あらすじ
不義の子を産んだ女三の宮が出家し、柏木は病死。夕霧は柏木の未亡人・女二の宮への恋に迷う。最愛の紫の上に先立たれた光源氏は悲嘆の末、ついに出家を決意する。光源氏亡き後、出生の秘密に悩む女三の宮の子・薫と明石の中宮の子・匂宮を中心に、新たな物語が始まる。第7巻は、柏木・横笛・鈴虫・夕霧・御法・幻・雲隠・匂宮・紅梅を収録。
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巻七は「柏木」「横笛」「鈴虫」「夕霧」「御法」「幻」「雲隠」「匂宮」「紅梅」。
源氏の若き妻、女三の宮と柏木との密通、そして子供が出来たことが源氏にばれ、源氏に対して面目無くて、柏木は病気になり、亡くなってしまいます。女三の宮もつくづく現世が嫌になり、まだ若いのに出家します。
そして生まれた子供は…本当の父親は柏木だということは女三の尼宮と源氏だけが知ることであり、世間の祝辞を受けながら、源氏は苦い気持ちでいます。だけどその子は美しいのです。ひと目見て、柏木と似ているのですが、何故か人を惹きつけてしまう可愛らしさがあり、源氏と血の繋がっている明石の女御の子供たちよりも高貴な美しさがあるのです。源氏は「自分と似ていないこともないな」と思います。では、やっぱり源氏の子供?いえいえ、違います。だって夕霧だってこの若君の顔をみたとたん…「やっぱり!」と柏木の秘密に気づいてしまったのですから。
だけど、血の繋がりではなく、この若君、物語の役割的に源氏の跡取りなのかなと思いました。
また、亡くなった柏木は親友だった夕霧に柏木が生前あまり大事にしなかった妻、女二の宮のことをよろしくと夕霧に遺言します。それを守って、悲しみにくれる女二の宮を柏木はマメに見舞うのですが、見舞ううちに熱を上げます。夕霧の話を聞いて、そのことに勘づいた源氏は「あまり深入りして男女の仲になると後々ややこしいので、けじめを付けて深入りしないほうがいいですよ。」と忠告するのですが、夕霧は心の中で「どの口がおっしゃってるのですかね?」と思っています。怖いぐらいの美貌と理知に冴え渡った源氏でも自分のことを棚に上げて息子に忠告している姿は間が抜けていてほっとします。
初恋の雲居の雁ちゃんと結婚出来た夕霧には今や沢山の子供がいて、家に帰るとガヤガヤと騒がしく、幸せなのだけれど、妻の尻にひかれ、トキメキからは遠ざかったお父さんになっていました。父の源氏とは対照的に真面目で浮気など経験なかった夕霧。雲居の雁と結婚してから始めて他の女の人の所に通うのですが、女二の宮からは断固として拒否されます。そして雲居の雁も勘づき、実家に一時帰るなど、ちょっと波乱がありますが、折り合いをつけて落ち着いたようです。
源氏似でスペックが高く、真面目で家庭的で面倒見が良い夕霧なのに、浮気にかけては父親に似ず不器用な夕霧を可愛いと思うのは私だけでしょうか。
このあと、ついに紫の上が亡くなり、悲しみにくれたまま「雲隠」という内容が一行も無い、題名だけの帖で源氏が亡くなったことが暗示され、そのあとの「匂宮」ではその8年後となっています。
源氏の死後、源氏ほど眩しい人はいないとなっていますが、その中で美しいと評判なのは、柏木と女三の尼宮との不義の子(世間では源氏の子)、“薫”と明石の女御と帝の間の三の宮、“匂宮”です。
薫は生まれつき体臭がとても良い香りで、匂宮はその薫に張り合っていつも良い香りの香を焚きしめていたのです。このスペックの高い二人は人気が高く、既に娘の一人を東宮妃にしている夕霧も残りの娘のうち一人は薫か匂宮のどちらかの嫁にしたいと思っているのです。
高貴でスペックが高くて仲が良くてライバル同士の二人は往年の源氏と頭の中将、夕霧と柏木のようです。匂宮は往年の頭の中将や柏木のように自意識が高く負けず嫌い。薫は友達も多く、女性にもて、親孝行ですが、自分の出生の秘密を薄っすら知っていて影があります。
すっかり世代交代した源氏物語。けれど家系図を見れば見るほど源氏の血を引く人たちのなんと多いことか。そうでない人はかつての頭の中将の血を受けている人が多いです。宮家(源氏側)と藤原家(頭の中将)ということですね。二人とも亡くなった後の世なので、血の繋がった人たちがいて読者としてはちょっと嬉しいのですが、凄い勢力ですね。
