垣谷美雨のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
原田ひ香と柿谷美雨、両方お金に関する小説を得意としているのだが、原田ひ香の小説は読んでいてもイライラしないのだが柿谷美雨の小説は読んでいると時々とてもイライラする。なぜなんだろうと考えたときに、登場人物たちが見栄っ張りで卑屈な奴が多いからだなと思った。
原田ひ香の書く登場人物はお金に困っていていても卑屈さがないのだ。そこが読んでていてストレスを感じないのだ。
柿谷美雨の書く登場人物たちは、見栄があり卑屈でもあり、はっきり言って聡明でもない。すごくリアルな人間臭さがあって読んでていてイライラする。どうしてそういう行動に出るのか、どうしてそんな考え方しかできないのか、イライラするのだ。
この小説でも、主人公の篤子にもその夫にもイライラしっぱなしだった。おばさんとおじさんのダメっぷりを書くのがうまいなぁと思った。
お金がないことで生じる視野の狭さ、性格の悪さ、卑屈さが余す所なく書かれていた。
自分だけがお金がなく余裕がないと思いがちだけど、他人には他人の悩みがあり、それは時として自分より深刻なものなのかもしれない。
それはお金だけじゃなくて、健康だったり、人間関係だったりにも共通しているのかも。
お金を使うこと、お金を貯めること、家族で話し合うこと、友達と分かち合うことの難しさと喜びをよく噛み締めて読み終えた。 -
Posted by ブクログ
最初はよくあるタイムスリップものかと思ったが、物語の視点は容赦なく徹底的にリアルだ。
作中に溢れる「男尊女卑」や「家父長制」といった古い価値観の押し付けには、本当に重苦しい気持ちになる。「夫婦に子供二人、それを支える専業主婦」という、政府が考えた標準世帯モデルが当然とされていた時代の空気感は、今となっては希少価値である。しかし、それが当時の厳然たる常識であり、いまだに旧態依然としている部分が残っているのも事実だ。
40代の目でもう一度10代を生き直し、違う人生を歩んでみる3人。しかし、どの選択肢を選んでも大した幸せは待っておらず、思い通りにはいかないという冷酷な現実を知ることになる。この「人生そう簡単にはいかない」というプロセスが、とても深く切ない。
前に読んだ『夫のカノジョ』が「相手の身になる」話だったとすれば、今作は「過去に戻って自分を見直す」物語だ。
「どの環境(カード)を選ぶか」ではなく、「選んだ場所でどんな覚悟を持って生きるか」へと、3人の意識は少しずつ変わっていく。
理不尽さや現実の厳しさがたっぷり描かれる分、結末が少し綺麗にまとまりすぎている点には物足りなさや不満も残る。とはいえ、タイムスリップものというジャンルの性質上、こうした「お約束」の着地になるのは仕方のないことなのかもしれない。
と、『夫のカノジョ』でも、そんな感想を書いた気がする。