柚木麻子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
後輩がおすすめして貸してくれた本です。
題名の「BUTTER」に象徴されるように、本作は食に関するシーンが数多く登場します。
週刊誌の記者として働く主人公の里佳は、激務に煽られ不摂生な生活を送り、特別好きでもない彼氏と関係を続けています。
そんな中、婚活連続殺人事件の容疑者である梶井真奈子に取材を取り付けるのですが、彼女の巧みな言葉に魅せられ食の世界に落ちていきます。
初めて自らの手で作り上げたご飯を通して、彼女の価値観は段々と変わりはじめます。
「マーガリンとフェミニストが嫌い」というセリフに衝撃を受けました。食を通じて、女性への偏見、性差への価値観、人生への向き合い方などをリアルに描いている本作の代名詞だと思います。
自分で自分を認める強さを大切にしたいと強く感じました。 -
Posted by ブクログ
やっぱりアッコさんシリーズ好き。
自分で無意識に作りあげた制限された世界を、少し視野を広げて飛び出してみれば、新鮮で充実感と幸せに満ちた気持ちを感じられる経験が出来るかも。
たとえ小さな一歩でも世界は変わる、そう思わせてくれる4編。
たとえば、1.2.4話の主人公は、自分の勤めるビルの決まったフロアから上に行ったことがない。
私もすごくわかる。
同じビルでも未知の世界なのだ。
ちょっと尻込みしてしまうのだ。
この本の主人公はみんな、つまらなくてやりきれない思いを抱えながら生きていた。
それが唐突に関わることになった人によって、半ば強制的に未知の世界へ押し出される。
そこで感じる新鮮さ、心躍り、安らぐ懐かしさ、喜びから、今度は自らの足で新たな世界へ踏み出して行く。
環境をガラッと変える訳でも、新たな人間関係の中へ飛び込む訳でもない。
ただ、同じ環境、同じ人間関係の中で、自ら変わり新たな世界を作っていくのだ。
きっかけは他人が作ってくれたかもしれない。
それでも、そこから自分の意思で人生を進み始めた主人公や、自分を認めてまた歩き始めた主人公には尊敬しかない。
結局、自分を救うのも自分を幸せにするのも自分。
他人はそれを手伝うこと以上はできないんだよね。
そしてやっぱりアッコさんは、不思議でいてしっかり人を見ている暖かい人。
私も新しい何かを見つけたい。
面白いものを見過ごさないように、好奇心のアンテナを張っておきたいなと思った。
あと、人脈の大切さに気づかせてもらった。
アッコさんのためなら!そんな風にみんなから言われるアッコさん、やっぱりすごい。 -
Posted by ブクログ
この本は私に今足りなかった栄養
あなたの好きなものは何ですか?
人によって、好きなものは違う。
でも、みんな共通して食事はする。
そんな食事を今、あなたはどれだけ味わっているのだろうか?
授業に間に合わせるためコンビニで目についた物をパッと買う。スーパーで安かった野菜を適当に炒める。課題をしながら片手間に食べやすいという理由で選んだサンドイッチ。タンパク質を取るために機械的に口に運ぶサラダチキン。
私はこんな食事が多い。
最後に、自分の好きな物を選んで口にしたのはいつだろうか?
そもそも、私は、今、自分の食べたいものがちゃんと分かっているんだろうか?
そして、それは、食事だけではない。
「自分の」好きな物を選ぶ。
難しい事だ。
今年22歳になった私にとって、それは難しいというよりは、忘れてしまっていたことにも気づかない。そんな感覚だ。
服も食事も体型も振る舞いも。
社会に好まれる物を選ぶ。強制されているというより、それが私にとっても楽で最適。誰かのためにも私のためにも、その程度の好みを貫くことに何にも意味はない。そんなセルフネグレクトは、他人の目から見ると「正しい努力」として評価される。
そんなふうに考えて生きているうちに、好きな物や好み、何かが欲しいという感覚さえ忘れてしまう。
この本は、そんな風に自分の欲望に鈍感に生きていた主人公が、常に貪欲に他者を顧みず生きてきたカジマリと関わり変わっていく話である。
私は主人公の感覚に非常に共鳴した。
誰よりも自分を認めて許すカジマリに強く憧れ、彼女を受け入れない社会に首を傾げる。
でも、我を貫くカジマリが、社会から弾かれるのを見ると、ほらな。ざまぁみろ。とどこかで胸のすくような安心も覚える。
私はこの本に影響されて、ひっさしぶりに手の込んだ自炊(当社比)(親子丼、パリパリおつまみキャベツ、鶏皮の甘焼き)をした。でも、食べにくる友達に何を出すかとか、安いお野菜、肉。という考えを排除して、自分が何を食べたいのかを考えると、意外と難しくて、この思考回路はしばらく使っていなかったんだと今更ながら実感した。
私も主人公も、自分の反対側にいるカジマリを通して、鏡越しに自分の生き方、欲望を見つめた。
私達とカジマリ、どちらが正しいんですか?
