清水義範のレビュー一覧

  • 学校では教えてくれない日本文学史

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    日本文学の歴史をざっくりと知りたいなー…と思い見つけた本作。

    いやー、めちゃくちゃ分かりやすくて良い本だったな(笑)
    大枠で流れを掴みたいって目的にビタっとハマってる感じ。

    YouTubeとかで調べてみたりもしたけど、本業で文学に携わられている方の本の方が情報量があるし、分かりやすくて理解が早かったように思う。

    以下、本作の内容+自分の解釈&補足も入れて分かりやすいようにまとめる。

    あとは、コレを軸にして各作品を実際に読みながら理解を深めて行こうかね…(´∀`)

    <まとめ、考察>
    ・奈良時代、712年、古事記、太安万侶、現存最古の歴史書、神話と伝説と歴史をごちゃ混ぜにして聖徳太子までを描く、女性っぽいと評される日本文学の中では骨太な本、筋・ストーリーがしっかりしている、自分たちの民族がどのようにして生まれて文化を築いてきたかという神話を持っていることは自信と余裕に繋がる

    ・平安時代、1008年、源氏物語、紫式部、世界的に見ても見事な構成と完成度、光源氏のモテモテ長編小説、この時代に昼ドラもビックリの骨太&ドラマチックなストーリー構成が魅力、自分の父の妻と密通し罪の子をなす、そして最終的には自分も同じ目に遭う、等々

    ・また、源氏物語では男女が短歌のやり取りをするのが特徴、短歌のやりとりは現代で言うメールのやり取り、日本人はメールが好きなのはここを起源にしているのではないか、確かに分かる気がする(笑)

    ・平安時代、1001年、枕草子、清少納言、日本第一号の随筆であり、今で言うエッセイ、思いつく端から美的センスの見本帳のような作品、以後の日本のエッセイもこの祖に強く影響される、筆者曰く随筆とはセンス自慢らしい(笑)

    ・鎌倉時代、1212年、方丈記、鴨長明、日本第二のエッセイ文学、主題を「人の世は無常であり、はかない」としそれを伝えるために全体の構成が組まれる、世の中は儚いので世捨て人の生活(今の自分の)が幸せなのでは?的な作品

    ・鎌倉時代、1310年、徒然草、吉田兼好、おっさんが思いつくままに世間をボヤくスタイルで書く、現代のエッセイの方向性を決めたのは本作、今で言う「喝」的なやり口(笑)

    ・鎌倉時代、1240年、平家物語、琵琶法師が語ったものをまとめたもの、日本の二代軍記文学の1つ、一度は反映した平家一門の滅びを描きながら、滅びの美と悲しみを主眼としてストーリーを展開する

    ・室町時代、1370年、太平記、作者不明、日本の二代軍記文学の1つ、エネルギッシュな勧善懲悪の大衆劇

    ・江戸時代前期、1702年、奥の細道、松尾芭蕉、日本の紀行文学の最高傑作、紀行文であると同時に、俳諧の神髄にまで読み手を導く芸術論の書でもある

    ・江戸時代前期、1682年、好色一代男、井原西鶴、「一般人が主人公」の恋物語を始めて書きコレが大衆文学の走りに、今までは上流階級のものだった文学が初めて町人という一般人にも親しまれるようになった時代、そういった意味で「大衆」が付く、「源氏物語」をパロディーしている

    ・江戸時代前期、1703年、曽根崎心中、近松門左衛門、歌舞伎と浄瑠璃で厳密に言うと小説では無い、井原西鶴と同じく一般人が主人公を描いたという点で大衆文学の走り、ちなみに浄瑠璃は人形劇

    ・江戸時代後期、1802年、東海道中膝栗毛、十返舎一九、滑稽本、旅行記だが言葉の悪ふざけを楽しむ、軽薄な江戸っ子の主人公二人が、まるでゲームのように洒落や皮肉や掛け詞で遊んでいる様子を笑って読む本、日本初の職業作家、著作料だけで生計を立てたプロ作家

    ・この時代、洒落本(遊里でモテるためだけのハウツー本)が流行ったらしい、いわゆる現代のホットドッグプレス(もはや死語)的な存在か、そんな本があったこと&時代が変わっても人間が考えることって変わらないんだなと思うとウケる(笑)

