【感想・ネタバレ】スキップ(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

昭和40年代の初め。わたし一ノ瀬真理子は17歳、千葉の海近くの女子高二年。それは九月、大雨で運動会の後半が中止になった夕方、わたしは家の八畳間で一人、レコードをかけ目を閉じた……目覚めたのは桜木真理子42歳。夫と17歳の娘がいる高校の国語教師。わたしは一体どうなってしまったのか。独りぼっちだ――でも、わたしは進む。心が体を歩ませる。顔をあげ、《わたし》を生きていく。(解説・佐藤夕子、佐藤正子)

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Posted by ブクログ

571ページ
743円
10月8日〜10月11日

昭和40年代の初め。一ノ瀬真理子は17歳、高校2年生。大雨で運動会の後半が中止になった夕方、家の8畳間で一人、レコードをかけて目を閉じた。目が覚めると、桜木真理子42歳。夫と17歳の娘がいる高校の国語教師。娘と夫に協力してもらいながら、今を懸命に生きる真理子。

タイムスリップもののSFかと思いきや、タイトル通りスキップ、真理子の早送りされた人生の物語だった。いつか戻れるのか、42歳のこれまで生きていた真理子の行方は、などアナザーストーリーも気になる。人生は足し算かと思いきや、引き算だということに、はっとさせられる。そんな風に思っていなかったけれど、確かにそうだと思った。『昨日という日があったらしい。明日という日があるらしい。だが、私には今がある』の言葉に、真理子の強さを感じた。

1
2024年04月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

作者の北村薫さん、男性ってほんとに?
女性の心情がどうしてこんなに描けるのか
本当に信じられない。。

スキップして17歳から20代、30代の大切な時間を飛び越えてしまった主人公。

経験できずに過ぎ去った時間、気がつけば大切な人たちを失っている現実、そして自分自身の喪失⋯むごい。どうにもならない。苦しい。

どうするんだろ、どうなるんだろと
読み進めても、なかなか戻る気配もない。
それどころか
今の自分で、教師としての役目を果たそうと頑張り始める。

途中、生徒たちとの日常描写が長く続き
どこか脱線したような感じで、かなり焦れたけど最後に納得した。

主人公は
生徒達と一緒に17歳の今を駆け抜けたんだと。

もう戻れない
今の時代で生きていくと
前に進むために必要な時間だった、と。
そう思うと、すべての出来事が愛おしくて
もう一度読み返したくなった。
あんなに焦れてたのに(笑)

長い人生、正直つらいことのほうが多い
簡単には前に進めない時もある
でも出来ることから少しずつでも
向き合ってひたむきに

なにより自分のためにがんばろう
そんなメッセージを感じる1冊!

主人公が男性だったら⋯の物語も
読んでみたいなあ。きっと女には分からない心情に驚くのでしょうね。。
北村さん、お願いします

0
2025年08月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ミステリを期待してたり、論理的な解決を求めている人には肩透かしかもしれないけど、私はとても好きな話でした。17歳の真理子が葛藤しながら25年後の桜木真理子に融合していく姿がたくましくも切なく、胸がキュッとなった。自分の知らない25年間、失ってしまった人たち、出会った人たち。やるせなく、悲しいけど、尊い時間。17歳の精神でありながら、高校教師やるの凄すぎるしめっちゃいい先生…なにこれって感動してたら著者もともと先生なんですね、納得!

0
2024年11月09日

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最後に何度言えない胸の苦しさ〜

切なさ♪
感じました!
とてもいいお話でした…
単調だけど、ほっこりしてる!

日々仕事と育児に追われる中で、気づくと忘れてしまう♪
心の動き。

若いって切ない!

自分の学生時代を思い出しました♪
自分の子供にも、こんなキラキラした心を持って欲しいな〜.

0
2023年04月11日

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ネタバレ

まず読んでみて感じたこととして、女子生徒の描写が男性とは到底思えないぐらいに綿密であること。著者は1980-1993の間は男子校に在籍していたのだから、どのように女子生徒の人物像を作り上げていったのか想像できない。他の著書も女性主人公のものが多いというから驚く。奥様とかとの会話を通じて作り上げていったのだろうか?

