瀬戸内寂聴のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
著者は俗評にまでまみれた超の付く著名人だが、著作を読んだのは本作が初。
挑戦的?とも思えるタイトルについ惹かれ、手に取って読んでみた次第。
これは傑作だ。読みながら何度も繰り返しそう確信しながら読み進む。こんなこと、珍しい。文章が、表現が、描写が、構成が、どれも唸るほど美しく、心に染み入る。
作中で著者自身も書いている通り、「私小説」なるタイトルには幾重にもトリックがあるようだが、それは決して薄っぺらく安っぽい試みではない。多くの登場人物に実在のモデルが居ることも容易に分かるが、さりとてその「実物」と作中の人物がどこまで重なるのか?…というような俗物的な詮索をする気など全く起こらない。そのくらい見事に「小説化」されている。その筆力がスゴイ。
他の著作を一切読んでいないが、何となく「本作こそが著者の最高傑作なのでは」と確信するに近い読み応えが味わえた。
ご存命のうちに、一度でも良いので生のお声を聴きたかった。 -
Posted by ブクログ
私はプロのパッパラパーな上にセンスの無さにも定評がありますので、人間ならば何を差し置いても読むべきもの、聴くべきもの、観るべきものをことごとく外して生きてます。
それでも「常識ある大人」への憧れみたいなものはありまして、時折古典の名著を読んでみたいなぁとか思うわけです。生意気ですよね。
ただそのまんま「完全現代語訳」みたいなのを読むかといわれても読めない。だってバカだから。そんなものが読めるならこの年でこんなザマな訳ないんですよ。
なので「あーーー源氏物語読みたいけどそのまんまは嫌だなー。どっかにパー向けに噛み砕いた簡単な内容でありながらも読んだ充実感みたいなのはちゃんと得られる、意地悪で世間を舐めた文章が書ける肉肉しい作家の現代語訳みたいなのないかなー。」とゴロゴロしながら検索したのがこちらでした。
巻末の解説林真理子も書いてますが、これを「解説」と言っていいのか。「ガイド本」?それとも「要約」?「あらすじ本」?はたまた「別小説」(まさにわたしの源氏物語)?
なんと表現すべきか私には分からないですが500ページはサクサク読めました。読み切るのが勿体無くて途中スピードを落としたほどに。
瀬戸内寂聴はあまり好きではなかったですが、それは私がナイーブ過ぎた、幼稚過ぎたからのようです。彼女の俗人よりも俗っぽいところが「行って帰ってきた」「折り返し」な感じがしていいですね。
悪口にリズムを生む紫式部、1000年経って物語をなぞる意地悪な尼、瀬戸内寂聴。平安絵巻が実写版となり、薫きしめた香だけでなく洗わない髪、汗、涙までもが生き物のにおい、つまり「臭気」を持つようになる。源氏物語を真っ直ぐ読んでいる知識層の方々からすれば「これだからパーは困る。そんな曲がった眼鏡で読んだらせっかくの名作も間違って読んじゃうよ。」とたしなめられそうだが、私にはちょうど良かった。
林真理子が巻末解説でもう書いちゃってるけど「空蝉のとこで『今風にいうと人妻が不良少年にレイプされちゃった』と書いてる。こんな風に源氏物語を書く人を他に知らない。けれどこれで我々はようやく当時のデートなり結婚制度なりを知りえる。男に踏み込まれたら女はなす術なし。諦めから始まる恋。だからこそのその後のすったもんだ。(意訳)」
これ。この本の良さ、瀬戸内寂聴の良さはこれ。
生前は下品な坊主だなぁと思ってたけどそれは私の見当違い。私が生きているもの、今手に入るものの表面的な肉の欠点に気持ちが削がれ、不当に8割引9割引で価値を割引き、いつでも手に入るとたかを括り見過ごすからだ。地元の大きな祭りをどうでもいいと軽視するのに少し似ている。
