あらすじ
あの文豪の、こんな謎も、お父さんが解決!
高校国語教師の父と体育会系文芸編集者の娘の“名探偵コンビ”が、
本や小説に潜む「謎」に挑む人気シリーズ第4弾。
「日常の謎」の名手であり〈本の達人〉による5編。
【収録作品】
●漱石と月
英国留学中の漱石が〈I love you〉を〈月が綺麗ですね〉と翻訳したのは
根拠のない都市伝説のようなもの。だがそのエピソードは独り歩きして、
多くの作品に影響を与えている。
いったいどうして、〈I love you〉と〈漱石〉が〈月〉に繋がるのか……。
●清張と手おくれ
『点と線』といえば大ベストセラーにしてロングセラー、
松本清張の代表作のひとつだが、
本格ミステリファンからは「失敗作」だと評判が悪い。
『点と線』にまつわる知られざるエピソードとは?
●「白波看板」と語り
鬼平シリーズ前に初めて長谷川平蔵が登場したのは短編「白波看板」。
この作品はかつて、三遊亭圓生が人情噺として口演していたという。
そこに見られる言葉の“改変”。
これは作家によるものか、あるいは噺家の独断か……。
●煙草入れと万葉集
若き日の圓生の間違いを指摘した久保田万太郎。
その間違いとは、“十二煙草入れ”についてだった。
どうやらその昔、“十二煙草入れ”というものがあったようだ。
しかしいったい、十二煙草入れとはどういうものなのか?
●芥川と最初の本
敬愛する漱石の本に使われていた書家を、自身の初めての本『羅生門』にも
起用したいと考えていた芥川龍之介。
その思いが強く表れた装丁はどういうものだったのか。
感情タグBEST3
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中野のお父さんシリーズ第4作。
前作の途中から、登場人物たちの日常はコロナ禍で大きく様変わりした。本作も最初の「漱石と月」では感染症対策で“マスク会食”の話が出てきたが、最後の謎「芥川と最初の本」の頃には行動制限が無くなっている。初登場の頃は体育会系新人編集者だった美希が本作では新人教育を担当するようになるのだから、びっくりだ。お父さんの名推理を聞きながら、私も時々は記憶の“虫干し”をしないとな!と、昔の当たり前をいろいろ思い出しつつ、実家に両親が揃っている光景がじんわり羨ましく微笑ましかった。益々のご活躍を!
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夏目漱石は「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳してはいない?
松本清張の代表作「点と線」のトリックにまつわる後悔とは?
お父さん(つまり著者の北村薫氏)の博識ぶりに毎度驚かされます。
様々な史料が最後にまとまるのが気持ちいい!
匿名
北村薫先生の本
所々に出てくる小説を遡って読みたくなりました。
また、電子書籍で手にとれて嬉しいです。
紙の本も持っていますが円紫さんと私シリーズとか、時と人シリーズ、ベッキーさんシリーズ、覆面作家シリーズも電子化してほしいです。
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大好きな北村薫さんの「中野のお父さん」第4段。
今回も大変興味深く、愉しく読ませていただきました。
名だたる文豪にまつわる謎を当時の近しい方々の記述や落語などから読み解いていく過程も愉しく、くすりと楽しいやりとりもあったりで、何度も読み返しながらまた古書の深みにハマりたいです。
文中の耳納連山の天然玉露茶もいただいてみたいですね〜
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夏目漱石は「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳したのか?
『点と線』のアリバイを手遅れと評したのは?