話の線はよくある高校生活(この学校は共学校)であるが、42歳の女性国語教師、桜木真理子の肉体に17歳の女子生徒である一ノ瀬真理子の精神が入るというだけで、これだけの物語ができるものなんだなと。まあ、桜木真理子の旦那さんも高校の国語教師というのはさすがに都合いいなとは思ったが。

一つ印象的なシーンとして、桜木真理子は話の中でほぼおばさんの扱いであるのだが、1人の男子高校生が桜木真理子に好意を表したこと。桜木真理子自身、その男子高校生にほのかな好意を感じていたのだが、それはともかく、男子高校生は桜木真理子の精神(17歳の一ノ瀬真理子)に惹かれたのか、それとも桜木真理子の全て(42歳のトータルの桜木真理子)に惹かれたのか。

私は前者の要素は含みつつも、基本的に後者なのではと考えている。人は異性の精神を愛するのか、それとも外見中心で愛しているのか。私に置き換えて考えると、基本的に妻の精神を愛しているつもりだが、外見も含めて愛している可能性もないとはいえない。なお、妻は同い年だが、これが仮に小説のように25歳の年の差(相手が上でも下でも)であればまだ愛せる可能性はあるかもしれないが、さすがにこれが40歳差だと愛せないだろう。これはすなわち外見含めて相手を評価、要はトータルで愛しているということだ。

あと、元の桜木真理子の精神は結局どこに行ったのか?というところが結局分からずもどかしさのようなものを感じざるを得ない。消えることなく17歳の一ノ瀬真理子に入れ替わってるなら良いのだが。

0
2022年10月18日

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この本は私の大切なバイブルです。

17歳の真理子が生きるのは昭和40年代
そこから25年の時を飛び超える。

この文庫版の発行は平成11年
その時から20年以上の時が経っている。令和の今。

時代は全く違うのに、古さを感じさせないのはどうしてだろう。
上手くいくことばっかりじゃないでしょう。
でも、私は進む。
この顔をぐいっと上げる強さが、憧れであり、私の背中を押してくれる気がする。
アラフォーの今、学生時代に読んだこの本を、この夏休みにもう一度読んで良かった。

0
2022年08月13日

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北村薫さんの「時と人」三部作の一作目。

17歳だった主人公が、いつのまにか起きたら25年をスキップして42歳の自分になっていて、”同い年”の子供がいる。。

こう書くとSFっぽい感じがしますが、北村さんの小説はうまく日常に溶け込んでいて、SF感がないところも好き

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2022年03月08日

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ネタバレ

2021年1発目。どうせ「夢オチだろう?」と高を括っていたが高級感抜群。昭和40年頃、女子高生の一ノ瀬真理子が目が覚めると42歳になっていた。真理子は高校の国語の教師であり、夫と17歳の娘がいる。真理子は未来の自分に負けたくない一心で高校教師を勤める。夫、娘の理解と協力によって、試験問題作成、担任、部活、文化祭など悪戦苦闘するが、自分らしく勤める。本当なら17歳の真理子の健気さをいつの間にか応援している。ただ両親が亡くなっており二度と会えない真理子が、夫と再度の恋に落ちる乙女の姿にジーンとなった。

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2021年01月01日

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物語は昭和40年代の初め、1960年代後半から始まる。
一ノ瀬真理子、17歳。千葉の九十九里方面の高校二年生。
それは9月、大雨で運動会の後半が中止になった夕方、
真理子は家の八畳間で一人、レコードをかけ目を閉じた。
次に目を覚ました時、見知らぬ場所にいる。
そして自分が桜木真理子、42歳。夫と17歳の娘がいる高校教師だと知る。
25年の時を超え、42歳の自分になってしまった真理子。
果たして、彼女はどうなってしまうのか。

まず設定が秀逸。いわゆるタイムトラベルものと言えば
過去へ戻るのが多々あるのだが、これはその逆。
自分が未来へ行ってしまうのだ。
冷静に考えれば、何も嬉しくない。地獄でしかないだろう。
だが、この主人公の真理子は違う。強い、強過ぎる。
圧倒的ポテンシャルで日々をこなしていくのである。

もっと生臭いドロドロとした展開が待っているかと思いきや、
高校を舞台にした爽やかな青春ものであった。

今は美しい。真理子の紡ぎ出す言葉がやけに胸に突き刺さった。

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2025年11月06日

Posted by ブクログ

体は歳をとるけど、心というか中身は自分では変わってないように思っていたから、それが実は変わってるということが感じられるというところ、がこの本を読んでいて印象的だった。
学生の視点で先生という立場から見える視点を体験できるのがおもしろいと感じた。
この本出たのが1999年で今2025年に読んで、スキップ前はもちろん後もさすがに昔だなと思うところは多々あった。それでも学校生活は同じようなことをどの世代でもやってるんだなというところもあり、そういう発見もあった。

