旅行記としても読めるし、さすがに作家だけあって時代の流れをスマートにまとめた歴史解説書としても読めるし、サブテーマ的な扱いではあるものの、各国の料理文化、そしてイスラム圏を見る際に避けて通れない酒と人々との関係について知る文化紹介本としても読める、かなりお得感のある本。
一章でひとつの国を扱っているので、自分の興味のある国だけ読むのも好いですが、著者がスタート地点と決めた国からどんどん西に移動していて、その訪問順を崩さずに章立てされているので、最初から順繰りに読んでいくと、著者と同じ視点でイスラム巡りをすることができ、「前に○○を訪れた時はこう違う」なんていう記述にも戸惑わずに済みます。
ネタ色の強い紀行文としては宮田珠己氏の著作が好きなんですが、あれはあくまで「宮田氏だからこそできること」であって、常人にはちょっと真似できない、というか真似したくない旅行も多々含まれてます。
そこからいくと、この本で描かれている旅行は著者が50代になってからのものということもあり、無理せず旅行会社が組むツアーなどに申し込んでいる、いわば「正攻法」で訪問するパターンなので、参考になるところも多いんじゃないかと思います。
ホントは☆は5つでも好かったんだけど、タイトルにせっかく「夫婦で行く」とあるのに、旅のパートナーである奥様との会話や旅先でのエピソードがちょっと物足りなかったので、その点だけマイナスにしました。
でも、これからこの本で取り上げられている国に旅行する予定があるなら、お供にして損はないと思います。
唯一、この本のせいではなく残念なのが、ここで取り上げられている国のうち、シリアやイラン、レバノンなどには治安の問題で今は行きにくくなってるんじゃないかということ(著者が訪れているのは2000年代初頭、今から10年近く前)。国際情勢次第で、昨日まで行けたはずの国に行けなくなる可能性があると思うと、思い立ったらとりあえず行っとけ、という行動力が必要なんだな、と、本と関係ないところでしみじみしてしまいました。