北村薫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「編集者」が主人公の小説を探していたところ、ネットで名前が挙がっていたので手に取りました。
実際には編集の(というよりも編集者での勤務の)過程で出会った「謎」についてのミステリという感覚の連作短編集です。
主人公の田川美希が謎に遭遇し、それを中野に暮す父親に相談する。すると、父親がその膨大な文学・芸術についての知識や蔵書を活用して謎を解く、というのが全話に共通する流れで、いわゆる「安楽椅子探偵」モノとも言えるかもしれません。
文学作品につらなる謎を解く、という設定は「ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズにも通ずるものがありますが、「ビブリア」シリーズが”本を持ち込んだ/それまで所有していた人”の抱えた謎が中心であるのに対し、”本や作品そのものにまつわる謎”がメインテーマとなっていることが本作の特徴だと思います。
国語教師をしているという美希の父親の豊富な知識やわかりやすい解説は文学史に興味がない読者にとっても「読ませる」文章ですし、これをきっかけに文学の世界に興味を持つ人も増えるのではないかと思います。
気軽に読むことのできる文学ミステリとしてお薦めできます。
一方で、「編集者」の仕事そのものについてフォーカスされている部分は決して多くなく、出版業界のお仕事小説という要素を期待すると肩透かし食らうかもしれません。 -
Posted by ブクログ
「北村薫」の長篇SF作品『スキップ』を読みました。
「北村薫」の作品は2年半前に読んだアンソロジー作品『眠れなくなる 夢十夜』に収録されている『指』以来ですね… 久しぶりです。
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まどろみから覚めたとき、17歳の〈わたし〉は、25年の時空をかるがる飛んで42歳の〈わたし〉に着地した。
昭和40年代の初め。
わたし「一ノ瀬真理子」は17歳、千葉の海近くの女子高二年。
それは九月、大雨で運動会の後半が中止になった夕方、わたしは家の八畳間で一人、レコードをかけ目を閉じた……目覚めたのは「桜木真理子」42歳。
夫と17歳の娘がいる高校の国語教師。
わたしは一体どうなってしまったのか。
独りぼっちだ――でも、わたしは進む。
心が体を歩ませる。
顔をあげ、《わたし》を生きていく。
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1995年(平成7年)8月に「新潮社」より書き下ろしで出版され、第114回直木賞候補となった作品… 時に翻弄される人を描いた「時と人」三部作の第1作目にあたる作品です。
「一ノ瀬真理子」は高校2年の17歳… 雨で運動会が途中で中止になってしまった、、、
翌日にある文化祭では毎年男子校の生徒がやってきてフォークダンスを踊る事になっており、「真理子」は去年踊る事が出来なかったので今年は踊りたいと思っていた… だが、雨が止んだとしても地面が駄目になってしまっているだろう。
「また来年がある」と、諦めるしかなかった… 家に帰り、レコードを聴きながらうたた寝をする、、、
そして目を覚ますと、見知らぬ部屋に居た… 服も全く違うモノになっていた。
玄関の方から音が聞こえてきたので恐る恐る向かうと、自分と同じぐらいの少女「美也子」が家に入ってきた… 状況が呑み込めない「真理子」は「美也子」と話していく内に、自分がつい先程まで居た時から25年も経っている事、「美也子」が自分の実子である事、そして夫「桜木」が居る事を知る事になる、、、
実家はもう既になくなっており、その上両親も亡くなっていたのだ… 時代の変化に翻弄されつつも、このままだと亡くなった両親に顔向けが出来ないと自分を「ロビンソン・クルーソー」に例え、役回りは出来る限り果たそうと決意する。
そんな最中、家にある電話がかかってくる… 相手は桜木真理子が受け持つクラスの生徒で、暴走族に入ってパンチパーマをかけてしまったと言うのだ、、、
突然の事に戸惑った「真理子」は「美也子」の力を借り、生徒の連絡先を調べるべく自分の職場である学校に行く… そこで他の先生から新高3の国語の実力テストの話を聞き、この時代で生きていくためにも「桜木真理子」となって、その実力テストを作ることを決意する。
きっかけにはSF的な仕掛けが取り入れられていますが、内容はSFというよりは、一人の少女が大人の女性として成長する物語… 25年の歳月を飛び越えて、成長せざるを得ない状況に追い込まれながらも前向きに生きようとするヒューマンドラマでしたね、、、
17歳から42歳って、人生の中で本当に重要な25年間がぶっ飛んでしまっているわけで… それを素直に受け止めることなんでできないし、悲観しかできない状況ですが、それを乗り越えようとする「真理子」に感情移入しながら、寄り添いながら読めて、とても愉しめました。
面白かったので… 「時と人」三部作の『ターン』、『リセット』も読んでみたいですね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ表紙絵とタイトルで読みたくなった『月の砂漠をさばさばと』(北村薫)。
1人のお母さんと1人の娘のほのぼの話で、
彼女らの会話のやり取りは時にプッと笑えて微笑ましくもある。
お母さんが「この分野苦手であんまり知らないんだよね」と言えば、
娘が「じゃあ、私が学校で習って教えてあげる」と返す話なんかまさにソレ。
娘かわいい。
《親子》というと、「親が子を守らねば!」「親が子にいろいろ教えなければ!」っていうイメージ強いけど…
この【教え合う関係】っていうのはいいなー!と思いつつも、まだあんまし経験したことはない。
ただ、【対等(多分)の関係】というのはあった。
それが小学生の甥っ子にパズル対決持ちかけられた時の事。
「大人だからちょいと優しくしよう」なんて考えてたら、
「むっちゃん、わかってると思うけどボクは小学生だからね」なんて言ってきた時にゃ笑ってしまった。
「まさか小学生に負けないよね?」とナマイキにも挑発してやがる!!(激笑)
「よぉし、やってやろうぢゃないのォ!!」とバトった末に…
敗北しました。
小学生すげぇ。
「優しくしよう」なんて考えてたワタクシがアホでした。
でもこういうの何か好きなんだす。
「まだ小さいのに超レベルアップしてる。小学生すげぇ」というのがわかるから。
「私この分野の苦手なんだよねぇ」って今度言ってみようかなぁー。
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Posted by ブクログ
主人公は、文芸誌の編集者をしている田川美希。
彼女が仕事で出会う文学ミステリーについて、美希の話を聞きながら解決をしてくれる実家(東京の中野)の父。
コージーミステリーに分類される本作。
短編集でもあり、登場人物たちの深刻さがないこともあり、さくさくと読めた。
個人的に、短歌の解釈に関するお話がおもしろかった。
落語家のインタビューをした美希が、「闇の夜は吉原ばかり月夜なり」という短歌をどこで区切るか?という問題を知り(闇の夜は、で区切れば、吉原だけが夜でも明るいという視覚的なイメージが沸く。他方で「闇の夜は吉原ばかり、」で区切れば、吉原には闇がはびこっているという暗いイメージのうたになる)、お父さんに尋ねる。
お父さんの回答の中で、「吉原で働くことがかわいそう(=闇)」という価値観は現代の価値観だ、ということにはハッとさせられた。
確かに、やりたくない仕事のために身を売られる少女のことを思えば、かわいそうになる。ただ、親に売られなければならない程に経済的困窮した生活を続けたところで、命が続く保証もないだろう。
衣食住がそろった生活ができている現代の価値観を、江戸時代の貧困層にあてはめて、「身売りだなんてかわいそうだね」というのは、たしかに無粋な気もした。
ただ、「中野」のお父さんとは言うものの、出てくるのは実家室内だけ。
中野という街は魅力的なところだから、中野の街の情景がもっと読みたかった。