あらすじ
八十歳を迎えたブッダ(釈迦)は、侍者ひとりを連れて最後の旅に出る。遺された日々、病み衰えたブッダの胸に、人々の面影や様々な思いが去来する。自分を産んですぐ亡くなった母、養母、シャカ族の王だった父。亡霊となって現れる妻。出家してなお煩悩に苦しむ弟子たち、尼僧を受け入れた日のこと。涅槃に至るブッダの言葉の数々が、心地よい音楽のように綴られる。入魂の仏教小説。
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寂聴は釈迦の晩年と言葉を物語った。
師ブッダの従者アーナンダに同行した私は師の入滅後、遂に阿羅漢となったアーナンダに涙した。
旅の途中では、誤ってブッダに毒キノコを供した者を何処までも赦しその者の未来まで思い遣る怖しいまでの懐の深さに驚嘆した。他にも印象に残る話ばかり。
また読み返したいと思ったのは若い頃に読んだ井上靖の孔子以来、かもしれない。
下村湖人は論語物語で孔子の晩年の放浪と言葉を物語ったとか。次は孔子と弟子たちと旅に出るとしよう。
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日本人は少なからず仏教徒と言われる。多くは開祖がいてその人の教えの印象が強い。その原点にある人を小説として描いている。これが凄い。もちろん瀬戸内寂聴のブッダ理解であり、仏教理解ではあるけれど、そこに確かに仏を感じるような気がする。寂聴の福音書といったような感じかな。そういう意味では今までになくブッダを近くに感じられるような気がするいい作品だった。巻末の横尾忠則の解説も素晴らしい。
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前に手塚版ブッダなら少し読んだことがあるけど、聖☆おにいさんを読み出してから改めてブッダの生涯に興味がわいてきた。
これは読みやすくて面白かった~!アーナンダの視点から描かれているけど、ブッダ自身の回想もあったり、物語として面白かった。
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仏教の話に出てくるお釈迦さまは、偉大で超人的でよく分からなくなるときがあるけれど、このお話のなかのお釈迦さまは、確かに悟った偉大さや神々しさはありながらも、人間的な温かさが感じられます。
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たった今読み終わったので新鮮な気分。ヘッセの「シッダルタ」も読んだが、瀬戸内流の方に惹かれた。つまるところ私たちは世尊の実態には迫れない。漫画も含め色々な解釈を見聞きしても、そうだなと思ったり、なんとなく違うなと思ったりしても、そう思うだけで実態に近づけるわけではない。
今回瀬戸内さんの釈迦は、従者アーナンダの視点で描かれている。おかげで、私たちの中の崇高なものに近づきたいけど近づきがたい気分と、語り手の視点とがマッチして丁度良い距離感になっている。
だが物語の中に、世尊を理解するヒントがちりばめられていないかというとそうではない。世尊は孤独だと言ったデーヴァダッタ、死ねずに永遠に生きる方が地獄に落ちるより苦しいんじゃないかと思うと語ったアングリマーラ。
けれどそれでも解けない謎がふんだんに残っている。法は平等を説いているのに、世尊はなぜ女性の出家を認めなかったか。最後「この世は美しい」とおっしゃった世尊は、それまでこの世は苦しみだと説いていたのに、最後になってその考えを翻すことにしたのだろうか。小説終盤のアーナンダの悟りもあまりにあっさり成就しすぎているように感じる。
それでも作中で二度、三度世尊が語る「犀の角のようにひとり歩め」という言葉を始め、覚者の言葉は智慧に満ちていて、それを小説と言うわかりやすい形で教えてくれた瀬戸内さんには感謝する。
けど物分かりの悪い私は、結局この一度きりの人生をどう生きることが大切に生きることなのか、まだ分からないでいる。