【感想・ネタバレ】源氏物語 巻四のレビュー

あらすじ

明石の君母子の哀切な子別れ。最愛の人藤壺の宮の崩御。長男夕霧の大学入学と幼い初恋。亡き恋人夕顔の娘、玉鬘がたどる波瀾の運命。広大な自邸・六条の院に愛する女君たちを住まわせ、栄華をきわめた源氏31歳から36歳までを描く。第4巻は、薄雲・朝顔・乙女・玉鬘・初音・胡蝶を収録。

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Posted by ブクログ

 巻四は「薄雲」「朝顔」「乙女」「玉鬘」「初音」「胡蝶」。この巻は男性の心理について「ふーん」、「えー」と考えさせられることが多かった。
 まずは、源氏の長男夕霧への態度(ほんとは次男ですが、冷泉帝の父親であることは秘密なので)。元服のとき、普通は源氏の息子くらい上流の子だと官四位を与えるそうなのだが、源氏は敢えて夕霧に官六位を与え、大学に入れる。将来のために、敢えて苦労させ、学問をさせたのだ。親の七光りの道ではなく、自立出来る道を与えるというのは素晴らしい。自分のようにチャラい男にしたくないというのも分かる。親心が嘘でないのも分かる。けどなー、夕霧は、六位というのが(服の色で分かるらしい)恥ずかしくて恥ずかしくて、禄に人前にも出られないんだよ。それに好きな子がいても相手の親から「官六位じゃあねえ…。四位になったら結婚考えてもいいけれどねえ。」と思われてしまうんだ。かわいそうに。
 それに、源氏は夕霧を極力二条の院の自分と紫の上のいる所には寄せ付けないようにしてるんだ。冷たい。あー、だけど自分は子供のころいつも桐壺帝の横にいて藤壺に会っていたため、間違いを犯してしまった。そのことが頭にあるというわけだな。
 もっと夕霧の心に寄り添って「頑張れ」とか言ってやればいいのに、自分は女の人のことにばかりかまけてるから、「父上は冷たい」と思われるんだな。
 それから男の本心といえば、花散里の君に対する源氏、夕霧親子の本心が面白い。
 夕霧の世話役に付けられた花散里に会った夕霧は
「お顔立ちはそんなに綺麗な方ではないな。父上はこんな方でもお見捨てにならなかったのだ。父君はこの方をこんなご器量とご性質(柔和)と知った上で、几帳などを隔てて何やかやと紛らわして、顔を見ないように心がけていらっしゃるのもごもっともなことだ。」と失礼な感想。源氏は源氏で、
「まだそれほど気にするほどではないけれど、かもじなども付けてつくろったらいいだろうに。他の男が見たら興ざめしそうなこの人をこうしてお世話しているのが私としては嬉しいし、満足なのだ。もしこの人が浮気な女たちと同じように、私を裏切り離れていってしまったらどうなっていたことか。」と。
不器量でも優しくて安心感を与えてくれる女性とは古女房のように安らかに何年も連れ添えるものなのですね。
この巻の最初に藤壺が亡くなり、その後でおしゃべりな僧が冷泉帝に出生の秘密を喋ってしまい、冷泉帝は動揺して、源氏に対して恐れ多いから退位しようかと思う。そんな冷泉帝の態度を見て、源氏は「知ってしまったのだな」と悟るが、そんなに源氏は動揺していないようだ。
 そんなことには構わず、六条に“明石の君”“梅壺の中宮”“花散里の君”“玉鬘”という四人の女性を住まわせる大ハーレムを建設する。絶好調。出家するんじゃなかったっけ?新年には二条のほうの女性と六条のほうの女性一人ひとりに似合った衣装をプレゼントする。どんな女性にも魅力があることを知っていって、一度関わった女性のことは決して忘れないのが源氏の美点らしい。
 それに対して、夕霧と雲井の雁ちゃんとの恋愛はなんとピュアなこと。幼なじみで両思い。だけど、雲井の雁ちゃんのお父さんの内大臣は夕霧が子供のころから雲井の雁と一緒に育った従兄弟であり、しかも官六位というのが許せなくて二人を引き離してしまう。こういう難のある恋愛こそ物語を面白くするよね。アオハルだよ。
 それに引き換え、源氏は玉鬘が本当は内大臣と夕霧の子供だということを世間に隠して自分が親のような顔をして、世話し、玉鬘に来た恋文への返事の仕方などについてもあれこれ手ほどきしていたのが、そのまま堪らなくなくなって…。かわいそうな玉鬘。
源氏は悪い男よのう。