今回も色々本を読みたくなるような内容。
コロナ禍の作品なので、ソフトボールが出来なかったり打ち合わせがリモートだったりするのがちょっと寂しい。手塚君や脇役たちの出番が少な目な気がしたのも寂しかった。
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シリーズ4作目。今のところ最新作。実にシンプルなタイトルだよなぁ。多分続くんだと思うけど。珍しく5編しか入ってなかった。その分、一つ一つは長めなのかな。前作で美希の恋愛が始まるのかと思ったけど、今作は全然出てこなかった。コロナ禍のせいか?もう美希もベテランの域なんだなぁ。今回は割と続けて集中して読めたせいか、一つ一つも繋がりが見えて面白かった。落語の話が多かったな。まぁそれはいつもか。松本清張の『点と線』の話も面白かった。トリック云々の話ではない、というのも、なるほどなぁと思う。確かに、ミステリとか推理小説と言われるものが私は好きだけど、大事なのはトリックではないからなぁ。いわゆる本格物は苦手だし。
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「煙草入れと万葉集」で国宝・桂米朝さんや桂枝雀さんが出てきて、エピソードを知ることができて、嬉しかった。
語り、伝承は、だれかが残していないと完全に消えるんだな…と遅まきながら気がつくお話だった。
前回の作品は「???」で私にはよさが理解できなかったのでもう読まなくていいかと思っていたところ、今回は読み応えある5つの謎で、鮮やかに解かれ、それぞれの話の閉じ方も鮮やかでキリッとしていたように感じた。
北村薫さんの文体は美しくキリリとしているので読んでいて気分がいいのだけれど、いまだ主人公の「ほ?」は気持ち悪い。なんとかいい方に捉えようとしたけど無理だった。耳について邪魔に感じる。
それから……
どうしても、過去の“偉大な”人々の話だし…とあまのじゃくな気持ちになることもあって、仕事の功績は素晴らしいのだろうけど人間性はロクなものじゃない人もいただろうし、出てくる“偉人”が男ばかりでゲンナリではあった。未だに現実は変わっていないので、昔なんて今よりそうとう酷かっただろうけどな。
だから細かなエピソードでその人となりを知ってほっこり、なんてことはなく、お前ら好き放題してんだから、仕事で苦労くらいしろよ、仕事で功績残したいんなら命懸けでやって当たり前だろう、まで思ってしまったな。それを支える人々が影に隠され出てこないのなら余計に。話がズレたけれど、今はもう、過去の偉人(男)の話は要らないな。それ自体が古いし気持ち悪く感じるようになった。
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連作短編集5篇
これでもかという程博識、古書偏愛、明治大正昭和の文豪と落語界の大御所を絡めてのひねりの効いた謎解き。中野のお父さんがスッと出して見せた十二煙草入れの折り紙はお見事。
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いつもながら「おー」と感嘆しながら読み終わりました。
米朝さんのことや枝雀さんの話も楽しく読みました。
夏目漱石と芥川龍之介、そして全く知らなかった作家の方々の話もとても面白かった。
色々調べながら読むので時間はかかりますが
それも楽しみのひとつです。
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漱石と月/清張と手おくれ/「白波看板」と語り/
煙草入れと万葉集/芥川と最初の本
田川美希は編集者。文学作品や作家さんとのお付き合いはきっと多いのだろう。新入社員もきて話題も膨らむのが楽しい。
いつもながらお父上の博識ぶりには感心する。
作者のような人なのかもしれない。
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中野のお父さんシリーズ。
今回もお父さんは最強です!!
芥川の章、目から鱗でわくわく感満載
万葉集の読み方、銀ブラの由来・・・などなど
日本近代文学館のBundan Coffee に行ってみたい~
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北村薫先生の著書は、物によっては文学に精通していないと全く理解できないものもあり、注意が必要ですが、このシリーズは私の様な文学にそこまで深い知識のないものでも比較的楽しく読めるシリーズです。
巻末、ビックリした!!
自宅近くの美術館所蔵!
ぜひ行ってみたい。
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文学の謎を読み解くシリーズ、娘の美希と父の会話がテンポ良くて読みやすいです。
お気に入りは「漱石と月」
有名なフレーズが実は漱石はそう訳してない?フレーズだけが一人歩きしているのは知らなかったです…
Posted by ブクログ
博覧強記な作者による、博覧強記な高校の国語教師が文芸書編集者の娘が持ち帰る文学史上の謎をたちどころに解いてみせるシリーズ。
今作は(も?)老作家二人が持ち寄る疑問に挑む。
取り上げられる謎はとてもマニアックで、古典落語に出てくる十二煙草入れが折り紙だったと知っても何の役にも立たないのだが、なんとなくへぇと思ってしまう。
知識の開陳が嫌味なく、押し付けがましくないのは、文体か、作者の人徳か。