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2025年09月28日

Posted by ブクログ

うーん、高校生の女の子が気づいたら25年後の自分になっていて娘も夫も職業もあった、って展開はめちゃくちゃ面白いんだけどな。内容はなんというか中身だけ新米教師の奮闘記、という感じ。タイムスリップ的な進歩した文明に驚く描写などは面白い。テーマとしては人生讃歌なのだろうけど、不条理な上に答え合わせもはっきりした救いもないまま終わるのは残念。それに時間を吹き飛ばされてしまい忘れられてしまった周囲の人間の困惑や苦悩の描写が欠けてると思う。いなくなってしまった25年分の人格についても消えてしまったなら救いがなさすぎる。それにどうしてもケン・グリムウッドのリプレイを思い出して読んでしまったな。長編なのに中盤盛り上がらなくて読むのがだるかった。元々は気づいたら子供がいたってはてな匿名ダイアリーを読んでそんな小説聞いた事あるな?と読んでみた。まあまあだね。

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2025年03月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

新版・作家の値打ちから。25年間をスキップ、という意味なんですね。繰り返しとか過去へのタイムスリップとかが多い印象だから、未来へってのは珍しいかも。というか、未来の自分そのものになってしまうという設定が新しいのか。一般的には、時間移動先の世界に、第三者として入り込むってのが多いから斬新なのかも。で、結局その不条理は解決されないまま物語が閉じる訳だけど、主人公のキャラもあって、湿った印象を残さないのも良い。この系統で数作書いているみたいだけど、他のも読んでみたくなりました。

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2023年05月08日

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こういう設定、考えた事なかったなあ。
17歳の女子高生が一瞬で42歳の高校教師になってしまう。タイムリープではない。
25年後の世界に現存する1人となって溶け込んでいる。
そんな状況に色々と無理ではないかという事象はあるのだけれど、本作の設定自体実際には無理なのだろうから仕方ない。
実態は17歳の女子高生がスキップ先の時代で必要に迫られて高校3年生の国語の授業をする。
この高校教師が本物の中堅教師でもなかなかできそうにないかなり深みと味わいのある授業をしてのけるのが不思議なのだが、読者としてはいつしか1人の優秀な教師を見ている気になる。
そこで想像するのは主人公の女子高生本人自身かなり優秀な高校生であったのだろうなという事。
ただ授業を受けて試験を受けているだけの高校生にはこんな授業はできないはず。
学業を通して何かを見つめ考え続けている生徒に違いない。
親友池ちゃんとの25年後の心の交流には涙する。
25年後の夫、娘、池ちゃん。自分を信じてくれる人が居るから今を生きる事ができる。その事の重要性を感じる。

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2023年02月04日

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ネタバレ

残酷すぎる。階段から落ちたわけでも事故にあったわけでもなく、ただ寝てた間に25年の時が過ぎ、しかも戻れない。一番華やかであろう20代も仕事子育てに熱中した30代も真理子には存在しない。そんな中で頑張る彼女。記憶喪失の場合は、いつか思い出すかもしれないという救いがあるから多分タイムスリップなんだろうと思う。唯一救いがあるとすれば夫も娘も理解者だったことだろうか。そんな夫と結ばれ、娘を育て、生徒に慕われる真理子もまた立派な人間だったんだと思う。42歳の真理子は17歳を満喫しているのだろうか…。

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2022年11月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ターンを読んだのでスキップも。逆だけど。
結局スキップした後、戻ることはない。ターンとは違う
先生や学校モノを久しぶりに読んだからか、それとも一ノ瀬真理子さんが素敵だったからか、とても素敵なお話だった…
国語の先生で、言葉に対する考えが素敵。
周りの人との関係性も素敵だし、何で?という好奇心をそのままにしないところもとてもいいと思う
スキップの原因については触れられずに最後までお話が進むけど、それでもいいって思えるような物語だった

