救急車で運ばれる。回転性目眩。児童書の担当者が「100万回生きたねこ」を絶望の書だという。
第7話 尾崎紅葉の弟子の徳田秋声と泉鏡花が殴り合いの喧嘩をした。
第8話 父は枝豆を植える。その収穫をして塩茹でする。 -
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なんでも謎を解いてくれる中野に住むお父さん。
第1話 美希の出版社の新人文学賞に選ばれた新人作家に電話したところ、一昨年には出したけど今年は出していないと言われる。中野のお父さんが謎を解いてくれる。
第2話 若林瑠璃子が蜂川先生にあてた手紙が出てきた。最後の部分が切り取られている。
第3話 作家加賀山京介の絵が今回の特集だ。父がこの写真は裏焼きなのではないかと言いだす。
第4話 其角が吉原について詠んだ俳句あれこれ。
第5話 塩谷先生の原稿が欲しくて一緒に走ることにした。ゆかりも出る予定だったが駅で足を負傷。マラソン大会翌日に編集長のお姉さんから電話をもらう。
第6話 尾崎一雄が志賀直哉に尾崎署名の「留女」を贈ったのは本当か嘘か。留女は志賀直哉の著作である。
第7話 昔から「小説文宝」を定期購読してくれている人のお話を聞きにいく。
第8話 美希は体育学部卒でバスケの公認コーチの資格を持っている。同級生の中学のコーチに行っている。
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とっても好きな小説の1つになった。
17歳から目覚めたら42歳になっていた。そんなことあったら自分はどうなる?
10代、20代って自分にとってものすごく青春だからその時代がないって、考えるだけでどんよりした人生を送ってしまいそう。しかし主人公は、めちゃくちゃ強く前を向いて仕事もして自分の心も大切に生きていく、そこがとっても晴れやかな気持ちになる。
17歳の心を持つ42歳の先生、発想が柔らかくて生徒も娘の気持ちも同じ立場で考えれて、魅力的だった。
もっと大人にならないとと思いながら歳を取ってしまうけど、10代、20代の自分の純粋な心も大切に生きること、それも一つの魅力的な年の取り方になるなと思った。 -
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ネタバレ作者の北村薫さん、男性ってほんとに?
女性の心情がどうしてこんなに描けるのか
本当に信じられない。。
スキップして17歳から20代、30代の大切な時間を飛び越えてしまった主人公。
経験できずに過ぎ去った時間、気がつけば大切な人たちを失っている現実、そして自分自身の喪失⋯むごい。どうにもならない。苦しい。
どうするんだろ、どうなるんだろと
読み進めても、なかなか戻る気配もない。
それどころか
今の自分で、教師としての役目を果たそうと頑張り始める。
途中、生徒たちとの日常描写が長く続き
どこか脱線したような感じで、かなり焦れたけど最後に納得した。
主人公は
生徒達と一緒に17歳の今を駆け抜けたんだと。
もう戻れない
今の時代で生きていくと
前に進むために必要な時間だった、と。
そう思うと、すべての出来事が愛おしくて
もう一度読み返したくなった。
あんなに焦れてたのに(笑)
長い人生、正直つらいことのほうが多い
簡単には前に進めない時もある
でも出来ることから少しずつでも
向き合ってひたむきに
なにより自分のためにがんばろう
そんなメッセージを感じる1冊!
主人公が男性だったら⋯の物語も
読んでみたいなあ。きっと女には分からない心情に驚くのでしょうね。。
北村さん、お願いします -
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9歳のさきちゃんと作家のお母さんとの毎日の生活を覗いてみたら…。
2人の会話がまるでお話を紡いでいるかのようで…。
少女とお母さんの12の物語。
「くまの名前」から始まり、「聞きまちがい」もあるあるだなぁとほっこりさせられた。
「ヘビノボラズのおばあさん」も優しくて好きな話。
「さばのみそ煮」を作っているときにお母さんが歌い出したのが、このタイトルになったのか…と。
「月のー砂漠を さーばさばと さーばのーみそ煮が
ゆーきました」
「猫が飼いたい」は、ちょっと哀しくなる話。
とても温かくて優しくて楽しさもあって、ずっとこの母子を見ていたいと思った。
2人の会話の何気なさも雰囲気もとても感じがいい。
合間におーなり由子さんの挿し絵がとても優しくて可愛らしくて素敵。
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今年読んだ本の中で間違いなく1番面白く、読み終わった後2周してしまった。
まずストーリー展開が引き込まれる上に、「日々の繰り返しを不毛と思わずに、一瞬一瞬を大切に生きる」というテーマが心に響く。
初めは読みづらい文体(地の文が「君は〜する」なところ)だと思ったけど、それにもちゃんと仕掛けがあってえー!となったり、他にも母の主人公を思うセリフが胸を打って涙してしまったり。
泉さんの、「ピザなんかも飽きたりするけど結局戻ってくる。(森さんとの会話も)そういうことってあるよ」「面と向かってるのに会っていない人なんてたくさんいる」という考え方が素敵だと思った。 -
Posted by ブクログ
学生時代に著者の『六の宮の姫君』を読んだ際には全く理解できなかったが、数年経って読み返したら度肝を抜かれた。文学ミステリーというこれまで無かった存在に気づいたからだ。面白すぎる。日常の謎というジャンルを作った北村薫さんがさらに文学ミステリーという触れたことのないジャンルの物語を紡いでおり、呆然とした。
本作では菊池寛や太宰治といった文豪だけでなく、落語会から古今亭志ん生や、アニメーターの望月智充さん、将棋の先崎さんや室屋さん等が縦横無尽に登場する。なんて知的好奇心を揺さぶられるシリーズなのだろうか。
じっくりとちゃんと理解できるまで咀嚼しながら読む時間が取れたので、心から楽しめた一冊。感受性と知識欲が今よりあった頃に読んだら、さらに響いただろうと悔しい気持ちになりながら、それでも満足できる素敵な物語だった。