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宇治に隠棲した故光源氏の異母弟・八の宮のもとへ通う薫は、老女弁の君より自らの出生の秘密を知らされる。2人の姫君を遺して八の宮死後、薫は姉の大君に求愛し妹・中の君と匂宮の間を取り結ぶが、大君は薫の愛を拒み通して他界。傑作「宇治十帖」の物語がドラマティックに展開する。第8巻は、竹河・橋姫・椎本・総角を収録。
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Posted by ブクログ
宇治十帖に入った。面白い。 主人公は薫。薫は源氏と女三の尼宮の息子ということになっているが、実は柏木と女三の尼宮との不義の子。そのことで源氏の怒りを買い、柏木は病気になって亡くなってしまい、女三の宮は出家してしまった。源氏も亡くなった後、薫はどうなったのだろうと思っていたが、源氏が亡くなる前に冷泉帝...続きを読むに託していたので、薫は冷泉帝とコキデンの女御の息子のように大切に育てられた。それにしてもこの義理の親子関係は興味深い。冷泉帝も薫もそれぞれ「自分は不義の子」だということを自分だけの心のうちに隠し持っていて、しかも冷泉帝は薫のことを「本当は弟だ」と思っていたことになる?のよね。薫が暗くて真面目なのは出生だけが原因ではなくて、冷泉帝に育てられたからというのもあるかも。 この巻では薫が主人公になっているが、もう一人の主人公は匂宮。こちらは明石の宮と帝の子供で、源氏の実の孫。源氏の孫の中でもとりわけ紫の上に大切に育てられ、一人実家から離れて二条の院で気楽に暮している。イケメンで色好みという源氏体質を受け継いでいて、親は早くちゃんとした結婚をさせたい(夕霧の所の姫と結婚させたい)と思っているが、仲良しの薫と共に宇治の姫たちに夢中である。 宇治の姫たちというのは“八の宮”の娘たちのこと。“八の宮”というのは源氏の八番目の弟(そんなに沢山弟がおられたとは)で、源氏が須磨で暮していたとき、源氏の敵のコキデンの太后が冷泉帝をこき下ろして代わりに東宮に立てようと木論だ人だが、源氏が京に戻り、源氏天下になった後、すっかり落ちぶれ、経済的にも大変になって宇治でひっそりと暮らしていた宮。姫たちの母も亡くなり、八の宮はこの世のことには見切りをつけて仏道に励んでいた。まだ若いのにこの世の無情を感じ、仏道や出家のことに興味をもっていた薫は八の宮のことを聞きつけ、お近づきななりたくて、宇治に通うようになる。そして八の宮の人柄に惹かれると共に彼の姫たち、とりわけ長女の大宮に惹かれていく。薫は宇治に美しい姫がいることを匂宮に教えてあげて、匂宮と中の宮(次女)のキューピット役になってあげる。宮という立場から自由な遠出の難しい匂宮を怒られること覚悟で宇治まで何回も連れ出してあげる薫はいいヤツだ。 薫は多分、匂宮が中の宮を思うよりもずっとずっと深く大宮を愛しているのだが、めったに恋愛をしない薫にとって大宮は簡単に 犯すことの出来ない大切な人なのであった。 大宮は薫を頑なに拒否する。なぜかというと、父親の八の宮が亡くなる時に、お前たちは父亡きあと落ちぶれても、簡単に結婚に甘んじて恥ずかしい人生を送るなと遺言していたから。今をときめく薫、匂宮に求婚されているのだから喜べば良いものを「こんな私たちに分不相応名ほど高貴な方に求められても飽きられて悲しい思いをするだけ。」と言う思いから特に大宮のほうが気を許さない。大宮の見解は正しいかもしれない。宇治という都から離れた辺鄙な風流な所で奇跡的に美しい姫がいた、そしてちっとも靡いてくれないという状況が男たちの恋心を燃えさせたのであって、近くにいる簡単に靡く姫なら、こうまで夢中にさせなっただろう。 中の宮は匂宮に愛されたが、匂宮は宇治が京から遠すぎるのと、身分が高すぎるためなかなか中の宮の所に通い続けられなかった。そのことに中の宮本人も落ちこんだが、中の宮の幸せを願っていた姉の大宮は「やっぱり噂通り浮気なお方だった」とさらに落ちこむ。そして、大宮は病気になって、薫が見守るなか、死んでしまう。薫と大宮は最後までプラトニックだった。だけど大宮は薫の心の中で最高の地位を勝ち取ったことになる。だって一番の想い人は絶対に絶対に手の届かない人だから。今、これを書きながら私のBGMにはブラームスのドイツ・レクイエムが流れていて、何ともいえない甘く悲しい気持ち似なっている。