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2022年04月30日

Posted by ブクログ

10代に何度も読ませてくれた一冊です
単純な構成なので非常に読みやすい
ゴチャついてないので古さは感じるでしょうね

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2021年09月12日

Posted by ブクログ

「時間3部作」という思わず惹かれるフレーズが気になり、まとめ読みして大正解。同作は「スキップ」というタイトルの通り、時間が「スキップ」してしまった女性(少女)が主人公の物語。

単純なタイムリープでなく、肉体と精神の年齢がチグハグになってしまった主人公のひたむきさと前向きさは読んでいて応援したくなる

(恐らく)作者はタイムリープを経験したことがないはずなのだが、実際に人が未来に飛ばされた際、どんな変化に心を痛めるのだろうか、という描写が妙にリアルで、思わず納得させられる。

特に印象深いのが、主人公が生まれ育った家の付近に赴き、変わり果てた様子を見て「とんでもない詐欺にかかっている感じだ。だからこそ、何とか、心を爆発させずにいられるのだろう」「あまりに違っているから、まだ我慢ができるのだ」と心で独白するシーン。

その後、少ないながらも見かける昔(当時もあった)の建物に対して「全く変わってしまったものより、そういうものを見る時の方がきりきりと辛い」と続くのは、タイムリープ未経験者ながらに思わず納得してしまった。

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2021年08月14日

Posted by ブクログ

17歳の少女が、雨の夕方ちょっと横になり、目覚めたら42歳の主婦になっていた。
女子高生の主人公が、目覚めたら結婚して子供もいる42歳の自分に早送りされていたというのは、今まで目にしてきたタイムスリップものとは一味違う。
自分ならもっと途方に暮れてしまいそうだが、真理子は受け入れられない思いを抱きながらも、その世界の自分がやるべきことを自分自身の事として取り組み始める。
42歳の自分は、高校の国語教師なのだ。
高校生の真理子が、高校の教師としてやっていけるのか、夫や娘とはどう過ごしていくのか、そしていつか元の世界に戻るのか、ドキドキしながら引き込まれました。

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2021年01月27日

Posted by ブクログ

過去は戻らないがわたしには今がある

第一印象は流行りのタイムリープもの。
しかし時間のギャップに戸惑いながらも懸命に生きる主人公から学びを得た。

若さゆえのキレイな肌もスマートな体もキテレツな考えも戻っては来ない。それでも自分を受け入れて今を生きなければならない。

歳をとるにつれて、失うものももちろんあるけれど
『残された今』と『手に入れるはずの未来』をしっかり生きていこうと思った。
今日より若い日はないのだから。
失ってから気づくのではなく、尊い今を噛み締めて。。

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2025年10月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

実はだいぶ前に読んでたからあまり記憶が無いのだけど
主人公の真理子が自分に与えられなかった時間に、失ってしまった時間に苦しまされながらも
「今」を生きようと、未来の自分である42歳の真理子としてではなくさっきまで女子高生だった「真理子」として奮闘する姿がすごく強くて印象的でした
いつだろうと自分が誰でだろうとあるのは「今」と「自分」しかないんだなぁ...

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2025年08月28日

Posted by ブクログ

感想
みんなそう。気づいたら時間は経っている。だけど前を見て歩かなくてはいけない。自分が変えられるのは今だけだから。一所懸命使命を果たす。

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2023年11月14日

Posted by ブクログ

「北村薫」の長篇SF作品『スキップ』を読みました。

「北村薫」の作品は2年半前に読んだアンソロジー作品『眠れなくなる 夢十夜』に収録されている『指』以来ですね… 久しぶりです。

-----story-------------
まどろみから覚めたとき、17歳の〈わたし〉は、25年の時空をかるがる飛んで42歳の〈わたし〉に着地した。

昭和40年代の初め。
わたし「一ノ瀬真理子」は17歳、千葉の海近くの女子高二年。
それは九月、大雨で運動会の後半が中止になった夕方、わたしは家の八畳間で一人、レコードをかけ目を閉じた……目覚めたのは「桜木真理子」42歳。
夫と17歳の娘がいる高校の国語教師。
わたしは一体どうなってしまったのか。
独りぼっちだ――でも、わたしは進む。
心が体を歩ませる。
顔をあげ、《わたし》を生きていく。
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1995年(平成7年)8月に「新潮社」より書き下ろしで出版され、第114回直木賞候補となった作品… 時に翻弄される人を描いた「時と人」三部作の第1作目にあたる作品です。


