福澤徹三のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ彼女と同棲していたU。平和に暮らしていたが、徐々に険悪な雰囲気になってきた。そして、ある日大喧嘩をしてしまい、勢いのまま彼女が家を飛び出してしまった。なかなか帰らない彼女を心配しつつ、家で待っていると、憔悴した様子の彼女が帰ってきた。
***
実話怪談本。この作者さんの実話怪談は何冊目だろう。さっくり簡潔に読める長さの怖くて不可解な話が40編。 怖いよりは不思議、という話もあり、恐怖度はまちまちだが、これが誰かの日常の中で起ったかと思うと鳥肌が立つ。私は体験したくないとゾッとした。
そんな中でも特別に怖いと感じた話は、「失踪」、「霊安室」、「S霊園」。 「失踪」はフリーターであるUという人物の体験談。看護師である彼女と同棲していたUであったが、自分がフリーターであるせいで、彼女に生活費やその他諸々をねん出してもらっていた。はじめは、悪い顔をしなかった彼女であったが、仕事の疲れなどが蓄積してきたのか、フリーターであるUと険悪な雰囲気に。そして、ある日大喧嘩をしてしまい彼女が出て行ってしまった。酒の勢いで絡んで彼女と喧嘩してしまった事を反省し、帰りを待っていたが、それから何時間しても帰ってこない。夜になってやっと帰ってきた彼女を迎えつつ、どこに行っていたのかを問うと彼女は「何も覚えていない」の一点張りであった。 これはなかなか不可解な話。小説にある信用できない語り手の話を読んでいるような感覚に陥った。Uは自分の体験したこと、彼女が帰ってきたときの様子などををあったままに語っており 彼女が家を完全に出て行った際、残された彼女の書置きの所為でその部分に対しての信頼が揺らいだ。語っているU自身も書置きを読んだせいで、あの日彼女が「何も覚えていない」といった事は自分がどこかで都合のいいように解釈した偽の記憶なのではないかと、自分の記憶を疑うように。 彼女の書置きを信頼するならば、どこからがUが作り出した妄想の記憶なのだろう。喧嘩して、彼女が出て行ったあとUが彼女に何かをしたのかもしれないが、彼女がすでに去った後となってはわからない。
「霊安室」は特養の施設に備え付けられている霊安室で起った怪奇現象。深夜、夜勤をしていると突然霊安室からコールがなる。そこには亡くなった方の遺体が安置しているだけで、誰もいないはずなのに。上司からは深夜になるコールは故障だからといわれていたが、中に誰かが迷い込んでいる可能性もぬぐえない。無視をして何かがあってはいけないからと、いやいや確認に行くことに。霊安室の中に入ると、やはり遺体があるだけで誰もいない。気持ちが悪いので、事務所に帰ろうとすると、なぜか線香が灯してあった。無人のはずの霊安室からコールが鳴るという時点で、読みながら勘弁してくれ……。といった心境。どうしたって行った先で変なことが起こるに決まっているのだ。そしてやはりいざ見に行ってみると、誰もつけていないはずの線香がついている。線香を立てるのは弔いのために必要だとは思うが、一体だれがそれをやったのか。コールを聞いてやってきた職員と、その職員に呼び出されて霊安室に来た職員は身に覚えがないのだから、それ以外の人物がやったのは間違いないが、じゃあ誰かと聞かれると、幽霊か安置されている遺体のいずれかという事になるのでは?線香が灯されている光景も異様だし、それを誰がやったのかと考えるとさらに異様。読んで想像して背筋が寒くなった。
「S霊園」はこの本のタイトルとなっているだけあって、様々な話がこの一編に詰まっていた。どの話も怖かったが、曰くのある廃車の話が個人的にダントツ。不慮の事故で壮絶な死に方をしてしまった人間が乗っていた車とのこと。車体は非常にきれいなので清掃されて一度は売りに出されたが、買い手が次々に変死してしまい業者がS霊園の近くに放置。しかし、脅威はそれだけにとどまらず、なんと触れただけで急死してしまう人間まで出てきた。明らかに車の持ち主の祟りだと怖がった地元住民は、車の上に神社の社のような屋根をしつらえ、しめ縄を渡し、祀ることにしたが……。 一番最初に亡くなった持ち主はかなり気の毒だが、その後そんな死に方をした人間が乗っていた車を売りに出すとかどういう神経?