巻八には、「竹河」「橋姫」「椎本」「総角(あげまき)」の4帖が収められている。 「橋姫」以下「夢浮橋」までの十帖は、「宇治十帖」と言われているらしい。 故光源氏の異腹の弟である八の宮の3人の姫君(大君、中の君、浮舟。この巻八では、まだ浮船は出てこない)と、薫の君、匂宮の恋模様が描かれている。 宇...続きを読む治に住む2人の姫君のうち、姉である大君(おおいきみ)に心惹かれる薫。 しかし大君は快い返事をしてくれず、むしろ中(なか)の君を薫に縁づかせたいと思っている。 一方の匂宮は中の君に夢中になり、2人は結ばれるが、帝と母・明石の中宮がそれを聞きつけ匂宮は宇治へ行くことを禁止される。 大君は、このまま中の君が捨てられたらどうなるかと心配のあまり病気になり、そのままお亡くなりになってしまった。 悲しみに沈む薫の君。 ああ、この世はなんてはかないのだろう…。 男性が意中の人に想いを伝えるとき、「前世からの宿縁」という言葉がよく使われる。 そんなことを言っても男たちは浮気しまくっているけど、ロマンティックな言葉だなあと思う。 僕もそんなふうに思えるたった1人の人にいつかめぐり会いたいなあ。
光源氏が亡くなって、もう物語を読み尽した気になっていた。その後の子孫たちの物語。主人公をなくした後の物語は、とても味気なくて物足りない。これが紫式部以外の手によって書かれたという説も納得してしまった。「総角」の巻までは。 「総角」から物語は一気にドラマチックになる。それ以前は、薫と匂宮や周囲の状況...続きを読む説明だったようだ。源氏と違い、薫や匂宮に費やされた巻は3巻のみ。なのでそれだけ話が凝縮されていて、ハマりだしたら止まらなくなる。 いい香りのするプレイボーイ光源氏。その子の薫、孫の匂宮。その血は綿々と続くようで、光源氏顔負けの強引な女性関係に目が離せない。
巻七で源氏の君も紫の上もいなくなってからロス感あって読書スピード落ちてましたが ここまできたら気楽に読めました 宇治を舞台にしたストーリー 面白かった
宇治十帖になり、主人公が光源氏から、薫の君、匂宮に変わり、物語の性格がガラリと変化した。光源氏の、余りにも陽が似合う人物から、その生まれのいわくがつく薫の君の、隠の人間がクローズアップされ、私にはこちらの人物の方が余程親近感が湧く。匂宮も高貴な生まれの所為で、結婚生活が順調とは言えなくなってしまう。
「竹河(たけかわ)」 ここでひと息つくかのようにと書くと失礼だが、「薫の君」と「匂宮」の二人が順調に成長する中での、「玉鬘の君」の、非常に現実的な苦労話がメインとなっており、彼女は生まれたときから波瀾万丈な人生を送ってきたのに、「故髭黒の太政大臣」と出会った事で、情けない心持ちにさせられたと思った...続きを読むら、今度は子どもたちの将来と、彼女自身に今も拘りを持ち続ける男達との兼ね合いが、また何とも面倒くさい事になってしまい・・・こうなると、モテる女は辛いねを通り越して、この世で誰を頼りにしたらよいものかと、その無常さを嘆くのも分かるような気がするからこそ、最後の「宰相の中将」への『困ったお坊ちゃんだこと』には、身に沁みるものがあった。 「橋姫(はしひめ)」 源氏の異腹の弟宮である「八の宮」には、二人の姫君、「大君」と「中の君」がいるが、実はその過去には、とても不運な境遇があり、かつて源氏が須磨に流されていた頃、弘徽殿の大后の陰謀のせいで、源氏一門のお付き合いから見放された上に、都にあったお邸が焼失してしまい、現在は宇治で細々と暮らしているが、そこで仏道修行をしている八の宮に、薫の君が興味を持ち、三年間通うようになった事をきっかけとして、あの秘密を知ることとなり、その時の彼の心境である、『やはりこの世はそう容易く捨て切れるものではないと、自分の心の弱さを思い知らされる』に見られた、彼の生真面目さが印象的だった。 「椎本(しいがもと)」 匂宮は、薫の君と宇治へ行った事により、姫君のことが気になり、その後、何度も手紙を送ることになる中、八の宮が勤行のために邸を出て行ったことに不安を覚えた、大君と中の君だったが、やがて、再会する事も無く亡くなってしまい、その悲しさたるや、周りの、人の少ない剥き出しの自然の取り巻く環境下もあり、辛いものがあるだろうと思われた日々に於ける、中の君の『ようやくこうして起きていられるようになりましたけれど、やはり悲しみにも限りがあって、時がたてばこんなふうに薄れるのかと思うのも、そんな自分がうとましくて情けなくて』には、単なるネガティブ思考ではなく、生まれた時、既にある程度確定してしまったような、当時の貴族の苦しい立場の一つのパターンを見た思いがした。 