「一ノ瀬真理子」は高校2年の17歳… 雨で運動会が途中で中止になってしまった、、、

翌日にある文化祭では毎年男子校の生徒がやってきてフォークダンスを踊る事になっており、「真理子」は去年踊る事が出来なかったので今年は踊りたいと思っていた… だが、雨が止んだとしても地面が駄目になってしまっているだろう。

「また来年がある」と、諦めるしかなかった… 家に帰り、レコードを聴きながらうたた寝をする、、、

そして目を覚ますと、見知らぬ部屋に居た… 服も全く違うモノになっていた。

玄関の方から音が聞こえてきたので恐る恐る向かうと、自分と同じぐらいの少女「美也子」が家に入ってきた… 状況が呑み込めない「真理子」は「美也子」と話していく内に、自分がつい先程まで居た時から25年も経っている事、「美也子」が自分の実子である事、そして夫「桜木」が居る事を知る事になる、、、

実家はもう既になくなっており、その上両親も亡くなっていたのだ… 時代の変化に翻弄されつつも、このままだと亡くなった両親に顔向けが出来ないと自分を「ロビンソン・クルーソー」に例え、役回りは出来る限り果たそうと決意する。

そんな最中、家にある電話がかかってくる… 相手は桜木真理子が受け持つクラスの生徒で、暴走族に入ってパンチパーマをかけてしまったと言うのだ、、、

突然の事に戸惑った「真理子」は「美也子」の力を借り、生徒の連絡先を調べるべく自分の職場である学校に行く… そこで他の先生から新高3の国語の実力テストの話を聞き、この時代で生きていくためにも「桜木真理子」となって、その実力テストを作ることを決意する。


きっかけにはSF的な仕掛けが取り入れられていますが、内容はSFというよりは、一人の少女が大人の女性として成長する物語… 25年の歳月を飛び越えて、成長せざるを得ない状況に追い込まれながらも前向きに生きようとするヒューマンドラマでしたね、、、

17歳から42歳って、人生の中で本当に重要な25年間がぶっ飛んでしまっているわけで… それを素直に受け止めることなんでできないし、悲観しかできない状況ですが、それを乗り越えようとする「真理子」に感情移入しながら、寄り添いながら読めて、とても愉しめました。

面白かったので… 「時と人」三部作の『ターン』、『リセット』も読んでみたいですね。

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2023年07月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

テーマは本当に斬新で面白いなぁと。
17歳の女子高生が起きたら40歳すぎ。

残酷ともいえるし、自分なら到底前に進めなさそう。

なんでタイムスリップしたのかと
40歳すぎの自分はどこにいったのかを
わかる内容だったらさらに面白い

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2023年05月09日

Posted by ブクログ

学校から帰宅し、レコードを聴きながらうたた寝してしまった17歳の女子高生、一ノ瀬真理子。どの位寝ただろう、レコードは止まってる、と目を覚ますと、部屋も違う、服も違う。17歳の娘がいる高校教師である42歳の桜木真理子になっている!?という事が段々分かっていき…という設定で、先の展開が楽しみなスタート。
17歳の娘が寝て目が覚めたらおばさんになっていた、同い年の娘がいる、夫がいる、教師をやっているらしい、等の到底受け入れる事の出来ない状況に戸惑い苦しみながらも、そこから何とか家族の理解、協力を得ながら、受け持ちの生徒とも心を通わす事の出来る所まで成長していく健気な様や、高校生活の様々なエピソードを丁寧に描いていて、好感度高いが、中盤たれ気味、ラストももう少し盛り上げられる展開もあった?、で少々残念。

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2022年08月05日

Posted by ブクログ

記憶が飛んでしまったら?それってボケじゃないの?
思い出だしたくない過去だけ忘れられたら?そりゃ気楽で良いじゃないの?

