北村薫のレビュー一覧
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今日より明日のほうが希望があると思うのは若いうちだけではない。
年をとるのはいやだけれど、明日があるさと思うのは明るい方向をめざしていて好きだ。
しかし、明日が来ず、昨日今日を繰り返すことになったとしたらどうなる?
ターンテーブルはレコードをのせて繰り返し音楽が聴ける。くるくるくる。
そんな「ターン」の物語。
作者の語り口がおもしろい。耳元でささやかれているような気がする。
それにはあっというカラクリがあった、後でわかる。
主人公版画家の森真希はある日、自動車事故にあう。
気を失って目覚めたら、昨日に戻っていた。
なあんだ夢だったのかと思ったのもつかの間、そこには誰も生き物すらもいなかっ -
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新手のタイムトラベルもの、心の時間空間遊泳。生きるよすが。
心のゆくえを文学は様々な描き方をしてくれる。それを楽しむ読者は幸せというもの。
「しし座の流星群」のことが印象深くあった「愛の一家」を子供のころ読みましたとも。
だから...。
ちょうど、私はヒロインまあちゃんこと、真澄とあの人こと、村上君の中間の世代に生きた。だから、お姉さまたちのまだ物のかろうじてあった時代(戦争が始まる前)の話はうらやましく、なつかしく、いぶし銀の輝きのごとく見える。そして、村上君の時代(戦後16年経って)は、私がもう成年になっていたからよく知っている、それはそれで懐かしい。
村上君の小学時代の日記(たぶん -
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記憶が飛んでしまったら?それってボケじゃないの?
思い出だしたくない過去だけ忘れられたら?そりゃ気楽で良いじゃないの?
いえいえ、そんな気楽なお話でなく、せつない、せつない物語。
だって、大切な人生の歩みの証が何処かにいってしまったのだから。
17歳の高校生の「一ノ瀬真理子」は昼寝から目覚めると、42歳になっていた。
夫と17歳の娘がいる高校の国語の先生。思い出は17歳まで。「25年という時をロスした」感じ。
心は17歳の高校生でも身体は42歳の国語教師を、持ち前の「自尊心」で乗り切るその苦闘。
といっても、しゃかりきに見えないところがいい。17歳の若さの柔軟性がある。
自分という存在が -
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文芸編集者の娘が出くわす日々の謎に、豊富な知識と推理力を持つ父が解決を加える日常の謎の連作短編集。
収録短編は8編。応募していないはずの作品が新人賞を受賞する。マラソンが趣味の作家との付き合いで参加したマラソン大会での不可思議な出来事。そういった編集者ならではの日常の謎もあれば、俳句の解釈をめぐっての問答など文学ミステリらしい一編もあって、それも面白い。
「吉原の闇」という短編が、その俳句の解釈をめぐる短編ですが、句をどこで切るかで、俳句の意味合いが大きく変わる。解釈も時代背景によって変わる。同じ句でも正反対のイメージが浮かび上がってくる、言葉の面白さが伝わってくる短編です。
一編、一編 -
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ネタバレ面白かった、けれどすっきりしない、というのが正直なところです。荒削りな感じ。
・スキップした理由は。
・元に戻ることはできないのか。
この二点がやはり大きい。そんなのは無粋なのかもしれませんが。
作者は高校で教員(しかも担当は国語)をしていたということで、作者の対生徒への思いが溢れていました。日誌のやりとりなんて素敵。ただ、今はもう時代が違うんだろうな、と思うことも多々。
そして、生徒たちの抱えるものが消化されているようないないような…。そこも、日常と思えば全てに関与したり解決したりはできないから仕方がないのでしょうか。
後半、池ちゃんとの再会や旦那さんへの歩み寄りなど、事態が一気に進 -
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北村薫の時と人シリーズ第3弾。第2弾「ターン」を読んだのが2011年2月だから、まさに10年前。読もう読もうと思っていながら、なかなか手に取ることをためらっていたのは、なんだか読み切ってしまいたくないな、勿体ないな、という貧乏性が故か。とはいえ、いつかは読まないといけないということで、意を決して購入。
「リセット」、「ターン」ともに10年以上前に読んだので、その記憶も定かではないのですが、今回の「リセット」はそれらと比べて、とてもおとなしいようです。これまでの2作は、どちらも時の理不尽さに翻弄される主人公がなんとか抗っていた印象が強いのですが、本書は時の流れに身を委ねている感じ。理不尽なのは -
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北村薫の「時と人 三部作」と呼ばれる作品の3作目。
太平洋戦争末期、神戸に住む女学生の水原真澄は、時局の厳しさを横目で見ながら友人たちと青春を謳歌していた。
真澄には、結城修一というほのかな恋心を抱いている少年がいる。
幼い記憶にある、30数年に1度しか見られないという獅子座流星群をいつかふたりで眺めてみたいと真澄は心に期していたが、
度重なる戦火がふたりを引き裂いてしまう。。。
やがて終戦を迎え、東京オリンピック開催が近づく昭和30年代前半。
小学5年生の村上和彦は、自前で小学生に絵本や児童書を貸し与える女性と知り合う。
彼女こそは水原真澄だった。折りしも獅子座流星群の到来まで、あと4年と -
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ネタバレ2月22日は猫の日ということで読んでみた。これまでアンソロジーはあまり手に取ることはなかったけれど、普段読まない作家さんの作品に触れることができてよかった。
1作品あたりのページ数も少なく、隙間時間で読むことができる。
【最も好きな作品】
柚月裕子さん「泣く猫」
17年会っていない母が猫に自分と同じ名前をつけていたことを知ったときの真紀の気持ちを想うとともに、母はどのような想いでマキと呼んでいたのだろうかと思う。
マキの登場が真紀の感情を引き出し、自覚させるきっかけになったのではないか。
【最も印象に残ったフレーズ】
北村薫さん「『100万回生きたねこ』は絶望の書か」
「本の読み方にひとつ