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「柏木」「横笛」「鈴虫」「夕霧」「御法」「幻」「雲隠」「匂宮」「紅梅」の9帖が収録されている巻七。
女三の宮に不義の子を産ませた柏木は、ノイローゼから病気になってしまい、間もなく他界する。
一方、柏木の親友であった夕霧は、「妻の女二の宮を見舞ってくれ」という彼の遺言を守るうち、次第に女二の宮への恋心をふくらませるようになる。
今まで誰よりも理性的で道理をわきまえた人物であった夕霧が、心を迷わせて女二の宮の部屋にしのびこむ姿はいささかショッキングだった。
当時、女性が夫以外の男性に顔を見られるというのはあってはならないことだったようだ。
第40帖「御法(みのり)」では、とうとう紫の上に死のときが訪れてしまう。
紫の上、源氏の院、明石の中宮がそれぞれに別れの悲しみを歌に詠み、その夜が明ける前に紫の上は亡くなってしまうのだけれど、この場面が本当に本当に美しくて、僕も源氏のように悲しさで胸がしめつけられて泣きそうになってしまった。
10歳のときに源氏にかどわかされて以来、何不自由ない暮らしをしてきた紫の上だけれど、その生涯をふりかえるとやはりかわいそうな女性だったなあって思う。
紫の上の死後、源氏が明けても暮れても涙を流し、悲しみを歌にしている様子がまた切なかった。
「雲隠」は題名のみで本文はまったくなく、次の「匂宮」に進むと光源氏はすでにお亡くなりになっていた。
こういう演出に触れるにつけ、紫式部は天才だとまた思い知らされる。
以降は、柏木と女三の宮の不義の子・薫、今上帝と明石の中宮の三の宮である匂宮を中心とした第2部ともいえる物語が展開されていくようだ。
ところで、平安時代の人って事あるごとに「出家したい」って言いすぎ!(笑)
今でいうところの「引きこもり」みたいなものかな?
「ちゃんと現実と向き合いなさいよ!」って思ってしまうわけです。
古典を学ぶ意義って、こうした昔の人の考え方を知ることにあるのかな。
『源氏物語』、正直ここまで心を動かされる小説だとは思っていなかった。
高校の国語の先生が『源氏』のおもしろさを熱く語っていたことや、この作品の研究に一生を捧げる人がいることも今ならわかるなあ。
1000年先にも語り継いでいきたい最高の恋愛小説です。
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ついに源氏の院が亡くなる。有名だけど、彼が死ぬところは明確に描写されない。ただ、雲隠というなにも書かれていない帖があるだけ。このシンプルで潔い形に、紫式部すげえ!と思う。そしてこの巻の最後に、今までちらとも出て来なかった、宇治の姫君に匂宮が想いを寄せているということがたった一文書かれているのもぐっとくる。これで読者をひきつけ、次へ次へと急がせる。現代の小説家にもこんな潔くてドラマティックな小説を書いてほしい…これを読んでしまうと現代文に魅力を感じなくなる。
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恐らく源氏物語のクライマックスだろう。光源氏御寵愛の紫の上が亡くなり、それを追うように源氏も息を引きとる。こんなにエキサイティングで、ページをめくる手が早くなる巻は今までになかった。
一番印象的な巻は、「雲隠」。この巻は題名こそあるものの、文章はない。開くと真っ白で、一瞬印刷ミスかと思ってしまうほど。次をめくると、新しい物語が展開している。どうやら源氏は亡くなったらしいと悟る。なんとインパクトのある巻だろうか。
源氏物語ではどんなに主役級の人の死でも、読み飛ばしてしまうくらい、呆気なく語られていることが多い。随分進んでから、「あれ?死んでる?」と思って読み返すこともしばしばだった。なので、光源氏の一巻を使った最期の演出はとても感動的だ。
主人公がいなくなったのに、まだ源氏物語はあと3巻も続くらしい。何が語られているのか、そちらも楽しみだ。
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巻七は「柏木」「横笛」「鈴虫」「夕霧」「御法」「幻」「雲隠」「匂宮」「紅梅」の九帖
「雲隠」は一帳でいいのかな?