    ・明治時代、1887年、浮雲、二葉亭四迷、写実主義、言文一致(今まで異なるものであった文語と口語を一致させた文章で小説を書きましょう)の活動の走り、坪内逍遥も同様、小説家になると父に告げたときに「くたばってしめえ」と言われてことに由来にこの名前になったとのこと

    ・明治時代、1905年、吾輩は猫である、夏目漱石、反自然主義、この人物が現代の文章を完成させた、司馬遼太郎曰く「一つの文章で日米貿易摩擦についての社説を書くこともできれば、自分の感情を小説にすることもできる」とのこと、1905年の小説が現代語訳無しで今の中高生が笑って読めるという事実は驚異的なこと、「だ」、「である」体の確立、江戸は町人文化、今まで学がなかった人にまで文学が広がったことが大きい、明治は質へと移行した

    ・明治時代、1890年、舞姫、森鴎外、ロマン主義、もう一人の明治の大文豪、軍医としても活躍、和文調と漢文調をミックスした雅文体と呼ばれる知的で美しい文章、筆者曰く「真面目すぎる」作家らしい、後半の作品は難解過ぎてなかなか売れなかったらしい(笑) 

    ・明治時代、理想主義+ロマン主義、理想主義は樋口一葉・幸田露伴等、ロマン主義は森鴎外、登場人物みんな善が理想主義、みんな善では無いけどロマンがあるのがロマン主義

    ・明治時代、蒲団等、国木田独歩、田山花袋、島崎藤村、自然主義・私小説、漱石&森鴎外の逆を行く自然主義・私小説の台頭、偉いエリート作家が逆に本音を晒して告白するという形が「これが人間の真実だ、文学とはこういうものなんだ」というカタチで一部にウケる

    ・明治時代、1910年、雑誌「白樺」の白樺派が台頭、武者小路実篤、志賀直哉等、学習院卒のおぼっちゃま文学、生きるってなんだろう?を問うた文学、筆者曰く、文章は美しいが思想が無い、世間とかけ離れている、根底に優越感を持っている男の苦悩には説得力がない、とのこと(笑)

    ・明治、大正時代、1915年、羅生門、芥川龍之介、新思潮派、「新思潮」は東大のインテリ集団の作家志望の学生による雑誌、今昔物語集のように、本歌取りの形式で小説にすることが多い、時が流れても古びることのない、ある種の永遠性を持った作家

    ・明治、大正時代、1925年、痴人の愛、谷崎潤一郎、耽美派でエロい、変態だけど圧倒的な筆力、そして文章の美しさを持った偉大な文豪、根本は母恋しの自信家で女性崇拝を一生描き続けた、筆者は無類の谷崎潤一郎ファンらしい(笑)

    ・明治、大正時代、1926年、伊豆の踊り子、川端康成、新感覚派、日本初のノーベル文学賞作家、と同時に超変態、伊豆踊り子はロリコン文学、東大の教養課程に通う主人公が14歳の旅の芸人一座の踊子にハマるという話、筆者曰く「谷崎は自分の嗜好を絢爛たる物語にして読者をそこに引きずり込んだ、川端はなんとなく美しい物語になっているのだが、何をよしとしているかどうもよくわからん」とのこと(笑)

    ・特に明治時代は「〜派」が色々と登場してくるけど、ざっくり分けると「理想を描く派」と「現実を描く派」があるという理解で良いような気がする

    ・昭和時代、1929年、蟹工船、小林多喜二、プロレタリア文学の台頭、筆者曰く「労働者のための運動の一環としての文学、政治パンフレットは文学ではない」とのこと(笑)

    ・昭和時代、1948年、人間失格、太宰治、無頼派、私小説を新たな地平にまで高めた人、女性的な文体、文章の名人であり、どんなことでも物語にしてみせる才能、ただ繊細すぎる神経のせいで書けることが限られており、生涯にわたって巨大なきまりの悪さを抱いて生きた人

    ・昭和時代、1956年、金閣寺、三島由紀夫、戦後最大の文豪、天才の文学、技巧と修飾性に満ち満ちている、金閣寺は作品としても圧倒的

    ・筆者曰く、日本文学は私小説のルートに入ってしまっただけに、世界とは少し路線の異なるルートをたどって気しまったのではないか、とのこと

    ・昭和時代、戦後、1955年、太陽の季節、石原慎太郎、芥川賞を受賞して社会現象に、有産階級の青年のニヒリズムと性を描く、不良の文学だと非難する保守派もいたが、圧倒的に新しいという価値もあった、兄の石原裕次郎がその小説を映画化した作品でデビューしたことでも有名、太陽族もここから

