あらすじ
源氏の道ならぬ恋慕に悩む玉鬘は、意想外の求婚者・鬚黒の大将の手に落ちる。夕霧は長い試練の果てに雲居の雁と結ばれ、明石の姫君は東宮への入内を機に、後見役となった生母・明石の君と再会。四十の賀を控え准太上天皇の地位に上がった源氏の半生は大団円を迎える。第5巻は、蛍・常夏・篝火・野分・行幸・藤袴・真木柱・梅枝・藤裏葉を収録。
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玉鬘の顛末がめちゃくちゃ悲劇だったのに対して、夕霧が7年越しの恋を実らせたり明石の君が親子の再会を果たしてたりと見応えがたくさんある部分だった。許せねえよ髭黒…
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巻五は「蛍」「常夏」「篝火」「野分」「行幸」「藤袴」「真木柱」「梅枝」「藤裏葉」。
この巻の最後はハッピーエンドで終わった。やっと夕霧と雲居の雁ちゃんが結婚出来たのだ。雲居の雁ちゃんのお父さんの内大臣がそれはそれはプライドが高くて、昔二人がまだ少年少女だった頃、夕霧の位が低いからといって二人の中を引き裂いたくせに、夕霧が立派になってきて、宮家の婿にと声がかかりそうになると、「あの時雲居の雁と結婚させておけば良かった」と思う。夕霧も源氏の周りで心を奪われる姫君を何人も見かけても、一途に雲居の雁ちゃんを一番大事に思っている。だけど昔、内大臣に見くびられ、冷たくあしらわれた恨みは消えず、自分からオメオメと「お願いだから娘さんを僕にください。」などと絶対に言わない。「今に見ていろ。高い位に付いてやるから。」と思っている。夕霧のお父さんの源氏も同じ思い。そしてとうとう、この巻の最後の「藤裏葉」で、内大臣のほうから夕霧に「あなたはこんな年寄にいつまで冷たくされるのですか?」という手紙を送り、仲直りしたい気持ちを示して自邸に夕霧を招いてそのまま雲居の雁ちゃんと結婚させてあげる。良かった。良かった。夕霧は本当にめちゃくちゃいい子だし、二人ともピュアだし、試練を乗り越えて結ばれたことは、ほんとにハッピー。源氏物語を読み始めて一番微笑ましいシーンだ。
その後、源氏は太政大臣から准太上天皇へ昇格。内大臣は太政大臣に。夕霧は中納言に。その年、六条の院の紅葉が綺麗なとき、帝の行幸があり、朱雀院も来られ、盛大な紅葉賀のような催しがあった。太政大臣の息子が舞を舞われるのを見て、昔、源氏と頭の中将(現 太政大臣)が若いときに美しく青海波を舞った時のことを懐かしく思い出された。あの時からきらびやかだった二人で、ライバルだったが、源氏のほうがより優れていた。仲の良かったあの頃からの時の流れをしみじみ感じる感慨深いところで、第一部が終了する。全十巻中の五巻が終わったのでここで折り返し地点である。
“時の流れのしみじみ”といえば、若かりし頃“雨夜の品定め”で頭の中将(現 太政大臣)が「一度契を結んだがその後離れ、その女(夕顔)もその娘の居所も分からなくなってしまった」と嘆いていた“その娘”玉鬘を源氏が見つけて、六条の院に匿い、内大臣(かつての頭の中将、のちの太政大臣)に実はあなたの娘だよと打ち明けて、玉鬘の裳着の義の腰紐を結ぶお役目を引き受けてもらい引き合わせたときは感動的だった。
だけど、こちらの娘の気持ちには内大臣は無頓着だったらしい。しつこく玉鬘に言い寄る“髭黒の右大将”のことを本当に玉鬘は嫌っていたのに、彼は身分が高いからと父親として反対しなかった。だから、玉鬘は髭黒の右大将の強引さだけで、彼と結婚することになってしまった。本当に嫌われていることを考えれば分かるだろうに、自分の家庭を壊してまで玉鬘を我が物にしようとする髭黒には本当に腹がたつ。
紫式部さん、すごいですね。これは平安時代のトレンディドラマです。美しい人、醜い人、賢い人、馬鹿な人、運のいい人、運の悪い人…色んな個性と背景をもった人たちが繰り広げる山あり谷あり雅やかなドラマ。各巻の巻末の
系図がどんどん広がっていって付いて行くのが大変ですがワクワクします。