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書痴というと本に夢中で世の中に疎い人との意味もある。ところがどうして、世事に精通していればこそ愉しみは広がると証明しているのが中野のお父さんだ。
今回は作家先生からのお題もある。おじさまたちの蘊蓄合戦も、好敵手が見つかって楽しんでいるように見えるので嫌味はない。
それにしても、これほど多方面から作品を味わえればさぞ面白いに違いない。読んだ片っ端から忘れてしまう私には、夢のまた夢の話である。
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最近、「ミチクサ先生」を読んだばかりだったので、
出てくる文豪たちに親近感。
またお会いしましたねもいう気持ちで読む。
特に、こんなに菅虎雄の名前をこんなにお見かけするとは。
大学時代以来かも。
新人さんとの仲も微笑ましい。
こんな風に下の子の面倒を見るって、
実は難しいんだよねぇ。
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中野のお父さんシリーズ、今回はコロナ禍がようやく収まりつつある頃の設定。お父さんの蘊蓄にひたすら感動する。編集者の娘・美希と担当作家や同僚などなど、毎回安心のシリーズだ。
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老舗出版社「文宝出版(ぶんぽうしゅっぱん)」で編集者を務める、田川美希(たがわ みき)と、中野の実家に住む、高校教師のお父さんのシリーズ、第4弾。
前作あたりから、軽やかな謎解きではなく、本の名前や作者の名前、落語の話や落語家の名前が芋蔓式に出てくるうんちく語りが長くなって、頭が追いつかない。
美希もだいぶベテラン編集者の部類に入ってきたようで、後輩の新人・柴田李花(しばた りか)が新しく登場。
今回、うんちくの語り手は増えて、大作家の村山富美男(むらやま ふみお)先生と、『小説文宝』に登場する作家中最年長の原島博(はらしま ひろし)先生も加わり、お父さんと三つ巴のうんちく合戦となった。
美希や李花たち編集者は、先生たちの「講義」に真剣に耳を傾け、落語の会や文学館にお付き合いし、と毎日が勉強の日々。大変だなあ・・・でも、本人たちは意欲に燃えているのであろう。
今回は、世代の違いによる、常識や認識のズレが全体のテーマになっている気がする。
消えていく文化を惜しむ気持ちは自分にもあるが、次々と新しいものが出てくるから、世の中の情報は溢れっぱなしである。
残念ではあるが、断捨離・・・いや、自然淘汰されていくのだろう。
面白いと思ったのが、正岡容(まさおか いるる)という人が書いた『江戸再来記(黄表紙)』という作品。
大正12年の発表だが、世の中全てが江戸趣味になり、現代的な物が「古くさい」と言われてしまう、SFみたいな設定。原島先生の例え話は、今で言えば、スマホを使う人がいなくなって、巻き紙の手紙でやり取りすることが流行するようなもの、という。この作品は、芥川龍之介も面白がったようだ。
読んでみたいけれど、青空文庫に正岡容の作品はたくさん収録されているものの『江戸再来記』は載っていない。
『漱石と月』
I love youを「月が綺麗ですね」と訳したのは漱石なのか?
『清張と手おくれ』
「点と線」、マニアに叩かれる
『「白波看板」と語り』
その時代になかった単語を使うこと
『煙草入れと万葉集』
名前が載っているが実態が分からない故の誤解
『芥川と最初の本』
夏目先生をリスペクトした芥川龍之介が、最初の本であやかったこととは・・・
Posted by ブクログ
そうだった、「中野のお父さん」は文学の謎を追究しているのでした。すっかり忘れてた。
『点と線』は、私もトリックにガッカリしたので松本清張もそう思ってたんだと分かってすっきりしました。
Posted by ブクログ
今まで信じていたものがそうでないとわかったとき、人は少なからず動揺します。
アイラブユーを月がきれいですね、と訳したのは漱石ではなかったと知ったとき、本書を二度見しました。
え?!(゜Д゜)
(゜Д゜))))
えーーっ?!
そう…だったんですね…。
自分が今まで信じていたのはなんだったのでしょうか。都市伝説だったのでしょうか。
では、誰がそう訳したのでしょうか?
なぜその説が広まったのでしょうか?
様々な出典から探っていく、今回はそんなストーリーでした。
そもそも自分が知ったのは何かのクイズ番組だったと思うのですが…
はたして、今回中野のお父さんがたどり着いた答えは…?
*
参考文献としてあげられていたのは、ネットのとあるサイトでした。これがすごい。
Posted by ブクログ
最初の漱石がアイ・ラブ・ユーを
月が綺麗ですね。と訳した
という都市伝説から
話の展開は面白かった
晩年の漱石が愛した 銀の匙
中勘助は一高で漱石に教わっている
それも漱石が倒れて
持ち直した後に 原稿を送った
凄い
そして銀の匙にも「月が、、、」
が出てくる
最初は面白かったりが後半は
あまりドキドキ感はなく
やや退屈に感じた
Posted by ブクログ
名だたる文豪たちの名作の謎を解く。
今回は、5つの謎。
「漱石と月」
「清張と手おくれ」
「白浪看板と語り」
「煙草入れと万葉集」
「芥川と最初の本」
流れるような雰囲気が好きで、漱石と月がいいなと感じた。
後半につれ落語もある程度知らないと解釈に困るなぁ…と。
だが何よりお父さんの話がいい。
だからこその中野のお父さんだろうが。