瀬戸内寂聴のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
著者は俗評にまでまみれた超の付く著名人だが、著作を読んだのは本作が初。
挑戦的?とも思えるタイトルについ惹かれ、手に取って読んでみた次第。
これは傑作だ。読みながら何度も繰り返しそう確信しながら読み進む。こんなこと、珍しい。文章が、表現が、描写が、構成が、どれも唸るほど美しく、心に染み入る。
作中で著者自身も書いている通り、「私小説」なるタイトルには幾重にもトリックがあるようだが、それは決して薄っぺらく安っぽい試みではない。多くの登場人物に実在のモデルが居ることも容易に分かるが、さりとてその「実物」と作中の人物がどこまで重なるのか?…というような俗物的な詮索をする気など全く起こらない。そのくら -
Posted by ブクログ
私はプロのパッパラパーな上にセンスの無さにも定評がありますので、人間ならば何を差し置いても読むべきもの、聴くべきもの、観るべきものをことごとく外して生きてます。
それでも「常識ある大人」への憧れみたいなものはありまして、時折古典の名著を読んでみたいなぁとか思うわけです。生意気ですよね。
ただそのまんま「完全現代語訳」みたいなのを読むかといわれても読めない。だってバカだから。そんなものが読めるならこの年でこんなザマな訳ないんですよ。
なので「あーーー源氏物語読みたいけどそのまんまは嫌だなー。どっかにパー向けに噛み砕いた簡単な内容でありながらも読んだ充実感みたいなのはちゃんと得られる、意地悪で世間 -
Posted by ブクログ
政治的には窮地から一転返り咲いて栄華を極める直前くらいまでのドラマチックな展開。また、藤壺、紫の上、末摘花、明石の君とその家族、花散里、六条御息所と斎宮、朱雀院、東宮、権中納言(元頭中将)…と多くの人物たちの物語も描かれておりまさに群像劇。
漫画『あさきゆめみし』でも印象的だった二条の東の院が完成する。この巻では花散里、末摘花が入る。漫画でのほわんとした雰囲気(美人には描かれていない)がいいなと花散里が好きだったけど、まだいまいちこの人が源氏にこれだけ良く遇される理由がよくわからない。この作品では、恋する思いが強いほど悩みも多くなる、と男も女も繰り返し嘆いているので、なんかほどほどな感じが