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2022年12月31日

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源氏は明石の姫君を京に連れてきて、紫の上に育てさせることにする。
恋敵(明石の君)の生んだ子に愛をそそがなければならない紫の上がすごくかわいそう。

また、源氏32歳の春に、最愛の藤壷の宮が他界する。
そして、2人の子どもである冷泉帝は自分が不義の子であることを知らされる。

一方、葵の上との間に生まれた夕霧は、花散里が世話をすることになる。
この花散里という人は、「源氏物語」に出てくる女性の中でおそらく唯一の不美人な女性である。
「器量がよい」という言葉は「性質・性格がよい」という意味だと思っていたけれど、「容貌・顔立ちが美しい」という意味なのだと知った。

「乙女」の中で、源氏は六条京極に「六条の院」という邸を建てる。
そこは4つの町に仕切られ、紫の上、花散里、明石の君を住まわせて、いつでもそれぞれの女性を見舞うことが出来るようになっている。
さらに、かつて愛した夕顔の娘を偶然見つけて六条の院に引き取ると(この姫君を玉鬘と呼ぶようになる)、やはり心を抑えきれなくなる。
お金持ちで容姿端麗なのをいいことに、多くの女性を恣(ほしいまま)にしている源氏にはちょっと呆れてしまう。

「薄雲」「朝顔」「乙女」「玉鬘」「初音」「胡蝶」の6帖を収録。

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2013年01月13日

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ネタバレ

養子として迎え入れた夕顔の娘、玉鬘に手を出そうとするところが最大の見どころ。巻末の解説で分かったけど、六条の院(源氏のハーレム)が後楽園元球場の5倍ほどもあるっていうのが驚き!なんちゅう広さだ…

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2012年02月27日

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ネタバレ

長いヨーロッパへの旅の途中で読破。日本の風情、日本の香りが描かれていて、故郷が懐かしくなる。源氏物語は本当に香りの描写が多い。香りに関する記述に印をつけていったら、ブックイヤーがたくさんできてしまった。

源氏が都に戻ると、暗かったお屋敷が明るさを取り戻した。そんなお屋敷にお気に入り女子たちを集めて暮らすのだが、源氏は楽しいだろうけど、女子たちの気苦労は大変なものに。一番ご寵愛を受けている紫の上でも嫉妬の嵐なのだから、ぷっつりお便りの途絶えた姫たちの哀しみは相当なものだろう。モテ男を選んでしまった女子はいつの時代も辛いらしい。

源氏自身も昔亡き帝から「みんなを平等に愛さなければダメじゃないか」とお叱りを受けていた。まるでイスラム教のよう。

こんな話でこの巻は終わりかと思いきや、最後に源氏が養子のような形で引き取った姫を好きになってしまうという展開が。この先どうなってしまうのか。巻5へ続く。

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2011年06月14日

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中世の文学の複雑な相関図を表せるのがすごい。源氏の自分勝手な理論で色恋に走るのが気色悪く、姫君たちはドン引きしている。現世ではギャグになってしまうような話が当時は恋物語として真面目に描かれているのが面白い。