いえいえ、そんな気楽なお話でなく、せつない、せつない物語。
だって、大切な人生の歩みの証が何処かにいってしまったのだから。

17歳の高校生の「一ノ瀬真理子」は昼寝から目覚めると、42歳になっていた。
夫と17歳の娘がいる高校の国語の先生。思い出は17歳まで。「25年という時をロスした」感じ。

心は17歳の高校生でも身体は42歳の国語教師を、持ち前の「自尊心」で乗り切るその苦闘。
といっても、しゃかりきに見えないところがいい。17歳の若さの柔軟性がある。
自分という存在が好きで、信用しているからやっていける。

初めて北村薫さんの作品を読んだが、語り口がやさしく機知に飛んでいるのはさすが。
こんなに女性をつつむように描く男性作家は珍しい。

それから、なんといっても国語の授業の秀逸さ、冴えたる素晴らしさ。ああ、こんな授業を受けたかった。17歳だから出来るというのか。

そしてせつなさは、果たして17歳の高校生だったいとしい時代に戻れるのかということからくる。

はてなく 流れる
時さえ 停まれよ
輝く 光 今日の日
今は 美しい

はてなく 流れる
時さえ 停まれよ
輝く 命 今こそ
君は 美しい

(作中、真理子さんの作詞した『文化祭序曲』の詩の一部)

文庫本の解説が母娘なのもしゃれているし、付録「昭和40年代初め」用語ミニ注解なるものも読まずに済む便利さ(単に年くってるだけ)も気に入った。

なかなかよろしかった。

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2021年09月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

面白かった、けれどすっきりしない、というのが正直なところです。荒削りな感じ。

・スキップした理由は。
・元に戻ることはできないのか。

この二点がやはり大きい。そんなのは無粋なのかもしれませんが。

作者は高校で教員(しかも担当は国語)をしていたということで、作者の対生徒への思いが溢れていました。日誌のやりとりなんて素敵。ただ、今はもう時代が違うんだろうな、と思うことも多々。
そして、生徒たちの抱えるものが消化されているようないないような…。そこも、日常と思えば全てに関与したり解決したりはできないから仕方がないのでしょうか。

後半、池ちゃんとの再会や旦那さんへの歩み寄りなど、事態が一気に進んでいってしまいました。

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2021年07月31日

Posted by ブクログ

とても丁寧に書かれている長編だった。突然高校生が教師になったら。突然母親になったら。主人公や主人公の周りのキャラクターが良くて「いやいや、あり得ない。無理がある」と思わせない物語だった。ただ昔の芸能ネタや社会ブーム的なものが古臭かったかな。書かれた時代が古いのが残念。同じ設定で現代バージョンにしてみて欲しい。スマホのある世界、コンプライアンスに縛られる世界、希薄な人間関係が当たり前の世界に飛んできたらどうなるんだろう?

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2021年07月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

主人公の桜木真理子さん。いや、この場合は一ノ瀬真理子さんになるのか?何れにしても、ユーモアに溢れていてチャーミングで、とても素敵な女性だと思った。

美也子さんも、桜木さんも、とても懐が開く、素敵な家族だなぁと思った。
自分の母が、妻が「わたし、17歳なんです」なんて言ったら、びっくりするよね。
かに最初は二人ともびっくりしてたし、信じてはなかったけれど…今までは親子と夫婦、と言う関係だったのが、人間対人間の関係に変わっていって…その過程がとても良かった。

また、新学期が始まる!と言うので、家族一丸となって対策を練ったりしていたシーンがとても楽しかった。

10数年振りに読み返したが、当時とは思うことが全然違ったのも、個人的にはとてもいい読書体験になった。他の2作も読み返そう。

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2020年08月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

心は17歳のまま25年後にタイムスリップした「一ノ瀬真理子」は、外見の変化と夫や自分と同い年の娘がいることに驚き戸惑い失望する毎日でしたが、自分が高校の国語教師だと知ってからは教師「桜木真理子」として過ごすことに懸命になります。

正直に言いますと、外見を過剰に気にしたり、中年の夫に嫌悪感を示してばかりの描写が続いた冒頭は、真理子へのイライラが募りましたが、腰を据えて教師として奮闘するようになってからは「桜木真理子」がたくましくてとても魅力的な女性だと思えるようになりました。

「桜木真理子」のご主人が「一ノ瀬真理子」に向けて言った「どうにもならないことっていうのは誰にでもある。歯がみして地団駄踏みたいことは。そこでどうするかが、人の値打ちじゃないか」という台詞が強く印象に残りました。

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2023年02月02日

Posted by ブクログ

高校教師「北村薫」さんに国語を習っていたら世界がもっと違ったものに見えてたかもしれない、そういう感じをさせる小説でした。
小説の形態をとっているけども、これは、北村薫の国語教育論であるのだ。

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2021年02月20日

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