トレンディドラマといえば、この当時の服…女性の十二単の袖の重ね方とか、TPOに合わせた衣装の色のことだとか、手紙の紙の色とか、文字の美しさとか、お香の丁合とか流行りの“物語”のこととか、色んなファッションや文化について、語り手からの情報や源氏の考えが盛り沢山なのも読者を惹きつける要素だなと思う。今の時代の読者からみて、何が凄いかというと着物の色も紙の色も、化学染料ではなく、自然の物で手で染めていたであろうということだ。“色”をつけるということがどれだけ贅沢であったことか。そしてそれらの色は自然に溶け込むように美しかったのだろうと思う。
最後まで読み終わったら、源氏物語の美術や文化について調べてみたいと思う。
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「須磨源氏」という言葉がある。
『源氏物語』を読み始めて、「須磨」の巻まで読み進んで挫折し、再び最初からとりかかるが、また須磨の巻で挫折していつまでも読み終わらないことをいう。
僕はこの「巻五」に収録されている「藤裏葉」で挫折してしまった。
あれから2年近くの月日が流れてしまったが、また続きが読みたくなってきた。
源氏さんは玉鬘(夕霧の娘さん)に恋心を打ち明けながらも、弟の兵部卿の宮との交際をそそのかす。
源氏が玉鬘の部屋に蛍を放ち、その光で兵部卿の宮が玉鬘の横顔を見てしまう場面がある。
すごく幻想的で、日本的な美しさにあふれているなあと思う。
しかし、そうこうしているうちに、玉鬘は鬚黒の大将の手に落ちてしまった。
そんな横取りありか!って感じだ。
明石の姫君(娘さんの方)の入内が決まり、その後見役として明石の君(お母さん)が推薦されたことで、漸く母娘は宮中で共に暮らすことができるようになった。
すべての心配事が解決し、源氏は出家の志を固めたようだ。
「蛍」「常夏」「篝火」「野分 」「行幸」「藤袴」「真木柱」「梅枝」「藤裏葉」の9帖を収録。
寂聴さんの日本語、美しいなあ。
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この時代の女たちは男に言い寄られ、部屋に押し入られたが最後、もうどうすることもできなかった。源氏に言い寄られ髭黒の大将にも言い寄られ玉鬘は相当気持ち悪かっただろうな…。五巻は玉鬘の結婚と、夕霧が遂に雲居の雁の君と結婚するところが大イベント。一見一途に姫を思い続けたように見える夕霧だけどやっぱり源氏の子。一度は姉と慕った玉鬘に言い寄ってみたり、他の女を慰みものにしようとしたりと彼の恋路にも波乱の予感を感じる。
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光源氏の栄華のみで無く、ストーリーに広がりがあった。玉蔓を鬚黒の大将の手に落とした紫式部の意図はなんだったんだろう。女性読者の嫉妬の吐口?
夕霧はイケメンでナイスガイ。紫の上は、キュートでゴージャス。光源氏は人生最盛期。
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源氏の悪戯から蛍兵部卿宮が玉鬘の横顔を見る場面は、何か書き手の凄味のようなものが感じられる。彼女に対する源氏の接し方、自らの欲を制しながらも押し入れるように愛着を馴染ませては内省を繰り返す独善的な男の愉しみや、夕霧の利己的な忍耐、髭黒の大将が北の方を追い詰めた態度然り、心理描写を季節の空気の中に深く織り込んでいるのも巧妙で、数年前は咀嚼し切れなかった機微も多い。
故に絡み合う人物の心中を察するのが面白くもあり、苦々しいエピソードとも言える。
艶やかな王朝文化に食傷気味になるけれど、全体を通して落ち着いて読める巻。
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源氏30代後半の物語。平安時代の30代後半は、もうかなり落ち着いている頃だと思われるのに、源氏はまだまだ男盛り。引きとった娘という触れ込みの玉蔓を自分の妻の一人(花散里)に育てさせる一方、自分は玉蔓に恋心を寄せている。困った困った。
