あらすじ
底辺女子が人生逆転!? 不遇な家庭に育った17才のユキが、子供を持ちたい人々と貧困女性を救う〝代理母ビジネス〟の賭けに出る。
義父の策略で、違法な代理母出産をさせられた16才のユキ。命がけで出産したにもかかわらず、報酬はすべて義父の手に。再び代理母をさせ稼ごうとする義父の手から逃げだしたユキは、自らの経験を逆手に取り、自分のような貧しい女性を救う大胆な〈代理母ビジネス〉を思いつく。ユキを支えるのは医師の静子&芽衣子のタッグと、ゲイのミチオ&一路。さまざまな事情を抱えた「子どもを持ちたい」人々が、最後の砦としてユキたちを頼ってやってくるが……日本の生殖医療の闇、貧困層の増大、妊娠・出産をめぐる負担など、現代日本が放置した社会問題を明るみにしながら、「代理母」ビジネスのタブーに切り込んだ話題作。
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Posted by ブクログ
舞台は近未来日本。作者にしては、珍しい舞台設定である。しかし、そこにはそれなりの意味があるのは、あとになって分かる。富士山噴火により、東京は火山灰に埋もれ、山梨に遷都。富裕層は東京を離れ、東京は貧民層があつまる街へと変貌。上空には、ドローンタクシー。外国人が数多く日本国内に流入し、相変わらず少子化社会。そこで、本タイトルの「代理母」のストーリーが展開していくことになる。巻末には、格差社会や婚活で有名な家族社会学者の山田昌弘氏による解説。
Posted by ブクログ
作品の感想というよりは、それを受けての「私のブログ」かも
不妊治療の渦中にいる私には気持ちが揺さぶられすぎるお話だった。
ずっと「男はいいよなぁ、(肉体的にも社会的にも)大きな負担なく子供が持てるもん」と思っていた。で、その気持ちに対して「でも、男は生まれた子供が確実に自分の子供という確証は普通はなく(DNA検査等しないかぎり)、そのなかで子育てしなくちゃならないから…」というところで、なんだか性格悪い感じだけど、自分のなかで折り合いをつけていた。
で、いざ不妊治療となったときに夫の名前が記された容器に入った精子を見て、上記の気持ちが打ち砕かれたというか。もちろん夫のことが嫌いになったとかではないけど、その「夫の名前が記された容器に入った精子」という異物を体内に入れるのに非常に抵抗を感じた。(もちろん言動には出さなかったけど)
なんで女しか子供は産めないんだろう、
なんで人間の妊娠・出産というのは肉体的にも社会的にもこんなに大変なんだろう、
と色んな気持ちがまぜこぜになってしまった。
同じような気持ちのはてに、自分自信の妊娠出産は諦めて、里親制度を利用することにしたと言った知人がいたな。なんの皮肉か彼女は産婦人科医だった。
私もその話を聞いて里親についても検討もしたけれど、「自分と血の繋がった」子供がほしいという我儘を諦められない。
………だから、もし代理母というシステムがあったら私は利用してしまうかもしれない。
とんでもなく利己的な理由で。
さてこの作品、代理母のシステムを提供または利用する、色んな人が出てくるわけですが…
自身のキャリアを優先しつつ、自分と血が繋がった子供を持つことができる状況にたどりつけた美佐を、こんな状況の私は心底うらやましいと思った。
あともし、未婚で子供を持つことが全くタブー視されていない世の中だったら私は結婚していただろうか。……していなかった、ような気がする、たぶん、いや分からんけど。
垣谷美雨の作品は、前半は露悪的な感じでストーリーが進むので読んでいて、イライラしたり心がしんどくなる。ラストがハッピーエンドってわかっているから読める、って感じ。
今回も、まさしくそういう流れです。
さらに言えば、垣谷作品は「少しうまくいきすぎじゃ?、いやでも絶対に無理をは言いきれないか」というような着地をする。
今作もまさにそんな感じ。
ユキちゃんが代理母をする流れになったことの、問題は男尊女卑…もあるだろうけど、もっとも大きな要因は義父からの虐待なのでは。
LGBTQ+、搾取子、格差社会、男女差別(じつは簡単に「男尊女卑」といえる話でもないと思う)、女性のキャリア形成(妊娠出産により閉ざされるとか、医学部受験の女子差別とか)、ヤングケアラー、子を持つとなった場合の男性の存在・立場
めっちゃ色々詰め込んでくるやん!