普通は廃車だと思うが。変に車が綺麗だったせいで、欲が出たのかもしれないが、結果何人も変死してしまっている。完全にとばっちりを食らった変死者達は気の毒すぎる。あと、触っただけで人が死ぬというのは、どれだけ呪いの力を持っているのだろう。一番最初に死んだ人間の念がこもっているのか、それ以前になにかあったのか。この車自体に最初から曰くがあってが様々な死をもたらしている気もする。最後は業者が撤去したとの事だが、よく業者が請け負ってくれたし、何も起こらなかったな……。怖いものは祀ってしまう日本人の性には一瞬クスリとしかけたが、それ以上に車が恐ろしくて仕方が無い。怪談を読んでいると、別の本に掲載されている話に関係のある怪談もあった。持っている本がいくつかあったので、また機会があれば読みたい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ怪談を蒐集する際、怪談社を任されている糸柳と上間は現地に行って取材をするのだ。徒労に終わる事もあるが、現地に行って取材をした分関連した話を収穫できる事が多いらしい。本書は、それぞれが同じ色を帯びた話を集めた怪談実話集である。
***
実話怪談集。今までずっとホラー小説ばかりを読んでいたのでとっても久しぶり。こちらの本は、ただ怪談を集めただけではなくその怪談を聞くに至ったプロセスも一緒に書いてあり、新鮮だった。どうした理由でという前後があるおかけでより一層、リアリティがあった。(実話怪談なのでリアリティという言葉はやや不適切か?)オチがきっちりつくホラー小説と違って、結論が曖昧模糊としているがそれがこちらの想像を掻き立てて、余計に怖い。ああじゃったんじゃないか、こうじゃったんじゃないかといろいろ考えてしまう。どれもこれも家や建物、土地に関する話ばかりで、そのいずれかがいずれかに関係していたり、多くの話の根底に同じだと推測される原因が横たわっていたりと、話それぞれに連鎖があるのは非常に良かった。関連しているとわかった瞬間のあのぞーっとする感じがいい。一番怖かったのは「うなる男」。語り手のマンションに出た、体に火傷を負った男。それが週に何回か現れ何かを訴えるように、「うーッ、うーッ」とうなる様も不気味。しかも、その話の最後にはその語り手がこんな感じだったと描いてくれた絵が不気味だった。その場でササっと書いたので大雑把な絵であったが余計怖さを倍増させた。昨日の夜その話を読んだが、よもや暗闇の向こうから現れまいな?とちょっとビクビクしてしまった。もう一つ真相が気になった話が、「封印されたアパート」こちらは、幽霊らしい幽霊は出てこないのだが、必要以上に人を入れまいとまさに封印されているアパートの様子、そしてそのアパートの事を聞こうとすると示し合わせたかの様にこちらを無視する近隣住民。そして、やっと話を聞けそうな人を見つけたと思ったら「関わらないほうがいい」「絶対中に入るな」と釘を刺される始末。物件に対する曰くなので、有名な事故物件サイトで検索しても杳として知れず……。ここで何があったのか、本書では判明していない。おそらくこれから先もよほどのことがない限り明るみにはならないだろう。しかし、それだけ近隣住民が触らぬ神に祟りなしといわんばかりに敬遠しているところを見ると、興味が募るが、恐怖もより募る話だった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ人間は思っているよりずっと頻繁に怪異に出会っている。あなたがその恐ろしい体験をしなかったのはただの偶然で、怪異はいつでもあなたが来るのを待っている。もしかしたら、気づいていないだけで、もう怪異に取り込まれているかもしれない。