お香に興味がある私としては、薫物の調合が行なわれる「梅枝」の帖が興味深かった。明石の姫君の入内の際に持たせるという。読んでいて、その香りを嗅いでみたくなった。
文学論や書道論が語られるこの巻、栄華を極めた源氏の暮らしぶりが垣間見れる。
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玉鬘の姫君や夕霧の行く末にひとまずの決着がついたようでよかった。玉鬘は気の毒だけど、夕霧は長年の恋が実ってほっとしました。
この後の帖は晩年の源氏の君の話が書いてあるんだろうか。この辺りまでは知っていたけど、晩年の辺りは憶えてないので楽しみです。
それにしても歳とっても自分がイケてると思い込んでる源氏の君は厚かましいことこの上ない。
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メインは、昔、源氏と逢引中に「物の怪」にとりつかれて死んでしまった夕顔の娘、玉鬘(父親は源氏ではなく、内大臣という人)。行方不明だったのを源氏が見つけ、父親として引きとるも彼女に恋をしてしまい、でも、父親だと公言したので手は出せない、とかいうぐちゃぐちゃした話がずっと続いて少し飽きるかも。こんなに玉鬘が源氏物語のなかで大きな位置を占めるとは知らなかった。結局、玉鬘を強引に奪った男は、奥さんが実家に帰ってしまい、とか人間関係もけっこうごちゃごちゃ。で、当の玉鬘は源氏にうんざりしていて。源氏に言い寄られる女たちって、意外と、最初からすごく源氏が好き、っていう人はいないような。この時代、女は相手を自分で選ぶことはできなかったわけだけど。この巻では、書道や香道、文学というか物語というものについてあれこれ語られるのもおもしろかった。どういう書がいいとか、香物を調合するとか、物語を選んで写させるとか。
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・蛍‥源氏は実父のフリして玉鬘(たまかずら)の姫君(夕顔の娘)を自分のそばに置き、人にやるのは惜しくて添い寝してみたりする。そのくせ、兵部卿の宮からの恋文に返事を返せなどと焚き付け、楽しんでいる。玉鬘の姫君は源氏のことが気持ち悪くて仕方がない。わかる〜!ほんと気分悪いよね。
五月の節句に行われる左近衛府の競射の試合の様子や、長い梅雨で時間を持て余す女君たちが絵物語を読んだり写したり夢中になる様を描いている。
・常夏‥源氏が自分の娘を探し出し連れ帰って育てていると聞き、息子の一人、柏木の中将が探し出してきた娘らしき人(近江の姫君)を育てることにした。ところがこの姫君、早口でガサツ、品もなく学もない。女房たちや兄弟からも馬鹿にされている。仕方なく弘徽殿(こきでん)の女御の側に付けることにした。
源氏が玉鬘の姫君に寄せる思いは相変わらず。いっそ誰かと結婚させて男女の情を学んでもらえば、こちらも痛々しがらずに思う存分忍び逢うことができるだろう、などと思いつくのも本当に怪しからぬお心です。と読み人も語っている。
ひとつ疑問。夕霧の中将のところに遊びに来た内大臣の子息達に氷入りの水をふるまう場面がある。冷凍庫のない平安時代の真夏に氷はどのように作ったのでしょう?
・篝火‥秋、玉鬘の姫君の部屋で過ごすひととき。夕霧の中将が住む東の対から笛と箏の音色が聞こえてきた。そこで源氏は和琴を取り出し弾き始める。秋の夜長に美しい音色が響き渡る。
・野分‥秋の突風。美しい六条の院の庭も大荒れに荒れる。源氏は例によってこまめに各部屋へ安否確認の声をかけて回る。あまりに風が強いので、普段は隠れている女君の部屋も今は屏風が畳まれ丸見えになっている。夕霧の中将はこっそり紫の上の姿を盗み見て、その美しさに圧倒される。また、玉鬘の姫君と源氏の不自然なたたずまいも見てしまい、親子なのにといぶかしく思う。たまたま見かけた明石の姫君も愛らしく、夕霧はこの三人の姫君を「紫の上を桜、玉鬘の姫君を山吹とすれば、明石の姫君は藤の花とでも言おうか」と表現する。