というのも、ここでの父親、八の宮は不運なだけで、彼自身には何の汚点も無かったのに、結果、その人生に於いて、あまりにも選択肢の少ない状況を作り出してしまった、ただそれだけで、彼の娘たちも選択肢の少ない状況と化してしまったのであり、これが貴族ではなく、一般市民としてならば、いくらでも再生出来る可能性はあるのかもしれないが、彼女たちに付けられたラベリングは、『源氏一門の八の宮の姫君』、ただそれだけであり、それによって、彼女たちはこうした人生を歩むことが望ましいのですよと、まるで見えない圧力をかけられているかのような立場でいなければならないことには、とてもじゃ無いが耐えきれないものを感じ、最初は、この小説、やたらと出家する人が多いなと思ったが、その裏には、それなりのやるせない事情があったのかもしれないということを、今更のように、まざまざと痛感させられたのが、この帖で最も胸に突き刺さったことであった。 「総角(あげまき)」 薫の君、匂宮、大君、中の君、それぞれの恋愛模様がいよいよ本格化してくる帖でありながら、以前の源氏を中心としたそれとは、全く趣が異なり、そこには、瀬戸内寂聴さんが近代小説に近いというのも肯けるような、人を好きになったときの、期待に胸ふくらませ、あらぬ事を色々と気懸かりにしながら、悲劇的とも思われる勘違いによる誤った決め付けをしてしまう中で、家族や友達も大事にしたいといった、ある意味、現代ドラマのような親しみやすさが、より増してきた印象を抱き、特に大君のそのひた隠しにしてきた心境には、妹の幸せを願う気持ちと、自身の思いを否定的に理屈づけた事による、姉の立場に固執し過ぎた感に加えて、『出家した方が、お互いに変わらぬ愛情を行く末長く見届けることが出来るのに違いない』に感じられた、人という存在に潜む無常さに悲しさしか見出せないのは、あまりにやるせないではないか。 しかし、それも、貴族ならではの状況下に立ってみないと、決して自分事のようには分からないのであろうと思わせたのも確かであって、その時代性が織り成すやるせなさには、決して華やかさだけではない、貴族ならではの悲劇性も垣間見えたのである。 この巻の「橋姫」から、所謂『宇治十帖』と呼ばれているそうで、寂聴さんは紫式部が書いたと思っているが、他の作家が書いた説もあるそうで、中でも折口信夫の男性説には少し気になる点もあり、おそらく、源氏のキャラとは真逆に近い、薫の君の存在もあるだろうし、彼の、現代の男にも通じそうな、必要以上に葛藤し気を遣った末の、激しい雪景色と宮中の豊明節会との対照性に見られた、彼の心細さに現れた、そのセンチメンタリズムは、男が書いたような印象も抱かせ、匂宮にしても、源氏に比べれば可愛いものだし、大君も中の君も気を遣い過ぎで、この雰囲気は、確かにこれまでの皮肉的な感じとは異なるものがあるが、おそらくそれは、私が上記したような、また別の視点から見た皮肉なのだとも思わせられて、それは、これだけテイストの異なる作品を描くことの出来る、紫式部の凄さなのかもしれないと感じさせられるのであった。
寂れた山荘に暮らす美人姉妹と、彼女達に思いを寄せる2人の美男子の物語がメインとなっている。薫と匂宮はタイプは違うけれど、2人とも少女マンガに登場しそうな完璧なイケメン。八の宮が亡くなった後の大君と中の君の境遇は、現代とは比べものにならないくらい不安定なものだったはず。出家というセーフティーネットはあ...続きを読むるものの、周りに反対されれば思いきれない。苦悩のあまり潰れてしまった大君が哀れだった。源氏の思いをばっさり振り切った女三の尼宮とは対照的。姉に先立たれてしまった中の君は匂宮のもとへ引き取られるのだろうか。
完全に源氏没後の世界の話、薫の君が主人公になっている巻。源氏の時代の有名な話のリプライズがあったり、特に橋姫は源氏の須磨流しでとばっちりを受けた八の宮にスポットライトが当たっていて、話を追ってきた読者ならみんな嬉しく思ったと思う。ただ男が下半身すぎてしんどいのでこの評価という…。
源氏物語スピンオフ宇治十帖。 薫の君と匂宮のイケメンセット推し。平安時代からセット売りが存在するとは。 しかも、光源氏様から比べたら、優柔不断っぽい今風男子達。今後に期待しましょう。
「橋姫」以下、宇治を舞台にした物語が続き、これが世に言う「宇治十帖」だそうで、残り七帖あるわけだ。煮えきらぬ恋愛話が、ウジウジウジウジとウジ十帖連なる。
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