    ・昭和時代、戦後、1958年、飼育、大江健三郎、こちらも芥川賞、大いに寓話的であり、奇妙なビジョンに満ち満ちている、きらびやかなフィクションに見えるが、元は私小説、世界に通用する形で語られた日本独自の世界に通用する私小説

    ・昭和時代、戦後、井上ひさし、直木賞でスタートした作家、日本文学史に大きな足跡を残した人物、小説も有名だが人形劇「ひょっこりひょうたん島」の脚本家としても有名

    ・昭和時代、戦後、 1979年、風の歌を聴け、村上春樹、翻訳小説のような文体で、サブカルチャーのように身軽に、心地よい夢のような小説をつむぎ出せる、ノルウェイの森の売れ方は昭和末期の事件のようですらあった、売れ方が文学的現象というよりも大きな社会現象レベル

    ・丸谷才一曰く、日本文学は伝統的に3パターンがやって来ている、今の作家に当て嵌めると、実験的に新しい文学を模索しているのが村上春樹であり、私小説をやっているのが大江健三郎であり、プロレタリア文学をやっているのが井上ひさし、とのこと

    ・主に純文学の系譜であったが、大衆文学も価値があるものであり、その中でも時代小説(歴史物)、推理小説、SFについて言及する

    ・歴史物には2パターン、時代小説と歴史小説、時代小説は「侍のいなくなった明治時代以降に、侍のいた時代を舞台にして書かれた小説」、歴史小説は「歴史上の実在の人物を主人公にして、その業績や運命を描くもの」

    ・司馬遼太郎、歴史小説を確立した国民的作家、竜馬がゆく、坂の上の雲等、だんだんに日本のあり方を考える文化人のような感じになっていった人

    ・推理小説、ジャンルを確立したのはアメリカの作家、エドガー・アラン・ポーの「モルグ街の殺人」、日本だと江戸川乱歩が確立、推理小説の定義は江戸川乱歩曰く「主として犯罪に関する難解な秘密が、論理的に、徐々に解かれて行く経路の面白さを主眼とする文学」、明智小五郎を誕生させたのもこの人、本格物と俗物者両方を書けた人、推理小説が今もこの2パターンあるのはこの人の功績なのかもとのこと、ちなみに戦前は「探偵小説」だったが、常用漢字の中に「偵」の字が無かったので変更された、超能力系は「論理的に」に反するのかと

    ・推理小説、松本清張、「社会派推理小説」を確立して推理小説を広く大人の読み目にした、単なる謎解きだけの推理小説ではなく犯罪の背後にある社会のゆがみや人間の欲望をさらけ出す手法

    ・SF、サイエンス・フィクションの略、空想科学小説と訳される、柴野拓実が日本SFの母

    ・筆者曰く、世界文学集に入れると5人選ぶとしたら、紫式部、夏目漱石、井原西鶴、谷崎潤一郎、大江健三郎、とのこと

    ・古典を読むのは良いが、いわゆる「現代語訳」ってのは当然文章が変わってしまっているわけなので、ちょっと意味合いが変わっているのかな?という気もした、文の美しさとかは分かりにくいのかなと

    ・当たり前だが、この本も作者の好み・思惑が入っているので、コレ以外にも情報を仕入れながら+自分の感覚で確かめて行った方が、全体をフラットに理解できる気がした

    ・筆者の好み(というか今まで読んできた作品に)により、女性の文学はほとんど入っていないとのこと(笑)

    ・読みたくなった作品は、源氏物語、枕草子、徒然草、奥の細道、好色一代男、吾輩は猫である、痴人の愛、伊豆の踊り子、金閣寺、飼育、あたりかなぁ…

    <内容(「BOOK」データベースより)>
    「祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。娑羅双樹の……」「つれづれなるままに、日くらし、硯にむかひて……」など、授業で暗記させられた人も多い名作の数々。
    これら日本文学を一冊で語るなど、到底不可能な話なのだが、本書はそれを思い切ってやってしまおうというもの。
    『古事記』は日本人の原型の文学、敬語表現で書かれている『源氏物語』の不思議、『徒然草』はジジイの自慢話!? 紀行文学は悪口文学、漱石は現代の文章を創った、川端康成は変態作家? など、『古事記』から村上春樹まで日本文学史をザックリ大づかみ。
    その作品を読んだことのある人にとっては、あそこは面白かった、と合点してもらえる、読んでいない人にとっては、そんなにいいのなら読んでみようかな、という気がしてくる、日本文学の入門の入門書。
    清水流、絶対眠くならないエンターテイメント日本文学史12講義。
    『身もフタもない日本文学史』を再編集。