1つ1つが、それだけで1冊の本になりそうなトピックスでもあるし、もう少し長いお話としてじっくり読みたかった。
飛躍しすぎ、かもしれないけれど……代理母と依頼主との関わりかたに、妊娠出産する女とそれが出来ない男の関係の一部を見たような気もする。
Posted by ブクログ
超面白くて1日で読み切ってしまった!近未来の経済格差が広がった日本で、未成年のユキは義父に代理母にされてしまう。生活に困ったユキは、その経験を活かして、代理母も育ての家族もどちらも幸せになれる代理母エージェントを立ち上げる。代理母を希望するもの、依頼人の方、それぞれがいろんな事情を持っている。不妊治療の末、売春目的、子どもがいれば一人前という考え方を信じている人、妊娠・出産期間にキャリアを失うのが怖い女性、独身でも子供を持ちたい人、LGBT等。
中絶のやり方に疑問を抱いた女医が相次いで辞められた院長先生の変わりっぷりも面白かった。掻爬手術は本当に体への負担が大きいのに、なぜいまだに行われているのか、著者の怒りがこもっているように思った。
最初に反旗を翻した芽衣子先生、転職先の静子先生のやり方には納得。晩婚化やLGBTQ+法整備の進む日本で、これから代理母が認められていくために大切なことがギュッと凝縮されているような一冊だった。
p.247 代理母たちは苦労して生きてきた分、若くても老成しているのかと思っていたら、そんな女はほとんどいなかった。その一方、依頼人の女たちは学校や会社の中で揉まれてきたからか、社会性があり大人だった。
Posted by ブクログ
少子高齢社会の近未来が見えたように思います。貧困や自然現象により格差社会が進んだ世界、人種や性別などより多くを考えさせられました。
その中でも、前を向いて生きる主人公や周りの人達の逞しさが見えて、活力をもらいました。
Posted by ブクログ
代理母には肯定的だと思ってたあたし。金銭は発生するけどWin-Winならいいと思ってたし、ユキたちの活動がないと日本の制度が変わらない。
でもやっぱり細かいところが気になる。
日本でまだ認められていない今、代理母になった人は産休は取れるのだろうかとか、代理母から産まれても依頼者の戸籍にちゃんと入れるのだろうかとか、整備しなければならないところはたくさんあるんだろうな。
そのうち、出産が嫌だから代理母頼もうとか言う人出てきそうだよ。
子どもが欲しいのに何かしらの正当な理由で産めない人にとって、良い制度になって欲しいと願ってやまない。
Posted by ブクログ
なかなかな内容でした。
2040年の日本が舞台。自動運転や店舗の無人運営が可能となり無職の人が増えてしまう。さらに、大きな地震や富士山噴火によって荒れ果ててしまう。
そんななか、主人公のユキは義父に騙されて代理母を引き受けてしまう。16歳、未婚、恋愛すらした事ないのに。逃げなければ何度も代理母をさせられてしまうってとこから始まります。
不妊治療、代理出産、結婚、未来の日本について考えるきっかけとなりました。
Posted by ブクログ
設定は2040年の日本。
相継ぐ災害で荒廃した東京。
お金持ちは安全な地方へ移動し、空いた場所に貧困層が住み着く。
格差は激しくなり、お金を得るために義父はユキに代理母をさせる。
義父は働かず、ユキの代理出産で稼ぎ続けようとしていた。
たまらずユキは幼なじみのミチオと逃げ出す。
そして、どうにか自分達で稼げるビジネスはないかと考えた結果、なんと代理母ビジネスを始める。
あんなに嫌悪していた代理母をユキはなぜビジネスにしたのか。
今後の日本の姿を浮き彫りにするような展開にいろんなことを考えさせられる。
2025.10.16
Posted by ブクログ
義父に代理母をさせられたユキは幼馴染のミチオ、女医の芽衣子らと共に代理母ビジネスを始める。最初は「お金持ちになりたい」一心だったユキだが…そのうち女性を貧困から救う事に目覚めてゆく。最後は義父も死に母や兄弟達も一緒に代理母ビジネスを進めていく大団円に。近未来の設定だが制度や風潮の始まりは現在以前に起因するという、警鐘的な物語。
Posted by ブクログ
いつもの垣谷さんの作品は、現代の様々な社会問題をユーモアを交えて物語にしてくれますが、本書は課題を題材にすれどもあまりユーモアはなかった。
けれど、自分が知らなかっただけで、このような事は現実に存在するだろうし、今後ますます増えて行くんだろうなと勉強させてもらった。
最初は暗い話で読み進めるのが辛かったけど、だんだん好転していき、最後にはみんなが幸せになる。
後半はページをめくる手が抑えられませんでした。
Posted by ブクログ
タイトルと裏表紙のあらすじで衝動買い。垣谷美雨さんの本はたぶん3冊目だけど、時代?が未来のお話というのが初めての設定だった。
時代以外の代理母のストーリーはあまり違和感なく読めたけど、どんな結末になるか予想ができなくて、最後に話が動いた時には驚いて一気に読んだ。
また違う本も読みたいです。
Posted by ブクログ
政治家に読んで欲しい!
本当にこんな世界が近い将来訪れる気がしてならない。とてもリアルなストーリーだった。
日本の少子化対策、もっと国民や若者、子供が欲しい人たちに寄り添ったものになることを願います。
自分たちの利益ばかりに目が眩む政治家がいなくなることを願います。
Posted by ブクログ
近未来の設定で物語は始まるのですが、何とも想像し難い設定で、物語を読み進めている間も、あれ?現在のこと?やっぱり近未来?と何度も思考が行き来して、なかなか内容がしっくりと入って来なかったのですが、端的にまとめると、近い未来、日本も今のような日本ではなくなってしまっている可能性があり、混沌とした世の中にあって、子供が欲しいと思う様々な状況の人々の代わりに、ギブアンドテイクの精神で、自らのお腹を他人に貸し、それにより生計を立てる女性が多く出てくるという話で、代理母という仕事が、世間一般にも広く浸透し、女性が自ら生計を立てる上でも、重要な役割を担う仕事になるのではないかという、新たな社会の在り方を提示した小説であるということではないかと思いました。