早いもので、全部で10冊のうちのとうとう7冊目「巻七」まで読み終えしまった「巻七」は、色々と感慨深い
柏木の恋の死
紫の上が亡くなる
源氏の「雲隠れ」の帖…
まさか私が「源氏物語」で泣く日が来ると思わなかった
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夕霧の中将の頑固さ、不器用さが悲劇を生む。父親は嫌味すら感じられるスマートな交際をしていたのとは対照的。夕霧が葵の上の性格をより多く継いでいたのかな。
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いよいよ、一つの山場を迎えた感のある、巻七。あまりに重要なネタばれが多いため、最初から順番に読みたい方は、くれぐれも『作品紹介』は読まないようにして下さい。
この巻は、子を思う親の心の闇(本当に闇なの?)が多かったのが印象深く、それが、心のままにならない人の世の儚さと繋がっているように思われるが、「本当にそうなのか?」と、私だったら刃向かいたくなる。
「柏木(かしわぎ)」
『元々、寛容な人柄で、やや情に溺れやすい面があって、あまりにもお心が弱々しくやさし過ぎた』彼は、「玉鬘の君」から、『この方だけを親しい姉弟だと思っていた』と言わしめる程の人間描写を再実感することで、前巻とはまた異なる印象を抱かせられた点に、人間の奥の深さと、紫式部の人間観察の妙味を思い知り、巻六で、あんなことを書いてしまい、今はとても後悔している。申し訳ない。
だが、その無念はきっと彼が晴らしてくれる。
「横笛(よこぶえ)」
「夕霧の大将」と「源氏」による、親子のスリリングなやり取り、再びといったところだが、これが後になって、痛烈な皮肉として、彼自身の元に返ってくることになる。
「鈴虫(すずむし)」
『世の中というものは、すべてはかなく、憂き世を厭い捨て去りたいという思い』
を抱き続ける源氏だが、それに相反するような行動をしている事に気付いていない点と、それが叶って気持ちが楽になった彼女との対照性が、また痛烈な皮肉に思われて、この巻の、紫式部の源氏の描写の切り捨てた感には、凄まじいものがある。
「夕霧(ゆうぎり)」
まさか、彼までもこんな道に迷い込んでしまうとは思いもしなかった、紫式部の醒めた感すら窺える、容赦の無さ・・・しかも、あの人物との最大の違いは、彼ほど楽観的になれないことであることが、また滑稽な程、憐れに感じられた、現代社会にも通じる生々しい転落の描写。
「御法(みのり)」
『なにげなく、ちょっとしたことをなさっても、何によらず世間からほめられ、奥ゆかしくその折々につけて気が利いて行き届き、世にまたとなくすぐれたお人柄』
おそらく、彼女が欲しかったのは、こんな言葉では無かったんだ。それが結局、こんな結果に・・・虚構の話だと分かっていても、とても悔しい。
「幻(まぼろし)」
過去の栄光があるだけに、その末路の哀れさと、淡々と流れ続ける歳月の対照性が印象的だけれど、それだけずっと思い続けられることに、もっと幸せを感じなさいよ。
「雲隠(くもがくれ)」
「匂宮(におうのみや)」
女三の尼宮の若君「薫る中将」と、帝と明石の中宮の子「匂宮(源氏の孫)」のライバル関係(!?)が注目の帖。
「紅梅(こうばい)」
柏木の衛門の督の弟、「按察使の大納言」は、「中の姫君」と匂宮とを結ばせたかったが、彼の御性質は祖父とよく似ていた為・・・あの帖が終わって以降、何となく気落ちしてしまい、読む気が失せそうになったが、ここから、また面白くなりそうな予感がしている。
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ついに雲隠まで来てしまった…。御法での紫の上の死去、それで腑抜けてしまった光源氏の姿を幻で描いて、実際に死んでしまった描写を描かないで本文の無い雲隠を挟む紫式部のセンス、すごい。
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源氏物語の中心であった紫の上の死去。それを追うように光源氏の雲隠。
巻七は、感情豊でとても面白く、登場人物達が身近に感じた。
光源氏クロニクルの後はどう展開していくか楽しみです。
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『雲隠』の帖に想像を掻き立てられる。類いない美しさと才気を武器に栄華を極めた光源氏の一生が、遂に幕を閉じた。読者が最後に目にする彼の姿は、最愛の女性に先立たれた悲しみに打ちひしがれ、とても痛々しい。紫の上は、けっきょく最期まで籠の中の鳥だった。完璧な美しさを持ったまま、籠の中で死んでしまった鳥。源氏没後も物語は続く。新しい登場人物の中では薫が印象的。生まれつき体から良い香りがするという斬新さが面白い。平安時代の貴族はなかなかお洒落で、女性も男性も着物に香を焚きしめるのが普通だったらしい。
Posted by ブクログ
光源氏の息子の夕霧が、女二の宮に言い寄ってつれなくされてもまだ言い寄るところがくどく感じられてちょっと飽きる感じ。前にも書いた気がするけれど、女の側は言い寄られてものすごく迷惑している感じの人が多いように感じられて。それが迷惑なふりなのか、本当に迷惑なのか、いまひとつよくわからない気が。丸谷才一だったか、「源氏物語」はレイプ大全、みたいなことを書いていて、かなりショックだったのだけれど、そういうことなのかしらん。そして、この巻で、紫の上も光源氏も亡くなってしまう。ひとりで死んでいくのは寂しいという思いをけっこう素直に語るのがいいなあ、と感じた。本音というか。紫の上が亡くなったあと、季節のうつりかわっても、なにかにつけて源氏が紫の上を思い出して悲しむシーンが映画のように美しいなーと。
Posted by ブクログ
ここで一般にいう源氏物語の幕は下りたといってよいだろう。残りまだ3割も残っているが、主人公不在でどう展開するのか。ともあれ、惚れたはれたに終始するには違いない。