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    2021年09月14日
  • 陽のあたらない坂道

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    人間の歴史は偉人だけにより作られているのではない。
    偉業を成し遂げた人の影にはもうちょっとだったのに惜しくも有名になれなかった人がいっぱいいるだろうし、その人たちの周りには普通の人たちがたくさんいるんだ。
    人の歴史とはなんでもない普通の人のなんでもない人生の積み重ねでできているんだろう。

    ということで、歴史的偉業を成し遂げ名前を残した人たちの後ろにいたであろう、「すごいのに惜しい!」な人たちの人間臭さや面白みをお話にしようとしてみた、という短編集。


    アッシジは狩りも下手で力も弱く間も悪い。大平原でそれぞれの役割をして行きているこの一族でこんな男を喰わせる理由がるのか?
    「ある。おれは話ができる」
    こうして太古の人類に語り部が生まれた。
    人は物語が必要なのだ。空想の主人公の冒険、悲恋、苦悩、成長を我が事のように捉えるという精神の活動が人間の生活の彩りに必要なのだ。
    あっという間にアッシジは締切に追われて出版社にカンヅメにされる大人気作家状態!これでは物語を細かく練ったり深みを持たせたりできないじゃないか!
    そんなある日旅回りの老人語り部が現れる。老人の語りにアッシジは心を奪われた。これこそまさに人間の脳が求める思考、生と死と、自由と限界と、善と悪と、存在と無とを併せ持った大いなる傑作だ!
    こうしてアッシジは、ベストセラーで薄利多売の大衆作家から、人間の哲学、神と自然について思考を巡らせるような語りをするべく、放浪の旅に出たのだった。
      /『喰わせる理由』

    錬金術師っていうのは決してマッド・サイエンティストなんかじゃなく、科学者であり哲学者であり医者であり魔術師でもあったんだよ。だから当時は尊敬され社会的地位もあった。
    そんななかでイマイチ功績も名前も上がらないキルトゥテスという錬金術師がいた。
    彼の考えや実験は悪くはなかった。他の錬金術師に否定されても次々に研究や実験を重ねていった。実はキルトゥテスの実験は、核融合とか核分裂とかの域にまで達していたんだよ。そしてついにある日、家を貫いた稲妻が常温核融合を起こし、本物の金を造り出すことに成功したんだ!!今日に至るまで人類史上ただ一人の偉業!
    …なんだけど、稲妻で機械は大破しちゃったし、稲妻という偶然は二度と起きないし、だから誰も信じてくれないし、功績も名前も残せなかったんだよ、ちゃんちゃん。
      /『錬金術師』

    ウィリアム・フェアチャイルドはイギリスからインドに渡り商売で大儲けしようと夢を膨らませていた。
    フェアチャイルドには冒険心があるし、無茶無計画を実現させる運もあるし、巨万の富のためならどんな苦労も厭わない根性もあった。だからマレー半島にもインドにも着いて現地の人との交流もできた。
    しかし彼は決定的に商才も先の見通しも味覚もなかった。だから腐る果物をイギリスに持ち帰ろうとしたり、イギリス商会を敵に回すような作物を大量に持ち帰ったりしちゃったんだよ。
    こうしてフェアチャイルドのインドとの功績は闇に葬られたのでした。イギリスが東インド会社を設立してインドと公益というか利益吸い取りをするようになった1600年よりも前にインドで商売したっていうのに。
      /『ロンドンの商人』


    「まったくお隣は真面目に働くがただそれだけで、正室の他に側室を持つ甲斐性もないし、目立った働きもしてないし、とても大将の器ではない。まあご正室のまつ殿だけがお隣の利点ではあるなあ」
    織田家から羽柴秀吉の与力として働く船戸吉右衛門持義は、屋敷がお隣の山内一豊をこう評している。
    確かに船戸のほうが理知的だし全体を見通す力も持っている。だが彼が自分より格下だと思っている山内一豊は、とくに大功績があるわけでもないのに自分よりも石高が上がってゆくではないか。
    ここは一世一代の賭けに出るか…。
      /『山内一豊の隣人』