世の中に上品なものなどただの一つもなく、いつでもどこでも下世話であり、下世話の自覚もある彼女は上品である。
だからこそ瀬戸内寂聴は自らの存在及び言動が下世話でありながらもオリジナル作品の品格は損なわない。ここにあまたある他作家の源氏物語を貶めた「わたしの源氏物語(あの源氏物語をこんなに面白おかしく書けちゃうワタシってお茶目で変わり者。その辺の一般人とは違うセンスの持ち主っ。きゃっ。)」との差別化があり価値が光る。
「紫式部が褒めるのは美しく優しくて才能のない女」
「紫の上を気長に待つロリコン光源氏。この方がずっと淫蕩な感じ」
「雪景色に見惚れる末摘花 笑いを堪える光源氏」
「庶民の生活、女のバラエティが物語に深みと幅」
そうだよねぇ。意地悪って知性とセンスがあってのものだよねぇ。
ちなみに「気長に待つロリコンがより淫蕩」っていうのすっごい分かる。(80dBで音読プリーズ
どっかの芸能人とかだけでなく、「実は教え子だったんですよー。え?違いますよ、卒業するのを待ってそれから付き合ったんです」とかいう教師がたまに(てか結構)居ますけど、あれの気持ち悪さったらねぇ。どんなつもりで「待って」たんだか。
瀬戸内寂聴に指摘されるまで気づかなかったけど、さすが紫式部。ロリコン男のキモさをより濃い墨で書き出してる。
さて。と。
ここまで登場人物が3Dになると「誰の役をやろうかな」という気になる(まぁそう呆れずに
光源氏や紫の上は監督やプロデューサーから指名されたら断れないだろうけど、より難しい感情表現にトライするならばやってみたい役ではないような。(でもやれと言われればやりますよ
やはり六条御息所、もしくは柏木、末摘花や明石の上もいい。
でも六条御息所は小柳ルミ子以外にないし、朧月夜は園まり、末摘花はKABAちゃん、明石上は藤真利子、紫上と藤壺は吉永小百合、夕顔は浅丘ルリ子、玉鬘は桜田淳子、花散里は真野あずさ、弘徽殿女御は加茂さくら(黛ジュンでもいいです)。(各々の全盛期に)
若尾文子や松原智恵子も出したいんだけど役が合わないなぁ。
口さがない女房たちには由美かおる、奈美悦子などなど西野バレエ団から。
というわけでもし新橋駅前で「源氏物語、演るならどの役?」という該当インタビューに絡まれたら「柏木です。但しルミ子が六条御息所を演らないなら僕がやります。セリフは全部入ってますから。」と即答します。瞬きナシで。 -
Posted by ブクログ
政治的には窮地から一転返り咲いて栄華を極める直前くらいまでのドラマチックな展開。また、藤壺、紫の上、末摘花、明石の君とその家族、花散里、六条御息所と斎宮、朱雀院、東宮、権中納言(元頭中将)…と多くの人物たちの物語も描かれておりまさに群像劇。
漫画『あさきゆめみし』でも印象的だった二条の東の院が完成する。この巻では花散里、末摘花が入る。漫画でのほわんとした雰囲気(美人には描かれていない)がいいなと花散里が好きだったけど、まだいまいちこの人が源氏にこれだけ良く遇される理由がよくわからない。この作品では、恋する思いが強いほど悩みも多くなる、と男も女も繰り返し嘆いているので、なんかほどほどな感じが良いのだろうか。今後に期待。
反対に、末摘花はビジュアルの強烈さしか覚えていなくて二巻の「末摘花」でもさんざんな描かれようだったけれど、三巻の「蓬生」は、これは推せると思わせるエピソードだった。
以下は自分用備忘メモ。
■須磨
・流罪にされるのも恥だから自分から須磨行きを決める(そうすることで東宮を守ることにもなるようだ)。紫の上は連れて行かない、かえって辛い思いをさせるから(謹慎の身で奥さん連れていくとますます何を言われるかわからないし…と)。行く前に左大臣の家へ挨拶に行き、馴染みの女房と過ごす。あ、息子(葵の上が産んだ夕霧くん)にももちろん会う。