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2025年10月08日

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古典文学なのだけど、瀬戸内寂聴さんの現代語訳がわかりやすく感情移入しやすい。
今の倫理観で読むと色々しんどい場面が多いけれど、1000年以上前に書かれた小説と思うとすごいなぁと率直に思う。
ストーリーが進むほど面白い。

源氏物語は恋愛ストーリーではなく、生まれながらに権力と膨大な財力を手にしている困ったセレブ男性の生涯のお話しだと個人的には思います。
でも、だから興味深い。

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2024年09月21日

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六条の院の、あまりの広さと、ハーレムさ。しかし、ハーレムなんだけど、源氏は全ての女性を訪ねてある程度満足させなければならなあ、というハードミッションを与えられていて、これは厳しいと思う。これの非現実感は現代と平安時代の常識の違いによるものなのか、当時でもやっぱり非常識なのか。
妻問婚の世の中だと、ありえるのかなあ…

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2023年12月13日

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一日中臥せって、苦痛の抜けかけた朝ぼらけに、少し壁にもたれて起き上がり、残していた「源氏のしおり」を夜明けの薄明かりの中に読んだ。目に留まるのは、登場する女たちの短命さについて、である。
漠然とした魂魄の頼り無さの中にあってこそ感じる、それを包み、繋ぎ留める事象の冷ややかさ、人の身体に宿る温もりと授受の情緒。これを欲する身体性が源氏物語に惹かれているのだなと、病みあがりの、五感の融解した中にあって実感する。
平均寿命だけは、源典侍が引き上げているとは思う。
それもまた情緒である。

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2016年09月19日

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関係のあった女性をいつまでも面倒をみて、源氏を見直したと思ったが、玉鬘に対する態度でやっぱりね!六条の院の描写はその場にいたいと思わせる。

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2014年10月25日

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源氏が、広大な敷地に今までかかわってきた女たちを集めてそれぞれ住まわせ、池に船を浮かべて遊ぶ会を催したり、年初めに女たちそれぞれに似合いそうな着物をプレゼントしてそれ着た姿を順番に見に行ったり、と、なんだか夢物語のような風雅で豪勢な話がくり広げられて、ちょっとうっとりする。源氏の息子、夕霧が源氏の命令で大学寮に入学するとか、その夕霧の恋愛とか、あと、巻一で亡くなった夕顔の娘が見つかったりとか、二代に渡る話になってきて、ほんとに大河小説だなーと思う。やっぱり今回再読してみて「源氏物語」の大きな流れがつかめた気がする。

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2011年09月18日

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夕霧かわいいよ夕霧。早く雲居の姫とくっつけるといいね!
そして源氏はそろそろ自重すべき。玉鬘の姫とか結構犯罪じゃないか\(^o^)/

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2009年10月04日

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・薄雲‥明石の君の姫君は可愛くすくすくと育つが、日陰の身ではやはり可哀想。ということで、二条院で引き取ることにした。大堰の寂しい地で明石の君は娘との仲を引き裂かれ、ますます寂しい思いをする。
その頃、太政大臣(旧左大臣)が亡くなり、立て続けに藤壺の尼宮も亡くなる。帝がたいそう心細い思いをしているところに、宮家お抱えの僧都(そうず)が帝の出生の秘密を明かしてしまう。
前斎宮の女御(六条御息所の娘)は入内した後、帝の良いお守り役になっているが、光源氏は恋心を隠せない。御息所との約束も忘れて口説きにかかる。が、斎宮にしてみれば気持ち悪くて仕方がない。わかる〜。

・朝顔‥光源氏から熱心に求愛されながらも、一度もなびかず肉体関係も持たなかった姫君。源氏のいとこにあたり、父は桃園式部卿宮。父が亡くなってからは斎宮の任務を解かれ、叔母女五の宮(桐壺帝の妹)の家に住む。