この普遍的な疑問に対して、答えは一見、つまらない。
結局、程度が大事。
「適量」が重要。
ただし、この「適量」とは程々がいい。そんな意味ではない。
必要な量が必要。
つまり、食事も友情も愛情も、時には莫大に必要なのだ。
程々の量を摂取してお利口さんにしていましょうねー。という、ありきたりなお話とは全く逆なのである。
そして、そんな自分の「適量」を知るためには、自分の心の声、「欲望」に耳を傾ける必要があるのだ。
私たちは、「欲望」を満たすために、別の「欲望」を我慢する時がある。それを続けるうちに、「欲望」に標準が合わなくなっているのに、目標に走り続けてしまう時もあるだろう。しかし、最終的に、私たちの生活を豊かにするのは、私たちの「欲望」なのだ。
この小説のテーマの一つには、明らかにジェンダーがある。
それは、ジェンダーにまつわるバイアスや、ロールが私達の「欲望」を押さえつける事に特化しすぎているからだろう。
でも、男性、女性として(社会が望むように)立派になる。仕事と家庭を両立した女になる。
こんな事は、そもそも出来ないし、出来ても幸福ではない。
生意気、身の程知らず、効率的でない、似合わない、年齢に合わない、高い、無駄、私が選ばれるのか
ジェンダーや現代社会の生活は私にこうした欲望を否定する事ばかり教え込んでいないだろうか。(私がそっちばっかり吸収してるだけかもしれない笑)
あえて男女で分けるとすれば、、、
女性は、自分が「選ぶ側」であるという感覚を失っていないか?
残り物を美味しくいただく。選ばれるショートケーキである。献立は家族に合わせて考える。
男性は、自らにも、欲望を叶える力があると知らないのではないか?
温かい家庭料理、片付いた部屋、人や社会とのコミュニケーション。
こうした物は、提供する「女性」がいなくても、自分で拵える事もできる。
(とはいえ、私も自分の面倒を見切れてないので、完璧にするのは、マジでいい奥さんがいないと難しいのはよく分かります)
私は、自分の心の声に耳を傾けて、欲望を否定しない訓練が必要だ。
そのためには、1番身近で思い出しやすい欲望。食事が大事なキーワードだ。
毎食、フルコースでなくていい。私の気分、舌、気力、体調。
丁寧に耳を澄ませて私のための食卓を作るところから始めたいと思った。
一つだけ、納得がいかないとしたら。
この小説には、自分の欲望に素直になって、「自分で叶える」。他者に押し付けない、依存しない。そういうニュアンスがあると思う。
でも、私は人に押し付けたっていいと思う。そういう図々しさこそ、私には必要なんじゃないかな。
男女ともに、人の手料理でしか満腹になれない、そんな瞬間だってあると思う。
「私は私の求める物を作れる、選べる、整えられる」こんな自負は、1人で立っていく支えにはなるかもしれない。
でも、多くの人にとって1番豊かな人生は、1人では作れない、自立した関係性の人間とも作れない。そういう物なのではないか?
3食バターだけを食べていたら死んでしまうけど、でも、私の豊かさは、そこにしかないのではないか?
今の私はそう思う。
また、本当に文章が素晴らしい!
