垣谷美雨のレビュー一覧
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東日本大震災の被害に遭った避難所の話。
日本の社会での「女性の居場所のなさ」が浮き彫りにされている。
解説にも書かれていたが、
『様々なものを失って、被災者は心も身体もケアを必要としているのだが、「人をケアすべき性」として扱われてきた女性被災者たちは、頑張れと言われるばかりで、自らのケアをしてくれる存在がいない。そんな中で女性被災者たちが静かに疲れ果てていく姿が見えてきた』とあった。
また、体育館などでも女性が正攻法に拒否すれば、女性たちは共同体の中での住むべき位置を失う。にもかかわらず「みんな大変なんだから」と女性同士が牽制し合って不満を抑えこみ、「我慢」することでかろうじて成り立ってい -
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ネタバレ派遣切り、同棲していた男性との別れ、住むところの喪失、貯金を切り崩す毎日…。
30代にして頼る親戚もなく、この先どうしようかと困り果てた主人公はある時、テレビで農業を1人で営む同い年の女性の特集を目にする。
一念発起してそこから奮闘していく女性の物語。
何度何度も辛い局面を迎え、心が折れそうになりながらも、些細なやり取りの中でまだ笑顔になれる自分がいる。もう少し頑張れる。
そんな主人公の一生懸命な姿に、胸が熱くなりました。
出会った人たちも、一生懸命な主人公のためにとつながっていき、ものごとが良い方へと動き出していく。
あきらめずに頑張ってみることの大切さや、困った時は周りの人に頼る -
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高齢者の車の運転事故は痛ましい。認知症はじめ重い病気の方は、もちろん運転はするべきではないが、年齢とともに判断力や反射神経もにぶくなる。しかし車の運転をしないと生活できない過疎の街もある。
主人公は一般企業に勤める50代サラリーマン。田舎に住んでる両親のところに行き、78歳の父親の危険な運転を目の当たりにして、免許返納を勧める。しかし路線バスもあまりない地域では生活のために車は必需品であり、そう簡単に車は手放せない。
悩んだ挙句に主人公は脱サラし、田舎に戻り両親の日々の買い物もまかなう移動スーパーをはじめる。高齢ドライバーの問題に加え、過疎の町の問題なども小説には盛り込まれ、非常にためにな -
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『亭主元気で留守がいい』
昔そんなCMがあったが、この意味合いをもっと深刻にしたような小説。
主人公は58歳の主婦、パート勤め。超重度の夫源病。いつも考えていることは…
『離婚したい、でもお金が無い。
死ぬほど夫が嫌い、介護したくない。夫が定年退職し家にいるようになったら地獄…』
ということ。
夫と同じ鍋をつつきたくない。
夫の洗濯物と一緒に洗いたくない。
でも離婚したい理由は、暴力とか借金、浮気とかではない。
ここまでになったのには原因がある。
・夫は家事や育児を妻に任せ、労いのかけらも無い。
・女子会に行ってくると言うと、夫から女同士の会話などクソの役にもたたないと言われた。
・夫が酔 -
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日本政府にて『七十歳死亡法案』が可決された。これにより皇族を除き、日本国籍の者は70歳の誕生日から30日以内に死ななければならない。
政府は安楽死の方法を数種類用意する。なお施行は二年後の4月1日である。
こんなセンセーショナルな書き出しから始まる小説だ。主人公は55歳の主婦で、義母(84)の介護で疲れ切っている。つまり2年後にはこの介護地獄から解放されるのだ。思わず微笑んでしまう自分…
この法律の対象から外れるためには、『年金は要りません』『医療費は全額自分で払う』『ボランティアをする』と書面を役所に提出するらしい。寝たきりでない、資産がたくさんある人は助かるなんて…しかしよく考えるもの -
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面白くてあっという間に読み終わった。
結婚していない人が読んだら結婚したくなくなると思う。それくらい重くなってしまった。
結婚している人としていない人で希望を持ったり、逆に絶望したり感想が分かれると思う。
私は結婚していないけど、父は亭主関白でモラハラ気味で重なるところがあるため、父と母を重ねてしまった。
結婚って何なんだろう。皆んな何で結婚するんだろうと読みながら疑問になった。自分の人生を諦めて相手に添い遂げることが幸せなのか。
今だに自分の住む地域では結婚してこそ一人前。結婚していない人はどこか欠如しているという感性だ。
また、離婚している人も表立っては言われないがあまり良くは思われない。