・乙女‥葵の上の息子、夕霧の若君の元服が三条で行われた。源氏は息子に対して厳しく、いきなり高い位につけるのは良くないと六位に付け、大学院の寮に入れて学問させた。
さて、宮中ではそろそろ冷泉帝のお后を決める時期。弘徽殿(こきでん)の女御(頭の中将、((今は右大将から内大臣に昇格))の娘)や、兵部卿の宮(紫の上の父、今は式部卿の宮)の娘など候補はいたが、結局源氏(今は太政大臣)の推薦で前斎宮の女御(梅壺の中宮、六条御息所の娘)が后になった。
内大臣(頭の中将)にはもう一人娘(雲居の雁の姫君)がいる。それを引き取り祖母の大宮に預けていた。大宮のところには夕霧の若君が住んでおり、二人は幼い頃から仲良く遊んでいた。が、いつの間にか二人の間に恋心が芽生え、それを知った内大臣は弘徽殿の女御と共に娘を里へ連れ帰ってしまう。夕霧は寂しさから新嘗祭で身染めた五節の舞姫(惟光の娘)に気持ちを寄せる。
源氏の新しい計画として、六条京極の土地に新邸を造り、四町に分けて、西南は梅壺の中宮、東南は源氏と紫の上、東北は花散里と夕霧、西北は明石の君を住まわせることにした。

・玉鬘‥さて今回はあの夕顔の娘の登場です。夕顔のおさらい→頭の中将の愛人であった夕顔は源氏に無理矢理連れ出され、一夜を共にしたその夜突然亡くなってしまう。
娘とお付きの女房たちは夕顔が亡くなったことも知らず、行方不明のまま年月が過ぎ、乳母の夫が太宰(筑紫)赴任になったことので、身寄りのない姫君を連れて行くことにした。筑紫の地で適齢期を迎え、地元の有力武士から嫁にと申し出があったりしたが、乳母の夫も亡くなり心細さから京都に戻る決心をする。その道中偶然にも昔夕顔に仕えていた右近と出会い、源氏に引き合わせることとなった。長年気に掛かっていた夕顔の姫君となれば引き取らないわけにはいかない。六条京極に呼び寄せ、花散里にお世話係をお願いした。

・初音‥とあるお正月の行事と様子を描いた帖。源氏はまず六条の邸に住む女たちを一人一人訪ねて丁寧に挨拶をする。それぞれの部屋では女達が着飾り、趣向を凝らした部屋作りをしている。数日後には二条の末摘花と空蝉の部屋。お正月半ばには男踏歌の儀式も始まり、優雅に、豪華に、ゆったりと新しい年が始まる。

⭐︎六条に住む女君→紫の上(正妻)、明石の君、花散里、玉鬘(たまかずら)の姫君、明石の君の姫君、梅壺の中宮(弘徽殿の女御)
⭐︎二条に住む女君→末摘花、空蝉(出家中)
⭐︎ちなみに今まで関わった女君→藤壺(出家→死亡), 葵の上(元正妻、死亡), 六条御息所(出家→死亡), 朝顔(失恋), 夕顔(不慮の死亡), 朧月夜(朱雀帝の妻の一人、不貞が見つかり須磨に流されるきっかけになる),
⭐︎ちなみにまだ若い夕霧が恋した女君→ 雲居の雁の姫君(頭の中将の娘), 五節の舞姫(惟光の娘)

・胡蝶‥玉鬘の姫君が六条の邸に引き取られてから、大層な美人がいると評判を呼び、兵部卿の宮、髭黒の右大将、そして実の兄妹と知らずに思いを寄せる柏木の中将など言いよる男が引きも切らない。最初はニタニタ喜んでいた養父役の源氏は可愛さが恋心に変わり、ついに告白してしまう。やれやれ、もういいおっさんなのに。光源氏36歳。

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2025年08月10日

Posted by ブクログ

 平安時代の平均寿命を調べてみると、男性33歳、女性27歳くらいとのことですが、これを貴族に限定すると、それぞれ50歳、40歳くらいとなり、やはり、あらゆる面で恵まれていたのもあるのでしょうが、今と比較すると、とても短命で、その刹那に生きた姿には感慨深いものもありますよね。