・行幸‥十二月、大原野(神社)へ行幸の儀。その席で玉鬘は帝の姿を見る。その神々しさに感動し、源氏から勧められても気乗りのしなかった宮仕えを前向きに考えるようになった。姫君もそろそろ裳着の儀式の年齢。源氏は内大臣(頭の中将)に真実(実は玉鬘は内大臣の娘である)を伝える良い機会かと、腰紐を結ぶ役目をお願いする。一度は大宮(内大臣の母、源氏の義母、夕霧の祖母)の病気を理由に断られたが、源氏は今しかないと考え、大宮を訪ねて真実を打ち明け、内大臣を呼び出してもらい話をする。内大臣は驚きながらも、夕霧と娘(雲居の雁の姫君)の結婚話ではなかったのかと少々当てが外れた。
さて裳着式当日、実父と娘のご対面‥だけど、この感動的な場面はあまり詳しく書かれていない。どころか父親は娘の顔をはっきり見せてもらえなかったようだ。‥まったく、宮中というところはまどろっこしい。親兄妹でもまともに顔を見て話もしないんだわ。ただ、姫君に思いを寄せていた長男の柏木の中将、次男の弁の君は、相手が実の姉だと知りがっかりする。
・藤袴‥あの大宮(紫の上や内大臣の母、夕霧、雲居の雁の姫君、玉鬘の姫君の祖母)が逝去した。玉鬘は尚侍として宮仕えすることも気が進まず、かと言ってこのまま六条の院にいても、源氏は内大臣が実父と認めた途端、大胆になってますます言い寄ってくるし、息子の夕霧までもが口説きにくる。面倒なことばかりでどうしたらいいかわからない。
・真木柱‥いつのまに‥髭黒の大将は無理矢理玉鬘の姫君を自分のものにし、結婚することになってしまった。玉鬘姫は嫌で嫌で仕方がない。源氏をはじめ、思いを寄せていた男宮たちはがっかり。そもそも髭黒大将は既婚者なのだ。正妻北の方は元々大人しい性格だが、嫉妬に狂い暴れ出す。気の毒に思った北の方の父(式部卿の宮、葵の上の父でもある)は里に連れ帰ってしまった。源氏は玉鬘姫を手放したくなくて、宮仕えを勧め、「男踏歌おとことうか」のお手伝いにかこつけて宮中におくりこむ。案の定、帝は玉鬘姫に一目惚れ。口説きにかかるが、身持ちの固い姫は躊躇する。気が気でない髭黒は催事の途中で姫を家に連れ帰ってしまう。そうこうするうちに姫君妊娠、男児を出産する。実父内大臣は「帝の子ならどんなに良かったか」と残念がる。
・梅枝‥明石の姫君の裳着の儀(成人式)を行うことになった。その後は入内(宮中入り)することも決まり、腰結いの役目は秋好む中宮にお願いしている。六条の院では薫物(たきもの、香の調合)を始めた。いつのまにやら源氏と紫の上の薫物競争。そこに明石の宮も加わって、何やら楽しそう。柏木の中将や弁の少将が、ご記帳だけで退出しようとするのを引き止めて、今度は琵琶、箏、和琴、横笛それに謡も入り大合奏。お酒も飲んで明け方まで賑やかに過ごした。
東宮も元服の時が来て、身分の高い宮様たちは、自分の姫君を入内させようとざわつき始めた。その中でも明石の姫君のご入内がメインイベント。支度の調度品を調べている間に草紙の書にはまり、思いはあれこれ兵部卿の宮も巻き込みひとくさりあり。
一方、内大臣は娘、雲居の雁の姫君と夕霧の仲を割いてしまったことを今頃になって後悔し始める。
・藤裏葉‥若い二人を認める機会を作ろうと内大臣は夕霧を邸に呼んでもてなす。すっかりご馳走になり酔っ払った夕霧は邸で一泊することになった。そこで案内されたのが雲居の雁姫の寝室‥平安時代の高貴な方々の恋愛事情ってどうなってるんですかね。ずっと想い続けた愛しい人にやっと会えた‥しかしそれは、いきなり暗い床(とこ)の中って。恥ずかしすぎるじゃないのっ。‥何はともあれ二人は結婚。
明石の姫君も入内の日が4月に決まり、付き添い役には源氏の計らいで生母明石の君が選ばれた。幼い頃に紫の上に引き取られて十年近く、会うこともかなわなかった親子がご対面。感動のシーンだが、物語はさらりと進む。
その秋、源氏は準太上大臣天皇に任命され、内大臣は太政大臣に、夕霧は中納言に昇格した。しかし源氏は、明石姫を入内させ、夕霧も結婚したことだし、自分はそろそろ出家してもいいかと考え始める。源氏39歳、紫の上31歳、明石の君30歳、夕霧18歳、雲居雁20歳、明石の姫君11歳。