    著者の清水義範が、「ものすごく立派な功績を残しているのに発表しなかった、あまりにも内気で研究だけが大好きな科学者」のヘンリー・キャベンディッシュを知ったときに、世の中には面白い人間がいるもんだなあと感じたという。
    そこで「ものすごく立派な科学発明をしたけれど、楽しみでやりたいから発表しません」という、青年貴族科学者の物語を書いた。
    この青年貴族科学者は「自分の発明品が有名になり自分の名前が知られるくらいなら、発明品を壊します。私は平穏な生活がしたいんです」というし、相手から「その発明品で人類が助かるかもしれないのになぜみんなに知らせないのですか」というと「科学というのは、これまでの積み重ねのうえに、後から考えれば誰にも納得がいくような一工夫が加えられて新発明になります。つまりそういうものが発明されるのは歴史の必然であり、どのみち誰かが同じことをするでしょう。私がそのわずらわしい役を降りたとしても、すぐに誰か他の人が同じものを作りますよ」(P161から抜粋)と言う。
    清水義範さんの気持ちは青年貴族科学者の言葉に出ているのだろう。
    「表に出てこない歴史の裏に、人知れず何かが埋もれているというのは夢多き話ではありませんか」(P166)
      /『沈黙の先駆者』

    1927年、世界で最初にパリ・ニューヨーク間の無着陸飛行成功者への賞が発表された。
    勇み立ったのは日本人飛行士の飛田鉄之助。
    彼は腕も良いし小柄だが度胸もよく人からも好かれる。だが日本人が飛行機を動かせるわけないと、飛行会社では地位が低い。
    それなら日本男児としてこのレースで優勝してやろうではないか!
    外交的に気まずい中国人から大金を出してもらい、節約のためにエンジン廻りは和紙を使い、計器不足は大和魂と心眼で乗り切ってやる。成功を確信していた。自分が失敗するとすれば、パリという都市がこの世に存在しないということだけだ。人に先んじるために危険な夜中にNY空港を飛び立った彼は、40時間の飛行を乗り切り陸地へと降り立った!
    しかしそこはイギリスでもスペインでもフランスでもなく一面の砂漠。…え?サハラ砂漠?
      /『翼よ、あれは何の灯だ』

    1969年にアポロ11号が月面着陸し、ニール・アームストロングと、エドウィン・オルドリンの二人が月面に降り立った。
    二人?そう、この栄光のときに母船のコロンビアでお留守番していた三人目の宇宙飛行機、マイケル・コリンズがいるんですよ。
    実際のマイケル・コリンズ別に拗ねることもなくその後の立派に働き、宇宙へも啓蒙書を出版もしている。
    そこで清水義範さんが、「どうやって決まったのかな、宇宙飛行士たちはどんな気持ちだったのかな。そして有名な二人だけでなくもうひとりの人間がいた事を思い出してほしいな」と思って、架空の名前と出来事で小説にしてみたという一作品。
      /『グレート・スタッフ』

    老人ホームでの大晦日。帰る場所がなく正月もここで迎える一人の老人がいろいろなことを考えたり、ちょっと過去を振り返ったり、でも亡くなった奥さんのことを思い出していい気分になるお話。
    この世をつくているのは偉人だけでなく、ごくごく普通のなんてことのない人たちであり、その人生の積み重ねが人類の歴史を作ってきているのだ。
      /『除夜の鐘』

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    2021年04月26日
  • 大人のための文章教室

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    パスティーシュ(文体模写)の名手・清水義範さんが書いた、万人向けの文章指南の本。

    文章の基本から、手紙・実用文の書き方、紀行文・随筆の書き方まで、具体的なコツが書かれています。

    文章を書くときは読み手を意識しないと、うまく伝わりません。伝わる文章を書く際に気をつけるべきことは何かを、本書は教えてくれます。

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    2019年03月05日
  • 大人のための文章教室

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    さすが文章教室と銘打っているだけあり、文体が軽妙で分かりやすい。けっしてアカデミックではなく文章作成ワンポイントエッセイ的内容で読みやすい。
    ≪著者の言う、文章を書く時の二つのバランス≫
    ①言いたいこと、伝えたいことが曇りなく読み手につたわるかどうか。
    ②この文章を書いている私が利口そうにみえるかどうか。
    …
    美しい日本語として紹介されている谷崎純一郎、丸谷才一を読んでみたくなる。
    『品格のある文章を書く人というのは、人間性に品格があるのだと思う。知性があり、人格に嫌味なところがなく、利口ぶろうとするところもなく、純粋に感動できるという人が、素直に文章を書くとそこには品格がにじみ出るのだ。』
    ということで小生には品格のある文章を書くことはどうやら無理のようだ。