・紫の上のいる二条の邸は、かつてはたくさん集まっていた人々も寄り付かなくなり寂しい限り。紫の上の父親や継母も、娘への愛情薄く、世間の風当たりのほうが気になるのでつれない。こんなことなら父にここにいると知れない方が良かった、母に手紙を出すのもやめよう、とまで思う紫の上がかわいそう。
・花散里に会いに行く。漫画を読んだ中では花散里が一番好きだったので注目しているが特にまだ見せ場はない。須磨へ去ってからは姉妹で手紙をくれる。窮状を訴えると源氏が手配してお世話してくれる。
・都を去る上での身辺整理。事務処理などぬかりなく。仕事しているシーンってあまり描かれないからわからないけど、こういうのできる人なのかな。
・朧月夜にもちゃんとお手紙を出す。会うのはやめとく。妥当なところか。須磨へ去ってから朧月夜は許されて再び参内できるようになり相変わらず帝からの御寵愛は篤い。まだ源氏を恋しく思っている朧月夜を認めつつ慕いつつの優しい帝。すごいな。朧月夜に子どもができないので、故院遺言通り東宮を猶子にするつもりである。
・桐壺院の御陵へ行く前に藤壺の尼宮に挨拶。出家によりプラトニックが保証されて、源氏も失脚でしょぼくれてるし、須磨へ去ってからの源氏への手紙もちょっと優しくなる。
・昔、藤壺と源氏との間をお仲立ちした王命婦が、二人や東宮の今のご様子を見て「私の浅はかなお仲立ちのせい」と思っている。いやいや、そんなこともし源氏が言おうものなら私がぶっ飛ばしてやるよ…。
・伊勢の斎宮へもお手紙を(娘の方?!)送ったら六条御息所からお返事。どなたよりも優れており、いつかまた会いたいねなどと返事。別れたけれど良い関係?
・源氏は幼い頃から帝の寵愛がこの上なかったので、源氏が奏上して叶わないことはなかった。そういうわけで位階のことなどで源氏に恩がある人はたくさんいた、という記述(それなのに、外聞を恐れてみんな寄りつかないという文脈)。自分自身が恵まれているだけでなくちゃんと周りにも実利を与えていたから、みんなに愛されていたんだなと妙に納得。
・明石の君。お父さんがなかなか面白そうな人だ。頑固者とのことだが、世間の目も構わず、自分の親戚である素晴らしい桐壺の更衣の子なんだし源氏の君は素晴らしい!という信念のもと、自分の娘の婿にしたいと思っている。
・最後なんか龍王出てきたぞ!
■明石
・明石パパの猛プッシュ(とパパ自身の魅力も手伝って)の結果、明石の君とついに結ばれ、子どももできる。はじめからわかっていたけど却ってつらい明石一家。明石は琴の名手。
・紫の上には手紙で「浮気しちゃった、正直に言ったから許して」。大胆な人だ。チクリと嫌味を言いつつも鷹揚?な和歌でお返事をよこした紫の上をまた愛しく思う源氏。いい気なものです。
・源氏を追いやった帝もその母も物の怪に悩まされ病気がちに。帝はついに源氏を元に戻すことを決めた。帰還。
・紫の上に明石の君のことも隠さず話す。ずるいんだからもう。
・五節の君(誰だっけ…)や花散里へは手紙をやるが会いには行かない。
■澪標
・朧月夜、帝の愛の深さを思い知る。
・弘徽殿の女御の子だった帝が譲位して朱雀院になり、源氏と藤壺の子である東宮が、帝になる。
・明石の姫君に女の子生まれる。乳母を派遣。花散里にも会い、五節の君(誰だっけ…)のことも想う。明石に上京を進めるが明石ためらう。パパ入道も「こんなことなら昔の方が心配ごとが少なかった」って、おいおい。とはいえまあ、そういうことはありますよね。
・二条の東の院の改築を始める。
・「そういえば」と斎宮&六条御息所の話に。伊勢から戻ってきている。六条御息所は病で弱っていることもあり、昔のこともあり、もう源氏になびくことはななく源氏も強くは出ない。斎宮(娘さん)のことは面倒見るから、という源氏に対し、「手出すなよ」と釘を刺すママ六条ナイス。ちょっと不機嫌になる源氏、かわいい、とは思えない、そこは恥じ入ってほしい。六条御息所、みまかる。