 そして、巻四の源氏は、31~36歳までの人生を描いており、もう既に人生の半ば以上でありますが、まあ、何でしょうね。ここまで来ての、この体たらくに、最早何も言うことが無いというか、やはり、この作品は反面教師的意味合いが強いのか、貴族の驕り高ぶりを皮肉っているのか、どうしようもない性格の人間にも生きた証のようなものがあるのか、逆に、こんな奴はいないといったコメディとしての面白さなのか、色男故の悲劇を描いているのかは、分かりませんが、まあ、なるようになるんじゃないですかね。


「薄雲(うすぐも)」
 初っ端から、「明石の君」とその姫君の別れの場面が、なんともやり切れなく、この後、しばらく母と会えなくなることを、まだ認識していない姫君の「お母ちゃまもお乗りなちゃい」には、胸が詰まる思いでいっぱいとなり、こんなことさせるなよと思ってしまうが、結果として、嫉妬に苦しむ「紫の上」に気を紛らわせる役割を与えるきっかけになりそうなのが、またなんとも皮肉的である。

 また、源氏にとっての大きな悲しみが、「藤壺の尼宮」の崩御であり、そのすぐ後に、例の秘め事を「冷泉帝」が知ることになるのは、話の展開を狙いすぎた感があるものの、既に太政大臣もお亡くなりになった状況で、源氏に再び暗雲が立ちこめる中、何故か、「前斎宮の女御」を口説き初める、困ったお心も発現し・・・ほら、女御が少しずつそっと奥の方へお引き取りになる姿を見て、察しろよ。

 しかも、彼の凄いところは、「こうした無理な恋に胸のふさがるような癖が、まだ残っていたのかと、我ながら思い知らされる」と、ちゃんと自己分析しているのに、それを抑えられない点にあり、更に、過去のあの過ちについて、「あれはまだ思慮の浅い若者の過ちとして、神仏もお許し下さったのだろう」と、堂々と言える姿には言葉もありません。はいはい。

「朝顔(あさがお)」
 「朝顔の姫宮」の父、「式部卿の宮」がお亡くなりになり、その喪中のお見舞いを口実に、源氏は再度、朝顔の姫宮を口説きに通うが、それを隠している事に紫の上は本気で憎しみを燃やし、その思いは、「馴れてしまうのは、たしかに厭なことの多いものですわね」と辛辣で、以前はこんなこと言う人じゃ無かったのにと悲しく思うが、源氏はどこ吹く風で、女童たちと雪ころがしや雪の山作りを無心にしている姿には、却って、恐怖を感じさせるものがあったが、その報いを受けたかのように、彼の夢の中に現れた、ある女性の恨み言はまた恐ろしく、おそらくこれは、故桐壷院も交えて冥界で繰り広げられているのかと思うと、この現世と冥界の曖昧で緩い境界線こそが、この作品で最も恐ろしいものなのかもしれないと思い知った。

「乙女(おとめ)」
 故「葵の上」と源氏の息子である「若君」がメインの話で、この若君に対して、源氏がいきなり高い位にせずに六位にしたことが、後々の悲しみを引き起こすこととなり、この源氏自身の価値観で子どもの事を決めつけるやり方には、普遍的な子育て問題にも通じるような、子どもの意志を反映させないものを感じさせられて笑えないものがあり、若君が好きになる「雲居の雁の姫君」の乳母に、「どんなに御立派なお方にしろ、せっかくの御結婚のお相手が六位風情ではねえ」と言われる始末で、そんな中でも、若君の御乳母の宰相の君の計らいで久々に会えた時の、若君の「恋しいと思って下さいますか」に対して、姫君がかすかにうなずく姿には、この作品を読んで初の正統派かと思わせるものがあったので、この後の、この作品特有の常道の展開にはがっかりさせられた。

