北村薫のレビュー一覧
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学校から帰宅し、レコードを聴きながらうたた寝してしまった17歳の女子高生、一ノ瀬真理子。どの位寝ただろう、レコードは止まってる、と目を覚ますと、部屋も違う、服も違う。17歳の娘がいる高校教師である42歳の桜木真理子になっている!?という事が段々分かっていき…という設定で、先の展開が楽しみなスタート。
17歳の娘が寝て目が覚めたらおばさんになっていた、同い年の娘がいる、夫がいる、教師をやっているらしい、等の到底受け入れる事の出来ない状況に戸惑い苦しみながらも、そこから何とか家族の理解、協力を得ながら、受け持ちの生徒とも心を通わす事の出来る所まで成長していく健気な様や、高校生活の様々なエピソードを丁寧に描いていて、好感度高いが、中盤たれ気味、ラストももう少し盛り上げられる展開もあった?、で少々残念。 -
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今日より明日のほうが希望があると思うのは若いうちだけではない。
年をとるのはいやだけれど、明日があるさと思うのは明るい方向をめざしていて好きだ。
しかし、明日が来ず、昨日今日を繰り返すことになったとしたらどうなる?
ターンテーブルはレコードをのせて繰り返し音楽が聴ける。くるくるくる。
そんな「ターン」の物語。
作者の語り口がおもしろい。耳元でささやかれているような気がする。
それにはあっというカラクリがあった、後でわかる。
主人公版画家の森真希はある日、自動車事故にあう。
気を失って目覚めたら、昨日に戻っていた。
なあんだ夢だったのかと思ったのもつかの間、そこには誰も生き物すらもいなかった。
29歳の真希の冒険が始まる。
けれど誰もいない世界で何をしていても、一日が過ぎるとまた昨日に戻る。
それは怖かったし、淋しかった。151日。
そしてある日偶然に「明日へ」一本の電話がつながる。
一本の電話で明日へつながる相手。理解よきおのこ、泉さん。
これはもう熱烈な恋愛小説だということ。
真希ともにボルテージが上がる。
でも現実には会えない相手。真希には明日がないから。
『「会っているじゃないか」
そういわれて一瞬、震えた。泉さんは続けた。
「面と向かったって、会ってない人たちはいくらもいるよ」』
北村薫描く主人公の女性は、芯はしっかりしているのだが楚々としている。
ちょいとおかしみもある。
「スキップ」「ターン」「リセット」と読み進み、描くところの女主人公にあやかりたく、ほっとするのはどうしたことだろうか -
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新手のタイムトラベルもの、心の時間空間遊泳。生きるよすが。
心のゆくえを文学は様々な描き方をしてくれる。それを楽しむ読者は幸せというもの。
「しし座の流星群」のことが印象深くあった「愛の一家」を子供のころ読みましたとも。
だから...。
ちょうど、私はヒロインまあちゃんこと、真澄とあの人こと、村上君の中間の世代に生きた。だから、お姉さまたちのまだ物のかろうじてあった時代(戦争が始まる前)の話はうらやましく、なつかしく、いぶし銀の輝きのごとく見える。そして、村上君の時代(戦後16年経って)は、私がもう成年になっていたからよく知っている、それはそれで懐かしい。
村上君の小学時代の日記(たぶん作者)の記述の数々から思い出す私の経験。
フラフープ、ホッピング。
そして、忘れもしない高校入学を果たしたので、家でも買うことになった白黒のテレビジョン。
アメリカTVドラマ『パパは何でも知っている』キャシーの初恋。
...。
ほんとに、作者は資料をよく調べこんで描いている。出てくる風物ことごとく懐かしくて、懐かしくて仕方が無かった。いずれにしても帰らない日々。
でも、『百年前の人は、今のものを見られないし、今の人は百年後のものを見られない。だからって、後の人のほうが得だってことはないと思うの。』という真澄の言葉。
感動の時の流れ!それしか言えない。読んでよかった。 -
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文芸編集者の娘が出くわす日々の謎に、豊富な知識と推理力を持つ父が解決を加える日常の謎の連作短編集。
収録短編は8編。応募していないはずの作品が新人賞を受賞する。マラソンが趣味の作家との付き合いで参加したマラソン大会での不可思議な出来事。そういった編集者ならではの日常の謎もあれば、俳句の解釈をめぐっての問答など文学ミステリらしい一編もあって、それも面白い。
「吉原の闇」という短編が、その俳句の解釈をめぐる短編ですが、句をどこで切るかで、俳句の意味合いが大きく変わる。解釈も時代背景によって変わる。同じ句でも正反対のイメージが浮かび上がってくる、言葉の面白さが伝わってくる短編です。
一編、一編は短いので、劇的な謎解きというよりはすとんと何かが腑に落ちたような感覚が残る。ミステリなんだけど、意外な結末といった興奮させるようなものではなく、どこか自然な読み心地です。
美希をはじめとした登場人物たちの何気ない日常や会話が良かった。美希が実家に帰って家族と会話しているシーンや、場面場面の和やかさもそうだし、同僚との会話なんかも力が入っていなくて、ユーモアもありくすりとさせられる。
美希が同僚と牡蠣料理店に行った時の、女性同士の飾り気のない会話が個人的にすごいと思いました。空気感が本当に女性の日常の何気ない会話っぽい。それを男性の北村さんが書いているのが、どういうこと? と思ってしまう(笑) -
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北村薫の時と人シリーズ第3弾。第2弾「ターン」を読んだのが2011年2月だから、まさに10年前。読もう読もうと思っていながら、なかなか手に取ることをためらっていたのは、なんだか読み切ってしまいたくないな、勿体ないな、という貧乏性が故か。とはいえ、いつかは読まないといけないということで、意を決して購入。
「リセット」、「ターン」ともに10年以上前に読んだので、その記憶も定かではないのですが、今回の「リセット」はそれらと比べて、とてもおとなしいようです。これまでの2作は、どちらも時の理不尽さに翻弄される主人公がなんとか抗っていた印象が強いのですが、本書は時の流れに身を委ねている感じ。理不尽なのは時代の方であって、時がそれを洗い流してくれるような印象さえ抱きました。
さて、本書で紹介されていた石川啄木の一句。とても印象に残りましたので、備忘がてら。
かの時に言いそびれたる
大切の言葉は今も
胸に残れど