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    2018年10月21日
  • ザ・対決

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    さすがは清水義範、面白すぎる。後書きにあるように、色んな物を対決させたらどっちが強いのか?と言う発想は子供っぽいが皆が一度は考えてみる普遍的な問であり、そこを清水流にたっぷりのユーモアで包みながら大真面目に取り上げている。またやって欲しい企画。編集者グツジョブ!

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    2016年10月12日
  • わが子に教える作文教室

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    例文も含めて、相変わらず面白いです。でも、ふと振り返ると、子どもの社会認識とは?とか、人間にとって自己表現とは?といったことまで考えてしまったり。何はともあれ我が子の文章、いいところをほめていってあげようかなぁと思いました。

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    2014年09月17日
  • 蕎麦ときしめん

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    パスティーシュ小説で一世を風靡した清水義範氏の昭和58年から61年にかけて「小説現代」に掲載された短篇集です。パスティーシュの名を決定づけた「猿蟹の賦」や、ある意味その後の名古屋人論に決定的な影響を与えた「蕎麦ときしめん」等が収められています。

    「猿蟹の賦」や「商道をゆく」は、一行読んだだけで司馬遼太郎の模倣だってわかります。「蕎麦ときしめん」は山本七平の模倣ですね。

    ある意味、被模倣者への著者の愛情を感じますね。

    蕎麦ときしめん◆商道をゆく◆序文◆猿蟹の賦◆三人の雀鬼◆きしめんの逆襲

    著者:清水義範(1947-、名古屋市天白区、小説家)
    解説:景山民夫(1947-1998、東京、小説家)

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    2018年12月03日
  • どうころんでも社会科

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    国語にせよ英語にせよ、こういう視点で学校の科目をとらえていたなら勉強にもう少し打ち込めたかなと思わせてくださる。まぁ言い訳だけど。地理と歴史と公民がリンクしているって、確かにあたりまえなんだけれど、学生時代、いやこの本を読むまでそんな感覚はなかったものなぁ。

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    2014年08月24日
  • 学校では教えてくれない日本文学史

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    『古事記』にはじまり『源氏物語』『枕草子』『方丈記』『徒然草』『平家物語』『太平記』それぞれの持つ意義、魅力について著者独自の視点で伝えてくれる。

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    2014年02月28日
  • 行儀よくしろ。

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    学力では測れない、知力、立ち居振る舞い。
    そんなものの方が、とても重要で、しかも社会にとってもとても良いんだと
    いうこと。
    皆がわかっていても言わないことをきちんと述べてくれている。
    社会の、文化のセーフガードとして、こういう本はとても大切な気がしました。
    社会の教育力。文化の教育。

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    2014年01月11日
  • 大人のための文章教室

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    文章をうまくかけるようになりたくてこの本を読んだ。

    読み始めてみるととにかく文章が面白い。文章を書くということでここまで面白い本になるのかと信じがたいくらいに面白い。
    そのおかげで、文章を書くということは面白いのだと認識することが出来た。

    そもそも文章をうまく書きたいとは思っているものの、それ自体にあまり面白みを感じていなかったのだと思う。ここまで文章を書いてみたいと思ったのは初めて。

    すこしずつ文章を書いていこうと思う。

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    2014年01月08日
  • ことばの国

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     テーマが「言葉」(清水文学の真骨頂!)で、装丁が南伸坊で、解説が宮部みゆき……最高の組み合わせの一冊! 三者とも、素晴らしい仕事をしている。

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    2014年01月06日
  • 金鯱の夢

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     清水義範の名古屋もの入門その3。もしも北政所に秀吉の嫡子ができていたら? 豊臣家の名古屋幕府の統治のもと、名古屋時代が花開く!
     日本史の謎のひとつである明智光秀の謀反の理由についての清水説、案外本当だったりして?! それが直接の理由ではないにせよ、光秀の心情の根っこに、ああいう気持ちがあったことを否定できない気がする。

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    2014年01月06日
  • はじめてわかる国語