「玉鬘(たまかずら)」
 かつて源氏が恋した「夕顔」の娘「玉鬘の姫君」は、築紫で乳母の一家とひっそり暮らしていたが、ある日、そこに住む勢力のある武士から求婚されたことをきっかけに京へと旅立つのだが、そこで見られた、乳母の一家の主従関係の容赦の無さが印象的で、そこの長男は妻子を、妹は長年連れ添った夫を捨てての同行なのだから、その覚悟たるや凄いものがあったが、それに応えるように、かつて夕顔に仕えていて、今は紫の上に仕えている「右近」との劇的な再会も感動的な中、そのことを源氏に報告したときの彼の浅ましさには、ちょうど新たに造営した六条の院へ姫君を移すのを見ていた女房たちの、「厄介な骨董趣味だこと」が、誰よりもその勘の良さを発揮しており、なんとも侘しいものがあった。

「初音(はつね)」
 新年早々、源氏が色々な女性を尋ね回った上、とある出来事で紫の上を怒らせたという、ごくごく、日常的ないつもの出来事。

「胡蝶(こちょう)」
 六条の院で暮らすことになった、玉鬘の姫君は、その母親の良さを引き継いだ華やかな可愛らしさに、何人もの男が恋してしまう中、あの男も・・・「何とまあ、お節介な親心もあるものですこと」といった皮肉では済まされない、これは本当に怖いし、ここで次巻へ続くといった終わらせ方も、作者は、上手いところで終わらせたなと思っているのでしょうが、怖くて笑えません。もうここまで来ると常識を疑ってしまうが、元々、そんなものが備わっていないから、こうした歴史を積み重ねているのでしょうね。


 ちなみに、「初音」で登場した「男踏歌」の行事は、紫式部が執筆した、一条天皇の時代には既に無く、物語の時代設定がもう少し昔の『延喜・天暦の治』の頃であることを表しており、この言葉は、当時の摂政や関白を置かない、天皇を中心とした治世を、後世に理想化し称えたものだそうで、そうした素晴らしき時代に、この男ありといった面白さも考えていたのではないかと、思わずにはいられなくなりました。それにしても酷すぎるけどね。あるいは物語の中に、帝を積極的に登場させたかったのかもしれないけれど。

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2023年08月26日

Posted by ブクログ

藤壺の宮が亡くなるというショッキングな事が起こる以外は、四季の美しさが散りばめられていていわゆる日常編的な読み応えだった。紫式部が源氏のことを理想の男性ではなくエゴと性の人として描写しているのが一貫していて良い。
六条の院のジオラマ、めちゃくちゃ見たすぎる。

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2023年06月10日

Posted by ブクログ

多少は須磨流しが堪えたであろうなんて思いきや何のそのなのだ。この巻ではすでに30代になっていらっしゃるが、出世なさって六条の院というとてつもない理想郷を築かれる。そこへ過去に関係してきた女君たちを配分して住まわせる。離れていてはなかなか逢えない不便を解消し、莫大なカネを投入して身近に彼女たちを集め、代わる代わる楽しむんである。さらにまた新規開拓にも精を出す。果たしてどうなっていくのやら。いやはや。

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2014年05月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

どうして源氏の君にもっと仏罰がくだらないのか不思議で堪らない巻。玉鬘に添い寝した後の野郎の台詞が信じられないぐらい酷い。
拒否されて当然なのに何故分からないのか、当時の男は一体どんな思考回路をしていたのか……。これが普通なのか?
立場的にも経済的にも離縁したくても離縁できない状態の紫の上が哀れでした。朝顔斎院は見事だと思いました。

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2011年01月25日

Posted by ブクログ

恩師が瀬戸内寂聴の源氏物語はいい!読め!とおっしゃったので手に取ってみた。源氏の君の浮気っぷりが腹ただしいやら爽快やら。目指せ全巻読破!

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2009年10月04日

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