・斎宮の世話をする源氏。なんとか踏みとどまっている。斎宮のことを朱雀院が所望しているが、帝に入内させたくて、藤壺に相談し、そうする。
■蓬生
・末摘花再登場。「大空のおびただしい星影を盥の僅かな水に映して我が物にしたような、身に余る思い」で源氏によるお世話をありがたく思っていたが、須磨へも行った源氏はすっかり彼女のことは忘れてしまって、召し使いたちにも見捨てられるし親戚も意地悪だしで邸は荒れ放題。それでも一途に頑固に暮らしぶりを変えない。そこへ源氏登場。花散里のところに行く途中でたまたま思い出しただけなのだが、「あなたが便りもくれないから意地を張っていたけれどついに来てしまった、私の心は変わらない」などとしゃあしゃあというが、地の文も「それほど深くも思っていらっしゃらないことでもさも情愛がこもったようにお上手にあれこれとお話しになられた」と手厳しいのが面白い。その後は源氏も元のように細やかにお世話してくださる。そうなると戻ってくるような現金な女房たちもいたりするわけで、末摘花の変わらなさという美徳が一層感じられる。最終的には二条の院の隣の邸に住まわせる。
■関屋
・空蝉の話。小君だった右衛門の佐は、源氏の須磨行きのとき時勢におもねって源氏から離れてしまったので気まずいが、源氏は変わらず接してくれる(内心不愉快だが)。空蝉への手紙を託され歌のやり取りなど。空蝉は源氏を迎えることは決してない、それは変わらないのだが、実はけっこう恋しがっている?空蝉の夫が亡くなると、義理の息子に言い寄られて出家する。
■絵合
・前斎宮の入内。帝は十三歳で斎宮は二十二歳。朱雀院から斎宮への贈り物に、その思いの深さを知り、ちょっと悪かったなと後悔する源氏。「澪標」で斎宮の入内を決めたいきさつは、要は源氏が、お似合いの朱雀院に渡してしまうのが惜しくて年少の帝(しかも息子)の方がまだいいかなとか思ったのだったかな。
・という疑問を抱いたが巻末「源氏のしおり」では、斎宮を自分の娘分として入内させて外戚として権威を振るおうという野心のためとあった。また、朱雀院への恨みもあったかもしれない、と。さらに、斎宮だって朱雀院のことを覚えていて慕っているだろうし帝との年齢差のことも気にならないわけはなかろうと、作中では黙殺されている斎宮の気持ちが想像されていた。
・頭中将が今は権中納言。その娘が今は「弘徽殿の女御」で、こちらも入内しており帝とは年も近く仲良し。源氏と権中納言はこんなところでもまたもやライバル関係になるわけか。そして絵合。なんやかんや芸術論があったが最後は源氏の描いた須磨の絵で梅壺(前斎宮)側の勝利。
・この世の栄華を極めつつあると自分でも思っている源氏。帝が成人したら出家して、もう高位は要らないから長生きしたい、など。
■松風
・この頃源氏三十一歳。二条の東の院完成、花散里そこに入る。
・明石の君、嵯峨の大堰の邸についにやってくる。母の父の昔の邸らしい。入道だけを明石に残し、母と娘と共に。明石一家の悲喜交交。源氏、会いに行く。
・紫の上は、明石の君のことではずっと機嫌が悪い。機嫌を取ろうとする源氏。隠れて手紙を書いて送り、受け取った返事もまずは一人で読んで内容チェックしてからわざとその辺にうっちゃって、「こんな手紙にわずらわされる年でもない、あなたが捨てておいてください」だとか、いろんなポーズを使い分ける。
・明石の君との間に生まれた姫君は三歳。二条の邸で引き取って紫の上に育てさせたいなというアイディアを紫の上に漏らす。紫の上は、「あなた(源氏)に対しては色々と思うところもあって素直になりたくないが、子どもには気に入られると思う」とちょっと乗り気。紫の上の気持ちは、今後もっと語られるのだろうか。