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    清水さんに国語を習いたかった。。
    子供ができたら作文教室に通わせたい。。

    ●日本語の文化、歴史
    ●無アクセント化
    ●言う→ゆうについて
    ●ローマ字が使われることになった理由

    など、おもしろく&わかりやすく書かれています。

    「言語能力が高くなれば、思考力がつくことになる。
    人間を理解し、世界を認識することも、
    言語能力あってのものである。」

    国語の先生は責任重大ですねぇ~。

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    2013年03月20日
  • 迷宮

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    ネタバレ

     1回目に読んだ時は皆さんと同じようにオチが???でした。ただ、あの清水義範がユーモア抜きに書いているんだから、何かあるはず。と思い、解説をよく読んで、本文を読み返しました。
     はじめは『八つの異なる文体を用い、様々な角度から読者の前に提示してみせる。』これが清水義範がやりたかったことか?とも思いましたが、しばらくして壮大な仕掛けが隠されているのに気付き、何回でも読み返したくなる衝動に駆られました。これは作者による300ページにわたる大実験といっても良いかもしれない。

     『犯罪報道における「事実」とはなにか。人は、自分に理解できる「事実」を捏造し、勝手に理屈を付けたがっているだけではないか。人間の行動には、言葉では説明できない部分がある。人の心の奥底にある真相は、他人にはそう簡単に、わかるものではない。にもかかわらず、それを言葉にするのが作家の使命である。』この大命題に作家清水義範は挑み、そして読者に問いかけます。『なぜあんな異常な殺人をしたのかの理由も、世界中できみだけはちゃんとわかっているんじゃないかい』清水義範が用意した八つの資料を読んで、井口克巳がなぜ藤内真奈美を殺害したのかの理由が頭に浮かべば、清水義範による『実験的な治療』は成功したと言っていいのかもしれません。

     国際的な政治駆け引き、恋愛における温度差、ビジネスマンの社内外での評価、、、などを題材にこの手法を使った内容の違う本が生まれても面白いかもしれない。などと読後の勝手な想像は尽きません。

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    2013年01月29日
  • 深夜の弁明

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    いくつか「普通だなあ」というのがありましたが、それもよく考えると視点が作者ならでは。「解説者たち」「コップの中の論戦」「欠目戸街道を辿る」が好きです。

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    2013年01月04日
  • 大人のための文章教室

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    内容に刺激されて、文章が書きたくなった。このレビューも少しはましに書けるようになりたいと思うようになった。恐れず、いろいろ書いてみよう!

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    2012年10月01日
  • 身もフタもない日本文学史

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    清水義範(しみずよしのり:1947年生まれ)による日本文学史をユーモラスに語る書。

    若手作家が奇を衒って書いたものとは違い、案外と深みのある考察だ。

    ページの多くは古典に割かれている。
    源氏物語、短歌、枕草子、方丈記、徒然草、平家物語、太平記、・・・

    文学のみならず、そレヲ書き上げた作家にも言及してある箇所もあり、楽しめる。

    日本文学史をざっと楽しく読み通すには非常によい書だと感じた。

    こんなおじいちゃん(清水さんに失礼かな・・・)が身近にいると、読書も楽しめるんだろうな!

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    【目次】
    雑談1 「源氏物語」のどこが奇跡か
雑談2 短歌のやりとりはメールである
雑談3 エッセイは自慢話だ
雑談4 「平家物語」と「太平記」
雑談5 紀行文学は悪口文学
雑談6 西鶴と近松―大衆文学の誕生
雑談7 「浮世風呂」はケータイ小説?
雑談8 漱石の文章は英語力のたまもの
雑談9 みんな自分にしか興味がない
雑談10 エンターテインメントも文学の華
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    2012年04月15日
  • 陽のあたらない坂道

    Posted by ブクログ

    歴史の日陰物語を集めた短編集。
    それぞれの話で、とうとう陽の目をみなかった日陰者を軸に展開していくのだけれど、その話毎に「日陰者」の種類がバラバラで面白かった。悲劇ではあるものの、清水先生の書き方がユーモアに溢れていることもあって涙がちょちょぎれるということはない。ただ、その人物達の情緒が面白い。

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    2012年04月10日
  • 12皿の特別料理

    Posted by ブクログ

     料理をテーマに12編の悲喜劇を書き綴った短編集。
     作る過程もしっかり記されていて、作る際の参考にもなります。

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    2012年03月07日