こちらは、前日のホラー小説と違い62話からなる、怪談実話集。非常に恐ろしいものから、不気味なもの、不思議なものまで話は多岐に渡り読んでいて飽きなかった。中でもおすすめは「古本」「非常に悪い出品者」「応接室」「戻ってきた携帯」「見知らぬ駅」「地下倉庫」「赤い紙」「古本」は体験者が古本屋で購入してきた本に前の持ち主の痕跡(髪の毛の混入など)が残っておりそれだけで気分が悪いのだが、それ以外に思念のようなものなのか、はたまた執着する心なのか分らないが、そのようなものもついてきていて気持ち悪かった。「非常に悪い出品者」は落札した品事態の気味の悪い、そして一人どこかへ行ってしまった友人と、同時に消えてしまった落札物など話の細部がまったくわからないことがより不気味さを掻き立てる。あの落札物の正体は何だったのかという事と友人はそれをもってどこへ行ってしまい、今どこにいるのか、果たして生きているのかなど想像で補うしかなく、しかし消して結末はよいものじゃないだろうと予想がつくので非常に怖い。 「応接室」は体験者が働く清掃会社の派遣先で起こった怪異。特に派手な出来事はなかったが、応接室から聞こえる「シーッ、シーッ」という歯列の間から漏れ出る吐息のような音、そして、応接室にいた音の正体の姿を想像して背筋がぞぞっ。それは見てはいけないものを見た時の嫌悪感と恐怖感に似ていた。 「戻ってきた携帯」は紛失した携帯が、手元に戻ってきたまではよかったのだが、その後携帯を見ていると、高い所から下を写した写真が数枚入っている。警察が拾得者は不明と言ったり、変に言葉を濁したり、上からの写真があったという時点で、拾得者に何があったかは何となく察しがついた。でもそうだったとして、どういう意図で拾った人の携帯をそんな風に扱ったんだろう。警察もそこはできれば伏せてほしくないが……。「見知らぬ駅」は有名な都市伝説「きさらぎ駅」をほうふつとさせるような話でわくわく。駅自体が変な駅ではなく、実在する駅で害はなかったのだが、体験者が乗っていた電車が何処か別の世界を経由したという感じだった。体験者に危険が及んだわけではないが、もしその遠い駅にすらたどり着かず全く見知らぬ、存在しえない世界の駅などについていたらどうなっていたのだろうと、興味が沸いたが、私は絶対そんな目には合いたくない。 「地下倉庫」は警備員として働く体験者の不気味な体験。ビルの地下に眠る謎の洞窟。それ自体も不気味だが、その奥からやってこようとしていたこの世ならざるものも気味が悪い。過去に何があったのか判然としないが、その地下洞窟の正体がそうであるならば、そこにいたのは悲しい幽霊なのかもしれない。「赤い紙」これが一番意味が分からず、気味が悪くてしかたがなかった。変な手紙をもらったのだと友人が体験者に相談していたにもかかわらず体験者が帰る際にはもうすでに、友人は手紙にのっとって、目印といえる赤い紙を窓に張り付けていた。あんなに気味悪がっていたのに、それをすでに実行してしまっている点から、手紙をもらった時からすでに取り込まれていたのだろうか。 -
購入済み
初めて読む作家さん。幻冬舎のフェアをやっていたのでたまたま見つけて購入。
中にはあまりぱっとしない作品もあったが、全体的にはなかなか面白かった。
とくに「幻日」は秀逸。さすがにデビュー作だけのことはある。阿刀田高の作品
や「笑うせーるすまん」にも似たような話があって、読んでいるうちに次の
展開が見えてくるが、それでもストーリーに引き込まれてしまう。「骨」も
よかった。こんな話は実際にありそうで怖い。福澤さんはいろいろな職業を
転々としてきた人らしいが、そうした過去の苦労や体験が物語に色を添え、
引き立たせているような気がする。 -
Posted by ブクログ
就活生、ブラック企業のサラリーマン、ヤクザ見習い、ときて今回の水先案内人は国会議員秘書。毎回毎回、料理というメインテーマはブレずに持ちながらジャンルの違う小説世界に溶け込ませるのはすごいなぁと感心。今回も政治小説としての体裁がしっかりできているように感じた。
ただ個人的にはドラマの盛り上がりは前作の方が良かったかな。今回は柳刃さん達が裏方に徹しすぎて、後半まであまり活躍がなかった気がした。
ただ毎度お馴染みプロローグの、前作の登場人物のゲスト出演は今回の方が良かった。なんだかほっこりした。
そして料理。今回のは特に作ってみたくなったな。簡単そうだったし。 -
購入済み
特殊シチュ グルメのはしり?
かなあと思っています。
どうみてもヤクザの男を部屋にかくまってしまい、
たびたび食事をふるまわれることになる。
「かくまっている」ために、ありあわせの材料で作ることになるのですが、これが工夫が効いていて面白い。