瀬戸内寂聴のレビュー一覧
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巻八には、「竹河」「橋姫」「椎本」「総角(あげまき)」の4帖が収められている。
「橋姫」以下「夢浮橋」までの十帖は、「宇治十帖」と言われているらしい。
故光源氏の異腹の弟である八の宮の3人の姫君(大君、中の君、浮舟。この巻八では、まだ浮船は出てこない)と、薫の君、匂宮の恋模様が描かれている。
宇治に住む2人の姫君のうち、姉である大君(おおいきみ)に心惹かれる薫。
しかし大君は快い返事をしてくれず、むしろ中(なか)の君を薫に縁づかせたいと思っている。
一方の匂宮は中の君に夢中になり、2人は結ばれるが、帝と母・明石の中宮がそれを聞きつけ匂宮は宇治へ行くことを禁止される。
大君は、このまま中の君 -
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「柏木」「横笛」「鈴虫」「夕霧」「御法」「幻」「雲隠」「匂宮」「紅梅」の9帖が収録されている巻七。
女三の宮に不義の子を産ませた柏木は、ノイローゼから病気になってしまい、間もなく他界する。
一方、柏木の親友であった夕霧は、「妻の女二の宮を見舞ってくれ」という彼の遺言を守るうち、次第に女二の宮への恋心をふくらませるようになる。
今まで誰よりも理性的で道理をわきまえた人物であった夕霧が、心を迷わせて女二の宮の部屋にしのびこむ姿はいささかショッキングだった。
当時、女性が夫以外の男性に顔を見られるというのはあってはならないことだったようだ。
第40帖「御法(みのり)」では、とうとう紫の上に死のと -
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巻五を読み終えてから約1年半、ふたたび読み始めることにした。
巻六には、大長編の「若菜」上、下が収められている。
源氏は朱雀院の愛娘である女三の宮と結婚するが、まだ13、14歳の女三の宮の幼稚さに失望し、改めて紫の上のすばらしさを思い知る。
六条の院で蹴鞠の会があった日、夕霧の大将と柏木の衛門の督が休んでいたときに、女三の宮の飼っていた猫が綱を御簾にひっかけてしまい、御簾がめくれ上がって、奥に立っていた女三の宮の姿を2人が垣間見る場面がある。
これがきっかけで柏木は女三の宮への恋心を抑えきれなくなり、そのときに見た猫を手に入れて抱いて寝るようになる。
ちょっと変人やけど、可愛らしい人やなと -
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「須磨源氏」という言葉がある。
『源氏物語』を読み始めて、「須磨」の巻まで読み進んで挫折し、再び最初からとりかかるが、また須磨の巻で挫折していつまでも読み終わらないことをいう。
僕はこの「巻五」に収録されている「藤裏葉」で挫折してしまった。
あれから2年近くの月日が流れてしまったが、また続きが読みたくなってきた。
源氏さんは玉鬘(夕霧の娘さん)に恋心を打ち明けながらも、弟の兵部卿の宮との交際をそそのかす。
源氏が玉鬘の部屋に蛍を放ち、その光で兵部卿の宮が玉鬘の横顔を見てしまう場面がある。
すごく幻想的で、日本的な美しさにあふれているなあと思う。
しかし、そうこうしているうちに、玉鬘は鬚黒の大 -
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源氏は明石の姫君を京に連れてきて、紫の上に育てさせることにする。
恋敵(明石の君)の生んだ子に愛をそそがなければならない紫の上がすごくかわいそう。
また、源氏32歳の春に、最愛の藤壷の宮が他界する。
そして、2人の子どもである冷泉帝は自分が不義の子であることを知らされる。
一方、葵の上との間に生まれた夕霧は、花散里が世話をすることになる。
この花散里という人は、「源氏物語」に出てくる女性の中でおそらく唯一の不美人な女性である。
「器量がよい」という言葉は「性質・性格がよい」という意味だと思っていたけれど、「容貌・顔立ちが美しい」という意味なのだと知った。
「乙女」の中で、源氏は六条京極に -