素晴らしい比喩や、美味しそうな表現、人物の描写も具体ではなく、主人公の目を通した雰囲気が伝わってくる。
人物に関しては、これにより主人公の認知の歪み(言い方は悪いけど)を一緒に味わえるため、彼女の考え方が揺れ動くのを体感できて楽しかった。
本当にセリフも地の文もお気に入りの文章が多くて、たくさん線を引いた小説。
おすすめです。
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Posted by ブクログ
本屋で出会った本です。
二人の女の子
ダイアナと彩子の心と身体の成長物語
お互いがお互いを羨み憧れ
大好きなのに
少しのすれ違いで絶交してしまいます。
後になってもお互いに憧れて
羨んでけれど、話しかけることすらお互いできず
遠くから見ている
心のどこかではつながっている
少女二人が別々の道を歩きながら
だんだん大人になっていき
いろいろな経験していきながら
それに伴い
一番近い存在の
親に反発や反感を持って
それをバネに頑張り続ける二人
大人になって初めて
親に対する見方も苦労や大きさも温かさも少しづつ気づいていく
読みながら
本当にこの二人が愛しくて
可愛くて
たまりませんでした。
私の
大好きな赤毛のアンシリーズの話もポイントポイントで出てきて
まさしく私好みの本すぎて
終わったあとも本を握りしめてました。 笑
また大好きな本が増えました。 -
Posted by ブクログ
男と女、女の容姿、食べ物、女の友情、そしてバター。とても濃厚な小説でした。
美味しいお肉を食べた後の、満たされた気持ちと指先と髪の毛の艶は、やはりダイエットフードとは全然違うのを身をもって知っています。なぜ、太って美人でもない容疑者がたくさんの男性を誑かすことができたのか。小説でもグルグルと思考は回ってますが、私としてはやはり満たされている余裕ではないかと思っています。バターとマーガリンは別物!!!
食べ物の描写も、とっても美味しそうで、作中の事件とのギャップが大きかったように感じます。ダイエット中に読むのはよくありませんでした。ダイエットは誰の為?って思い始めてしまったり。体重に余裕のある時(?)にまた再読したいです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレやっと読めた。面白かった!
最初手に取った時はこんなに分厚い本を私は読めるだろうかと気後れしたのだが、次の展開が気になりまくるストーリーと読みやすい文章のおかげで、特に後半はノンストップでがーっと読み切ってしまった。
食べ物についての描写がとにかく豊富で斬新な気がして、この物語にとって食べるという営みを描くことがどれだけ重要であるかが、縦横無尽な表現を通してひしひしと伝わってきた。
ネガティヴ・ケイパビリティについての本と同時進行で読んでいたのがなんだかよかった気がする。数多のもやもやや梶井の不可解さに対して短絡的な解を決して求めず、じっくり向き合い、たまに過去の己の振る舞いを反省もし、根気よく観察を続ける里佳を見ながら、とてももどかしくてしんどいだろうとこちらまで辛くなったが、それでも考えることから逃げない里佳のしぶとさが素晴らしいし尊敬できるなぁと思っていた。
旧来の「家」の在り方に縛られているのは男も女も一緒、本当にその通りだと思った。とにかく仕事は辞めちゃだめだよ、と後輩に言う里佳がよかった。ある程度の自由を謳歌するためにはある程度の経済力が必要になることを身をもって知っている人なのだと思った。心のままに生きることを自分にもっと許してみようと思える本だった。柚木さんの本は初めて読んだが、他の本も読みたくなったし、この本もまた読み返したい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレいっぱい書きたいことがありすぎて頭がぐちゃぐちゃになりながら書きますのでご了承ください
まずは柚木麻子さんの作品を初めて読ませてもらって
ひとつひとつの比喩表現がとても豊かで、しかもその数が恐ろしくてそれだけで読んでいてお腹が満たされました。
題名の通りバターを物語の中で重要なポイントになっていますが、あの旨味をほんとに口のなかに感じながら読んでいるようでした。私自身、影響されてエシレバターを買い、カルトカールを焼きました。今年のクリスマスケーキにはウェストのものを予約するつもりです。
もうひとつ気に入っている点としては、
出てくる女性がみんな生き生きとしていたことです。
日々いろんな感情を感じながらも、折れそうになりながらも踏ん張って楽しいことを探して回復して生きていく姿がかっこよかったです。
あとは個人的にこの人モテるなと思う人たちとカジマナがすごく印象が被ってて面白いなと思いました。
生命力があって、自分が楽しいと思うことしか基本やりたくないという姿勢で生きてる
自分勝手だし振り回されるし傷付けられるけど
なぜか魅力的だなと思っていたんですよね
この人に好かれていたいと思ってしまう
カジマナの取材録を通して私の周りのモテる人たちへの解像度が上がった気がしています。