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異母兄・朱雀帝の寵姫である朧月夜の君との逢瀬を契機に凋落していった源氏は、須磨への都落ちを決める。
身はかくてさすらへぬとも君があたり
去らぬ鏡の影は離れじ
別れても影だにとまるものならば
鏡を見てもなぐさめてまし
という源氏と紫の上のやりとりがとても美しい。
邸を須磨から明石へと移した源氏は、そこで明石の君という女性と結ばれ、子を産ませる。
後にこの明石の姫君を紫の上に引き取らせて育てさせるのだが、正妻であるにも関わらず子供ができない彼女の心中は穏やかではないだろう。
藤壷との罪の子・冷泉帝の即位、六条の御息所の死など大きな出来事が起こる3巻、および先の2巻は、『源氏物語』全体 -
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高校で習った古文の中で、もっとも印象に残っているのはやはり「源氏物語」である。
冒頭の文句は、覚えさせられたわけでもないのに何年経っても忘れることがない。
「いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひける中に…」
世に例のないほど美しく、才能豊かな光源氏。
気に入った女性は、どんな手段を使っても我がものにしようとする。
まだ幼い若紫に心惹かれ、自分の屋敷である二条の院に強引に連れて行く。
つまるところ拐しである。
こんなことが許されるのか、と思いながらも、寂聴さんのすばらしい日本語にどんどん引っ張られて読んでいく。
この巻一でのいちばんのお気に入りは、第ニ帖「帚木」である。
雨夜に -
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ネタバレこの巻は、源氏が輝いていた時代の物語に匹敵するくらい面白い。ページをめくる手が止まらなくて、ついつい長湯してしまう(お風呂で読んでいるので)。
本巻では亡くなった大君に瓜二つの浮舟が登場。大君に未練たらたらの薫は、浮舟に恋をしてしまう。一方、薫とワル仲間の匂宮も、浮舟を一目見るなり恋してしまう。今まで散々一緒に女遊びをしてきた薫と匂宮が一躍恋のライバルになるところもこの巻の見どころだ。
今まで出てきた女性たちと異なり、浮舟は意思が弱い。アクシデントとは言え、どちらの男性とも関係をもってしまい、以後どちらかを断ち切ることができない。今までの物語では、いずれは妻として迎えることが多かったのだが -
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光源氏が亡くなって、もう物語を読み尽した気になっていた。その後の子孫たちの物語。主人公をなくした後の物語は、とても味気なくて物足りない。これが紫式部以外の手によって書かれたという説も納得してしまった。「総角」の巻までは。
「総角」から物語は一気にドラマチックになる。それ以前は、薫と匂宮や周囲の状況説明だったようだ。源氏と違い、薫や匂宮に費やされた巻は3巻のみ。なのでそれだけ話が凝縮されていて、ハマりだしたら止まらなくなる。
いい香りのするプレイボーイ光源氏。その子の薫、孫の匂宮。その血は綿々と続くようで、光源氏顔負けの強引な女性関係に目が離せない。 -
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ネタバレ恐らく源氏物語のクライマックスだろう。光源氏御寵愛の紫の上が亡くなり、それを追うように源氏も息を引きとる。こんなにエキサイティングで、ページをめくる手が早くなる巻は今までになかった。
一番印象的な巻は、「雲隠」。この巻は題名こそあるものの、文章はない。開くと真っ白で、一瞬印刷ミスかと思ってしまうほど。次をめくると、新しい物語が展開している。どうやら源氏は亡くなったらしいと悟る。なんとインパクトのある巻だろうか。
源氏物語ではどんなに主役級の人の死でも、読み飛ばしてしまうくらい、呆気なく語られていることが多い。随分進んでから、「あれ?死んでる?」と思って読み返すこともしばしばだった。なので、